愛に生きる 作:かのん
午前中までには投稿すると言ったよな・・・まだセーフだ(15分遅れ)
とりあえず有言実行ってことで許しておくれ。
サブタイトルは『Imagination means nothing without doing』-Charlie Chaplinの格言から
学園島の全貌が見渡せる高度から目を凝らして下を見つめる。
アリアは手際よくアシをよこしていたようで、腹をくくる暇すらなく到着したヘリの機内に蹴り込まれた
晴れているため視界はいいのだが、どれが問題のバスなのかはこちらからではまだ判断できない、アリアは無線で地上と連絡を取り合っていて、さっきからヘリのローター音に負けないくらいのアニメ声が機内に響いている。こちらで探すよりも地上側から誘導してもらうのが得策だろうか。
ちょんちょんと肩を突く指に振り返ると目の前にはレキの端正な顔。
「どうした!」
会話もままならないヘリの機内で大声をあげて尋ねる。
すると、見つけました、というマバタキ信号。こいつが大声を出すとこなんて見たことないからな。注意しといて正解だった。
早いな。まだ俺の目からは車道を走る車でさえ満足に見えていないというのに。
レキが指を指す先にも勿論、問題のバスらしきものは確認できない。だが度々組んできてこいつの狙撃兵、偵察兵としての能力は信頼できる。
嘘なんてつかないやつだし、こいつの視界にはもうターゲットが確認できているのだろう。
「アリアァ!!見つけたぞ!!2時の方向に降下してくれ!!」
ローター音に負けないように操縦席の近くで席を覗き込んでいたアリアに大声で伝える。
「まだ何も見えないわよ!!冗談言ってる場合じゃないでしょ!!」
「俺じゃない!!レキだ!!目ぇ良いから見えるんだよ!!」
嘘でしょ?という表情を浮かべるが、俺とは違って一発で信用し、そちらに向けて降下するように操縦手に指示を飛ばす。
この信頼度の差よ、なんで俺は連れてこられたんだ。
指示が出てから30秒ほど降下すると確かに問題のバスらしきものが俺の目にも見えてくる。疑ってたわけではないけど、やはり信じられない視力だ。
「あれね!!」
アリアにも同時に確認したようで、今度はその方向に向かって正確にヘリが近づいて行く。
早めに交通規制をかけたのかバスが行くであろう進路には車が少ししか見えなかった。
まだ確認はできていないがバスに爆弾が仕掛けられたという話だから、おそらく警察や武偵庁がすぐに動いたのか。特に学園島は武偵庁が管轄しているようなところだから迅速に対応できたのだろう。
それにしても武偵がウヨウヨしている街でよく犯人は事件を起こそうと思ったな。このあいだの俺のチャリジャックの件もそうだが、武偵自体に恨みでもあるのだろうか。
「キンジ!!もう少し降りたらパラ降下でバスまで移るわよ!!準備しなさい!!」
アリアが投げ渡してきた緊急用の小型パラを受け取って、軽く確認してから背負いハーネスをきつく締める。パラなんてもう半年以上やってないから不安しかない。
頭の中で強襲科の訓練を思い出しながら、ヘリのサイドドアを開け放ち降下準備態勢に入っているアリアの後ろにつく。コースは正直わからない。だからこういう時は一番のベテランを先頭にして、一定の間を開けてついて行くのが定石なのだ。
アリアは強襲科のSランク、任せても問題はない。
「これが最初の事件ね」
「わかってるよ。最悪だ、クソッタレ」
覚悟を決めて悪態をつく。こうなったら手を抜いてとかは言ってられない。
多分、全力で臨まなければ生き残れないような危険な任務だ。緊張が顔に出てしまっていたのかアリアがこちらを向いて笑いかけてくる。
「安心しなさい。アンタがしくじっても絶対フォローしてあげるから。行くわよ!!」
その言葉を最後に表情を引き締めて縁を蹴る。
「やってやるよクソ!!」
後ろ側に落ちて言ったアリアに続いて、空中にダイブした。
複数人でパラ降下を使うとき、後ろの人間は前の人間がたどるコースをなぞるように降下しなければならない。こうすることで進路が安定し、また、降下後も必要以上の隙を晒すことなく戦闘に移行することができる。先頭の人間は自分でコースを設定する技量と隊員全てが降りきるまでにその場所の安全を確保するための戦闘力が求められる。
この点でアリアを心配することはない。どのくらいの腕なのかは詳しくわからないが強襲科のSランクならばそんなことは当然できるだろう。嘘か誠か、特殊部隊の1個中隊に匹敵するのが強襲科Sランクという称号なのだから。
