tsプロゲーマー配信者なぎちゃん   作:ヲタクフレンズ
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先に前編を、見よう!

あ、ミクちゃん書きました、こんな感じ
【挿絵表示】



はちわめ!後編

 昨夜、SSS社の公式から宣伝してもらった私は、もうこの日の内にチャンネル登録者が5000人を超えて、つおったーもそろそろ5000人が超えそうだ。

 

 いつもなら泡を吹いて倒れ、自称プロゲーマーなぎちゃん、ここで潰える!……ところだけど、初菜に会った今のわたしに数などプレッシャーに足らず!……いや、体は震えているけど。

 

 ともかく、企業公認の公式デモプレイとの事で、わたしは大勢の、本当に大勢の人に見てもらうだろう。

 

 配信準備が完了する。VRシステムの準備もOKだ、わたしはいつでも現実の体を、パソコン上に電子体として存在させる事が出来るようになっている。

 

 疑似人格プログラム、というものがある、機械に感情を与えるプログラムのことだ。散々流行った昔の家庭用ゲームに、人間とアンドロイドを描くゲームがあったが、それが原因か知らないが、この擬似人格プログラムは違法の行為として罰せられるそうだ。

 

 わたしは人間だが、わたしの使うパソコン外部に付いている特別な機器は、これを基にした技術で、わたしをVRに投影するらしい。

 

 エーテル体やらアストラルだとか、オカルトめいた霊的現象を、発展した超科学によって解明。

 

 肉体を再構築し、0と1の世界に入るとかなんとか。

 

 正直、よくわからない。司や初菜ならしっかり理解出来るんだろうけど、わたしは知恵熱で蒸発しちゃいそうになる。

 

 一番こわいのは現実のわたしの体はどうなるんだ?って疑問なんだけど……ま、まあこれ以上考えると怖いからやめよう。

 

 

 深呼吸を一つ。目に映るは8000前後の待機列。

 

 余計なことは考えなくて良い、今まで通りに。たのしむだけだから。

 

 何より初菜が応援してくれた、なら…応えるだけだろ?

 

「ちゃろー!世界初、自称プロゲーマーのなぎちゃんだよー」

 

『ちゃろー!』『VRなぎちゃんと聞いて』『始まりました』『なぎ民が多い』『今までにない人の多さ』『初めまして』『声震えてて草』『うおーパソコンかぁ』『パソコンじゃん』『こりゃ凄い』『今日の服はパーカーですか。好き』『初見』『楽しみじゃ〜』

 

「声震えてないよ!……初めましての方が多いと思うから、改めて自己紹介します……まあ、自称プロゲーマーの配信者としか、言えないんだけどさ」

 

『なんか新鮮』『投げ銭が実装されてない…?』『OFFになってる』『自称?』『まぁプロゲーマー名乗るんならゲーム上手いやろ』『過去アーカイブ見てきました、しゅき』『うおおもう1万人超えた』『お兄ちゃんは嬉しい』『過去最大やな』『緊張大丈夫か?』

 

 …やばい吐きそう。耐えろ耐えろ

 

「投げ銭はごめんね!次の配信からなんだ。わたしだけの配信なら、投げ銭機能は付けるつもりだけど…今回は、そういうわけじゃないからさ?」

 

「まーわたしの事は良いんです!……みんなが見たいのはデモプレイだからね!……まず今回の新作ゲーム、ロストデイメモリーのあらすじでも言いますか。」

 

 説明しよう!ロストデイメモリーとは、SSS社の開発した異世界ちっくなオープンワールドゲームである!

 

 中世ファンタジー風味の世界。文明は停滞を告げ、緩やかな平和が世界に広まる。その世界にプレイヤーは迷い込むのであった。

 

 プレイヤーは現実世界から迷い込んだ『迷い人』だ、あなたはこの迷い込んだ世界で、何をしてもいい。広大な空を羽ばたくように走るのもいい、森林に入り、動物たちと心を通わすのもいい、人間社会に溶け込み、賃金を稼ぐのもいいだろう。

 

 或いは、遠く離れた魔王城に行き、魔王の私兵として志願するのもいい。古びた館にて、吸血鬼の始祖に出会い、共に旅をするのもいい。勇者の末裔に、行商人に、或いは、この世界の謎を解くと言うのは、どうだろうか?

 

 それら全てを壊してもいい、狂った迷い人として、この箱庭をめちゃくちゃにするのも、良い。

 

 あなたがやりたいことを、他でもないあなたが見つけるのだ。

 

 ……と、いうのが公式のあらすじ。でもわたしとしてはこんな印象だった。

 

 サイバーには飽きた?超科学はもう沢山?黒曜石の剣でレールガンを切り裂くのは疲れた?わかりました!そんなあなたにうってつけ!

