愛に生きる 作:かのん
お待たせいたしました。
1週間間隔で投稿する予定だったんですが超過してしまい申し訳ないです。
全部PKがドロップしないのが悪いんです。
誰だ0-2走ってりゃ出るって言ったのは。200周しても落ちねーじゃねーかよぉ!!
スキンも報告書も資料もカプセルも揃えて待ってんのに本体だけが出ないのは何故?
ストレスで禿げそうになったんで執筆に戻ってきました。2話分投稿するので許してください。
サブタイトルは『The cruelest lies often told in silence』-Robert Louis Stevensonの格言から
―――piriririririri
強襲科に戻った次の日、朝部屋を出ようとしたところでポケットの中の携帯が着信音を奏でる。
誰だ、こんな時間に。
画面を見てみれば非通知でありかけて来た人間はわからない。こんな朝早くにかけてくる人間に心当たりはないし。
「はい、もしもし?」
どんな電話か判断できないので、念のため名乗らずに応答する。
イタ電とかなら情報を流さずに済むし、もし重要な用件でも確認してから名乗れば問題ないだろう。もっともこんな時間に非通知でかけてくるような用件がそうであるとは思えないが。
「もしもし、遠山くんですか?ごめんなさい、こんな時間に」
この声は、アテナ・カレンダか。なぜ彼女が俺の番号を知っている?と思ったが、大方理子あたりから聞いたのだろう。
今日のうちにこちらから連絡を取ろうと思っていたのだが、しびれを切らしてかけて来たのだろうか。
「今、お時間大丈夫ですか?」
「あー、すまないがこれからバスに乗って登校するところだ。学校着いてからで構わないか?」
先日のチャリジャックで愛車が木っ端微塵になってしまったのでしばらくはバス登校が確定してしまっている。
歩けない距離ではないが、朝から無駄な体力を消費したくはない。
「なるべく早い方がいいんですけれど……ほら、学校だとアリアさんもいるから」
なるほど。確かにアリアは用事ができたとかで早くから登校して行ったから、今ならば邪魔も入らないのかもしれない。
ただ……
「次のバス乗らないと遅刻しちまうんだよ、聞かれたくない話ならメールとかでもできるんじゃないか?」
「私は直接話したいのです。お兄さんの話は遠山くんも早く聞きたいですよね?それに……必要ならこれから車で送りますよ?」
なんだと、彼女は車まで持っているのか。貧乏な俺とは大違いだ。羨ましい。
でもそこまで言われたら断ることもないか。兄さんの話を早く聞きたいのは間違い無いのだし、彼女がそこまで配慮してくれるのなら断るのも申し訳ない。
「わかった。じゃあ男子寮の前まで来てくれ。念のため聞くけど男子寮の位置はわかるよな?」
――わかりました、これから向かうのでお待ちください。
彼女の声は途切れる。
携帯をしまうついでに左腕につけた腕時計を確認する。
まあ、この時間なら学校にも間に合うだろう。結構バスの時間もギリギリだったしラッキーだったのでは無いだろうか。
それにしても衛生科の武偵でマイカー持ちとは……結構儲かっているのだろうか。
しばらくまともな依頼をこなしていないせいで金欠が続いてしまっているのでそんな下賎なことを考えてしまう。
しばらく男子寮の前で待機しているとエンジン音が響いてくる。
この時間に男子寮を出る生徒はほとんどいないので目立つこともなかった。
ポツンと寮の玄関に突っ立っていた俺の前に1台の車、トヨタ・オーリスが停まった。
――お待たせしました。
後部座席のドアのロックが解除される音がしたので、そのまま後部ドアを開いて乗り込む。どこかで嗅いだことがあるような甘い女の子スメルが鼻を通過して脳天まで突き抜ける。呼吸を止めて匂いの元凶を恨めしい思いを込めて見つめるが、当然のように反応はなかった。
前部のシートは大きめの座席に改装されているようで、こちらからは彼女の体の一部しか見えない。運転席からこちらの様子も確認しにくいだろう。全ての窓にガッツリとスモークがかかっているし、どう考えても違法な改造にしか思えないんだが……これは武偵として注意すべきだろうか。
―出しますね、の声とともにゆっくりと車が発進する。こんな違法改造だらけの車の所有者とは思えないくらい丁寧な運転で。
俺も乗せてもらっている身ではあるし、今くらいは大目に見ようか。もしかしたらイタリアではこのくらいは普通なのかもしれないから。
