Change yourself,Keep yourself.   作:バーテックスケベ

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優しさ故に心は苦しく、
愛しさ故に心は痛む。

少女の苦悩は、ありきたりなモノ。
少女の苦痛は、あたりまえなモノ。

されど少年には分からない。

普通でない少年には、分からない。



第6話 お悩みなあのこ

ゴールデンウィークの2日目、僕は再び大橋市のイネスへと来ていた。

 

なんとこのゴールデンウィークの期間中に、イネスのフードコートではそれぞれの店が、うどん、そば、ラーメンの3つに分かれお客さんの投票で頂点を競い合うヌードルフェスなるものを開催している。

前回来た時は沖縄そばを食べたが、あの時食べなかったラーメンも気になり、再び足を伸ばしたのだ。

 

一応、他の人もそれとなく誘ってみたが、友奈と東郷は家族で出掛けるらしく申し訳なさそうに2人に謝られた。

 

ちなみに風と樹ちゃんは誘わなかった。

なにしろ明日は風の誕生日。

イネスに来たのは風に渡す誕生日プレゼントを選ぶためでもある。

そのため風は誘えないし、樹ちゃんだけとなると正直、風がついてきそうで悩んだので結局2人に内緒という事にした。

 

つまり今日のメインはプレゼント選び。

ついででイベントを楽しもうというわけだ。

 

 

〜〜〜〜〜 イネス 〜〜〜〜〜

 

 

というわけで、やってきましたイネス!

楽しみがあると自然とテンションが上がるね!

 

「と言っても、流石に考えることは同じかな……」

 

前回来た時は特に催し物などの無い日だったにも関わらず人が多かった。

今回はそれ以上の人、人、人……。

どうやらヌードルフェス以外にもヒーローショーなどのイベントもあるらしい。

 

「……ま、しょうがない。とりあえずプレゼントの候補を見ていこうか」

 

 

 

しばらくフラフラと商品を見て回り候補を選んでいると、ふと見覚えのある顔とすれ違い足を止める。

 

「あれ?もしかして……」

 

声をかけられた気がして振り向くと、鉄男くんと銀ちゃんが立っていた。

突然の久しぶりな遭遇だった。

 

「やっぱり、翔一兄ちゃんだ!」

 

そう言って嬉しそうに駆け寄ってきた鉄男くんを受け止める。

 

「おお、鉄男くんと銀ちゃんだ」

「久しぶりだな!翔一兄ちゃん」

「お久しぶりです、翔一さん」

 

鉄男くんを追いかけてきた銀ちゃんとも挨拶を交わす。

 

「うん、久しぶりだね。2人も買い物かな?」

「そうだぜ!ほら、母の日ってあるだろ?だから姉ちゃんと母ちゃんに渡すプレゼントの下見に来たんだ!兄ちゃんは?」

「僕は友達が明日誕生日でね、サプライズでプレゼントを渡そうかなって、見に来たんだ」

「なら、一緒に回ろうぜ!なぁ、いいだろ、姉ちゃん」

 

正直、一人で回るのには飽きがきていたので、鉄男くんの誘いは嬉しかった。

 

「こらっ、鉄男!翔一さんにだって予定があるでしょ!」

「あー……僕で良ければご一緒させてもらおうかな」

「やったー!」

「すみません、弟のわがままに付き合ってもらって」

「いいの、いいの、僕も1人はつまらなくなってきたところだったからね」

 

人は多い方が楽しいからね!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「これとかどうだろう?」

「派手!」

「ちょっと主張が激しいような……」

「じゃあ、こっちは?」

「地味!」

「今度は弱いような……」

「うーん……よし、次!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「伊達メガネだって、どう?」

「変だな!」

「鉄男くんって、意外と毒吐くよね……」

「えっと……どう、ですか?」

「…………ッ!」

「やっぱ、姉ちゃんは赤が似合うな!」

「そうかなぁ……って、翔一さん!?」

ぎん……かわ……」

「あ、死んだ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「姉ちゃん!翔一兄ちゃん!見て見て、これかっこいい!」

「……え、何それ」

「えっと……キ、キング、ストネ?だって!」

「「 お い て こ い 」」

「じゃあ、こっちのリボルk」

「「 戻 し て こ い 」」

「ちぇー」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

あれよあれよと言う間にすっかりお昼時になったので、3人で昼食を済ませた。

少しぶらつくと、変わったカートの出店があった。

 

「……オッティモ?ジェラート?」

「ぁん?翔一兄ちゃん、どうしたの?」

 

その店名と看板に、なんとなく見覚えのあるような無いようなそんな感じがして立ち止まると、気付いた鉄男くんが聞いてくる。

 

「いや、変わった店だなーって、ほらあの看板の"しょうゆ豆ジェラート"ってきいたことないn」

「っ⁉︎どこですか!