 

 魔法を拳で叩き!剣を蹴りで破壊し!困難を己の身体で乗り越え!時には動物に癒され!たまには住民と話して!おんなのこと仲良くして!あわよくばちょめちょめしよう!

 

 そんなかんじのワールドオープンゲーム!オンラインはまだ未定!

 

「ロストデイメモリーとは、そんな感じのゲームなのだ!」

 

『草』『草』『えぇ…』『もしかして、あたまわるわるなぎちゃん』『うっそだろ草』『百合百合なぎちゃん』『レズレズなぎちゃん』『でも本当に女の子に迫られたら手を引きそう』『わかる』『プレイヤーの自由に出来るゲーム性が売りだから間違ってはない』『過去にこんな感じのゲームありましたね』『サブクエストだけ進めてメインやってないやつな』

 

「ん、そうそう!DESシリーズみたいな感じ!オンラインゲームじゃないから、みんなで出来ないけど、今後対応していくみたい……でねでね!すっごい綺麗な世界なんだよ!あ、いや、べつに日本が綺麗じゃないとかじゃなくてね?とっても青い世界が広がってるんだ、なんていうのかな、綺麗なんだよ!う〜……言葉じゃ説明しづらいなぁ……」

 

『かわいい』『かわいい』『はやく見せてくれ』『俺にも見せてくれ』『AIに任せっきりで最近外出てねえや…』『日本はほら、輝く光が夜を照らしてるから』『照らし過ぎて目に悪いんや』『3日に一回はレーザー光線の光見えるからな』『住所特定』『北海道はいいぞ〜?』『人はまだ、空を飛べない』『飛行機乗る金ぐらい稼げよ……』

 

「よし、じゃあ早速VRにアクセスしよっか!……なぎ民のみんな、それにそうじゃないみんなも、すこ〜しだけ待ってね」

 

 一度、配信のカメラをシャットアウトする。こうしないと何かエラーが起きた時、怖いからね。

 

 別画面に映っているわたし自身を見つめる、前もって自己投影した自分自身だ、銀色に輝いたシルバーブロンドに、黄金の瞳が相まって神秘性を惹き立てる。

 

 服装は赤のベレー帽とロングパーカーだ、手首に初菜のくれた御守りも付けてる。迷い人設定なら現代風の服でも違和感は……ないとは言えないけどさ。仕方ないじゃん、コスプレ衣装とか無いしさ。

 

 ふとももは見せない、黒のストッキングを履いたからね!これで見えないだろ〜へへへ。

 

 わたしがVR機器にアクセスして、画面の向こう側に入ると、配信から見える画面は一人称視点で見えるわたしの画面…ではなく、AI機能で絶妙にいい感じのアングルで撮ってくれる『配信用ナゲットくん』の画面になる。

 

 これはSSS社から支給してもらった大切なものなので、有り難く使わせて貰います。

 

 ……いや、配信用ナゲットくんってなんだよ、ナゲットくん酷使しすぎだよ、かわいそうだし別のタイプのAI作った方がいいよ。

 

 わたしの周りを酔わないぐらいにぐるぐる回って撮るから、必然的にわたしの顔は、今いる15000人以上の人たちに広まるって事になる。

 

 ……本当は、怖い。このご時世、顔だけでも判別されたら住所特定名前公開の一発KOを食らってもおかしくない、わたしのマンションに他人が来てもおかしくないんだ。

 

 でも、多分それはありえない、わたしは変わった。心がとか、精神じゃなくて、肉体そのものが変異しているのを実感してる。

 

 人は生まれたらまず、全人類管理データベース『ALICE』に個人情報の全てが登録される。このAIに登録されている限り、Aliceにアクセスすれば住民IDやら個人名やら、簡単に抜かれる。

 

 これは国民が自衛の手段の一つとして作られたもので、それがあるから犯罪行為は著しく少ない、無いわけじゃないのは、人間の性なのかもしれないけど。

 

 ともかく、言いたいのはそういう事じゃなくて。

 

 おんなのこに変異して、前の体で無くなったわたしは。

 

 データベースに(・・・・・・・)登録されていない(・・・・・・・・)

 

 だからわたしの存在が認証されることはないし、現実世界の物や通信データから特定しようとしても、NSSマテリアルフィールドに守られているから心配ない。

 

 心配ないけど…それはそれとして、すっごい恥ずかしい。だだだっていち、いちまんごしぇんにんだよぉ!?こわいこわいこわい……わたしはかわいいって自負してるけど、これでぼろくそに言われたらもう立ち直れないよぉ!