後に続く側にも注意しなければならないことがある。前の人間との間隔が狭すぎると先のパラシュートに接触してしまい、傘開を妨げてしまう。これは即、その人間の死に繋がってしまう。それが理由で落下傘部隊は普段から降下訓練を頻繁に行い感覚を体に馴染ませておく。
だけど、3ヶ月近く強襲科を離れてしまっていた俺は必要以上に距離をとってしまい、結果としてバスの端、かなり危うい場所になんとか着地するという醜態を晒してしまった。
「アンタ、なにやってるのよ!真面目にやりなさい!!」
思ったよりも腕が落ちている。通常の俺でも昔ならもっとまともにできていたはずだ。ここにきてようやく、その事実を実感する。
奥歯を噛み締めて気合を入れ直す。ここで死んだら彼女と兄さんについてを話すことができない。
「悪い!」
「あんたは内部を確認しなさい!アタシは後ろから車体の下を確認するわ!!」
ヘルメットのインカムでそう言い残し、バスの屋根に鉤を食い込ませワイヤーを使って下に降りていった。アリアはあえて自分から危険なと役目を担ってくれている。これ以上足を引っ張ることはできない。
バスの屋根にへばりついてドアを開けてもらうためにガラスをノックしようとしたところで、一番近いバスのフロントドアが開く。
「早く入れキンジ!!」
中から響く声はねれ親しんだ男の声だ。
「武藤!!状況を説明しろ!」
屋根からぶら下がって内部に入るとともに通り抜けたドアが閉まる。運転席に座っていたのは車輌科の武藤。この非常事態で武偵が運転手と交代しているのか。
「遠山くん!?」
俺の思考を遮るつい先ほど聞いた声。
いや、待て、なんでアテナ・カレンダがここにいる!?
「おま、なんで……、さっきまで車に……」
驚きで途切れ途切れになった声に、彼女は不思議な顔をして首をかしげる。
いや、だって……ついさっきまで同じ車に乗ってただろ!?
「何イチャついてんだキンジ!!後ろの後輩だ!彼女の携帯から聞こえてきて俺が運転を代わったんだよ!」
要領を得ない説明でこいつも事態に焦っていることがわかる。バスの運転くらい目を瞑ってでもできるようなやつなのに、こいつがこんなに焦っているなんて。
「さっきから指示が面倒すぎんだよ!!交通規制が済んでない道ばっかりだ!!―っ全員捕まれぇ!」
とっさに運転席横のバーを掴むと急カーブのGが遅れて体にやってくる。武藤の巧みなハンドル捌きのおかげでまだ事故にはなっていないがこのままではすぐに限界がきてしまうかもしれない。車間をバスで通り抜けるとかいう無茶はいつまでも続かないだろう。いくらこいつの運転が神がかっていても物理的に不可能なところに追い込まれてはどうしようもないのだから。
見ればメーターをもうすぐ80km/hに届くところまでいってしまっている。
「もう少し堪えてくれ!」
叫んで、揺れる車内を這うように進み、問題の後輩、半泣きの女子生徒のところまでたどり着く。
彼女のことは気になるが、今はもっと優先すべきことが山ほどある。
「と、遠山先輩ぃ」
「何があった!説明しろ!」
「こ、声が、声が聞こえてきてっ、スピードを落としたら、ば、爆発するって……」
彼女の持つ携帯電話からは確かに声が聞こえてくる。携帯で出せるであろう最大音量で。
『次ノ交差点ヲ左折シナサイ』
変声機をかけたような声。
これは……俺のチャリジャックの時と同じパターンか。あの時とは声も口調も違うけれど。あの時はボーカロイドで同じ口言葉を繰り返すだけだったが、今度は人の声だ。変声機で誤魔化しているようだが、確かに人が直接指示しているのがなんとなくだが、わかる。
犯人は近くで監視しながら指示を出しているのか。
「確認したけれど車内にそれらしいものは見つからなかったわ」
後ろから彼女もどこか焦ったような声で付け足してくる。このバスに乗っているのはほとんどが下級生か低ランクの武偵。運転で手が離せない武藤の代わりに彼女が主導で捜索を行なっていたらしい。
『キンジ!!中はどうなってる!!』
インカムからアリアの声が響く。
「中には見当たらない!そっちはどうだ!?」
『さっきから……ゆ「全員捕まれ!!」キャッ!?……ック、揺れててなかなか確認できないのよ!!』
「キンジ!右斜め後ろ!お客さんだ!!」
武藤の声に言われた方向を確認すると、無人の座席に短機関銃を搭載したオープンカー、ルノー・スポールスパイダーが4台連なって接近してくるのが確認できた。
あの短機関銃はUZI。間違いない、この間と同じ人物の犯行だ。ゆっくりと回転しながらこちらに銃口を向けてくるのが見える。
「アリア!一旦左側面に退避!」
『何よ!っ、了解!』
「全員伏せろぉ!!」
タタタタタタタッ、と軽い発砲音とともに車体に9mm弾が当たって弾かれる音がする。
