内蔵されてるってガンプラにそんなディテール存在せんかったぞ。
マクギリス・ファリドの朝は早い。朝4時に起きると、学園の敷地を20km走る。心地よい汗をかいたあとは、腕立て伏せとスクワットをそれぞれ200回ほどして、部屋でシャワーを浴びる。そこまでがワンセットだ。元々マクギリス自体運動は好きではないが、自らの肉体が変わっていくのを見るのはやはり心地よいものだと彼は思う。故にこんなトレーニングメニューを立てているのだ。
今日は入学式だ。自分が入るクラスはどんなクラスになるのだろうと期待する反面、どうせ厄介事が起きるのだろうと嘆息した。
――――――
IS学園の入学式はあまり長くない。だいたい1時間もすれば話は終わる。校長の話、生徒会長の話……そして、生徒代表。今年の代表はどうやら女尊男卑色の強い人らしく、ISが女性の権利を強くしたやら、男性は卑しい動物だやら、聞いていてうんざりするようなことばかりだった。
入学式の後はそれぞれのクラスに向かう。マクギリスのクラスは1-1だったため、校舎を入ってすぐの場所にあった。
自分の席に着席してみたが、明らかに座高があっておらずだいぶ窮屈だった。これではエコノミー症候群になるなとマクギリスはまた嘆息した。
「織斑くん?織斑くん!!」
「は、はい!」
「ごめんね、今自己紹介で『あ』から始まって『お』の織斑くんなの」
「あ、すいません……織斑春万です。えー……以上です」
女性陣が春万に対してワーキャー叫ぶ中、マクギリスの興味も当然彼へと向かった。
(今、『織斑春万』と言ったか?)
まさに運命。そしてそのまま運命はマクギリスの思惑通りになり……
「もっとまともな自己紹介は出来んのか」
「いっ…………げぇっ、関羽!?」
再度叩かれる春万。まるで何かが破裂するような音を立てながら振るわれる出席簿には何故か傷一つない。言葉を何度かやり取りすると女はこちらに向き直った。
「……さて諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才にまで鍛えぬくことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
使い物などという時点でもはや人とは見ていないな、そうマクギリスは思う。なんせ自分もイオク・クジャンの事を使い物にならんと人としては見ていなかったのだから。
「キャ────!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、千冬様のためなら死ねます!」
「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」
茶番のようなやり取りが交わされる中、マクギリスは心の中で感涙に咽いでいた。まさか、因縁の二人がこのクラスに集結するなどとは思ってもみなかったからだ。そして、彼らを計画に組み込むのも容易になる、故に彼らには私の手のひらの上で踊ってもらおうと考えた。
「自己紹介を続けろ」
「は、はい!じゃあ、次の方!」
作業のように自己紹介が続く中、とうとうマクギリスの番となった。
「……私はマクギリス・ファリド。生まれも育ちもイタリアで、両親は商会を営んでいる。この度、数奇な運命により諸君らと共に勉学に励むこととなった。よろしく頼む」
当たり障りない感じで自己紹介を終えて座るマクギリス。すると、たちまちそこかしこから黄色い歓声が上がる。
「キャー!金髪美青年よ!」
「イケメン!それに高身長!」
「多少高圧的なのも素敵!」
「その声で罵って!そのまま踏みつけてー!」
何か変な声が聞こえた気がするが、何も聞いていないフリをしてマクギリスは後ろに手を振る。そうするとまた黄色い歓声が上がった。
「え、えーと……つ、次の人!」
これは、山田先生も大変だとマクギリスは思った。1番の頭痛の種が自分であるとは夢にも思っていなかった。
――――――
「よう……ま、マクギリス・ファリドだったか?」
「君は……織斑春万か」
「お、覚えてくれてたんだな!同じ男として頑張ろうぜ!」
「……そうだな」
この男は、マクギリス・ファリドという男が実は『織斑一夏』だったとは夢にも考えていないだろう。いつか自分の正体を明かす時、どんな顔をするだろうか。
「……ファリド、済まないがこの男を借りてもいいか」
「……ああ、構わない」
「じゃあな、ファリド!」
あの幼馴染の少女はどう考えても篠ノ之箒だろう。なんとまぁ、ここまで因縁がある奴らが揃ったものだ。マクギリスは次の授業を確認すると席に戻って分厚い参考書を開いた。
――――――
マクギリスが部屋に戻る頃には日は落ちて来ていた。夕陽が差し込む中、マクギリスはあることに気づいていた。
(カーペットに多少のズレが出来ているな……誰かが侵入したか)
部屋に入った当初は盗聴器は存在していなかったが、部屋が確定した今日だからこそ付けたのだろうとマクギリスは推測した。
キャリーバッグに入れていた卵サイズの瓶を取り出すと、ボタンを押して地面に放った。瓶は青い光を放つ、するとそこかしこから何かの電源が切れるような音が聞こえてきた。
(やはりか……博士にEMPグレネードを貰っておいて助かった)
青い閃光はEMPの光だった。盗聴対策のため、マクギリスが事前に頼んでおいたものである。前世でマクギリスは何度も政敵から盗聴器を付けられたことがあったが故の対策だった。
「さて……これからの計画を考えるとしよう」
マクギリスは服も脱がずに机に向かい、ルーズリーフを1枚取り出した。自らの野望、つまりはマクギリスがアグニカ・カイエルの伝説の体現者となる事だが、それを達成する為には観衆の注目を集めなければならない。一番集まる日がどこかと聞かれれば当然、文化祭の日だろう。文化祭にはただの客だけでなく、多数のメディアが訪れる。そこで演説をぶちあげれば、間違いなくマクギリスの考えを世界に発信することができるだろう。
また今朝の自己紹介の時に、セシリア・オルコットというイギリス貴族の娘がいたが、オルコットという名前自体は数年前のイギリス領内でと鉄道爆破テロの時に聞いていた。確か別のテロ組織による犯行で、オルコット夫妻は爆破に巻き込まれて死亡していた、そう記憶している。また、彼女自体がかなり女尊男卑、あるいは国粋主義の思想に染まっているがために、明日のクラス代表決めでは波乱の展開になるだろうということも予測していた。
しかしながら、今の時点で他の計画を建てることは時期早々であるとマクギリスは確信していた。今居る代表候補生は全学年合わせて12人。大国である中国、フランス、ドイツの代表候補生が居ない以上、途中で入学してくることは確実で、誰か分からない時点で計画が狂う可能性の方が高い。亡国機業のデータベースにアクセスすれば名前や顔写真などは分かるが、実際に会って人柄などを確認しなければ意味が無いのだ。
マクギリスの夜は、こうして明けていくのだった。
こんばんは、ティッシュの人です。
さて、次回から原作人物に絡んでいきます。セッシーは割と好きだよ、一番じゃないけど。だから、そこまでアンチ対象にするつもりは無いし、多少のブレを入れつつも自然にマクギリスを入り込ませられたらいいなと思っています。
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