愛に生きる   作:かのん

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書かずにはいられなかった……!!

1週間とはなんだったのか

というか文章とか後書きとかだんだんボロが出てってる気がする。普段の作品読んでくれてる読者ならわかるかも



サブタイトルは『You'll never find a rainbow if you're looking down』-Chaplin-の格言から


You'll never find love if you're looking down

”武偵”つまり”武装探偵”とは一体ナニモノであるのか。

 

昨年の暮れから考えるようになった命題は今日も変わらず、頭の片隅から離れることはない。

 

 

”武偵制度”は近年の犯罪の凶悪化に対応して、警察以外の組織による捜査・逮捕を可能とさせた比較的新しい制度であるが、この制度がうまく機能しているかどうかに関しては、多大な批判・批評にまみれ未だ議論の渦中にあるという。

こんな調子の記事を読んだことがある気がする。

日本でも市民が銃砲を携帯することが許されたこのご時世で”武偵”は銃砲・刀剣の所持を義務付けられている。

若い頃から専門的な訓練を修めているため犯罪に関与した場合”武偵三倍刑”などという厳罰に処される。……が、これらの訓練などがむしろ犯罪を高度化させているのではないかというような批判的な意見もちらほらと耳に入る。

 

兄さんの事故からまるまる3ヶ月がたった今でもこの命題に対する答えは浮かばないが、俺、遠山キンジが足りない頭でつかめた結論がある。

 

イイモノかワルイモノか、そんなことは判断できない。けれども”武偵”が汚れ仕事を押し付けられた挙句、批判・非難の対象になるような損な役回りであることは間違いがない。

 

 

去年の暮れ、『浦賀沖海難事故』に居合わせた兄さんは乗客・乗員全員を安全に避難させた挙句、逃げ遅れて行方不明となった。本来ならば避難も誘導も全て乗員の仕事であるのにも関わらず率先してその役目を行っていたことが事件直後の乗客の証言から明らかになっている。

けれどその後、責任を追及されることを恐れた旅行会社は責任を兄さん一人に押し付けて『事件に居合わせたのに解決できず、被害を大きくした無能な武偵』と詰り非難した。”武偵制度”に批判的だったマスコミもその論調に食いつき、結局は世間が一丸となって、兄さんの所属していた武偵庁や遺族の俺に罵詈雑言を浴びせた。いくら貰い受けたのかはわからないが、助けられた乗客も居合わせた乗員も誰もかれもが受けた恩を忘れ散々に武偵を叩き続けた。

 

こんな扱いを受けるくらいなら、いっそこちらから武偵なんかやめてやろうと考えるのは当たり前だろう。

 

 

それで、こんな狂った立場から早々に抜け出して”普通”の人生を歩んでやろう、と今朝もしっかりと決意を固めて寮を出たのだ。

 

なのに、なんで俺はセグウェイ(UZI搭載)に追いかけられてるんだ?しかもケツの下にプラスチック爆弾というオマケ付きで。

 

 

はぁ、本当に狂ってる。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

この国に足を踏み入れてから3日、東京武偵高から割り当てられた女子寮の一室に閉じこもっている。部屋の電気もつけないままに、送られてきた荷物の中から引っ張り出した布団に包まって、身体に響く凍えるような悪寒を耐える。

シャワーも浴びず、ご飯も食べず、水も飲まず、この悪夢のような時の流れに囚われながら夢から醒めるのを待ち続ける。

一度敗れた恋は憧れとなって燻り続け、それが時を経てまた恋となって再燃した。

想い人に逢う日を夢見て、期待を胸に抱き異国の地に足を踏み入れた少女に課す試練としては余りにも酷ではないか。

一番始めに目にした僅か一行の情報(しらせ)が、今の私を、私を構成するものを、その想いを完全に無に帰した。

 

これではまるで道化だ。

 

受け止め切れない現実を前に、自身の力では、それどころか時を遡らねば超えられない高い壁を前にして今日私は闇に籠もる。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