 

 うぅ…でもいつまでもこうしちゃいられないんだ、変わらないとだめなんだ。変えていけばきっと……認められるんだ。

 

「VRシステムにアクセス、任意プログラムの設定よし……ふぅ、やるよ。」

 

 ーー擬似電子体総合プログラムを開始します。

 

 ーー肉体と精神の統一を開始します。

 

 ーー電子体へのアクセスを始めます。

 

 ーー適合を完了しました。世界への適合を開始します。

 

 ーーロストデイメモリーへの接続を開始します。

 

 ーー全行程良好、擬似工程クリア。

 

 ーー全行程完了。配信を始めます。

 

 

 ーーお帰りなさい。そして楽しんで下さいませ、凪沙様。

 

 

 始めに見えたのは、雲一つない青天の空。

 

 次に、無骨な四角い小型ロボット、でもそれがどことなく可愛らしい印象を覚える、ナゲットくんが見えた。

 

『うおおおおおお!』『やば…』『がち恋』『かわいい』『かわいい』『かわいい』『美少女すぎる』『ファ!?なんやこれ…ガチ恋してしまう』『もう好きすぎる』『青空よりなぎちゃんが綺麗すぎる…』『すこだ…』『なぎちゃんの寝顔ぺろぺろ』『おめめが可愛すぎる』『うおーーー!好きだーーー!』『俺の妹が可愛すぎる件について』『私の娘が可愛すぎる件について』『わし、この娘の古参なんですわぁ』

 

 賑やかに、沢山にあふれた配信コメントが見えて。

 

「……ああそうか」

 

 わたしは今、VRに接続して、配信をして…この大地で、立って。

 

 立って……?ないや、え、寝顔?寝てたの?15000人以上の人に寝顔を見られた?………う、うう。

 

「うひゃあああ!恥ずかしい!てか、こういう始まり方なの!?街とか行かないんですか?!」

 

『草』『草』『へぇ〜配信画面でもHPとかの概念見れないんか』『リアル基準のゲームなのね』『本人からはどう見えてんだろ』『久しぶりに草木を見たなぁ、綺麗だ』『草木がみたい?群馬においで』『なぎちゃんの方が綺麗だぞ』『ご乱心プロゲーマーなぎちゃん』

 

「よーしとりあえずさ、街から始めようよ!雑いよ!いじめかよ……本当にこの始まり方するの?そこらへん、どう?」

 

『いやぁ……すみません』『初期位置バグってたね』『テストでは一回も無かったんです』『SSS社無能説』『これは無能』『有能無能さん?何か言って』『私の管理下で無いですしー……誠に申し訳有りません』『パパ、失格!』『なんでやろなあ』『困惑するなぎちゃんかわいいし許そ』『いや本当かわいいわ……なんなん』

 

「も〜…ちゃんとなおしてよー?……んー、じゃあ、ゆっくりこの世界を見よっか、ほら!向こうに何か見えるでしょ?あそこまで歩こっ」

 

『向こう…?』『何も見えないが』『見えないぞ』『いや見えないですけど……』『おめめわるわる?』『なぎちゃん、風とか空気とか感じない?』『これはグラフィックって言って良いのか……?』『質感リアルっちゃな〜、モデル場所知りたいわ』『ムーカンチャイらしいよ』『あぁ〜!成る程な!』

 

 え?見えない?おっかしいなあ、確かに遠いと思うけど……見えると思うけどなあ。

 

「ぬぬぬ…風?言われてみれば、自然過ぎて気付かなかった、空気も……ふぅ、うん、いい空気……それじゃあ向こう側に歩くけど、村か街かあったらみんな謝ってよ〜?それじゃあゆっくり行こっか」

 

『何もなかったらおぱんつ見せて』『ナゲットくんにキスして』『ナゲットくんに投げキスして』『寧ろ踏んで』『おにいちゃんって認めて』『ん?今初見の人のコメあったぞ』『顔見てガチ恋余裕でした』『ストッキングすこだ…』『言いたい放題なぎ民』

 

 いや本当だよ……おにいちゃんって認めないし、投げキスなんてしないからな。

 

「それにしても凄い質感…わたしがVR慣れてないだけなのかもしれないけど、そっか……こんなにも変わってたか。懐かしいな」

 

『愁いを帯びた顔も良いどすなあ』『ナゲットくん8割ぐらいなぎちゃん見つめてないか』『需要わかってんじゃん』『最終的にそこ』『可愛過ぎてデモプレイ見てること忘れてた』『これオンラインいつになりそう?』『2回目のデモプレイ次第ですね』『2回目やんの?』『ふぅーん…察した』

 