良かった、どうやらこのバスは防弾性みたいだ。普段から銃弾が飛び交う学園島内を走行しているからか、運営会社も最低限の備えはしてくれているらしい。
とはいえ、窓ガラスには軽くヒビが入っているし長い間持つとは思えんぞ。
「アリア!!大丈夫か!!」
『問題ないわ!!今ので一瞬しか見えなかったけど車体の下に爆弾っぽいものは見つけたわ!!大きさはわからない!!』
やはりか、そこが一番解除もしにくいし物を隠すことができるからな。
「解除はできるか!?」
『この揺れじゃ無理よ!安定しない!』
「武藤!車体を安定させてくれ!」
「無茶言うな!これでも精一杯だ!っ、揺れるぞ!」
武藤がアリアをかばうように、左側面を晒さないようにと車体を揺らして走行を続ける。クソッ、やっぱり解除は不可能か。
「後ろをなんとかしろキンジ!そいつらがいたらこっちじゃ無理だ!」
後部座席に乗っかって窓を開け、後ろについてくスポールスパイダーのタイヤを狙って9mm弾を弾倉1個分丸々撃ち込む。この安定しない足場からだと今の俺では正確に撃ち続けることもできず、弾はばらけてタイヤや車体に着弾した。
「止まらねぇ!防弾性だ!」
しかもクソッ、2台に別れて囲むような動きを見せてるぞ。俺一人じゃカバーしきれない。
「アリア!!そっちに行くぞ!気をつけろ!」
『無理よ!揺れ続けてるせいで上がれないわ!』
バスの屋根から吊り下げられるような体勢で車体下を覗き込んでいたアリアは未だに復帰できていないようだ。
このままではと言うところですぐ後ろから彼女が叫んだ。
「私が左側を!遠山くんはそのまま右をお願い!」
「わかった!アリア!アテナがカバーするからその間に上がれ!」
『了解よ!』
「それと遠山くん、こっち向いて!」
「そんなヒm、っー!?」
そんな暇ない、と言おうと首半分だけ右後ろに向けた俺の頭を強引に抱きかかえるようにして、キス、してきた。
「ごめんね、お願い!」
それだけ言って彼女は揺れるバスの中を中央のドアに向けて進む。こちらに背を向けて。
――なるほど。君は知っていたんだね。俺たちに流れる血の秘密を。
思考がクリアになっていって確かめなくても自分がナれてしまっていることを実感する。俺をこうするために、そのためだけに君はしてきたのか。
……だとしたらそれは、とても悲しいことだ。
熱くなっている体の中心とは別に冷えている思考がもう一つの真実にたどり着く。
今朝の彼女は、彼女本人ではない。
今キスした時に俺の鼻腔に届いた彼女の香りは、朝嗅いだものとは明確に異なっている。
誰かが、なんのためにか彼女に扮して俺を連れていたのか。いや、誰かがではない。おそらく、この事件の真犯人がだ。
その正体は気になるが今はそれよりもするべきことがある。といっても、今の俺には造作もないことだけどね。
揺れる車内から腕を出しこちらに銃口を向けてくる2丁のUZIに向け発泡する。1丁に一発、ちょうど二発だけ。
腕に反動を残して放たれた銃弾は正確に、そのUZIの銃口に飛び込んだ。
パガァンと音が響き9mm弾が内部からUZIを破壊したのがわかる。相変わらず2台のオープンカーは走行を続けているがこれで脅威度は大幅に低下した。
突っ込んでくることもできるだろうが、こちらは装甲済みのバスである。車体重量の差からして対した影響はないだろう。
残るは左側に移った2台。しかしそれもアテナとそろそろ復帰するであろうアリアが止められる。アテナの腕は把握していないがアリアは空中からUziを狙い撃ちして仕留めるほどの技量がある。バスの上から狙い撃つことなど簡単にできるだろう。
俺は角度的にUZIの銃口を狙い撃つことはできないし、俺とアテナの持つベレッタM92の9mm弾の威力では外から完全に破壊することができないかもしれない。
そして、この状況でアリアの火力だけに頼り切るのは分の悪い賭けかもしれない。
それでも俺には確信があった。
アリアの腕と、彼女のガバメントに込められている.45ACP弾ならば確実に接近してくる2機のUZIを破壊しきってくれると言う確信が。
――ガガガガンッ
ガバメントの発砲音と少し遅れた着弾音が俺の予想を覆すことなく、完膚なきまでにUZIを破壊したことを教えてくれた。
流石アリアだ。一発も外すことなく全てUZIの機関部に着弾させたのがヒステリアモードの視力に見て取れた。Sランクの称号は伊達ではない。
これでしばらく当面の脅威は去った。気づけば携帯から流れていた進路を支持する音声も途切れていてバスの無茶な走行も無くなってきている。
