Change yourself,Keep yourself. 作:バーテックスケベ
何故か筆が全然進まず、更新が滞ってしまいました。
すまない。
だが、これも全部乾巧って奴の仕業なんだ(責任転嫁)
ヤギ座の襲来から数日後の放課後、勇者部の部室には新しい部員がやってきていた。
「正直、転入生のふりなんて面倒くさいけど、私が来たからにはもう安心ね、完全勝利よ!」
自信満々といった様子で宣言するのは、先日の襲撃から仲間に加わった三好夏凜ちゃんだ。
「なぜ今このタイミングで?どうして最初から来てくれなかったんですか?」
「私だってすぐに出撃したかったわよ……でも、大赦は最強の勇者を完成させる為に、二重三重に万全を期したのよ」
「最強の、勇者……?」
「そ、あなた達先遣隊の戦闘データを基に完璧に調整された、完成型勇者……それが私」
東郷の質問に答えると、自慢げにスマホを取り出しこちらへ向ける。
「私の勇者システムは対バーテックス用に最新の改良を施されている。その上、お役目の為に戦闘の訓練を長年受けているわ」
「へぇー、なんだか頼もしいです」
「そうよ、だから大船に乗ったつもりでいなさい」
「よろしくね、夏凜ちゃん!ようこそ、勇者部へ!」
「ちょ……部員になるなんて話、一言もしてないわよ⁉︎」
「違うの?」
「違うわ、私はあなた達を監視する為にここに来ただけよ!」
「もう、来ないの?」
「うっ……く、来るわよ、お勤めなんだから」
友奈の子犬のようなしょんぼりとした顔にたじろぐ夏凜ちゃん。
「じゃあ、部員になっちゃった方が話が早いね!」
「ま、まぁ、そういうことにしておきましょうか。その方が監視しやすいでしょうしね」
「監視監視って、アンタね見張ってないと私達がサボるみたいな言い方やめてくれない?」
「……そうね、少し違ったわ。監視というよりは監督ね」
「あのー……」
「ん?何よ」
何やらおずおずと言った感じで樹ちゃんが夏凜ちゃんに話しかけた……あっ。
「夏凜さんの精霊が……」
「私の精霊……?、って、ああああ⁉︎」
夏凜ちゃんの武将のような精霊が友奈の牛鬼にむしゃむしゃされていた。
なんでも食べようとするなこの子。
「な、な、な、何するのよ⁉︎このくされチクショー!」
『外道め!』
急いで牛鬼を引き離し、自身の精霊を大事そうに抱きしめる夏凜ちゃん。
「外道じゃないよ、牛鬼だよ。ちょっと食いしん坊君なんだ〜」
「自分の精霊のしつけくらいちゃんとしなさいよ!」
「牛鬼に精霊をかじられてしまうから、みんな出しておけないの」
「じゃあそいつ、引っ込めなさいよ!」
「この子、勝手に出てきちゃうんだよ〜」
「はぁ⁉︎あんたのシステム、壊れてんじゃないの⁉︎」
「……ど、どうしよう夏凜さん」
「今度は何よっ⁉︎」
「夏凜さん、死神のカード……」
「勝手に占って、不吉なレッテル貼るんじゃないわよ!」
一気にツッコミを入れて疲れたのか肩で息をする夏凜ちゃん。
「はぁ……はぁ……、なんでこんな奴らが神樹様の勇者に選ばれたのよ……」
「なんでなんだろうね……あ、お茶飲む?」
「……貰うわ」
歓迎と労いの意を込めて飲み物を渡す。
「はい、どうぞ」
「……ありがと」
「どういたしまして……これからも、ツッコミ頑張ってね」
「っ、ツ、ツッコミちゃうわ!」
「おお、その意気だよ、夏凜ちゃん!」
「う、うがぁぁぁあ!」
僕に続くように友奈が励ましたら、夏凜ちゃんは突然頭を抱え、叫びながら部室を出て行ってしまった。
「あー、どこ行くの夏凜ちゃーん!」
「鞄、置いってってるよー!」
僕と友奈で走り去った夏凜ちゃんを追いかけた。
「早速、2人の洗礼を受けてるわね……あの子」
「ふむ……なかなか見込みがありますね」
「いや東郷、アンタもかいっ!」
その後、友奈が夏凜ちゃんを捕まえ入部届を書いてもらい、その日は解散となった。
〜〜〜〜〜 翌日 〜〜〜〜〜
昨日と同じく夏凜ちゃんは再び勇者部の部室に来ていた。
「今日は情報の交換と共有よ!分かってる?アンタ達が私の足を引っ張らない為にもしっかり覚えなさい」
「……煮干し?」
「なによ、煮干しは完全食よ。あげないわよ……!」
「では、私のぼた餅と交換しましょう」
「……何それ」
「さっき家庭科の授業で……いかがですか?」
「い…いらないわよ」
返事の仕方からして、気になっていそうだけど……。
夏凜ちゃんは乱れたペースを整えるように咳払いを1つすると話し始めた。
「とにかく本題に戻るわよ!……バーテックスの出現は周期的なものと考えられていたけど、相当に乱れてる。これは異常事態よ……帳尻を合わせるため今後は相当な混戦が予想されるわ」
「確かに、1ヶ月前も複数体出現したりしましたね」
「さらにヒルコの進化も合わせると……最悪、命を落とすことになるわ。それぐらいは分かってるでしょうけど」
「…………」
改めて言葉にされて、全員が息をのむ。
「でも、こっちだって打つ手がないわけじゃない。戦闘経験値を貯めることで勇者はより強くなる、それを"満開"と呼んでいるわ」
"満開"……花が咲くとかの満開かな?