「本来はランダムの街の宿屋から始まるんだよね、……わたしは草原スタートですが。宿屋の人から色々話を聞けるみたいだよ?わたしは草原だから聞けませんが」

 

『草』『草』『草原生まれのプロゲーマーがいるらしい』『根に持ってて草』『2回目言うのはあかん草』『ごめんね、パパ後で問い詰めに行くからね』『ちょっと!元はと言えばあんたが任せるって言ったからでしょ!』『草』『コメントで争うSSS社員』

 

 ……この人やっぱりわたしのパパじゃないな、かっこよかったのは昨日だけかもしれない。

 

 って、おお?全身が柔らかい体毛で覆われている小型獣……これは。

 

「野うさぎ、か?……ええとね、動物と魔物は別物みたいで、動物は懐いてくるみたいだよ?」

 

「よし、折角だしこの子も連れてこう、旅は道連れ世は情けなのだー!」

 

『かわいい』『スキップして近づくのかわいい』『動作がいちいち可愛いんだ』『デモプレイ見るはずがなぎちゃんを見ていた…?』『伝説の動物、カバはこの世界にもいるのか?』『伝説って?』『ああ!……基本的に過去の文献、今生息している動物は居ます。』『現実で猫アレルギーだけど猫好きだから飼いたい……』『いや、普通にVRの動物育成ゲーやれば良いのでは』

 

「よーしよし、怖く無いぞ、おいで?……わ!こっちきた、かわいい!……撫でてみよ」

 

 動物は好きだ、気ままに生きる姿が、わたしを元気にさせるからだ。……実家で飼ってたわんこは、まだ元気かな。

 

 うさぎを撫でる、ふっふっふっ、わたしの撫でレベルは神を超越しているぜ?

 

「わわ!本物触ったことないけど…すごいもふもふしてるよ!撫でがいがあるなぁ〜こいつ」

 

 擽ったそうにする表情を見てにっこり、もっ〜と欲しい?よーしよし……このままテイムしてやるぜ。

 

『これは…』『ええわぁ』『桃源郷』『すき』『ナゲットくん迫真のカメラ演出』『このナゲットくん優秀過ぎる』『明日死んでも良い…』『自然と笑顔になってるなぎちゃんかわいい』『にこにこなぎちゃんかわいい』『うさぎ、代わってくれないか』『わいもよしよしされたい』

 

「んーよしよし、良い感じに小さいし、頭に乗せれそう……うにゅ、心地いい重さだ!よっしゃうさ吉!付いて来い!」

 

『草』『嫌そうな顔してる…』『うさ吉は無いよ、なぎちゃん』『ネーミングセンス×』『ださださネーミング』『シンプルでいいと思う』『得点稼ぎするな』『動物の表情すごいね』

 

「……ほら!やっぱり見えてきた!建物見えるでしょ?ほらほら!わたしの言った通りじゃんか〜〜!みんな、ごめんなさいは?」

 

『まじかよ』『まじじゃん』『ごめんなさい』『許して』『なぎちゃんに見惚れて見えない』『わかる』『わかる』『それはそうとおぱんつは?』『千里眼発動!…縞パンだな』『おまえ、有能』『あ、本来はその街で始まりますね』

 

 ……ノーコメントです。

 

「疑似人格プログラムは使ってないから、どれだけ精密な演算組んでるのかわたしが直々に確かめに行ってやろーう、門番さんに話しかけるよーい」

 

『まじ?』『出来るのか?』『話せるのか?』『今までゲームチャットすら禁止してたのに?』『なぎちゃんに試練が襲いかかる』『AI相手にはイケそうだけど』『いうて人間みたいなもんやん、現実と違ってさ』『初対話ですね』

 

 ……まあ相手がAIならそんな怖気付きませんよ、さすがにね?

 

 いや、ちょっと盛ったよ、少し怖いよ、相手がAIでも、この世界で生きている事には変わりないんだから。

 

 でも、初菜と話して、思った事があるんだ。だから。

 

「こんにちは、門番さん。素敵な青空ですね」

 

「おや、これは麗しい御嬢さんだ、珍しい服装をしているが、それは何方で?似合っていてとても素敵だよ」

 

 ……や、やば。思ったよりイケメン過ぎる対応なんだけど、ちょっと顔熱くなりましたワヨ??

