純粋な力のみが成立させる、真実の世界を   作:ティッシュの人

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エクバ2の稼働日が発表になったので初投稿です。

10/30!?早ない!?


#13 ガエリオ・ボードヴィン

「ちょっと、マクギリス!?」

「……っ!」

 

 鈴に呼び止められるが、マクギリスはあのモニターの映像を見ただけで形容し難い嫌悪に襲われた。アレだけは出してはならない、アレを自分は受け入れてはならない、アレの存在を認めてはならない。そんな思いが只々頭の中を駆け巡った。

 気づいた時にはアリーナに走っていた。アレを止めなくてはならない。そして、『織斑千冬』という呪いから自らを解放しなくてはならないのだから。

 

――――――

 

「シャルル!」

「僕は……大丈夫だから……!」

「大丈夫じゃねえだろ!待ってろ、今助けてやるから!」

 

 そんな二人の様子を見たマクギリスは上の観客席から飛び降りるとそのままバエルを起動して黒い塊に一撃加えた。黒い塊は一瞬怯んだ様子を見せると形を成型して誰しもが見覚えのある形になった。

 

「……暮桜……なるほど、確かに『ヴァルキリートレース』だな」

「……あれは、存在しちゃならねえ!あれは千冬姉の……」

『邪魔だ』

 

 春万がその形を見ると突貫しに行こうとしたのに対し、マクギリスは冷静に白式のボディに電磁砲を撃ち込んで吹き飛ばす。春万は吹き飛ばされた先でマクギリスを睨みつけた。

 

「てめぇ!また俺の邪魔をしてカッコつける気だろ!そうやって、千冬姉の御機嫌を取ろうってか!?」

『……これだから馬鹿の扱いには手を焼くのだ』

「馬鹿だと……!」

『いいか、織斑。私は別に織斑千冬の御機嫌取りをするつもりは無いし、そんなことに興味はない。それどころか私は彼女のことが嫌いだ』

「なっ……!」

 

 春万にとっては衝撃的だった。春万が予測していた答えはマクギリスが千冬に惚れているから彼女の御機嫌取りをするというものだったのだが、まさか嫌っているなどと誰が予想出来ただろうか。

 春万が固まっている間、マクギリスと偽暮桜は剣を打ち付け合う。だがマクギリスの頭にはパルスのようなものが流れ続けていた。それも打ち付け合う度に強くなっていくのだった。

 

(なんだ、この感覚は……!)

 

 そのまま打ち付け合い続けていくとマクギリスの意識が白く染っていくのだった。

 

――――――

 

「……ここは」

 

 マクギリスが目を開くとそこは()()見覚えのあった貴族の部屋であった。ドアを開ければ様々な調度品とソファ、そしてそこに腰掛けている人間が一人だけいた。

 

「……お前は」

『久しぶりだな、いや……ここでは初めましてって言うのが正しいのか、マクギリス』

「ガエリオ、ボードヴィン……だと?」

 

 鉄の仮面を外したその傷の付いた顔は自らを殺した盟友、ガエリオ・ボードヴィンその人であった。マクギリスはまたかと思った。前にもアルミリアに会ったような気がしたのだ。その時も同じような感覚だったと記憶していた。

 

「何故お前が……いや、それより」

『ああ、あの事については俺は怒ってないしもう許している。アルミリアには嫌われてしまったけどな。全く……お前があんな小さい妹を嫁に迎えようとするからだぞ、お陰で拗らせに拗らせて手に負えない。そして、俺がいる理由だがどうやらISのコア人格というのは初めに話しかけた人間が思う人物像になるらしい。つまり……』

「俺が考えた人物像がお前だったということか。なるほど、数奇な運命もあったものだ」

 

 そうやってマクギリスが物思いに耽っていると目の前にいるガエリオはマクギリスに対して頭を下げた。

 

『マクギリス、頼みがある』

「……どうしたんだ?」

『どうかこのシュヴァルツェア・レーゲンとラウラ・ボーデヴィッヒを救ってほしい!』

「……どういうことだ、ガエリオ。お前がそこまで言う理由はなんだ?」

 

 マクギリスがそのように問い詰めるとガエリオか顔を上げて語りだした。その様子はマクギリスから見てもとても切羽詰まっている様子だった。

 

