ワシもフリプやりたかった。(血涙)
ps.なんでこんな伸びてんだと思ったら宣伝されてるぅ!?
宣伝してくれた『みっつー』さん、ありがとうございました!頑張って完結まで書きます!
「ありがとう、助かったわ」
「そうか、帰り道は迷わないようにな」
「……子供じゃないんだから迷わないわよ!」
鈴はツインテールを揺らしながらマクギリスに吠えた。マクギリスは笑うと手を振って、寮に向かって走り出した。それを見ながら鈴は気付くのだ。
「……あ、名前聞くの忘れた」
――――――
「クラス対抗戦?」
「うん、そうだよ〜。優勝すると半年スイーツ食べ放題なんだって〜」
「なるほどな、だからこんなに女性陣が色めき立っているのか」
マクギリスが見渡せばクラスの女子生徒達が『食べるために痩せなきゃ!』『織斑くん頑張ってね!』と騒ぎ立てている。
マクギリスは、確実に春万が優勝出来ないと踏んでいた。何せ、戦闘経験なんて皆無の男性操縦者な上に未だに機体を使いこなせていない。さらに言えば、彼のISの単一能力『零落白夜』は相手のSEを完全無効にして攻撃するという危険極まりない攻撃なのに本人がその危険性を理解していないのだ。
「マッキーは、スイーツ好き?」
「……チョコレートは好きだが、スイーツ全般となると話は違ってくるかもしれないな」
「そうなんだ〜」
「そういえば、2組に転校生が来たらしいよ」
「えー?こんな時期に?」
「こんな時期に来るからには操縦上手いんだろうなぁ」
「でも、織斑くんは男性だし、大丈夫でしょ?」
そんなことを女子グループが言っていると、1組のドアがバァンという大きな音を立てて開いた。光の中にはマクギリスが昨日案内した彼女が立っていた。
「その情報、古いよ!」
鈴がそうやってアピールすると、春万が立ち上がって嬉しそうな声を出した。
「鈴?お前、鈴なのか!?」
「久しぶり、春万。そして私は代表候補生とクラス代表になった、この言葉の意味わかるわよね?」
「……ま、まさか」
「そう、1回戦の相手はこの私よ!」
無い胸を張って鈴は堂々と告げた。どうやら正面から勝つ気満々のようだったが、マクギリスはどうにも気になって仕方が無いことがあった。それは、鈴が春万と言葉を交わす度に一瞬嫌な顔をすることだった。すぐ笑顔になるから春万には分かっていないようだが、マクギリスにはそれが気になってしょうがなかった。
後ろでは箒が鈴と何かを言っているようだったが、マクギリスはそんなことを気にすること無く、なぜそんな顔をしているのかを考え続けた。それは、千冬が鈴を威圧してクラスルームに入ってくるまで続いた。
――――――
「相席してもいい?」
「……君は……」
「そ、昨日のことお礼言いたくて」
マクギリスがいつものようにスパゲティを食べていると麻婆豆腐丼を持ってきた鈴がそう述べてきた。マクギリスが構わないと言うとドカッと目の前の席に座って、彼をジロジロと見つめていた。
「……何だ?」
「……なんでもない。昨日はありがと、もし来てくれなかったら私道に迷ってた」
「……もしかして方向音痴か?マップを持っていたと思うのだが?」
「ち、違うわよ!ただ……初めての場所だからよく分からなくなっちゃっただけ!」
世間ではそれを方向音痴と言うのではないだろうかとマクギリスは思う。確かにIS学園の敷地だけでもヴァチカンより大きいだろう。ただ、いくら転入生と言えどわかりやすいマップが提供されるはずなのだが……
「そうか」
「とにかく、私が言いたかったことはそれだけ!じゃあね!」
鈴はマクギリスの前で急いで麻婆豆腐丼を食べる。それを見た他の生徒は皆思ったことだろう。『そんなに早く食べたら、口から火を噴くぞ』と。
この後、鈴が辛さに涙した事は言うまでもない。
――――――
「一人部屋かぁ……はぁ〜、今日はいろんなことがあったわ……」
真耶から受け取った鍵で自室の鍵を開けて、鈴は制服姿のままベッドへと飛び込んだ。フカフカのベットの中で色々考える。
いきなり中国から日本に来て虐められ、それを助けてくれた
鈴は未だに、彼がどこかで生き続けていると信じている。それは、単純に自分を守ってくれた彼が消えてしまったことを信じたくないだけなのかもしれないと、自己嫌悪に陥る日もある。それでも彼の事を想わずには居られないのだった。
「…………一夏ぁ……」
それに、鈴は織斑春万とその姉の千冬が気に食わなかった。一夏が自分を助けてくれた時、彼の服はシミだらけで所々にアザが出来ていたのを鈴は知っている。彼の家族である春万や千冬はそれを知っているはずなのにあえて無視し続けた。そして、誘拐事件の時も彼らはいつものようにただ日常を過ごしていた。
普通、弟が誘拐されて行方不明になったとしたら学校になんて来れるはずがない。それなのに、彼らは来ていた。つまりは、彼は取るに足らない存在だったということだ。それが、鈴には許せなかった。でも、それ以上に一夏を失ったという悲しみが大きすぎた。