 

なんか銀ちゃんがすごい食い気味に聞いてきた。

その勢いに少し圧される。

 

「え、あ、ほら、そこの柱の近く」

「ちょっと行ってきます!」

「ちょ、銀ちゃん⁉︎どうしたの⁈」

 

突然、出店へと走り出す銀ちゃんに驚きつつ追いかける。

 

追いつき、事情を聞くとどうやら"しょうゆ豆ジェラート"なるものは銀ちゃんの大好物らしい。

 

とりあえず興奮気味の銀ちゃんを落ち着かせ、改めてジェラートを買いに行く。

銀ちゃんは当然のようにしょうゆ豆ジェラート、

鉄男くんはシンプルにミルク味、

僕はせっかくだからオススメのしょうゆ豆ジェラートを買った。

 

買う際に販売員のお姉さんに銀ちゃんとカップルと間違えられたのはご愛嬌。

 

 

 

 

ジェラートも食べ終わると、いい感じに時間が経ったのでヒーローショーを見るためにイベントホールに向かう。

 

鉄男くんは他にいた子ども達と同じようにステージ近くに行き、僕と銀ちゃんは少し離れたベンチに座った。

 

「……あの、翔一さん」

「ん?なんだい、銀ちゃん」

 

ヒーローショーが始まってしばらくすると、隣り合って座る銀ちゃんが話しかけてきた。

 

「さっきは、その、はしゃいでしまってすみません……」

「いやいや、はしゃぐ銀ちゃんは可愛かったから、寧ろありがとう」

「ふぇ⁉︎か、かわいいだなんて……」

 

素直な感想を伝えると、頬を赤らめる銀ちゃん。

しかし、すぐに険しい顔になる。

 

「…あの……相談が、あるのですが」

「ほほう、何の相談だい?僕に話してみタマへ」

 

気負わずに話し出せるよう少し気安い感じで答える。

 

「……実は私、記憶が無いんです」

「……え?」

 

隣に座る彼女からの突然の告白に驚き、気の抜けた声が出る。

周りの音が全て遠のいた気がした。

 

「ある日、目が覚めるとなぜか病院のベットに寝ていて、あなたは大きな事故に巻き込まれたって言われました」

「…………」

 

ポツリと零した言葉は、次第に堰を切ったように勢いを増した。

 

「……右腕が無くなってて、右耳も聞こえなくて、しかも事故のショックで2年もの記憶が思い出せなくなって……家族はこんな私を支えてくれるけど……ッ…ずっとお荷物なんじゃないかって、足手まといじゃないかって苦しくてっ……でも、こんな事…家族に言えなくて」

 

その言葉に嗚咽が混じり、目尻には今にも溢れそうな大粒の涙を浮かべていた。

 

 

「私は……どうすればいいですか?」

 

 

解け出すように、吐き出すように話す言葉に感情がのり、涙とともに溢れ出す。

 

あまりに重く、切実な悩み。

 

彼女はこれを誰にも相談できずに抱えてきたのだ。

お気楽だった数分前の自分を殴りたくなった。

 

「…………」

「あ、ご、ごめんなさい。いきなりこんな不快な話聞かせてしまって……」

 

中途半端な答えは出せない考えこむと、困惑していると勘違いしたのか銀ちゃんが謝ってきた。

流石に何も答えないのは勇気を出して打ち明けてくれた彼女に不誠実だ。

あやすように彼女の背中をさすり、自分なりの答えを伝える。

 

「ううん、謝らなくていいよ。それだけ僕を信用してくれてるって思うから。……正直に言うと、僕は君の求める答えをあげられないかもしれない」

「…………」

「年上といっても一つしか違わないし、そんなに人生経験が豊富ってわけでもない。ただ……」

「ただ……?」

「ただ、僕はもっと家族を頼ればいいと思う」

「家族を、頼る……」

「うん、君が家族に負い目を感じてるのは分かるよ。それはきっと君が優しいからなんだろうね。さっきも困っている子を見てすぐに動いたでしょ?誰かを助けようと動ける優しさが君にはある」

「優しさ……」

「そして、それは君の家族も同じなんだよ。支えて、支えられて、寄り添って……その人への優しさと愛しさがあって、家族ってそういうものなんじゃないかな」

「…………」

 

これは僕の理想であり希望でしかないけど、鉄男くんや以前会った銀ちゃんの両親はそんな感じがした。

 

「……ありがとうございます。少し楽になりました」

「そう、それなら良かったよ」

 

楽になった。そう言う彼女は先程よりも明るい表情をしていた。

 

 

 

「でも驚いたよ、銀ちゃんもだなんてさ」

「私も?」

「……実はさ、僕も無いんだよね、記憶」

「……へ?」

 

今度は銀ちゃんが驚く番だった。

まぁ、普通は悩みを打ち明けた人も記憶喪失とか思わないよね。

 

「僕はここ2年以前の記憶が無い。初めは名前も分からなかったんだよ?」

「名前も、ですか?」

「そ、だから僕は自分を見つける手がかりを探してる……って言うとなんかかっこよくない?」

「……それを言わなければ、かっこよかったですよ!」

 

しんみりした空気は好きじゃないから、とぼけてみせるとツッコミを入れてくれる銀ちゃん。

……ちょっとは元気が出たのかな?

