機動戦士ガンダムSEED 永遠に飛翔する螺旋の翼   作:ファルクラム

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PHASE-02「永遠に羽ばたく翼」

 

 

 

 

1

 

 

 

 

 

 閃光が漆黒の空間を迸る。

 

 命中を受けたシャトルは、虚空に爆炎の花を咲かせた。

 

 直前、辛うじて脱出する事に成功した2機の機体は、シャトルが上げる炎を背に受けながら、各々迎撃の構えを見せている。

 

 正体不明機の接近を探知した時点で、ヒカルとアステルはシャトルを捨てて発進を決意。迎え撃つ事に決めたのだ。

 

 移動する為の足が無くなってしまったが仕方がない。ここは命あっての物だねと思うべきだろう。

 

「全方位から来るぞッ ザクに、グフ、ゲルググが多数!!」

《こっちもだ。随分といやがるな》

 

 舌打ち交じりに言葉を交わす、ヒカルとアステル。どうやら待ち伏せされていたのは確実であるらしい。

 

 ジェガンとストームアーテルは、互いの背中を守るように布陣。武器を構えて迎え撃つ体勢を取る。

 

《来るぞ!!》

 

 アステルが叫んだ瞬間、

 

 デブリの陰から複数のザフト機が飛び出してきた。

 

 先頭を進んで来たブレイズ・ウィザード装備のザクが、ストームアーテルのレーヴァテインを浴びて吹き飛ぶ。

 

 更に、ヒカルのジェガンが2丁のビームライフルショーティを向けると、速射に近い射撃で近付こうとするグフ・イグナイテッドを撃ち抜いていく。その全てが、狙うのは手足や頭部である。

 

 一級の戦闘能力を誇る2人は、ザフト軍の攻撃を全く寄せ付けない。たちまち、周囲には残骸と爆炎が広がっていく。

 

 だが、今回は数が多かった。

 

 デブリ内で視界があまり効かないと言う事も手伝い、敵機は次々と距離を詰めてくる。相手の姿を視認した時には、既に至近距離まで迫られている事が常である。

 

 たちまち射撃戦では対応が難しくなってしまう。視認してから照準を合わせていたのでは間に合わないのだ。

 

 アステルはレーヴァテインを対艦刀モードにすると、ビームトマホークを振るうザクを、胴斬りで返り討ちにしてしまう。

 

 ヒカルも2本のフラガラッハ対艦刀を抜き放つと、近付いてきたゲルググ・ヴェステージが突き出したビームサーベルを回避、相手の両腕を切断して戦闘力を奪う。

 

 そのゲルググの背後から、3機のザクがビーム突撃銃を放ちながら向かってくるのが見えた。

 

 連射によって放たれる光弾。

 

 その攻撃を、ヒカルはその場から飛びのいて回避すると同時に、彼等の鼻っ面にグレネードランチャーを叩きこむ。

 

 爆発による目くらまし。

 

 一瞬、視界を奪われたザクのパイロット達は、その場に立ち尽くして動きを止める。

 

 その隙に距離を詰めたヒカルは、両手のフラガラッハを振るってザクの戦闘力を奪う。

 

 決して命を奪うような戦い方はしない。

 

 それは、不殺と言う戦い方を貫いた父への憧れであると同時に、自分自身への戒めと誓いでもある。

 

 以前、ヒカルはこの誓いを忘れ、ユニウス教団の聖女に殺す気で挑みかかって行った。

 

 しかし、その結果は無残な物であった。良い兄貴分だったミシェル・フラガを死なせ、その仇を討てないばかりか、一矢すら報いる事ができずに返り討ちに遭ってしまった。

 

 だから、誰に何を言われようがヒカルはこのやり方を改める気は無い。

 

 戦場で不殺を行うと言う事は、生き残った敵の想いや憎しみを、丸ごと背負う事を意味している。それがいかに困難で、難しい道である事は語るまでも無い。

 

 だが、ヒカルはやり遂げると決めた。

 

 戦場で人を殺す事が覚悟なら、人を殺さない事もまた覚悟だった。

 

 接近してきたグフが、スレイヤーウィップをジェガンに向けて伸ばしてくる。

 

 その攻撃をヒカルは、機体を上昇させて回避。逆に抜き放ったビームライフルショーティで、相手の右腕を撃ち抜いて撃墜する。

 

 ジェガンは良い機体だ。乗ってみてそれが良く判る。複数の敵機に囲まれながらも、戦闘を優勢に進めている事から考えても間違いない。

 

 無論、曲がりなりにも特機であったセレスティには様々な面で劣っているが、単純な量産機としては、他と一線を画する高性能振りと言って良かった。

 

 今更ながら、北米統一戦線は随分と贅沢な機体を使っていたのだと感心してしまう。

 

 1機のゲルググの頭部を斬り飛ばし戦闘力を奪ったところで、ストームアーテルが近付いて来るのが見えた。

 

《どうやら、俺達は完全に嵌められたようだ》

「みたいだな」

 

 アステルからの声に短く答えながら、ヒカルは打開策を頭の中で模索する。

 

