皆様も体調管理にはお気をつけて……
あの合同授業から数日が経った。どうやらシャルルもラウラも問題を起こさずに過ごしているらしい。
「マクギリス〜、そこにある炭酸水取って〜?」
(このダメ人間は……)
今日は日曜日である為に授業もなく、出掛ける予定も無いために部屋でゴロゴロする鈴と部屋で出来るトレーニングをするマクギリス。鈴はさも当たり前であるかのようにマクギリスを小間使いの様に使い、マクギリスは渋々といった感じでその指示に従う。時計を見ればもう夕飯時に近い時間だった。思えば昼食も食べていない。
「鈴、グダグダするのも構わんがもう夕飯時だぞ?」
「……嘘!?もうそんな時間!?」
「残念ながらもうそんな時間だ、いい加減食堂に行こう」
面倒くさいと言わんばかりの目をマクギリスに向けるがマクギリスは鈴の方向を出来るだけ見ないようにしていた。部屋着がタンクトップにホットパンツと露出度高めな服な上に、鈴自身のズボラな性格が出ているがために時々見えそうになって非常に危ない。無論、鈴は気にしていないようだが。
「……鈴」
「何よ?」
「そう言えば、前のタッグマッチの時に何か言っていなかったか?」
「あぁ……晩御飯奢ってもらうってことだっけ。でも私負けたからあの話はなしよ?」
「いや、君が一方的にそういう約束をするのは卑怯ではないかなと思ってな」
嫌そうな鈴を尻目にマクギリスは見たこともないような爽やかな笑顔を浮かべてこう言い放った。
「今日の俺の夕食を奢ってもらおうじゃないか」
「嫌よ!アンタ馬鹿みたいに食うじゃない!」
「失敬な。アレでも大分抑えている方だぞ?」
「……じゃ、じゃあ今日何奢ってもらうつもりだったのよ」
「…………カルボナーラ特盛半熟卵付きスープセット」
「バっ、バカじゃないの!?1000円超えるじゃない!」
――――――
結局、鈴が折れてマクギリスにカルボナーラ特盛半熟卵付きスープセットを奢ることになった。軽くなった財布を眺めて鈴はため息をつくが、食事を美味しそうに食べるマクギリスを見るとどうも腹が立たなかった。
「またバイトしなきゃ……」
「……美味い」
「アンタのせいよ!……って聞いちゃいないか……」
マクギリスの態度にまたため息をつく。だが、直ぐに鈴はマクギリスを見つめるとポケットから紙を取り出した。
「マクギリス、これ見なさい」
「……ん?『学年別タッグトーナメント』だと?」
「そう!アンタには私と組んでもらうから!」
鈴はさも当たり前であるかのようにマクギリスにそう言い放った。マクギリスは知らなかったが、優勝者はマクギリスか春万のどちらか一人に告白することが出来るという噂が流れていて、鈴もそれを聞いた内の一人だった。
正直鈴にはマクギリスが『IS学園で初めて会った男性』とは思えなかった。どこかで会ったような男性が綺麗さっぱりイメチェンして自分の目の前に現れたとしか思えなかったのだ。もしかしてあの幼なじみかもしれない、そんな一途な想いに賭けるつもりでマクギリスにタッグの提案をしたのだった。
「……別に構わないが、戦略は練っているのか?」
「も、勿論よ!えーと……ゴリ押し!」
「……なるほど、つまり無計画だったと」
マクギリスは鈴に負けないくらいのため息をつくが、この程度イオク・クジャンを相手にしている時よりも遥かにマシだった。イオクに比べ、鈴は実力はあるのだ。それに理解力もある。
「タイマンだ」
「た、タイマン?」
「そうだ。我々の機体は両方とも近接機体だ。だからこそ二人で相手を分断して各個撃破する、この戦法しかないだろう」
「……そうね。アンタも中々賢いじゃない!」
「この程度、誰でも考えつくような作戦だと思うが……?」
この後、マクギリスは変にイラついた鈴に思いっきり頭を叩かれた。
――――――
「ふっ!」
「はぁっ!」
タッグを組んでからというもの、二人は訓練場でひたすらに組み手をしていた。タイマンにする為には各個人が1:1ならば勝てる戦力まで持ち上げなければならない。つまるところ、鈴の近接能力の底上げだった。ちなみに、現在の対戦成績は16戦15敗1分である。
「……鈴!君の衝撃砲の照準は直線的すぎる、目も同じところを向いていたら意味は無いだろう?」
「う、っさいわね!分かってんのよ!」
今やっていることは、龍砲と双天牙月の同時使用だった。マクギリスの言う通り鈴の龍砲は照準する迄に時間が掛かりすぎていた。それは龍砲自体の問題もあるが、それ以上に鈴のガサツな所も出ていた。元々鈴は細かい作業が好きではない為に、そのような照準を定めることも面倒だと思っているのだ。だが、マクギリスから言われた『龍砲を使ったフェイント』を聞いた時どうにも克服しなければならないという気持ちになった。今までそんな考えに至りもしなかったということへの悔しさとマクギリスにいい所を見せたいという何とも知れぬ気持ちが渦巻いていた。