下手に注意して機嫌を損ねてしまったら兄さんのことについて話してくれなくなるかもしれない。そんなことは起こり得ないと思うが、デリカシーの無さに欠けては世界レベルの遠山キンジ、用心するに越したことはないのだ。
そのままゆっくりと車の振動に揺られながら彼女が話し始めるのを待つ。朝早くから無理矢理コンタクトを取ろうとするくらいだから、さぞ急な、重要な要件だと思っていたが、予想に反して彼女が話し始める様子は無い。
もしや、まだ何か躊躇いがあるのか。内容は多分兄さんのことだろうから気持ちはわからなくない。それでもここに呼び出された人間としては早めに用件を確認しておきたいのだ。喉から手が出るほど欲しがっていた情報を知っているかもしれないのだから。
「で、こんな早くにどうしたんだよ?何か理由があったんだろ?」
信号で停車したタイミングでこちらから切り出す。このまま待っていても埒があかないと判断して、こちらからではよく見えない彼女の様子を確認しながら。
「ええ、でもまだ少し迷ってしまっていて……」
俺の予想通り、まだ何か躊躇いが残ってしまっているらしい。
困ったような声音で切り出すタイミングをはかるようにして。ただ……なんだ?しきりに時間を確認しているように見える。このまま行けば登校時間には十分間に合うとは思うんだが。
「もしかして、長くなるような話なのか?」
そうだとしたら、彼女がこの時間に俺と接触しようとした理由がわからない。
あの電話のタイミングだとどう考えても俺と話ができるのは15分やそこらでしか無いのだから。
こちらとしては、どんな話であっても早めに切り出してくれるとありがたいんだが。女子と二人きりの空間で静けさが満ちていると、なんというか、変なムードになりかねないし。彼女がヒス的な意味で危険人物であることは明確だから、できるだけ早く他の話に集中したい。
そんな俺の考えを組んでくれたのか、彼女は車が再び動き出すタイミングでポツポツと話始めた。
「……私は、金一さんにあったことがあるんです」
やはり。
彼女が昨日、コルトSAAを出した時からそのことは予想していた。
彼女はローマから来たと言っていたから、おそらく兄さんがイタリアに留学をしていた時に知り合ったのだろう。
「……それで?」
「向こうで何度かお世話になったことがあるのでお礼をしようかと思っていたんですが、いざ日本に来てみたら……その……」
兄さんの記事を見つけてしまった、か。
兄さんと彼女が向こうでどの程度関わりがあったのかは知らないが、知り合いがなくなっていたと聞いたらそりゃ動揺もするだろう。
ただ、この話にはどこか不自然さを感じる。
よほど深い関係であったのならばともかくとして、何度か世話になったことのある武偵の死でここまで落ち込むことがあるだろうか。理子の話では生きる気力もわかないくらい憔悴しきっていたようだった。
こう言っちゃなんだが、武偵業界では助けたり助けられたりといったことは割と頻繁に起こる。何か世話になるたびに一々礼を言ってられる状況では無いこともあり、受けた恩義は行動で返すのが一般的な武偵だ。向こうで彼女の意識を変えるほどの何かがあったのか。
でも、なぜそれを?
少なくとも緊急の用件として持ち出す話では無いだろう。こんなことはいつでも話せるような問題であって、わざわざ車を出してまで時間を作るほどのものでは無いのだから。今の彼女は何か別の用が、俺の予想が正しければ時間を稼ごうとしているようにしか思えない。先程からしきりにカーナビの時間を確認しているようだし、話もわざと小出しにしているように思える。
「その話のためだけに俺をわざわざ呼んだのか?」
兄さんの話をダシに使われてあまり良い気もしていなかった俺は少し強めの口調になってしまう。彼女が兄さんをどう思っているのかは知らないが、家族としてはその話題には軽々と触れて欲しく無いのだから。
俺の糾弾するような強目の口調で車内を気まずい静寂が満たす。エンジン音だけが走行する車内に響いてどちらも口を開こうとはしない。
もうあと少しで学校に到着してしまうところまで来て、この後どうしようかと、彼女から本当の要件を気き出すことができるかと不安になり始めた俺が口を再び開こうとした時に、ポケットの中の携帯が静けさを破って鳴り始めた。
「っ、すまん。出るぞ」
何も言わない彼女を無視して確認する。この番号は、アリアか?