 既に、周囲の宙域は十重二十重に囲まれている事だろう。脱出は容易ではないはず。しかもこちらはシャトルまで失っているのだ。

 

 状況は、いよいよ予断を許されなくなりつつある。

 

 そして、どうやら考えている時間すら、敵は与えてくれない様子だった。

 

 デブリの陰から、更なる機体が飛び出してくるのが見える。しかも、

 

「今度はハウンドドーガかよッ!?」

 

 ザフトの新型の出現に、緊張感は否応なく高まる。

 

 ジン以来の伝統とも言うべき重厚な機影を光学映像でとらえると同時に、ヒカルとアステルは同時に散開した。

 

 一方、ザフト軍の増援部隊を指揮するディジー・ジュールの目にも、散開する2機の姿ははっきりと映っていた。

 

「目標確認。北米統一戦線の残党。これより、殲滅を開始します!!」

 

 言い放つと同時に、ディジーは部隊の先頭に立って突撃を開始した。

 

 北米紛争の終結から2年が経過し、ディジーの立場も大きく変わっていた。今ではザフト軍で一個部隊を率いる隊長職である。

 

 大した出世と言えるだろう。

 

 とは言え、それを素直に喜べないでいる自分がいる事に、ディジーは戸惑いを隠せないでいた。

 

 あの頃共に戦ったジェイク・エルスマンとノルト・アマルフィとは、それぞれ別の部隊に配属されてしまった。

 

 そして、当時の隊長だったルイン・シェフィールドは、五大湖攻防戦における味方軍壊滅の責任を問われ更迭されてしまった。

 

 理不尽だと思う。あの状況ではどう戦ってもザフト軍に勝機は無く、むしろオーブ軍の北米上陸まで戦線を保つ事ができたルインの功績は大きいはず。称えられこそすれ、罰せられる言われは無いはず。

 

 しかしカーディナル戦役以前からの軍人であり、クライン派寄りの思想を持つルインの事をプラントトップは以前から快く思っておらず、それが結果的にマイナスに作用してしまっていた。

 

 ザフトは変わってしまった。

 

 否、変わったのはプラントが、と言うべきかもしれない。

 

 グルック派がプラントのトップを独占し、保安局の権限強化、更には議長親衛隊であるディバイン・セイバーズの設置に伴い、国防軍であるザフトの権限は大幅に縮小されてしまった。

 

 同時にクライン派ザフト軍人の殆どが放逐か閑職への移動となり、軍内もまた、グルック派で統一されつつある。

 

 クライン派軍人を父に持つディジーやジェイクが、未だに軍に留まり続けているのが不思議なくらいだった。

 

 とは言え状況がどうあれ、任務に手を抜くつもりはディジーにはない。

 

 しかも相手がかつて北米を混乱に陥れた北米統一戦線の残党と来れば、願っても無い状況であると言えた。

 

 突撃銃を撃ちながら接近するハウンドドーガ。

 

 しかし次の瞬間、

 

 ストームアーテルが、対艦刀モードのレーヴァテインを振るってハウンドドーガを袈裟懸けに斬り捨てる。

 

 更にアステルは刀を返すと、別の1機を胴切りにして撃破した。

 

 一方のヒカルはと言えば、ビームライフルショーティで敵機を牽制しつつ、着実に相手の戦闘力を奪っていく。

 

 通常のビームライフルよりも銃身が短く、射程も短いビームライフルショーティだが、反面、取り回しやすさにおいては抜群であり、奇襲を掛けようとデブリの陰から出て来る敵機にも十分対応できる。

 

 だが、それでも全てを防げるものではない。

 

 デブリの陰から次々と姿を現す敵を前に、ヒカルは後退しながら応戦する、と言う行為を繰り返す。

 

 アステルのストームアーテルとも、徐々に引き離されつつあった。

 

 そこへ、スラッシュウィザードを装備した青いハウンドドーガが、ビームトマホークを手に斬り掛かってくる。

 

「北米統一戦線のテロリストが、今さらノコノコと!!」

 

 ディジーは叫びながらトマホークを振るう。

 

 対してヒカルは、舌打ちしながら後退して斧の一撃を回避。同時にフラガラッハ対艦刀を抜き放つ。

 

「速いッ エース機か!?」

 

 ヒカルは叫びながら、ハウンドドーガの追撃を振り切り、ジェガンの両手に装備した双剣を構える。

 

 そこへ、ハウンドドーガが斧を構えて斬り込む。

 

 交錯する両者。

 

 ジェガンの剣はハウンドドーガの肩装甲を斬り裂き、ハウンドドーガの斧はジェガンの胸部を掠める。

 

 互いに舌打ちしながら、ヒカルとディジーは通り抜ける。

 

 振り向くのも同時。

 

 互いのビームライフルショーティとビーム突撃銃が火を噴く。

 

 ヒカルはディジーの攻撃を回避し、ディジーはシールドで防御する。

 

 一瞬、動きを止めるディジー機。

 

 その一瞬の隙を突き、ヒカルは距離を詰める。

 