 

『顔少し赤いやん』『照れ照れなぎちゃん』『あれは照れるわ』『ホモいるぞ』『イケメン!イケメンだ!うぐぐゴゴゴゴゴ』『ゴーレムするな』『スムーズな会話だなぁ』『これで人格プログラム組んで無いんか』『門の奥に見える街が素敵』

 

「ま、迷い人って言えばわかるかな、この服装の理由もそうなんだけど」

 

「おや!……なるほど、ようこそフランダールの街へ。歓迎しますよ、御嬢さん。」

 

 う、うおお…まるで騎士みたいだあ、ていうか騎士なんだろうか?……うーん、おんなのこが乙女ゲーをする理由も理解出来なくは無いかもしれないなあ。

 

 ……気になってきた、今度の配信やろうかな。う、うん……やめとこ。一人のとき、こっそり、こっ〜そりやってみよう。

 

「うん。それでね?出来ればこの世界についての簡単な知識とか、うーんと、後はフランダールの街…?で良いかな、についての事とか、教えてくれないかな?」

 

「それは、僕に?ふむ……分かった、たまには世間話に花を添えるのも、悪くは無いね、御嬢さん少し待っててくれるかい?」

 

「おっけー。…………よ、よし、ひととはなせたぞ!わ、わたし成長してる……どもらなかったし、あんまり緊張しなかった!ど、どうだなぎ民達!みたか!見直したか?!」

 

『かわいい』『かわいい』『かわいい』『見直した』『ガッツポーズなぎちゃん』『これはUC流れますわ』『成長したなぁ…嬉しいぜ』『うーん可愛過ぎる…』『お持ち帰りィ!』

 

「あ、ナゲットくん、今配信して何分ぐらいかな……もう1時間超えてる?そっか、取り敢えずキリのいい所までやって良いって許可貰ってるから、そうだなぁ。みんな戦闘とか見たいよね?最後はそれで終わろう」

 

『いかないで』『いかないで』『もっと見せて』『アーカイブ残る?』『この時間に終わりがあるのか……?』『そんなのって…無いよ…』『あたまがまっしろになりそうだ』『狂いそう』

 

「ま、まだ行かないよ!気持ちが早まり過ぎっ!あ、アーカイブは残して良いって!……それにしても良い空気だなぁ……大昔の地球も、こんな空気だったのかな?」

 

「おや、誰かと話してたかい?」

 

「あ、いいえ!その〜……これから来るかもしれない迷い人達に、この世界を見せてたんだ」

 

なるほど、と頷く門番さんはいつの間にか鎧を外していて、代わりに門番として連れてきたであろう人が、わたしの頭上を見てる……?何かついてるかな。

 

「野うさぎがなぜ頭の上に……?」

 

「野うさぎじゃなくてうさ吉です。……懐かれちゃったから?連れてきた」

 

「ま、まぁ何も聞きませんよ。……じゃあエリック、案内よろしくな」

 

 ぶふっーーーー!

 

『エリック!?』『エリック?!』『草』『腹がよじれる』『なぎちゃんが吹き出してうさ吉が地面に落ちたぞ』『こんなにかっこいいわけないだろ!』『実はこのイケメン無能では?』『エリック草』『え、どゆこと?』『後でアーカイブ貼るから見ろ』『その名前被っちゃあもう笑うでしょうよ』『居ない所で笑われるエリック』『悲しいです……悲しい』『ゲームの腕磨こうな?』

 

 そんなの卑怯だって……ああごめんねうさ吉、そんなうらめしい目でみないで、ほーら撫でてあげよう。よしよし。

 

「げほっ、んンッ…ご、ごめんね?その、知り合いの名前と同じでさ?」

 

「ははは、気にしないよ。……それより、実際に見て回った方が良いだろう。付いてきて、この街を案内するよ」

 

 大人しく彼の後ろに着く、……ごめん、名前で表記すると笑っちゃうから、ふ…ふふっ。

 

 世間話……って言っても、こっちが質問するだけなんだけど、なぎ民のコメントとかでの質問とかもしつつ、煉瓦造りのアートセンスを感じさせる建物は中世ヨーロッパのようで。

 

 なるほど、緩やかな平和とはあらすじ通りのようで。この街は構造的に襲われる想定をしていないんだろうな。

 

「魔物とか、襲われるかもって考えなかったりする?」

 

「良い着眼点だね……この街は遠い南の巫女様が結界札で護ってくれてるんだ、絶対的に強い結界で、みんな安心してるのさ」

 

『つまり安置か』『セーフルームやな』『メタやめろ』『まぁリスポーンしてくる街が魔物に襲われてたらちょっと…』『巫女さんとな』『巫女…なぎちゃん……よっしゃ描いたる!』『絵師、有能!』『巫女巫女なぎちゃん?』『みたいですなあ』

 

「それに疑問に思った事はないの?もしかしたら、その効力がきれちゃうかもよ?」

 

「その時は君主から授かった騎士の称号により、僕がこの街を死力を尽くして守るだけさ」

 

 わぁ〜〜!本物の騎士みたいでかっこいい!言ってみてぇ……この先は通さねえぜ、わたしがいるからなァ!って言ってみたい〜〜!