「もしもs―」
「ちょっとアンタどこにいるのよ!」
不機嫌丸出しの俺の声をキンと響く声が切り裂く。うるせえ。
「どこって、もうすぐ学校の前だ。それよりお前朝っぱらから何の用だよ」
「事件よ!!今すぐC装備に着替えて強襲科の屋上まで来なさい!!5分以内に来なかったら風穴!!」
それだけ言い残して電話はブチッと切れてしまう。
事件だと?また嫌なタイミングで持ち込まれたな。ただ、この空気を一変させてくれたことはありがたい。
「すまん、とりあえず今日のところはこれだけにしておいてくれ。何かあるようだったらあとでもう一回連絡してくれればいい」
「わかりました。強襲科前まで送ります」
アリアの大きな声は前部座席まで届いていたのか、彼女はハンドルを切ってアクセルを踏み込んだ。一瞬体にかかるGを感じてさっきまでとは段違いのスピードで後方に通り抜けていく景色を見やる。このぶんなら1分もすれば強襲科には到着するだろう。着替えるのに1分とすると制限時間までには屋上にたどり着けそうだ。
今自分が所持している武器を軽く確認して、できればそんな大規模な事件じゃ無いといいんだがと願い、それでも先ほどのアリアの剣幕からくる不安が募る。
HSSになる時間も得られないだろうから、3ヶ月以上のブランクがある自分が大規模の事件に関わるのはかなり危険だろう。なったらなったで今度はアリアにターゲットされるから問題は残ってしまうのだが。正直、もう少し時間が欲しかった。
ある程度カンを取り戻した上で、通常の俺でも解決できるような事件が降ってくることを期待していた。そのつもりでアリアとの約束を結んだのに、なんもかんもが裏目に出てるじゃねえか。
お気をつけてください、という彼女の言葉を背にして強襲科棟に駆け込み訓練場の近くに放置してあったC装備の中から自分のサイズに合うものを手にとって装備する。
こういう備品の管理が杜撰なところは俺が所属していた時から変わらない。中には度胸試しとか言って普通の防弾制服だけで銃弾の嵐に飛び込むようなバカもいるから、こういった装備の管理体制はクソの一言で片付けられる。だけど今回はそのおかげで助かった。
ボディアーマーを制服の中に着込んでブレザーの上からベルトをきつく締めて、用意できるだけの予備弾倉を身につける。事件の規模にもよるがおそらく弾数は足りるだろう。アリアも人員を集めているだろうから、問題ないはずだ。
「行くか」
頭部を守るための防弾ヘルメットを脇に抱えて屋上へと続く階段を駆け上がり、扉を開ける。
そこには無線機に向けて怒鳴るアリアと、隅っこで体育座りをしてちょこんとまとまっている無機質な美少女-狙撃科の麒麟児レキがいた。
ロボット・レキ。
普段の生活における生物感を全く感じさせない無機質な態度と、機械もかくやという正確性で標的を撃ち抜く姿からつけられた渾名である。
狙撃科Sランクの超優等生であり、去年俺が強襲科にいた頃に教務科からの依頼を何度か一緒にこなしたことがある。普段のコイツは全てが謎に包まれているせいで俺も未だによく理解できていないが、その狙撃の腕だけは全面の信頼を寄せられる良き後衛だ。
必死の表情で無線に怒鳴り立てているアリアを他所に、まるで無関係とでもいうかのように頭にかけたヘッドホンに聞き入っている。
「レキ、お前も呼ばれたのか」
応答なし。愛銃のドラグノフを膝に抱え込んで座ったまま。
「へ・ん・じ・を・し・ろ!」
こっちを見ようともしない彼女の頭からヘッドホンを引き剥がして耳元で大声を出す。
一瞬小さく、本当に僅かに顔をしかめてからこちらを非難するように視線を上げてくる。ただし無表情。
本当にコイツは何を考えているのかわからん。コミュニケーションをとるのにも一苦労だ。
「アリアさんに呼ばれました。キンジさんもですか?」
「聞こえてたんじゃねえか」
レキはフルフルと首を降ってから、キンジさんの口の動きでと付け加える。いや、どちらにしろわかってたんなら返事をしろよ。
呆れた俺の手からヘッドホンを奪い取って再びカポッと装着する。これ以上話すことは無いって意思表示か。いつものことではあるがコイツと任務なんて大丈夫なのか?意思疎通がまともに取れないと連携なんてあったもんじゃ無いぞ
ハァ、とため息をついて募る不安を嘆く。
「アンタら、なにイチャついてんのよ!!」
「ウゴッ!?