「貰った!!」

 

 抜き打ち気味に繰り出す、フラガラッハの一撃。

 

 これをディジーは、辛くも後退する事で回避する。

 

 その瞬間を逃さず、ヒカルは更に前へと出た。

 

「逃がすかよ!!」

 

 同時に、今度はもう一方のフラガラッハを斬り上げるようにして繰り出す。

 

 これで終わり。

 

 そう思った次の瞬間、

 

 出し抜けに背後から放たれた砲撃が、ヒカルのジェガンの左腕を吹き飛ばしてしまった。

 

「何ッ!?」

 

 驚愕して振り返るヒカル。

 

 そこには、黒いカラーのハウンドドーガが複数、突撃銃を手にしながら向かってくる光景が見えていた。

 

「保安局の連中・・・・・・余計な事を・・・・・・」

 

 その様子を見ていたディジーが、苦りきっていた調子で呟いた。

 

 黒いカラーで統一されたハウンドドーガは、保安局行動隊の所属機である事を現している。

 

 元々今回の作戦は、ザフト軍と保安局の共同作戦だった。

 

 プラントの政策に探りを入れている連中がおり、そいつらがプラントに対して反抗的な姿勢を示していると言う情報を掴んだのは保安局である。その上でザフト軍と共同で偽情報を撒き、この場で待ち構えていたのだ。

 

 恐らく、保安局の戦力だけでは不安があった為、ザフト軍に共同戦線を持ちかけたのだろう。

 

 しかし、今の今まで保安局の部隊が姿を現さなかったのは、先にザフト軍をぶつけ、敵が弱ったところで自分達の戦力を投入して手柄をかっさらおうと言う魂胆が透けて見えていた。

 

 一方のヒカルは、それどころではなかった。

 

 既にザフト軍との戦闘でかなりの消耗を来したところに来て、更に敵が倍に増えたのだ。

 

「これは、本格的にまずいか・・・・・・」

 

 残った右手にフラガラッハを構え、接近しようとするハウンドドーガの頭部を斬り捨てる。

 

 しかし、シールドは左腕ごと失っている。消耗に加えて損傷もある機体では、いくらも戦う事はできないだろう。

 

 対して、完全にヒカル機を包囲した保安局は、まるで嬲り者にするように攻撃を行う。

 

 ヒカルのジェガンは砲撃を喰らい、まず右足が吹き飛ばされ、ついで推進器に直撃を受けて出力が低下した。

 

 残ったスラスターを吹かしながら、懸命に回避運動を試みるヒカル。

 

 しかし、そんなヒカルを嘲笑うように、保安局部隊はジェガンの行く手を遮るように砲撃を浴びせてくる。

 

 行き足が止まったところで、接近したハウンドドーガが残ったジェガンの右腕をビームトマホークで斬り落とした。

 

「ヒカル!!」

 

 嬲り者にされるジェガンの様子に、声を上げるアステル。

 

 しかし、気を逸らした一瞬の隙に砲撃が着弾し、ストームアーテルは右腕ごとレーヴァテインを吹き飛ばされてしまった。

 

「クッ!?」

 

 舌打ちしながら、残った左手でビームサーベルを引き抜くアステル。

 

 しかし、保安局側はストームアーテルにも複数の機体を張り付けると同時に、残った者達はヒカルのジェガンにトドメを刺すべく近付いて来る。

 

 それに対してヒカルは、もはやその場所から動く事すらできない。

 

「これまで・・・・・・なのかよッ」

 

 悔しさを滲ませてヒカルは呟く。

 

 結局、自分は何もできなかった。

 

 世界を変える事も、祖国を取り戻す事も、

 

 そして、

 

 仲間達と生きて、再び会う事さえ。

 

 接近してくるハウンドドーガ。

 

 もはやこれまでか?

 

 そう思った次の瞬間、

 

 出し抜けに起こった爆発が、ジェガンに接近しようとしていたハウンドドーガの行く手を遮った。

 

「・・・・・・え?」

 

 驚くヒカル。

 

 顔を上げるとそこには、青い装甲を持つ機体がビームサーベルを手に、保安局に斬り込んでいる姿があった。

 

「リアディス・アイン・・・・・・そんな、何で?」

 

 かつて共に戦った仲間の機体が、突如現れて自分を救ってくれた。

 

 その事態が、ヒカルにはひどく現実味の欠いた状況に思えるのだった。

 

 その時、更にもう1機、ヒカルのジェガンを守るように取り付いた機体がある。

 

《ヒカルッ!? ヒカルだよね、そこのジェガン!!》

 

 接触回線のスピーカーから聞こえてきたのは聞き覚えのある、そしてひどく懐かしさの感じる元気な少女の声。

 

「カノン・・・・・・お前、カノンか!?」

 

 2年ぶりに聞く幼馴染の声は、相変わらず弾むように騒々しく、それでいて聞いているだけで心が落ち着くような気分になれた。

 

《良かった・・・・・・ヒカル、生きてた・・・・・・》

 

 スピーカー越しにも泣いているのが判る、カノン・シュナイゼルの声。それが、今までにないくらいヒカルに安らぎを与えてくれる。

 