『マクギリスはVTシステムについてはどれほど知っているんだ?』

「確か……歴代ブリュンヒルデの動きを模倣するシステムだったか。危険だからという理由でアラスカ条約で禁止状態になっていたはずだが?」

『そうだ、故にドイツは国所属の全てのISからVTシステムの起動シークエンスを削除した。だからもうVTシステムは起動しないはずだったんだ』

「……だが、今回起動してしまった。何故だ?」

『…………外部アクセスによるものだ、そうとしか言い様がない。そしてドイツにはその手段はない……あったとしても封印しているはずだ』

 

 マクギリスは考え込んでしまう。ドイツが封印しているとは言え起動シークエンスの情報を持っているのならば、あとは遠隔で発動さえ出来ればドイツは手を一切汚さずにVTシステムの実験ができる筈なのだが……ガエリオの言葉を信用するとするのならば答えは一つしかなかった。

 

「……篠ノ之束か」

『恐らく俺もそう思っている。彼女ならばISのコアに直接干渉してVTシステムを起動することは容易のはずだ』

「……なるほど、これでピースは全て揃った訳だ。だが、お前がそこまでしてラウラ・ボーデヴィッヒを救おうとする理由がわからん。何故だ?」

 

 マクギリスがそう問うとガエリオは目を伏せて声に悲壮な感情を乗せてこう述べた。

 

『……彼女はデザインチャイルド、つまり造られた存在なんだ。その上彼女はIS適合手術に失敗して「出来損ない」の烙印を押された少女なんだ』

「……ほう、昔のお前ならば見向きもしなかったはずだが?」

『ああ、だが鉄華団のあの事件があって、アインの件もあって考えたんだ。本当に今まで俺が思ってきた阿頼耶識のイメージは正しかったのかって。無論、阿頼耶識適合手術を全て認めるわけじゃないが、受けた本人は仕方なく受けたんだ。だから、彼らに罪は無い。それなのに俺は今までその事実から目を背け続けてきたんだ』

 

 ガエリオはそこまで言うと目をカッと開くとマクギリスを見つめた。

 

『だから、俺は彼女を受け入れた!だが、こんなことは想定外だ!だから頼む、どうか彼女を救ってほしい!』

「…………」

 

 マクギリスは熟考する。幾ら盟友のガエリオの頼みだからと言って見ず知らずのクラスメートを助けるのが果たしてつり合うのか。今のあの怪物に立ち向かえば自分は死ぬかもしれない。だが、どう考えても答えは一つしかなかった。

 

「わかった。他でもない盟友(とも)の頼みだ。今度こそ果たして見せよう」

『ほ、本当か!?』

「ああ、俺は嘘は得意じゃない」

 

 ガエリオが喜ぶ素振りを見せると徐々に部屋の片隅がポリゴン片になって消え始めた。どうやら、あちらの世界からお迎えが来たようだった。

 

『マクギリス、お前は本当に親友だ!これまでも、そしてこれからも!』

「……存じているとも。ありがとう……ガエリオ」

 

 懐かしい世界は消えた。あとは、盟友との約束をあちらの世界でも果たすだけだ。マクギリスはその一歩を踏み出した。それは、マクギリスが今まで経験したことのないような清々しい気分を抱かせた。

 

――――――

 

「……ガエリオ、私はお前との約束を果たそう。今、ここで!」

 

 マクギリスがガエリオと話している間、どうやらこちらの世界は動いていなかったらしい。不思議なこともあったものだが、この世界に来てからそんな事は山ほど経験しているので大して驚きもしなかった。

 

「ふざけんな!千冬姉が嫌いだと!?千冬姉を馬鹿にすんじゃねぇ!お前はあの人がどれだけ努力したのか知らねえクセに!」

『努力だと?……今まで姉の威光だけを背負って生きてきた人間の言う言葉は重みが違うな。それに、お前はそんなボロボロの機体でどうするつもりだ』

 