 

『うーんかっこいい』『こんな人間になぎ民もなるんやで』『なぎちゃんの為なら喜んで死ねる』『俺も』『私も』『わいも』『オレ達なぎ民なぎちゃんお守り隊』『ブラックの色は俺が貰う』『うわ!戦隊モノの裏切る奴だ!』

 

「……いやいや、わたしのためにそんなに必死にならないで良いから、て、照れるじゃないかよぉ……むう」

 

 一通りの説明をしてもらい、これはデモプレイ的にも大満足な結果だと満足する。

 

 そろそろ、配信も終わらせないといけない、キリがいい所までやっていいって言われたけど、だらだらとやるのは違うから。

 

「ありがとうございます!……所で、この辺りで魔物が生息している所って、あるかな?」

 

「ふむ、それは……あるにはありますが、レディ一人で行かせたくはないな」

 

「ならエスコートしてよ、……だめ?」

 

「まさか、喜んで」

 

『なぎちゃん思った以上に話せるやん!』『引きこもりゲーマーじゃなかったのか!?』『テンション上がるとああなる』『現実がダメでVRはOKなのか』『アゲアゲなぎちゃん』『なぎちゃんと話したい……』『VRって実体のスペックに依存するやろ?なぎちゃん魔物倒せるんか……?』『4キロぐらい離れてる街まで休みなしに動いて息切れ一つない。後はわかるな?』『まじかよ』

 

「あの森林の中にゴブリンの住処が……正直、僕としては殺めるのはしたくない」

 

「ん?なんで?魔物でしょ?」

 

「ふむ……迷い人達とはそこに認識の差があるのですね、確かに彼らは魔から生み出された、謂わば生物にとっての癌だ、ですが……統治する魔王が現れて以来、知性を持った。彼らも一つの命として、この世界に認められたという事だと、僕は思う。」

 

『面白い設定やん』『普通に良ゲーでは?』『将来的にオンライン対応してなぎちゃんと遊べるならやるぞ』『オンラインの場合どうなるん?』『それは今後のお楽しみという事で』『はーい。』『おまえ素直か、かわいいじゃん』『なぎ民に萌えるなぎ民、うーん?』

 

「素敵な考え……そうだね、キミ達も生きてるんだ。よーしなら殺しはなしだ!ちょっとしたじゃれ合いだ!」

 

 彼と話しているうちに、森林に入り、住処らしきものが見えてきた……って、うおお。すげえ!

 

「普通に集落じゃんか!それにこの人達がゴブリン?!なんだか……」

 

『ドワーフやん』『ドワーフやな』『ドワーフやねえ』『想像してたのと違うねえ』『ほんと平和な世界って感じ』『洞窟の家かぁ〜』『想像より発展してんね』『この平和を壊すことも出来る…ってなんか罪悪感が』『正直平和が一番だぜ?だからなぎちゃんの配信見てるんだし』『それはわかる』

 

「おヤ、人間のお二人。ナニカ用でしょうか?」

 

「け、けいご!ごごご丁寧にどうも……わわっ、えっとね、この方に住処を教えてもらってね?」

 

「決闘がしたいそうでね。君達、そういうの好きだろ?」

 

「ほオ!それはそれは嬉しいですね。最近は退屈してタものですかラ」

 

『なんて理性的』『俺より理性的』『理性を磨こうな?』『ゴブリンとは?』『彼等ですが?』『うーんなぎちゃんゆらゆら動いて本当にかわいい』『ゆらゆらなぎちゃん』『かわいい』『かわいい』『決闘かあ』

 

「ではコちらに、専用の闘技場へ案内しまシょう」

 

「は~い。……ふふ、なぎ民のみんなに見せてやろ〜う!このわたしの、華麗な戦闘を!ナゲットくん!ちゃんと映せよ〜?」

 

『フラグ』『フラグ』『武器とかどうすんのかな』『不要だ!』『肉体言語で語り合おうぜ』『徒手空拳とな?!』『ニンジャでしょ』『ナゲットくん親指立てたぞ』『このナゲットくん絶対感情あるって』『なぎちゃんのかわいいの余り意思が…?』

 

「武器は、好みまセんかな?」

 

「ん〜無しで!なんだかやり過ぎてしまいそうだからね」

 

「ほっホ!なんと勇敢な…それでいて自信に満ちている……余程良い事があったようデは?」

 

 ……え?う、嘘、そんなことまで解るの?ほんとうに擬似人格プログラムは使ってないんだよね?

