そうだエロ動画研究部をつくろう   作:しまばら

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Yシャツは破くもの

 僕はどちらかと言うと喧騒より静寂を好む男だ。理由はない。なんかそっちの方がかっこいいからだ。コーヒーの微糖と無糖どちらが好きかと問われて無糖と答えた時のニュアンスに近いものがある。静寂で無糖な男。めっちゃかっこいい。

 

 突然だが今の僕の状況を整理してみる。右手には微糖のコーヒー。辺りは喧騒につつまれている。これはだめだ。かっこ悪い。微糖を飲んでる時点で僕のかっこよさは2割引きだ。でも自分で買ったから後悔はない。やっぱ微糖買っちゃうよね。無糖初めて買ったとき吐いたもん。

 

 しかしこの喧騒。一体何事だろう。コーヒーを口の中で転がし目を瞑って過ごす僕の休み時間を妨害されかねない程の喧騒だ。仕方ない、目を開けるか。

 

 なんと、男女が抱き合っているではないか。うらやましい。もしかしたら次の時間の保健体育の予習をしているのかもしれない。よし、僕も隣の席のサエコ嬢と一緒に保健体育の予習をしよう!

 

 グーだった。じゃんけんの話ではない。グーで殴られたと言うことだ。

 

 頬をさすりながらサエコ嬢に現在の状況を聞いてみると事のあらましを話してくれた。どうやら抱き合ってる男女は先ほど男の方が告白をして、女子がokを出し今に至ると言うことらしい。うらやましい。

 

「無糖だったら今頃サエコ嬢は僕の彼女になっていたのにな」

 

 寝言は寝て言えと、サエコ嬢は言っている。僕は寝言は起きて言うタイプだからそれは無理だと思う。うん、サエコ嬢とは馬が合わないな。僕はそう思った。

 

 

 

 

 

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[9月18日:空き教室:放課後]

 

「登よ。俺は嘆いている。ここ最近の校内の乱れ。これはいじょうだ」

 

「僕も思うところはある。今日なんて横でいきなり告白が行われていた」

 

 場所は放課後の空き教室。いるのは冴えない男二人。

 

 ここで自己紹介を挟もう。僕の名前は壁山登。超絶イケメン男子高校生だ。そして、こいつは僕の隣のクラスに在籍している増田盆吉(ますだ ぼんきち)。通称ボンチ。たまにチンポって呼ぶ。主に僕が。

 

「しかし文化祭終わりのこの時期には仕方のない事かもしれない」

 

 ボンチは語る。

 

「一つの目標に向け、クラスが団結し作り上げる。この過程で同性は友情、異性は愛情に類似した関係を構築するのは避けられないことであろう」

 

「でも僕のクラスではもう5件目だよ。ボンチの言う通りいじょうだよ」

 

「お前は若いな。元来祭りごとは男女の仲を急速に進展させる。いわば着火剤。そして、男女の仲とは何か刺激があればすぐに爆発してしまうニトログリセリンのようなもの。この二つが合わされば何が起こるかわかるか?」

 

「え、爆発?」

 

「そうだ。そして俺たちはその爆発に巻き込まれた哀れな被害者だ。わかるか!このままでは俺たちは爆死してしまう。なにか策を講じねば…」

 

 ぶつぶつとボンチが呟いている。確かにこのまま告白のバーゲンセールが続けば僕は死ぬかもしれない。精神的に。

 

「よし、俺達も爆発するぞ」

 

 いきなりボンチが壊れた。いや、元から壊れていたか。

 

「ボンチ、保健室に一人で行けるかい?僕もついていくよ」

 

「違うわ、ドアホ」

 

 怒られた。解せん。

 

「じゃあ何すんのさ?まさか、彼女を作るとかじゃないよね。僕たちじゃ神羅万象がひっくり返っても無理だよ」

 

「はやまるな。いいかよおく聞け、若人よ。青春の形は一つではない。奴らがラブラブカップル青春パワーで俺たちを殺しに来ているなら、俺たちは俺たちの青春で俺たちの安寧を取り戻す」

 

「つまり?」

 

「…部活さ」

 

 

 

 

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 部活って青春だよね。僕は中学に入るまでそう思っていた。汗とか涙とか友情とか、部活に入ればその他ひっくるめて全てが手に入ると思っていた。しかし、現実は時に無情。いや常に無情であった。中学になってノリでテニス部に入部した僕は現実を知った。部内の派閥、交代制なのに毎日やってる後片づけ、どうしようもない実力差、極めつけは顧問から「やめた方がいいぞ」と退学勧告。泣いた、泣きに泣いた12の夜であった。バイク盗みそう。

 

 そんなことがあったので僕は部活に忌避感があった。

 

「部活?やめた方がいい思うな。部活なんて百害あって一利なし。高校生活と言う有限な時間を無作為に葬る苦痛の儀式だと僕は思うよ」

 

「まぁ待て。お前の言いたいこともよくわかる。かつては俺も部活で辛酸を舐めた身だ。だがしかし、よく聞け。誰が今ある部活に入部すると言った?」

 

「え?だって部活ってそういうもんじゃ…はっ」

 

 まさか…つくるのか!

 

「そう、俺たちの手で一から作る。新たな部をクリエイティブする。そして失った青春を取り戻す!それこそが俺の野望の全容だ!理解したか?」

 

「ああ、すごい!すごいよ!チンポ!」

 

「お前は絶対入れん」

 

「嘘だよボンチ。でもその手があったかって感じだよ!」

 

 いつのまにか僕は常識に捕らわれたいたのかもしれない。部活と言えばそこにあるもの。学校に備わっているものって感覚だった。でも違う、ボンチの言った部活とはまっさらな無地のキャンパスに絵の具をぶちまけるようなもの。いわば画家。僕たちは画家だ。いや、もっと極端に考えれば天地を想像すると言っても過言ではない。つまり僕たちは神。天地創造万物の創造主。ああ、いい響きだ…。

 

「神ボンチよ。我々はどのように天地を想像していこうか」

 

「大丈夫か?保健室ならそこ曲がって右だぞ」

 

 ついさっき僕が言ったことをそのまま言われた気がしたが気にしない。何故なら僕は神だから!

 

「よしチンポ!ちょっと走ってくるわ!」

 

 いまなら42.195kmも通学路と同じぐらいの感覚で走れそうだ。あぁ、これが僕の高校生活第一歩目なんだ。

 

「おい、ふざけんな。って本当に大丈夫か?待て待て、おい!…本当に行きやがった」

 

 風が上半身を撫でている。もっと風を感じたい!こんな布切れ邪魔だ!

 

うをおおおおお  びりばりびりばり  ※Yシャツを破っている音

 

 あとで聞いた話だが僕のこの珍走は校舎を3周回った後先生に取り押さえられて止まったらしい。

 




続かない
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