 と、そこで保安局と交戦していたリアディス・アインが、ビームライフルを撃ちながら2人を守るように後退してきた。

 

《カノン、積もる話は後にしよう。みんな待ってるから、今はまず切り抜けるぞ!!》

 

 レオス・イフアレスタールが、笑みを含んだような声で伝えてくる。どうやらリアディス・アインを操っているのは彼であるらしい。

 

 確かに援軍の存在はありがたいし、仲間の無事な姿が見られたのは嬉しいが、相変わらず多数の敵に囲まれている状況である。まだ油断はできなかった。

 

 レオスの言うとおり、再会を祝すのは、もう少し後にするべきだった。

 

「そうだな、アステル!!」

《・・・・・・・・・・・・判ってる》

 

 ヒカルの呼びかけに低い声で応じると、アステルも、ビームガンで敵機の動きを牽制しつつ後退を開始する。

 

 その姿を確認しながら、2機のリアディスに抱えられたジェガンは後退していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしい巨艦が姿を見せた時、ヒカルは思わず落涙しそうになった。

 

 水上艦のような前後に長いフォルムと、多数の砲塔をその身に背負った戦艦は、虚空の中に戦う者の勇壮な姿を浮かべていた。

 

「大和・・・・・・そんな、何で・・・・・・」

 

 かつてのヒカル達の母艦であり、オーブ軍の消滅と共になくなったと思っていた巨艦が、今、ヒカルの目の前にあった。

 

 世界中の如何なる戦艦であろうとも、決して対抗できないであろう巨大戦艦は、威風堂々たる雄姿を虚空に浮かべている。

 

《軍縮の影響で、大和も解体かプラントへの引き渡しが決まっていたんだけどね。その前に書類偽造して、事故で沈んだって事にして隠しておいたんだ》

 

 少し得意そうに、レオスが説明してくれた。

 

 損傷して自力での移動が不可能になったジェガンを抱えたアインとドライ、そして右腕を欠損したストームアーテルが、順にハッチから着艦していく。

 

 すぐさま、整備班が着艦ネットに突っ込んだジェガンに対し、消火剤を吹きかけていく。

 

 その間にヒカルはコックピットから引きずり出され、懐かしい面々と対峙していた。

 

「ヒカルッ」

「ヒカル!!」

 

 レオスとカノンが駆け寄ってくるのが見える。

 

 その姿に、思わずヒカルは顔を綻ばせた。

 

 レオスの方は2年前からあまり変わっていない。だが顔つきは少し精悍になり、前よりもどこか大人びているように見える。

 

「驚いたよ。まさか、お前達が来てくれるなんて」

「それはこっちのセリフッ ヒカルが生きているなんて全然知らなかったんだから!!」

 

 カノンはヒカルの手を取ると、興奮した調子で声を上げる。

 

 カノンの方も、体付きはあまり変わっていないように見える。相変わらず小柄なままだ。髪型は、昔はショートカットに切りそろえていたが、今は少し伸ばしてショートポニーに結い上げていた。

 

 2年ぶりに幼馴染と再会が叶い、嬉しさもひとしおである。

 

 あの第2次フロリダ会戦の後、北米大陸に取り残される形となったヒカルは、日々行われるザフト軍による残党狩りから身を隠しながら逃避行を行っていた為、誰かに連絡する機会は全く無かった。ようやく残党狩りが落ち着いたころには、既にオーブ軍の解体が始まっていた為、連絡を取ろうにも、その手段が無かったのだ。

 

 その為、フロリダでの戦い以降、これが仲間達との再会となる。

 

「でも、本当に良かったわ。あんたが無事で」

 

 良く澄んだ声に振り返ると、ヒカルは顔を綻ばせる。

 

「リィス姉・・・・・・・・・・・・」

 

 ヒカルにとって唯一の肉親である姉、リィス・ヒビキが、穏やかな笑みを向けて立っていた。

 

「ザフト軍の動きを探っている2人組がいるっていう情報を聞いてさ、もしかしたらって思って来て見たのよ。何にしても、間に合って良かったわ」

 

 そう言うとリィスは、ヒカルの肩をポンと叩く。

 

 2年会わなかった間に頼もしく成長した弟の姿に、リィスは以前には無い頼もしさを感じていた。

 

 そこでふと、メンテナンスベッドに固定されたストームアーテルから歩いて来るアステルの姿を見付け、リィスは尋ねた。

 

「ヒカル、彼は?」

「あー・・・・・・・・・・・・」

 

 さて、どう説明したらオブラートに包めるだろうか?