ガインッ、と俺の後頭部に何かが直撃する。
恨みを込めて元凶を睨み付けるとそこには自分のヘルメットを投擲した後のポーズのアリア。
俺の悲鳴で溜飲を下ろしたのか、フン、と鼻息を履いて
「タイムリミットよ。この3人で行くわ」
「おいテメェ何しやがる!」
「事件はバスジャック!ほんの10分前に学園島内部を走っているバスの中から緊急コールが入ったわ!ほんとはもっと高ランク武偵が欲しかったのだけどみんな他の事件で出払ってた。だからー」
言葉から滲み出る絶望感とは裏腹に自信タップリの表情で彼女は言い放つ。
「3人だけで行くわよ。キンジ、腹括りなさい!!」
用語解説
・レキ
苗字は不明。狙撃科2年に所属するSランク武偵で武偵高生の中でもぶっちぎりに怪しい人。ミステリアス。
常に冷静沈着で感情を表に出すこともない、狙撃手として必要なスキルにすべての経験値を振り切ったような美少女。
ヘッドホンは常につけていて彼女曰く故郷の風の音を聞いているらしい。
おそらくモンゴル・ロシアあたりの出身でありそこらへんの言葉は話せると思われる。
メインアームはドラグノフ狙撃銃。キリングレンジの2051m以内であれば1mmもずらさずに標的を撃ち抜く天才。
・ドラグノフ狙撃銃
ロシア語のСнайперская винтовка Драгуноваを直訳するとドラグノフ式狙撃銃となる。
スナィペるスカヤ・ヴィントフカ・ドらグノヴァを英語対応させて頭文字をとったのがSVDでありこの略称も世間一般で通じる。ちゃんとロシア語発音できるとかっこいいからやってみよう。
ソ連で開発された狙撃銃でモシン・ナガンの後継的な立ち位置で設計されたセミオートライフル。
市街戦での使用を想定されて開発されているので遠距離における狙撃精度よりも速射性を重視して設計されているので有効射程は1km弱程度。ソ連軍では600-800m程度を有効戦闘距離にしていたけど、今のロシアがどういう風に運用しているのかは知らん。
そもそも狙撃精度を重要視するなら構造がシンプルなボルトアクション方式が採用されるはずであり、そこまで重要視されていなかった開発経緯が窺われる。WA2000?知らんな。
この銃で2000m級の狙撃ができるレキはマジモンの化物だと思ってる。
ソ連製銃器特有のバカみたいな耐久性と動作性はこの銃にも当てはまる。これは国土が広大すぎてどんな環境でも作動する銃が必要だったっていう背景があるから。AK-47とかPKもおんなじ。ベトナムで不良起こしまくったM16とかとは違うんよ。
使用弾薬は7.62×54mmRでこれはモシン・ナガンとかPKとかにも使われてる高威力弾薬。勘違いしてる人がたまにいるけどAK-47で使われてるのは7.62×39mmでこれとは別物。
精密狙撃用の後継弾で7N14とかが使われてるけど、触ったことないからどれだけ違うのかはわからない。多分レキはこの弾使って狙撃してるんだろうなぁと個人的に思ってる。
……長くなったけどストレス発散できたからええか。
書いてる最中に2話目の後書き面倒だなって思ったから諦める。多分今日の深夜か明日の午前中までには投稿しようとは思ってるんでお待ちください。