 

「てな訳で、はいコレ」

「これは?」

「僕の連絡先。何かあっても無くても連絡してくれてオッケーだよ。今日みたいなお悩み相談、とかね」

「……ありがとうございます!」

 

お礼とともに花が咲いたような笑顔を向けられると、どこか照れくさくも懐かしい気持ちになった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

その夜、なんとなくテレビを眺めているとNARUKOの通知音がなった。

 

[今日は相談にのっていただきありがとうございました。]

 

送信者は連絡先を渡した銀ちゃんからだった。

その日のうちにお礼を言ってくるあたり、やっぱりこの子は優しい子だ。

 

[どういたしまして。あと、そんなにかしこまらなくて良いよ〜٩( ᐛ )و]

[何ですかその顔文字っ⁉︎]

[なんか元々はいってたやつだよ?]

[そんなのがあるんですね……って、そうじゃなかった。]

 

ボケを拾ってツッコんでくれるのでこの子にはツッコミの才能がある。

しかし、なにやら本題があるらしい。

 

[どうしたの?]

[以前お会いした時に私、翔一さんが知り合いに似てるって言いましたよね?]

[あー、そういえば言ってたね。]

[その知り合いの名前は分からないのですが、何人かと一緒に写っている写真があったので、もしかしたらと思いまして]

[僕の手がかりかもってこと?]

[はい。髪の色とか違いますが翔一さんによく似ているんです。この写真です。]

 

そのメッセージとともに1枚の画像が送られてきた。

 

[この写真は私が事故に遭う数ヶ月前に撮られたものなんです。]

 

その写真には中央で仲良さげにくっついている体操服姿の銀ちゃんと、

恥ずかしげにしている後ろで髪をまとめた黒髪の少女、

見覚えのあるリボンをしている金髪の少女。

その後ろで3人を微笑ましく見ているキャップを被ったメガネの女性。

 

 

そして、苦笑いで満更ではなさそうな表情を浮かべる黒髪の少年。

 

 

「なに、これは……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

[あの……翔一さん?]

 

どうやらしばらく固まっていたようだ。

心配した銀ちゃんがメッセージを送ってきた。

 

[ごめんごめん、いやー、銀ちゃん可愛いなぁ、って見惚れてた。]

[そそこしゃないてめす!]

[……すごい誤字ってるよ?]

[もう!寝ます!おやすみなさい!]

[あ、うん、おやすみ]

 

 

……怒らせちゃったかな?

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

布団にうつ伏せで寝転びながら今日あったことを思い出す。

かわいいだなんて、こんなに言われたのは今日が初めてだ。

思わず翔一さんの顔が浮かんでは頬のあたりが熱くなる。

熱さを誤魔化そうと枕に顔を埋め、足をばたつかせる。

 

「姉ちゃん、なに騒いでんの……って、顔真っ赤だよ!?母ちゃーん!姉ちゃんが……」

 

弟の鉄男が、私の騒がしさに部屋へとやってきた。

私の赤くなった顔を見て、風邪と勘違いしたのか母を呼びに行ってしまった。

 

「銀!大丈夫!?具合はどうなの!!」

「大丈夫だよ、お母さん。鉄男の勘違いだって」

 

すぐに焦った顔の母がやってきて矢継ぎ早にしてくる質問に答える。

 

「そうね、顔色も悪くないし、熱も無いわね。良かったわ」

「母ちゃん、姉ちゃんは?」

「大丈夫よ。アンタの勘違い」

「えー、でも、本当に真っ赤だったよ?……はっ、分かった!翔一兄ちゃんだな!」

 

変なところで鋭い弟である。

 

「ち、違うから。全然そんなんじゃないからね!」

「翔一くんって、この前会ったあの男の子のこと?」

「そうだぜ!今日またイネスで会ったから一緒に色々見て回ってたんだぜ!」

「へぇー、また会ったのねぇ……」

 

何やら母がニヤッと笑った気がした。

 

「もうちょっと詳しく教えてね、銀」

 

私の1日はまだ終わらなかった。

 

 




だってこれ かっこいいんだもん てつお


なんだかネタキャラみたいな鉄男くん。書いてて楽しかった。

そろそろ物語を加速させたいところ。
ちょっとリアルが大変だけど頑張ります!

あ、それと言い忘れてましたが、私は銀ちゃんとなっち、タマっち推しです。
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