 

 ヒカルは頭を抱える。まさか、事実をそのまま伝える訳にもいかないだろう。そんな事をしたら、間違いなく混乱が起きる事は目に見えている

 

 ここは一旦、適当な事を言ってお茶を濁し、あとで落ち着いたらリィスに真実を話して対応してもらった方が得策だろう。

 

 そう考えたヒカルは、リィスに向き直った。

 

「ああ、こいつはさ・・・・・・」

「俺は、元北米統一戦線構成員、アステル・フェルサーだ」

 

 ヒカルが適当にごまかそうと口を開いた時、それを制するようにアステルは真実を話してしまった。

 

 次の瞬間、緊張が走る。

 

 元北米統一戦線構成員。しかも、アステルが乗っていたストームは、同組織の象徴だった機体である事が、今更ながら思い出される。

 

 途端に、カノンとレオスが素早い動きで銃を抜こうと動く。

 

 それに対して、

 

「ちょ、ちょっと待てよ!!」

 

 彼等の動きを制するように、ヒカルが割って入った。

 

「ヒカル、どういう事だ!? どうしてテロリストなんかと一緒にいる!?」

 

 レオスが舌鋒鋭く詰問する。

 

 無理も無い。オーブ軍が北米統一戦線と死闘を演じたのは2年前の話だが、まだ記憶が薄れるほど時間が経っているとは言い難い。

 

 レオス達が統一戦線の名を聞いて緊張するのは、当然の事だった。

 

「こいつは今まで俺に協力してくれてたんだッ みんなの気持ちもわかるけど、それだけは本当だ!!」

 

 叫ぶように言ってから、ヒカルはアステルに向き直った。

 

「お前も、何であんな事言ったんだよ!!」

 

 折角穏便に済ませる道を探そうとしていたのに、アステルのせいで完全に台無しである。

 

 対してアステルは、涼しい顔で返事を返す。

 

「ヒカル、こういう事は後々に回すと、却って傷口を広げる物だ」

「いや、それはそうかもしれないけどさ!!」

 

 快刀乱麻を断つ、と言うアステルの判断は間違っていないかもしれない。だがこの場合、下手をすれば激昂したクルーに殺されてもおかしくは無い。

 

 ヒカルが緊張して周囲を警戒していると

 

「銃を降ろしなさい」

 

 静かな口調で、リィスが一同を制した。

 

「ヒカルが信じるって言うなら、私はそれを支持する。それに、こっちに危害を加える心算なら、わざわざ機体から降りてきたりはしないでしょ」

「リィちゃん・・・・・・」

 

 リィスの鶴の一声が効いたのか、皆、警戒心を解いて武器を収める。皆、他ならぬリィスがそう言うのであれば、と言う顔をしていた。

 

 それを確認してから、リィスはヒカルに向き直った。

 

「その代り、ヒカルにはあとでちゃんと報告してもらうからね」

「ああ、判ってる」

 

 アステルの身の安全を確保するためだ。それくらいの労苦は厭わなかった。

 

 その時、艦内のスピーカーが鳴り響いた。

 

《ヒビキ副長、至急、艦橋までお戻りください。繰り返します。ヒビキ副長、至急、艦橋までお戻りください》

 

 その放送に、一同に緊張が走る。

 

 どうやら状況は、未だに終わったわけではないらしかった。

 

「て言うか、ヒビキ副長って?」

「あ、言ってなかったね。今は、私がこの艦の副長よ」

 

 言ってからリィスは、ヒカルとアステルを交互に見やった。

 

「アンタ達も一緒に来て。状況を確認してもらいたいから」

 

 

 

 

 

 久しぶりに入った大和の艦橋は、記憶にある配置と全く変わっていなかった。

 

 オペレーター席に座っているリザ・イフアレスタールが、ヒカルの姿を見付けて手を振ってくるのが見える。どうやら、先程の放送も彼女によるものだったらしい。

 

 操舵手席には、相変わらずナナミ・フラガが舵輪を握っている。2年前の戦いで兄を失った苦しみを乗り越え、彼女は戦場に立ち続ける道を選んだのだ。

 

 そして、

 

「よく戻ってくれた、ヒカル」

 

 艦長席に座ったシュウジ・トウゴウが相変わらず鋭い眼差しでヒカルを見詰めてきた。

 

 それに触発されたように、敬礼をするヒカル。

 

 対してシュウジは頷きを返しながら、視線をメインスクリーンへと向けた。

 

「再会を祝したいところではあるが、現状はそうもいかん。連中は未だに諦めていないみたいなのでな」

 

 投影されたメインスクリーンには、尚も接近を図ろうとしているザフト軍、並びに保安局部隊の姿が映し出されている。

 

「包囲網を完成させるつもりですね。今度こそ、こちらを捉えようとしているんでしょう」

「こちらも使える戦力は限られているからな」

 

 ボヤキにも似たシュウジの言葉を聞きながら、ヒカルは意を決したようにリィスに向き直った。

 

「リィス姉、今、この艦に余ってる機体とかは無いのか?」

 

 この状況に、ヒカルも手を拱いているつもりはないが、大破したジェガンでは流石に出撃する事はできない。もしイザヨイの1機でも搭載しているなら、それで出撃するつもりだった。

 

 対してリィスは、ヒカルの質問には答えず、何かを確認するように、シュウジへと目を向ける。

 

「艦長」

「うむ」

 

 リィスが何を言おうとしているのか、すぐに理解したのだろう。短いやり取りだけで、シュウジは頷きを返した。

 