だが、今日会った事でその憎しみが再燃した。彼等だけは許しておけない、そういう正義の塊のような物が鈴の心の中で燻っていた。
「……ま、考えてもしょうがないか。シャワー浴びちゃお」
鈴は結局気づかなかった。自分が寝ていた隣のベッドの横に置いてある、別のキャリーバッグの存在に。
――――――
マクギリスが夜のトレーニングから帰ってきた時には時計の針は9時を回っていた。自室を開けると中から女性の鼻歌が聞こえてきて、一緒にこっちに近づいてくる足音もしてきた。
「あー、貴女がルームメイトね。私は凰鈴音、よろし……く…………」
「…………」
マクギリスと目が合う。二人に重苦しい雰囲気がのしかかってくる。いくらマクギリスと言えど、いきなり自分の部屋から女性が、それも一糸まとわぬ裸で鼻歌交じりでやって来たら何も言えなくなってしまう。
「あー……何も見てなかったことにするから、早く服を着たらどうだ」
「……い、いやぁぁああああああああああ!!!!!!」
寮に女性の悲鳴と重い殴打の音、そして男性の呻く声が響いた。その声を聞いて真耶が向かうと、そこには目を回して壁にもたれかかっているトレーニングウェアのマクギリスと、バスタオルで身体を隠して顔を真っ赤にしている鈴が立っていた。そして、彼女は思い出した。
「あ……言うの忘れてました」
「なんで一番大事な事忘れてるんですかぁぁああああ!!!!!」
――――――
『ん……ここは……?』
マクギリスが目覚めると、一面の白い世界に立っていた。そして、前を向くと目の前でユラユラと世界が揺らめいた。そのまま見続けているとその揺らめきは形を変え、見覚えのある形へと変貌した。
『……アルミリア』
自らの婚約者だったアルミリア・ボードヴィン。彼女を幸せに出来なかったことが、マクギリスにとっては唯一そして最大の心残りだった。だが、この世界に来てから、こんな夢を見ることはなかった。それに、アルミリアはこの世界には居ないのだ。なのに、なぜいきなりこんな夢を見ているのだろうか。
アルミリアはマクギリスへと振り向いて、ニコリと笑ってそのまま前へと歩いていく。振り向くことなく、ただ前へ前へと進んでいく。そして、急に止まると彼女はもう一度マクギリスを見てこう呟いた。
『……マッキーのバカ』
――――――
「……!?」
マクギリスは飛び起きた。あんな夢はもう二度と見たくはない、それを裏付けるかのように彼の顔には汗がびっしりと張り付いていた。すると、横からあの声が聞こえてきた。声のした方向を見ればさっき自分に踵落としをしてきた彼女がいた。今度はちゃんと猫柄の寝巻きを着ていた。
「……あ、起きたのね。その……さっきはごめんなさい」
「いや、私も警戒せずに入ってしまったからな。ずっと自分一人だけだと思っていた私のミスだ、すまない」
「……その、さっき山田先生から連絡するの忘れたって聞いたけど、まさか貴方だと思わなかったしそれに……は、裸を見られちゃったから…………ええと、怪我は大丈夫?」
マクギリスは、踵落としをされたであろう後頭部を触るとそこには小さなコブが出来ていた。触らなければ2日程度で治りそうな小さなコブだった。
「……まあ、大したことはなさそうだ。それで、君が私のルームメイト、という事になるのか」
「そういう事になるわね……じゃあ改めて、私は凰鈴音。貴方は?」
「私はマクギリス・ファリドだ。よろしく頼むよ、凰」
「鈴でいいわよ、私もマクギリスって呼ぶから」
「そうか、ならよろしく、鈴」
適当な挨拶を交わすと鈴はすぐにベッドの中に入ってしまった。そそくさと電気を消すと、小さく「おやすみ」と呟いて寝てしまった。
勝手な奴だなとマクギリスは小さく笑うが、眠っていられる暇などなかった。あの夢がいきなり出てきた以上、何故出てきたのかを考えずには居られない。横目でチラリと鈴を見ると、もう小さな可愛い寝息を立てて夢の世界に入ってしまっていた。
もしかすれば、自分は鈴とアルミリアを重ねて考えてしまっているのかもしれない。体格的にも、身分は違えど性格的にも、彼女とどこか似通った所があると考えて、アルミリアを思い出したのかもしれない。
(……いや、まさかな)
そんな下らない妄想を振り切るとマクギリスは目を閉じた。今度は、あの夢を見ることは無かった。
どうも、ティッシュの人です。
今回は、鈴ちゃんに重きを置いて書きました。ってか、言っちゃうとマッキーのヒロイン鈴ちゃんです。
この作品のプロットを考える前から鈴ちゃん≒アルミリアは頭の中にありました。だって体格的にも似てるからね。本音ちゃんは……その、マッキーの隣に立たせる上でアンバランスすぎてダメでした。ごめんよ本音ちゃん。
ということで、次回『#9 ギャラルホルンの笛の音は』お楽しみに!