この調子ならアリアが今度こそ車体下部の爆弾を解除することができるだろう。
もし不可能だとしても人のいないところまでバスを導いて処理すればいいのだから。最悪の可能性ではあるけれども、そうすれば民間人への被害は少なくなる。このバスに乗っているのは、本来のバスの運転手だった彼を除けば、何時その命を散らしてもおかしくはないと覚悟している武偵のみなのだから。
「アリア!今のうちに爆弾の解除を!」
『わかっー「全員何かに捕まれぇーーーー!!!」
インカムのアリアの叫びを遮って車内に響く武藤の声。
直後に今までとは比べものにならない振動がバスを襲う。
咄嗟に振り返ったヒステリアモードの俺の目に見えたのは、ハンドルを全力できる武藤の姿と、
ものすごいスピードで横の信号から突っ込んでくる、トレーラーヘッドだった。
掴んだつり革のベルトが切れ、車内を真横に吹っ飛ばされて窓ガラスに背中から激突したのを感じて、俺の意識はそこで途切れた。
理子ちゃんかなりプッツンしております。
まさか保護した対象が計画を遅らせて、その上アリアとキンジをくっつけるのを邪魔してくるとは……
これ以上の遅れを許容するほど、そしてできたばかりの友情を優先するほど彼女の自由への憧憬は軽いものではないはず。原作においてアリア以外に対しては甘く、死者が出ないようにと配慮していた彼女だけど今回の件での第一目標はアテナの戦闘不能に切り替わってるんだ。
原作においてキンジがバスにたどり着いた時点で車内の捜索などが全く進んでいなかった点、事件解決がそのままキンジたちに委ねられた点を考えるとバスに高ランクの武偵は乗車していなかったと考えられる……。この小説では晴れの中で事件が起こってるからね……ほぼ間違いないく下級生しか乗ってないはず。そんな中にアテナがいて、知り合いのキンジが事件解決に向けて活動したらどうなる?まず間違いなくアテナも行動するよね。
バスのドアは左側にしかついていなくてキンジを一方にとどめてしまえば、もう一方を担うのはアテナしかいないはず。そのためにクソみたいなコース指示してアリアの復帰妨げたんだから。
それで彼女を誘導したところにトレーラーヘッドをドンッ、と。正直死ぬ可能性も相当あるよ。理子は『武偵拐い』、アリア以外の武偵を始末することに抵抗はあったんだろうけど、逆に言えば目的が優先するなら殺しも厭わないくらいのメンタリティはあるんだろう。今回は散々邪魔された挙句、これ以上の妨害も予想できるってことで完全に切れちゃったんだろうね……
原作でバスジャックの時にバスにとんでもない爆弾しかけてたのと矛盾するんじゃない?て思うかもだけど、だとしたら原作内でも矛盾が起こっちゃう。だから作者としてはホームズならなんとかするだろうっていう歪んだ信頼の裏返しだったんじゃないかって考察。
この作品の理子はバスジャックに現在進行形で関わってるからね……ホームズに邪魔なんかさせない。アテナを潰すのが確定事項だから止まったら爆発する爆弾なんて仕掛けてないよ。そんなことしたらみんな死んじゃって自分が束縛から解放されないから。車体に攻撃しまくってアリアの邪魔したのはそんな理由もあるんだ。
だから、レキが狙撃で爆弾外せるような橋の上にバス誘導したりはしない。ヘリから車体の下狙撃するなんて同じ高度でもない限り不可能だし。それが無いように進行見ながら自分で誘導してたから音声もボーカロイドから変わってる。
事件概要が変わったところの解説というか言い訳というかはこんなところで……
いないと思うけど原作未読の読者はついてこれるのかな。
一応書いておくと、理子はホームズをある条件で始末すると自由になれるっていう契約を負ってるの。その条件がホームズをパートナーごと斃すってやつ。キンジをてっとり早くくっ付けようとしたけど邪魔されてるから元凶を消そうかなっていうのが彼女の思考なんだ。
あと、なんで武藤は晴れの日にバスに乗ってんの?て疑問に対して
武藤くん車輌科なんだから雨の日であってもバス乗る必要なんてないんだよ。なのに原作でバス乗ってたってことはなんらかの理由で車が使えなかったということ。どう考えても車検に引っかかったんだろうね。だって武藤くんだし……
Q.じゃあなんでアテナはバスに乗ってんの?初登校の時乗ってなかったじゃん
お前は二日酔いでバスに乗れるのか?作者は乗れない
彼女はこっちに来たばかりでアシも何もないからねバス利用すんのが普通なんじゃない?もしくは利用しなきゃいけない時間まで理子に構ってたとか
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