 

 少しだけ顔が青くなったのを、このゴブリンは見逃さなかったようで。

 

「過ぎた言葉でしたカな……では、僭越ながら私ガお相手致しましょウ」

 

「……よし。切り替えた、言っておくけど手加減できないよ」

 

『うおおおおおお!』『開戦じゃ〜〜!』『肉弾戦なんて久しぶりに見るわ』『最近レーザー銃とプラズマカノンしか撃ってねえしなぁ』『どこの兵士ですか?』『あ、黒曜石の剣また作らんと』『お前一昨日のか?なあ俺のカツラしらねえ?』『知らねえよ草』『覇気が見える…見える…』

 

 お互いが構えを取り、それが始まりの合図を告げる。

 

 ……ああ、久しぶりだ、久しぶりに体を動かせる。

 

「っふ!」

 

「ヌッ……ゥ!」

 

 剛の構え、一撃の重い打撃は、容赦無く防御を崩す。だけど決まりが悪い、防がれたか。

 

 研ぎ澄ました瞳は、時間が止まったかのように次の一手を予測出来る。右の拳。大丈夫、受け流せる。

 

 パワーも上、早さもこっちが上、ただこの違和感と。第六感からくる直感は……技量の高さか。

 

「存外、巧いじゃないか……久しぶりだぜ。型決まりしなかったのは」

 

「ぐっ……フふ、それだけですヨ、あなたの力と速さには及ばない」

 

『うおおおおおお!』『興奮する』『つっよ』『正規の格闘術じゃないな』『はえーなー』『これ俺らでも出来る?』『うーん……?』『おぱんつ見えないお!』『かなしい』『難しいかな』『やりがいあるやん……えずくじゃないか……』『あ、プロハンニキだ』

 

「次で終わらせるよ」

 

「では、耐え抜いてご覧にいレようか」

 

 事格闘戦に、搦め手はいらない。単純な力こそ全てだと、わたしは教わった。

 

 腕を振る、ラリアットだ。

 

 流石に読めたか。避けられる、解ってた。なら動く前に蹴る。

 

 溝に入る前に飛んだ。良いのか?その間合いは対応出来るぞ。

 

「なんと…………ガッ!」

 

 関節を伸ばし(・・・)蹴る、流石にリアルでやると痛めるが、ここはVR。昔編み出した、わたしなりの……いわゆる奥義。

 

『ひぇ〜』『くそつよなぎちゃん』『お?この動き…』『うーん、強い!』『よわよわなぎちゃんは?』『そんなのいないぞ』『これはプロゲーマー』『すごすご身体スペック』『普通に稽古つけて貰いたいんだが、組んず解れつ』『おまえ、屋上』

 

 確かな高揚感と、疑問。わたしはこんなに力はなかったし速くない、七年間の運動不足で体力も無かったはずだ。

 

「ム……私では力不足だっタようで」

 

「え……?あ、ああいや、そんなんじゃないよ!とっても有意義でした、ありがとう!」

 

「いやあ、美しいだけで無くお強いとは、これが迷い人……僕も稽古に励まねばならないな」

 

『なぎちゃんと一緒にするな』『なぎちゃんを基準にされたぞ』『おいおい勘違いされたわ』『なぎちゃんより、強い男になりに行く』『草』『銃に頼る時代は終わりだ』『今夜河川敷で待ってる』『なぎ民、修行してくるってよ』

 

 ……面白いから否定しないでおこ〜〜っと。

 

「ふう……今日はありがとう二人とも!楽しかった!……迷い人にも色んな人がいるんだ、だから、よかったら他の人にも……優しくして欲しい」

 

「勿論だトも、君はもう友人ダ」

 

「御嬢さん、名前を聞いても?」

 

「私はなぎちゃん!自称プロゲーマーのなぎちゃんだー!」

 

 企業案件の、久しぶりのVR。それはわたしの大きく成長させる一歩で、ただただこの嬉しさを、楽しさを、みんなに伝えられたらそれは、素敵な事だよね。

 

「街まで送るよ」

 

「ううん、ここで良い……もうそろそろ戻らないと」

 

「ふむ……そうか。では、創造主に伝えてくれるかな、感謝を。僕を、エリック=スターダストを生み出した事に、感謝を」

 

「う、うん……」

 

『ダメだ…笑うな…ッ』『耐えろ…ッ!耐えろ…ッ!』『まだだ…ッ!まだだ…ッ!』『なぎ民のコメでもうダメ』『感謝を(イケボ)』『腹痛い腹痛い助けて』『本当に悲しいの、わかります?』『一緒にゲーム練習しような?』『一周回って有能だわ』

 

 よ、よし、行った?行ったな?もう堪えなくて良いな?良いね?いいよね?……かっこいいのに笑っちゃうよあんなの〜〜!