 マクギリスの言葉は今まで聞いたことのないような冷たい刃を帯びていたが、言っていることは確かに真実だった。春万が千冬の威光だけで生きてきたのは事実だし、白式はもう戦えるような状態じゃなかった。だが、春万のプライドが『戦えない』という事実を許さなかった。マクギリスに負けているという負い目を拗らせた彼の頭はただ『マクギリスをどんな手段を使ってでも引きずり落とす』という考えしか残っていなかった。

 

「黙れぇぇぇえええええ!!!!!」

『……手が焼ける!』

 

 怪物の復活を背景に、白い二つの機体はぶつかり合う。だが実力差は歴然だった。ぶつかってすぐに白式の装甲が悲鳴をあげ始めたのだ。ギシギシという音と時々装甲が崩れ落ちていく音が混ざり合い、まるで『もう辞めてくれ』と言わんばかりだった。そのままマクギリスはバエルソードで押し込むと両手の剣を白式の装甲に突き刺し、頭部装甲を握りしめると放り投げた。白い塊はきりもみ回転をすると爆風に包まれ、その僅かなSEを散らして中にいた春万をゴミのように地面に放り捨てた。もう彼の口から下らないプライドに彩られた言葉は無く、ただ息をする様子しか見えなかった。

 マクギリスは回復を完了させた怪物に向き直すと獰猛に歯を剥き出しにして怪物を睨みつけた。その目は好敵手を見つけた獣のような目をしていた。

 

「さぁ……6年前の呪縛から解き放たれる時だ……!」

 

 怪物は応えない。いや、その眼をギラリと光らせたのが応答なのか。それを合図に二つの機影は最大速度でぶつかった。その衝撃は誰も居なくなったアリーナを揺らし、所々の椅子が崩れ落ちる程だった。

 バエルの体勢を立て直したマクギリスは力の差を感じていた。純粋な腕力では確実にあの怪物には勝てない。ならば、どうすればいい。どうすれば勝てる。どうすればあの怪物から彼女を解放できる。その考える時間は、怪物に対して奇襲の時間を与えてしまっていた。マクギリスに対して叩き込まれた凶刃を何とか受け止めるが、その体勢が不味かった。

 

「……ぐぅぅぅううううううう!!!!」

 

 マクギリスにしては珍しい呻き声。それは、右手で直にその凶刃を押さえ込んでいる事だった。ガリガリとバエルのSEを削られると同時にマクギリス自身の腕の骨を痛めつけていた。

 だが、その窮地を救ったのは――――――

 

『マクギリス、アンタ馬鹿じゃないの!?自分一人で抱え込んで!私達は、「パートナー」でしょ!?』

「……鈴」

 

 マクギリスは彼女が龍砲で作ってくれた大切な時間の間にバエルソードを後付武装から取り出す。右手はまだ動く、ならば止まってはならない。止まらない限り、解決する道は目の前に続いているのだから。

 

「そうだな……俺達はパートナーだ」

『二人で、アイツを倒してあの女を救ってやろうじゃないの!』

 

 それ以上の言葉は二人には必要なかった。ただ、目の前の怪物に一太刀をぶちかました。怪物はそのドロドロとした装甲を外へ吐き出した。その中にマクギリスはラウラの存在を目視で確認した。

 

「鈴!俺が今からラウラを外へ引き摺り出す、その後の彼女を頼む!」

『……仕方ないわね、後で晩御飯奢りなさい!今日は目いっぱい食べてやるんだから!』

「……フッ、分かっているとも!」

 

 マクギリスはバエルのスラスターを吹かし、一気に怪物に肉薄しバエルソードで水平切りを怪物にかました。怪物は体勢を崩し、中のラウラはより一層外の空気に身体を晒した。

 マクギリスは両手のバエルソードを怪物のその黒い装甲に突き刺すと素手でラウラを掴んだ。怪物の粘着質な装甲がバエルの腕に干渉するが、最早そんな事は関係ない。マクギリスの胸には盟友(ガエリオ)と結んだ約束がある。その約束は、鉄の結束よりも堅い。

 

「う、うぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」

 

 マクギリスが懸命に引っ張ったおかげか、ラウラは一気に引き抜くことが出来た。主を失った怪物は苦しそうにもがいていたが、その間にマクギリスは巴投げの要領で鈴へとラウラを投げ飛ばした。マクギリスからのパスを受け取った鈴はラウラを抱えてカタパルトの方へと戻っていく。