 全て、リィスに任せる。と言う事である。

 

 それを受けて、リィスは弟に向き直った。

 

「ヒカル、アンタに機体をあげるわ。それも、とっておきの奴をね」

 

 そう言って、リィスはニコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 補給を済ませて再出撃したディジー率いるジュール隊は、保安局行動隊所属の部隊と並走する形で進撃していた。

 

 それにしても、

 

 操縦桿を握るディジーの手に、じんわりと汗が滲む。

 

 ただの不穏分子を掃討するだけの作戦だと思っていたのに、とんでもない大物が出てきてしまった。

 

 戦艦大和

 

 2年前の北米紛争に参加したオーブ軍の中にあって、もっとも活躍したと言っても過言ではない戦艦。

 

 かつてはオーブの象徴とも言うべき船の名を継いだ大型戦艦。

 

 記録によると大和は、カーペンタリア条約によってプラント側に引き渡される際、過去の戦傷が元で海難事故を起こし、そのまま沈没したとあった。

 

 しかし今、沈んだはずの戦艦が目の前にあり、自分達の前に立ちはだかっていた。

 

《何としても奴を沈めるぞ!!》

 

 保安局行動隊の隊長が声を嗄らしながらスピーカー越しに叫んでいるのが聞こえる。どうやら予想外の大物が現れた事で、興奮を隠しきれないでいるらしい。

 

《オーブ軍は虚偽の報告をしていたッ 事故で沈んだなどと偽りの報告をして戦艦を隠していたのだ!! それだけでも奴らの罪は明らかであるッ 薄汚い卑怯者には一切の情けを掛けるなッ あの戦艦はここで沈めるんだ!!》

 

 簡単に言ってくれる。

 

 ディジーは内心でため息を吐きながら、ヒートアップする保安局隊長の言葉を聞いていた。

 

 ディジー自身、大和の活躍を直接目で見た事は無いが、それでも報告書は読んでいる。

 

 正直、北米であれだけ粘り強い戦いを見せた戦艦である。考えているほど容易に勝てる相手ではない事だけは確かだった。

 

 その時、当の隊長機からディジーのハウンドドーガに通信が入った。

 

《連中への攻撃は、我々保安局が務める。ザフト軍は、その掩護に着け!!》

「・・・・・・了解」

 

 下された指示に対して、ディジーは低い声で了承の返事を返す。

 

 不満が無いと言えば嘘になるが、それは言っても仕方のない事だ。

 

 元々、今回の作戦は保安局主導の作戦である。ジュール隊の任務は彼等の支援となる為、掩護に回れと言うのならそれに従うだけだった。

 

 それにどのみち、予想外の大物が見つかったおかげで興奮している連中相手に何を言っても無駄だろう。それでなくても、権限を強化された保安局に対し、ザフトは下に見られる事が多いのが昨今の風潮である。ディジーにとっては腹立たしい事ではあるが、作戦直前でいらぬ波風を立てない為にも、ここは素直に従っておく方が得策だった。

 

「・・・・・・お父さんなら、こんな時どうしたかな?」

 

 父、イザークの顔を思い出しながら、ディジーは呟きを漏らす。

 

 イザークは軍人時代も政治家時代も、頑固者と言う評価を周りから受けていたらしく、周囲から煙たがられる事も多かったらしい。とにかく曲がった事が嫌いで、何に対しても筋を通そうとしたために、周りには敵も多かったと聞く。

 

 しかし、ディジーはそんな父を尊敬しているし、イザークもまた、娘の事をとても可愛がっている。

 

 そんなイザークであるなら、あるいはどんな状況であっても筋を通すべく行動していたかもしれなかった。

 

 その時、大和から2機の機体が発進し、こちらに向かってくるのが見えた。

 

 リアディス・アインとドライ。レオスとカノンである。

 

「掩護するから、レオス君、斬り込みお願い!!」

《判った、任せろ!!》

 

 砲撃力に勝るドライが援護に、機動力に優れるアインが斬り込み役を務める。典型的な布陣である。

 

 全武装を一斉に解き放つカノン。

 

 その砲撃を受けて、2機のハウンドドーガが吹き飛ぶのが見える。

 

 陣形を乱す保安局部隊。

 

 そこへレオスがビームライフルを構えて飛び込んで行く。

 

 卓抜したレオス機の攻撃を前に、たちまち数機のハウンドドーガが吹き飛ばされる。

 

 対モビルスーツ戦闘の実戦経験が少ない保安局員に対し、歴戦の兵士である2人の戦闘力は圧倒的と言って良いだろう。

 

 ハウンドドーガは次々と砲撃や斬撃を浴びて吹き飛ばされていく。

 

 しかし、それでも彼我の数は圧倒的に過ぎる。

 

 2機のリアディスの姿は、すぐに保安局の大軍に押し包まれて見えなくなっていった。

 

 

 

 

 

 リィスに導かれ、格納庫の最奥部に連れてこられたヒカル。

 

 既にカノンとレオスは出撃し、保安局との戦端は開かれている。

 