ケツに張り付くセグウェイ(UZI搭載)と文字通りケツに貼り付くプラスチック爆弾をやり過ごし、さらに襲撃を重ねてきたセグウェイ7台をなんとかして処理し、その報告書を教務科に提出してやっと一息着くことができた。

なにもかもが適当な武偵高の始業式なんか別に出なくても問題はなかったが、新年度の初日からこんな事件に巻き込まれるなんて思ってもいなかった。

こんな調子で武偵を続けていたら一般高校に転校する前にコロッと死んじまう。

 

今朝、俺を窮地から救ってくれたピンクブロンドの髪をした少女のように化け物じみた実力を保持しているのならともかくとして、方法はあるものの自由にそれを使いこなせない俺が生き残るのは無理な話だ。

彼女の腕は『あの状態の俺』に匹敵するくらい狂気にまみれていた。拳銃の交戦距離の3倍以上離れた距離から相対速度100km/h超で、しかも足場がなく安定しないパラグライダーに吊り下げられて、二丁拳銃で全弾命中させるなんて正気じゃない。

その後に不覚にもナってしまって7機のUZIの銃口に銃弾を叩き込んだ俺が言うべきではないかもしれないが、人間の範疇を軽く超越している。

結局彼女には『あの俺』を見せてしまったし、新年度早々解禁してしまったことに悔いを感じてしまう。

面倒ごとに繋がらないといいなぁ、と半ば祈るような気持ちで自分の未来を案ずる。

 

 

「先生、私アイツの隣に座りたい」

 

 

そんなかわいそうな俺の願いはわずか数分後に彼女-神崎・H・アリア-本人の言葉によって破られた。

 

教室が一気に騒然となる。

 

俺が今朝、世にも珍しい『チャリジャック』に巻き込まれ始業式をサボったことを知る生徒は多いが、事件の詳細について知るも者はほとんどいない。なぜなら、事件に関する報告書はなぜか被害者の俺が命じられて作らされ、つい先ほど教務科に提出されたからだ。

そこには、自転車に密かに取り付けられた”速度を落とすと爆発するプラスチック爆弾”や”50km/hを超える速度で走る魔改造されたセグウェイ”、”セグウェイに取り付けられたUZI”などに関する記述がある。そして、神崎が女子寮の屋上からパラグライダーで滑空し、セグウェイを拳銃で破壊したうえで、そのまま俺を宙へと救出したとも書かれている。

そのあとに、同タイプのセグウェイに襲撃されなんやかんやあって俺が撃退したとも適当に書かれてはいるが、もちろんこれらの情報を教室内の生徒は知らない。

 

そんな状況で一人の可愛らしい女子生徒がある男子生徒の隣の席を所望してみろ、あとに残るのは強襲科の脳筋どもでも導けるような恋愛の構図だけだ。

 

俺の隣の席に座っていた大男の武藤剛気は何が嬉しいのか積極的に席を譲るし、この短い間で既にクラスのムードメーカー的な立ち位置を築いていた女子生徒、峰理子は面白がって俺と神崎の仲をからかい一大妄想ワールドを構築している。

 

そして、そのクラス中の混沌は神崎の握る2丁の"M1911"の銃声によってかき消された。

 

 

「れ、恋愛なんて……くっだらない!全員覚えておきなさい!そういうバカなことを言うヤツには……風穴あけるわよ!」

 

 

真っ赤になった彼女の勇ましい声がシンと静まったクラス中に響いた。

 

 

 

……ほんと、新学期早々ロクなことがない。勘弁してくれ。

 

 

 

 

 

 

喧々諤々とした自己紹介も終わり、始業式のみの今日は早めの解散となった。

強襲科の戦闘狂どもは嬉々として訓練場へと駆け出していったが、一般人を志す俺は何もせずに寮へと歩く。去年はあの中に自分が混じっていたことを考えると今でも恐ろしい。

 