 

「よーし、おまえもだぞうさ吉……う、そんな寂しそうな目すんなよ、また会えるから。な?」

 

「ってわわ!胸に飛び込むな胸に!も〜〜……」

 

『サービスショット』『ありがとうございます!』『ナゲットくん!もっと下!下!』『下だって!下!』『あーうさぎになりてえ』『なぎちゃんに飼われてえ』『好きです』『鼻血が抑えられない』『うさ吉、ナイス!』

 

「は〜、楽しかったね〜、長くなったけど、最後まで見てくれたかな?見てくれたら、嬉しいです」

 

「じゃあ…そろそろ現実に戻ろうかな。ナゲットくん!ありがとうね、褒めてやろう」

 

『荒ぶるカメラ』『このナゲットくん絶対意思芽生えてるって!』『喋り出してもおかしくない』『ワレ。なぎちゃん。スキナリ』『いやそうはならんやろ』『実際なんか加工した?』『何もしてないです。怖い』『草』『草』

 

「じゃあ、一旦配信止めるよ〜?ちょっと待っててねなぎ民達」

 

 ……ああでも、やっぱり寂しさはあるな。

 

 もし、もう一回この世界に来た時は、なぎ民達と遊びたい。初菜と……ミクちゃんと一緒に冒険したい。

 

 司も呼ぼう!引きずってでも連れて来てやる!……管理人さんとも、出来たら良いな。

 

「ありがとう……」

 

 誰に向けてでもなく、零れ落ちた言葉と共に。

 

 

 ーーこちらこそ、凪沙様。

 

 私の体は現実へと帰還した。

 

 

 

 

「録画終了っと」

 

 最大視聴者数はなんと、3万人を超えていたみたいで、一周回って冷静になってきた。……チャンネル登録者数とつおったー+のフォローが止まらない、これが……大企業の力ということか。

 

 ソレスタルビーイングさんには本当に感謝しないとな、なんだか本当に……ううん、違う違う!あんな有能無能、パパって認めないんだからっ!

 

 ……あ、噂をすればなんとやら、メールが来てる。

 

『なぎちゃん、パパは嬉しい。

大成功ですね。本当に嬉しい限りです。そしてありがとうございました。楽しそうに、心から楽しむなぎちゃんを見て、こちらにも楽しさ伝わって来ます。今回の配信で本社も火が付きました、久々に大当たりのゲームが作れそうです。

今回のなぎちゃんの配信で、救われた人は沢山いると思います。自信を持って下さい、貴女は人の人生を明るく出来る。夜に輝く月のような人です……少し臭い事を言いました、今回はデモプレイお疲れ様でした。再度、ありがとうございました。

なぎちゃんのパパより』

 

 ……だからパパじゃないてば、もう……卑怯だよそういうの。

 

 ……電話だ、もしかして、司?

 

『凪沙、おめでとう』

 

「ッ………う、うん!うん!」

 

『これだけの事が出来たんだ……もう何も、恐れなくて良い』

 

「うん……うん」

 

『きっと凪沙の家族も、見直してくれる。凪沙、おめでとう』

 

 涙は、出したくない。親友の前だもん、見栄ぐらい張りたいんだ。

 

「ありがとう……司、司のおかげだよ、司が居てくれなかったら、言ってくれなかったら、何にも出来なかった。ありがとうはこっちの台詞だってーの……ばか」

 

『ハハッ!まーな、俺様を敬え敬え!……そう遠くない日に休みが取れそうだ、そっちに顔出す。その時に、色々話そうぜ』

 

「それは……っ、そう、だね。うん……いっぱい話そう?」

 

『おう、それじゃーな。……ああ、言い忘れてた、管理人さんもおめでとうってよ、近いうち祝いに来るって、そんじゃ』

 

 ……ってええ!?く、来るの?!家に!?ま、まあ、うん……管理人さんとも、もっと話したいし、仲良くなりたいから。い、良いけどさ?

 

『ピンポーン……先輩?大成功のお祝いにケーキ作りましたよ、良ければどうですか?』

 

「……ふふっ、今日はフルコースだなあ」

 

 涙を拭く。正直、全然拭けている気がしないんだけど。

 

 ああ……本当に。

 

「今開けるよ〜〜!」

 

 生きていて良かった(ほんとうに幸せ)って、そう思った。




深くは語りません。ここまでプロローグ、第1部終了です。

まずここまで読んでくれて本当に嬉しいです。感想評価、誤字報告等にありがとうございます!なぎ民がいるから頑張れた、感謝を。

当初はここで打ち切りENDで終わって、自画自賛して終わってたんだけど……まだ書くかなーやっぱ。

でも3日ぐらい休ませてくれ?




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