 その様子を横目で見たマクギリスは怪物に向き直って突撃し、突き刺した剣をさらに深く突き刺した。信管のカチリという感触を手から感じたマクギリスはそのまま怪物を蹴り飛ばした。だが、怪物は最後の力を振り絞り蹴り飛ばされた所を固い装甲へと変貌させた。

 

「ぐぅっ!?」

 

 バエルの装甲と自分の骨が軋む音がする。だが、こんな所では止まれない。痛みに耐え、そのまま怪物を踏みつけるようにして再度蹴り飛ばした。今度は間に合わないのか怪物はその勢いのまま吹き飛んで行き――――――爆発の中に巻き込まれた。炎が晴れた先には、最早その怪物の影は存在しなかった。それを見たマクギリスの体から一気に力が抜けると同時に、今まで無茶な機動をしてきたツケが回ってきたのか身体に一気に痛みが迸った。マクギリスはその痛みに耐えられずに膝をつき、そのまま倒れ込んでしまう。バエルを何とかして粒子化させたマクギリスは虚ろになった意識の中、最後にガエリオからの約束のことを考えていた。

 

「…………ガエリオ……約束は……果たしたぞ……」

 

 そして、マクギリスの意識は闇に閉ざされた。

 

――――――

 

 マクギリスが目を覚ますとそこは保健室のベッドの上だった。そのまま連れていかれたのか、ISスーツを着たままベッドに寝かされていた。

 

「起きたか」

「……誰だ?」

「……自分の担任を覚えていないとはな……!」

 

 どうやら声をかけたのは千冬らしかったが、その声音には怒りが含まれていた。マクギリスは自分のやった事を思い出し、一人で勝手に納得していた。

 

「貴様……無断出撃、教師である私に対しての侮辱、果ては仲間であるクラスメートへの攻撃……一歩間違えれば退学処分だぞ、分かっているのか!」

「…………」

 

 マクギリスは応えない。確かにそれは罪かもしれないが、春万に任せていれば確実にあの怪物による被害が出ていたはずだ。だが今の彼女……いや、彼女に言えばどんな理由があろうとも更なる怒りの引き金を引くことが確定だった。

 

「……応えないのか、ならば構わん」

 

 千冬はマクギリスの襟首を掴むとベッドから持ち上げた。マクギリスの身体の節々が悲鳴を上げるが、何とか耐える。

 

「教育的指導でお前の懺悔を引き摺り出してやる……!」

「……お言葉ですが、周りを見たらどうでしょうか?」

「周り……!?」

 

 千冬がマクギリスの襟首を掴んだまま周りを見るとそこには何か手紙のようなものを持ってきた本音と彼女と何時もつるんでいる女子生徒たちがいた。千冬はハッとなってマクギリスをベッドに下ろして、何も言わずにそのまま保健室を立ち去った。

 

「……助かった。ありがとう、布仏」

「ううん、大丈夫〜」

「っていうか、今の織斑先生だよね……?」

「生徒の襟首掴むってヤバくない……?」

 

 どうやら彼女達の感性は普通のようだった。他のクラスメートの中には織斑千冬を盲目的に信じる生徒もいる為に、もしそのような生徒に見られていたらどうしたものかと思っていた。

 

「そうだ〜、リンリンから手紙預かってるよ〜」

「リンリン……鈴の事か?」

 

 マクギリスが怪訝そうな顔をする中、掛けていた布団に手紙を置くと三人はそのまま保健室を出ていった。

 

(そう言えば、奢るという約束を破ってしまっていたか)

 

 マクギリスがヤレヤレと溜息をつく中、開いた手紙には殴り書きでこう綴られていた。

 

 

 

『来週の日曜日、私の買い物に付き合いなさい     凰鈴音』




どうも、ティッシュの人です。

いやぁ……6000字超え……まさかここまで筆が乗るとは思わなかった。いやまあ、場面数かなり多めに構成してるのでまあ、仕方ないんですけどね。
次回はサブストーリー回……というか、マクギリスがデートします。マクギリスってもしかしてアルミリアとデートした事ないからデート童貞なのでは?(名推理)

ということで次回『#14 凪』お楽しみに。
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