始業式からいきなり無断欠席を強行した生徒も1名いたが、クラス中の誰もがほとんど気にしていなかった。俺のクラス、2年A組の担任となった高天原先生は不安そうな表情を浮かべていたが、その生徒とはまだ顔も合わせていないらしく「何か事情があったんでしょうか」とだけ。

先生曰く海外からの留学生だそうで入寮手続きは済んでいるのでこの島に来ているのは間違いないらしい。まぁ、国が変わっても武偵なんて志す生徒は頭のネジが1本どころか全て外れているような連中、さもありなん。

だいたい転入生との顔合わせすら済んでいないとはどう言うことだ。相変わらずの狂気の坩堝具合。東京武偵高の唯一の良心と言われる高天原先生だってそうなのだから、いかにこの環境が狂気にまみれているかを思い知らされる。

 

 

 

そのまままっすぐと男子寮に戻り、割り当てられた部屋の鍵を開け中に入る。高校生男子1人には広すぎるこの部屋だが、俺が1月という微妙な時期に転科したこと、寮住まいの他の探偵科の生徒が全て他の部屋に決まっていたことなどの影響で本来4人部屋のはずのところを一人で使わせてもらっている。

他の武偵もネガティブなイメージを醸し出す俺と同室なんて嫌だろうし、俺も自由に使うことができるのでラッキーといえばラッキーだ。

 

 

それにしても今日は疲れた。

 

 

新学期早々にチャリジャックなんていう、世界犯罪史上おそらく初めての所業に巻き込まれるし、忌避していた「あのモード」にはなってしまうし、今後も関わっていきそうなあの神崎とかいう女子生徒はトラブルの匂いをプンプンさせているし。

平和な日常を求めて探偵科という比較的安牌な学科に移ったのにこのままではどんどんと平和から遠ざかってしまう。同じく安全な学科として完全後方要員の救護科もあったがそもそも学力が足りず受け入れてもらうことは不可能だった。

偏差値45の武偵高で劣等生扱いの俺ってどうなのよ、と思わなくもない。

 

ソファに体を埋めて目を瞑り、体が求めてやまない休息に入る準備を整える。そのまま睡魔に身を委ねようというところでインターホンの音が部屋に響いた。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

喉の渇きを感じ、体が水を求めて自然と動き出す。

そういえば布団に引きこもってから何も口にしていない。考えてみれば脱水症状の兆候も割と早くから出ていた気がする。

この日本では蛇口をひねれば水が飲めるというがイタリアではその習慣はない。イタリアの水道水も飲むことは可能だけど私たちイタリア人はこれはもう文化であるというレベルでミネラルウォーターを口にする。水道の水を飲むこともあるのだけれど基本的にはコーヒーを沸かす時に使ったりとそのまま飲むことは滅多にない。

それでも背に腹は変えられず蛇口をひねって手酌で一杯だけ飲み干す。

早いとこ水と食料を買い込んでまた引きこもろうと考えるが3日間布団にこもっていたのもあって、有り体にいえば臭う。

肌もベトベトだし、髪もボサボサ。残りカスのように残っていた女のプライドが理性のように働いてまずはシャワーでもと、届いたままにしていた段ボールの荷物の中からシャンプーとボディソープ、トリートメントなどをガサゴソと探し出して浴室に向かう。

 

酷い顔だな、と鏡の中で死んだ目をしているもう一人の自分に独り言ちる。ほんの1週間前には想い人を夢想してイイ女を保っていたのにこれでは台無しだ。もうそれを見せる人はいないけれど。

その陰鬱とした気分のままシャワーを浴びて、軽い化粧で酷かった顔色を幾分かはマシに戻して、寮監から預かった鍵と財布を持って部屋を出る。

 

 

「うわっ。酷い顔色だよ。大丈夫?」

 

 