 いかに2人が歴戦の兵士であったとしても、数が多すぎる。じり貧になるのは目に見えていた。

 

 早く、掩護に行ってやらないといけない。

 

 はやる気持ちを押さえ、ヒカルはリィスの後に続いて格納庫内へと入る。

 

 キャットウォークの上を中ほどまで来ると、リィスは足を止める。

 

 そこで、ライトが点灯された。

 

「これはッ!?」

 

 そこにあった物を見て、ヒカルは思わず声を上げる。

 

 鉄騎が、眠るように、視界の先で佇んでいるのが見える。

 

 それは暗闇の中で、ただ己を駆るに相応しい物が現れるのを待ち続けていたかのようだった。

 

 流麗な四肢と、背中に負った翼が、鋼鉄製の天使を想起させる美しい機体である。

 

 そして、ヒカルにはもう一つ、別種の感慨が湧き上がっていた。

 

「セレスティ・・・・・・・・・・・・」

 

 かつての愛機の名を呟く。

 

 今、目の前にあるのは、確かにかつて共に戦った、自分の半身とも言うべき機体と酷似していた。否、同一の機体であると言って良いほどに似ている。

 

 背部のバラエーナ・プラズマ砲や、腰横に備えたレールガンの他に、背中のハードポイントにはティルフィングと思われる対艦刀も装備している。唯一、腰裏に装備したビームライフルの数が、1丁から2丁に増えている事だけが、セレスティとは違っていた。

 

「の、完成形ね」

 

 少し可笑しそうに笑いながら、リィスは訂正する。

 

「あんたも知っての通り、セレスティは完成前にテロリストの襲撃を受けて破壊された。メインである核エンジンの出力を安定させる事ができず、武装や出力も制限せざるを得なかった。それを急遽、突貫工事で修理してロールアウトを間に合わせたのが、以前、アンタが乗っていたセレスティよ」

「なら、これが、その完成形って訳か・・・・・・」

 

 ヒカルは、本来の姿を取り戻した愛機の姿を、惚れ惚れと見つめる。

 

 かつて、北米で失ったと思っていた愛機。

 

 自由に天を舞うためのヒカルの翼が、今、目の前にあった。

 

 そんな弟の姿を、リィスは頼もしげに見つめる。

 

「さあ、行きなさい。あんた自身の戦いをする為に」

 

 姉の言葉を背に受け、

 

「ああ」

 

 ヒカルは、ゆっくりと、自らの機体へ向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 最終調整を行い、リフトアップをする間、ヒカルは機体の性能を確認していく。

 

 基本となる出力は、セレスティの5倍以上。武装に関しては、ヒカルがセレスティ時代に多用していたF装備とS装備を折衷したような形になっている。

 

 どちらかと言えば火力よりも機動力を重視しているのが、ヒカル好みの機体だった。

 

「・・・・・・・・・・・・また、頼むぞ」

 

 再び握る事になった操縦桿を、ヒカルは頼もしげに撫でる。

 

 2年ぶりに握った操縦桿のグリップは、寸分の狂いも無く手の平に馴染んでくる。まるで、ヒカルが帰ってくるのを、ずっと待っていてくれたかのようだ。

 

 この機体に乗っている限り、相手がどんな強大でも負ける気がしなかった。

 

 ハッチが開き、視界が開ける。

 

 同時に、カタパルトに灯が入るのが見えた。

 

 眦を上げる。

 

 ここに来るまで2年かかった。

 

 だが、全てはここからだ。

 

 ここから始まるのだ。

 

 奪われた物を、取り戻す為の戦いが。

 

 セレスティ。

 

 否、その名はもう、この機体に相応しくない。

 

 天空を目指す者(セレスティ)から、永遠に羽ばたき続ける者へ、

 

 生まれ変わった翼が、今、飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒカル・ヒビキ、エターナルフリーダム、行きます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 加速と共に、虚空へと撃ちだされる。

 

 VPS装甲に灯が入り、機体の色は蒼と白の鮮烈なカラーに染められた。

 

 背中に負った翼が広げられる。

 

 セレスティでは4対8枚だった蒼翼が、6対12枚に増えている。

 

 RUGM-X10A「エターナルフリーダム」

 

 かつてレトロモビルズの襲撃によって破壊され、不本意な形での完成を余儀なくされた機体が、今、真の姿を現し飛翔していた。

 

《何だ奴は!?》

《気を付けろッ 新型だぞ!!》

 

 エターナルフリーダムの接近に気付いた保安局のハウンドドーガが2機、突撃銃を向けて接近を阻もうとしてくる。

 

 その姿を見据え、

 

 

 

 

 

 ヒカルの中でSEEDが弾ける。

 

 

 

 

 

 

 飛んでくる火線。

 

 しかし次の瞬間、飛翔するエターナルフリーダムの前面に赤い光が覆ったと思った瞬間、放たれたビームは全て弾かれてしまった。

 

 スクリーミングニンバスと呼ばれるこの装備は、ビームサーベルと同じ性質の攻勢フィールドを展開する事で、敵の攻撃を防ぎながら同時に攻撃を行う事もできる攻防一体の盾である。