「おっ、らぁ!」
「……!そうだ、その感覚だ!」
「で、出来た……」
始めてから20回程だったか、マクギリスに龍砲の弾を当てた直後に甲竜の瞬間加速で一気に距離を詰めることに成功した。二人はその感覚を忘れないように何度も特訓した。
だが、それを見つめる怪しい影が二つあった。片方は鈴と仲良く訓練をしているマクギリスが本当に気に食わないと言わんばかりの目で恨めしそうに見つめる織斑春万と、彼が目の敵にしているからという便乗で一緒に憎む篠ノ之箒である。
もう一方は、その場には居なかった。予め取りつけたカメラを通して生徒会室から彼女は見つめていた。その手にある扇子には『好奇心』と達筆な文字で書かれていた。
――――――
トーナメント当日、マクギリスと鈴のタッグは一回戦を難なく突破して二回戦で戦う相手を確認していた。当日まで練習していた分断作戦は見事に成功し、ISをほとんど扱ったことの無い生徒達は二人のなすがままになってしまったのだった。
「……相手は、デュノア・織斑組かボーデヴィッヒ・篠ノ之組か」
「マクギリス、アンタはどっちが勝ち上がってくると思う?」
「……普通に考えればボーデヴィッヒの方だろうな。篠ノ之箒という足枷を付けてでも二人を圧倒する力は持っているはずだ」
「…………アンタ、割とえげつないこと言うのね」
軽口を言っているとモニターに現在の状態が映し出されていたが、それは二人が考えうる状態ではなかった。モニターの先では、黒く粘着質なISのような何かがシャルルのISであるラファール・リヴァイブ・カスタムを持ち上げて叩きつけている真っ最中だったのだから。
――――――
「こんなものだと……!?」
ラウラは憤慨していた。自分が心酔してきた織斑千冬の弟がどれほどの物かということは、タッグ相手の篠ノ之箒から聞いていたが聞いていたものよりも遥かに劣っていた。踏み込み、剣の鋭さ、速さ。何を取っても千冬は愚か、自分やクラリッサにも劣るだろう。
無理もない。ラウラは知らないが春万は中学時代には剣道を一切やらずに帰宅部一筋だったのだから。だが、それを知らない彼女は春万が期待外れのゴミであったことに憤慨していた。
「……下らん、これならばまだファリドという男の方が遥かにマシだったな!」
「てめぇ……その名前を出すんじゃねぇ!アイツはカッコつけるだけカッコつけるクソ野郎だ!」
「……その言い草だと、お前は奴に嫉妬しているのだろう?自分にはない
ラウラがそう言うと春万は顔を歪めながら自分の得物を向けて突撃してくるが、ラウラはAICを起動して白式の動きを止めてレールカノンで撃ち抜いて吹き飛ばす。仲間である隣の箒を見ればどうしたものか彼女も恨めしそうにラウラを睨んでいた。シャルルだけはどうすればいいのか手をこまねいていた。その三人の様子を見たラウラは憤慨を通り越して、落胆していた。根性無しの人間しかいないと、もうそう思うしか無い。何故こんなところに教官は来てしまったのか。こんなところは教官には相応しくない。ここに縛り付けているのは彼の存在である。
そう考えていくとラウラの頭は徐々に怒りに支配されていく。自らの力を振るった上で完膚なきまでに破壊してやると思い、トドメのレールカノンを構えたその時だった。
『オマエハ―――』
「な、なんだ……!?」
『シッパイサクハ―――』
「や、やめろ……!?」
ラウラの脳内に声が響く。底冷えするような声をラウラは聞きたくなかった。それは自分が研究所にいた頃の研究員の声に酷く似ていたから。
『ヨウズミダ―――』
「やめろーーーーー!!!!!」
ラウラの声も虚しく、自分のISが黒く染っていく。自分の視界も、意識も黒に染っていく。もう助からないと思ったラウラは微かに残っていた意識を手放した。
アリーナにはただの怪物が残された。
どうも、ティッシュの人です。最近どうも関節痛が酷いです。インフルエンザかな。
マッキーは天然ボケ出来る人だと思う。チョコレートの人とか、モンターク仮面とか、『変えてみたりしとくぅ〜?』とか。
あと龍砲ってアレ食らってもサブで受け止められるんじゃないですかね、強制ダウンじゃないでしょ?
次回はヴァルキリートレースシステム撃破までやります。
ということで次回『#13 ガエリオ・ボードヴィン』お楽しみに。