目の前には下から見上げるようにして顔を覗き込んでくる小柄な女子生徒。私の背丈は170近くと平均的な日本人女性よりも随分高いのだが、相手の子も145行くか行かないかといった、日本人女性よりもかなり小柄な印象。焦点の微妙に定まらない目で顔を注視してみれば、私たちの見慣れたヨーロッパ系、ラテン系の風味が見え隠れする。髪も綺麗な金髪だしハーフかクォーターか、少なくとも向こうの血をいくらか受け継いでいるみたい。

家を出る前はマシだと判断した顔色だったがそんなによろしくないのだろうか。今の私の有り体は。

 

「いや、よろしくないっていうか今にも飛び降りそうな雰囲気っていうか……」

 

と、向こうの女性も困り顔。よくみれば微妙に通路の柵と私の間に体を挟んで警戒しているのがみて取れる。

 

随分と久しぶりのように感じた他人の心配というか、人の暖かさに触れて私の両目からは堰を切ったように涙が溢れ出してしまう。止めようと思っても止められずついには嗚咽までもが喉からこぼれ出てしまう。

 

「えっ、なになに!?理子なんかしちゃった!?」

 

オロオロと慌て出す彼女が滲んだ視界にぼやけて映るがもう止められない。喪失感と無力感を織り交ぜた悲しみを制御できずに崩れ落ちる私を、体格のせいか随分と苦労して隣の、おそらくは彼女の部屋に運び込んでくれる彼女に申し訳なさを感じることもできずに私はただ静かに泣きじゃくった。




用語解説

・遠山キンジ

原作主人公で金一の弟で現在16歳。遠山家の一員の例にもれず性的興奮で強くなるスーパーマン。まだこの頃は兄の金一に2歩も3歩も劣る程度の実力だがそれでも強化時には強襲科のSランクを取得するほどの実力者。
中学時代に HSSをクラスの女子にいいように使われていた過去を持ち女性に対して苦手意識を持っている。
今は探偵科に転科しており、ランク考査を受けなかったためEランクという最低ランクに位置している。
愛銃はベレッタM92で3点バーストとフルオート射撃が可能なように魔改造されている(通称キンジモデル)


・HSS

ヒステリア・サヴァン・シンドロームの略。
遠山家の人間が代々引き継ぐ神経系の体質。呼び方は人によって異なりHSS、ヒステリアモード、変對など。
性的興奮による神経伝達物質の増加やらなんやらが原因で簡単にいうと超人と化す。


・M1911

1話の用語解説にちょろっと出てきたコルト社製の傑作オートマチック拳銃。通称コルトガバメント。
米軍でベレッタ 92が採用されるまで長らく使われていた。とても頑丈。
.45 ACP弾を使用するため威力が高く、アメリカ人が大好きな硬い、強いを体現するTHE AMERICAな銃。
実際に米軍の一部ではベレッタ 92の9mm弾のマンストッピングパワーに満足できなかったのかガバメントと同じ.45 ACP弾を使用するH&K Mark 23(通称SOCOM PISTOL)が特殊部隊USSOCOMに配備されていたりする。


・UZI

一度でもFPSやTPSをプレイしたことがあるなら誰でも知っている短機関銃。開発はIsrael MIlitary Industries.
1950年代に開発された9mm口径の短機関銃で西側諸国の軍・警察機関などに採用されまくった傑作銃。
操作性や射撃速度に優れていて当時の短機関銃の中でも突出した性能を持っているが、作者的には部品の少なさと設計の簡易さこそが評価されるべきだと思っている。なぜなら整備・交換・生産が簡単に行えるから。お金がない中小国では今でもバリバリ現役。
ちなみに軍関係だと特殊部隊などを除いて大量に配備する必要があるから、一定の条件を満たしていれば安価な方が採用されやすい。米軍に採用されたベレッタ 92も実は競合していたSIG SAUER P226の方が性能は上だったとか。



用語解説書いてる方が筆がサクサク進むという事実。たのちぃ^q^
間違ってるとこあったら教えてね
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