 

 全ての攻撃を防がれ、焦ったように攻撃を繰り返す保安局員。

 

 しかし、その攻撃も弾かれ、エターナルフリーダムには掠り傷一つ負わせる事ができない。

 

 ヒカルはその隙に、背中に装備したティルフィング対艦刀を抜刀すると、すれ違いざまに横なぎに一閃、2機のハウンドドーガの脚部を、一刀のもとに叩き斬る。

 

 ヒカルはそこから更に加速し、動きを止める事は無い

 

 尚もエターナルフリーダムに対し、包囲しつつ集中攻撃を仕掛けようとする保安局部隊だったが、相手の超加速には全く追いつく事ができないでいる。

 

 仕方なく背後から砲撃を浴びせてくるが、エターナルフリーダムは12枚の蒼翼を羽ばたかせて回避、保安局部隊の攻撃は全て、空しく空を切るばかりであった。

 

 エターナルフリーダムの12枚の翼はヴォワチュール・リュミエールを利用した推進と機動の兼用ユニットになっており、その加速力と機動力は従来のモビルスーツの常識をはるかに上回っている。並みの照準装置でエターナルフリーダムを捉える事は不可能に近かった。

 

 ティルフィングを収めたヒカルは、両手のビームライフル、両肩のバラエーナ・プラズマ収束砲、両腰のクスィフィアス・レールガンを展開。6連装フルバーストを叩き付ける。

 

 たちまち、武装や頭部を破壊され、戦闘力を失う機体が続出する。

 

 保安局行動隊の戦線は、今や完全に崩壊している。

 

 何とか抵抗を試みる者、敵わないと見て逃げようとする者、仲間だけは助けようとする者。行動が全てバラバラになっている。

 

 最前まで予想外の獲物に目を輝かせていた保安局員たちは、今や完全に攻守が逆転し、自分達こそが狩られる獲物に過ぎなかった事を自覚させられていた。

 

《おのれッ よくも!!》

 

 あまりの惨状に激昂した隊長が、ビームトマホークを振り翳してエターナルフリーダムに斬り掛かって行く。

 

 接近と同時に、上段から振り下ろされるビームトマホーク。

 

 しかしエターナルフリーダムが機体を振り返らせた瞬間、斧を持った右腕は肘から斬り飛ばされて消失していた。

 

 斬り掛かる直前、ヒカルはエターナルフリーダムの腰に装備したアクイラ・ビームサーベルを抜き打ち気味に抜刀し、ハウンドドーガの右腕を斬り飛ばしたのだ。

 

 隊長には、驚く間すら与えられない。

 

 更にヒカルは剣を振るい、隊長機の左腕、両足、頭部をも斬り飛ばしてしまった。

 

 ものの数分で、動ける保安局員の機体は1機もいなくなってしまった。

 

 撃墜された機体は無い。

 

 しかし全ての機体が戦闘力を奪われ、虚空に残骸を晒している。

 

 ただ1機、エターナルフリーダムのみが無傷を保ち、12枚の蒼翼を雄々しく広げ、戦場を支配するように佇んでいた。

 

「・・・・・・・・・・・・魔王」

 

 状況を見守っていたディジーが、ポツリとつぶやきを漏らす。

 

 あれだけいた保安局の部隊をたった1機で殲滅し、尚且つ自らは1発の被弾もしなかったエターナルフリーダム。

 

 その様は、まるで古の伝承に出て来る恐怖の存在。魔王その物と言って良かった。

 

 恐怖が、伝染する。

 

 誰も、声を上げる事すらできなかった。

 

 静寂のみが、存在を許される中、

 

 やがて、エターナルフリーダムは12枚の蒼翼を翻し、2機のリアディスを引き連れて大和へと戻って行く。

 

 その様子を、ディジーをはじめとしたザフト軍は、呆然と見送る事しかできなかった。

 

 

 

 

 

PHASE-02「永遠に羽ばたく翼」      終わり

 




機体設定

RUGM-X10A「エターナルフリーダム」

武装
ティルフィング対艦刀×1
アクイラ・ビームサーベル×2
高出力ビームライフル×2
クスィフィアス・レールガン×2
バラエーナ・プラズマ収束砲×2
ビームシールド×2
スクリーミングニンバス改×1
12・5ミリ機関砲×2

パイロット:ヒカル・ヒビキ

備考
エターナル計画に基づく最終的なモビルスーツ。セレスティの本来の姿。セレスティの運用実績を踏まえ、「ヒカル・ヒビキにとって最適な形」で武装が組まれている。その為、火力よりも機動性、ハイマットモードの強化が徹底的に行われた。火力こそ、従来のフリーダム級機動兵器に比べると低いレベルだが、その代り、強化型ヴォワチュール・リュミエールを利用した推進システムは勿論、スクリーミングニンバスを前面に展開する事で、大気圏内では空気抵抗を極限、宇宙空間においてはデブリの排除を行う。これにより、他の機体では決して追随する事ができない超絶的な機動性が実現した。
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