そういえばみんなの変身の時にも花びらが舞っていたような……。
「満開を繰り返すことでより強力になる、これが大赦の勇者システム」
「へー、すごい!」
「三好さんは満開経験済みなんですか?」
「……いや、まだ……」
夏凜ちゃんは前日にあれほど言った手前、恥ずかしいのか少し目を伏せる。
「なーんだ、私達と変わらないじゃない」
「なっ、基礎戦闘力が桁違いなのよ!一緒にしないでもらえる⁉︎」
「じゃあじゃあ、鍛えるために朝練しましょうか!運動部みたいに!」
「あ、いいですね」
「樹、アンタは朝起きられないでしょ」
「友奈ちゃんも起きられないでしょ?」
「「 ゔっ 」」
友奈の提案に賛成した樹ちゃんだが、互いに自分をよく知る人につっこまれ短く呻く。
「……はぁ……なんでこうすぐに緩い雰囲気になるのよ……」
「なせば大抵なんとかなる!」
「……なにそれ?」
「勇者部五箇条!」
「"なるべく"とか"なんとか"なんて随分とふわっとしてるのね……」
どこか諦めたような表情でため息を吐く夏凜ちゃん。
そこへ手を打ち、注目を促す風。
「はいはい、この話はここまで。それじゃあ次の話、勇者部は忙しいのよ?」
「……と、いうわけで今週末は子供会のレクリエーションをお手伝いします」
全員が樹ちゃんの説明をプリント片手に聞く。
「具体的には?」
「えーっと、折り紙の折り方を教えてあげたり、一緒に絵を描いたり、やることはたくさんあります」
「わぁ、楽しそう!」
「翔一と夏凜には……暴れ足りない子のドッジボールの的になってもらおうかしら?」
「的かぁ……」
「ふーん……っていうかちょっと待って、私もなの⁉︎」
大人しく説明を聞いていた夏凜ちゃんが風の発言に驚いた声を出す。
「昨日、入部したでしょ?」
「け、形式上……」
「ここにいる以上、部の方針に従ってもらいますからね〜」
「それはそうだけど……けど、私のスケジュールだってあるわ!」
「夏凜ちゃん、日曜日用事あるの?」
「い、いや」
「じゃあ親睦会を兼ねてやった方がいいよ、楽しいよ!」
「なんで私が子どもの相手なんかを……」
「嫌……?」
「ぁ……わ、分かったわよ!日曜日ね……その日はたまたま空いてるわ」
「やったぁ!」
「良し!これでみんな揃ったわね」
それから折り紙で教えるものを決めたり、劇の段取りを確認したりして、わいわいとしながらも話を進め、帰り際に折り紙の本を夏凜ちゃんにも渡しておいた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時間はとんで日曜日、今日お手伝いをする児童館の前に、夏凜ちゃん以外の全員がすでに集まっていた。
しかし、肝心の夏凜ちゃんが来ておらず、時間も後10分くらいで決めていた集合時間になる。
「うーん、夏凜ちゃん、遅いなぁ……」
「道に迷っているのでしょうか?」
「一応、学校からの地図はプリントの裏に描いといたけど……もしかして気付かなかった?」
「とりあえず、もう少し待ってみるワ。樹と友奈と東郷の3人は先に準備しててくれる?」
「「「 はーい 」」」
その後、時間を過ぎても夏凜ちゃんは来なかった。
「夏凜ちゃん、どうしたんだろう……」
「友奈が電話してみたんだよね、どうだった?」
「それが電話が切れちゃって……」
「私がかけ直してみたけどダメだったわ、電源が入ってないって」
「うーん……夏凜ちゃんって意外とおっちょこちょいなのかな?」
切れちゃったってことは充電し忘れたとか?
しかし、これはわりと困った事態になった。
「しょうがないけど計画変更! このお手伝いが終わったら様子見も兼ねて、夏凜の家を訪ねてみましょう」
「そうだね。それが良いかも」
「てな訳で、この後も頑張ること!オッケー?」
「「「「 オッケー! 」」」」
友奈と一緒に元気が有り余っている子たちを相手にドッヂボールをしていると、友奈がボールを取りこぼしてアウトになり、僕1人になってしまった。
「へへっ、後はにーちゃんだけだなっ!」
「オレたちの勝ちだな!」
相手チームの子らは、何やらすでに勝った雰囲気になっている。
「まだだ……来いっ!僕は絶対に、負けないっ!」
この後、滅茶苦茶ドッヂした。
〜〜〜〜〜 とあるアパート 〜〜〜〜〜
三好と書かれた表札の部屋のチャイムを鳴らしまくる友奈。
テンションが高いのかときどきリズムを刻む。
「……流石に押しすぎじゃないかな?」
「そうかもね……友奈、ストップ!」
「はいっ!」
友奈がチャイムのボタンから指を離すと同時に扉が開き、中から木刀を構えた夏凜ちゃんが出てきた。
「誰よっ!」
「「「 うわーっ!? 」」」
「……あれ?アンタたち」
「アンタね、何度も電話したのに、何で電源オフにしてんのよ!」
「え? あ……そ、そんな事より全員揃って何の用よ?」
「何?じゃないわよ、心配になって見に来たのよ」
「……心配?」
夏凜ちゃんは今日の事に思い当たったのかバツの悪そうな顔をする。
「でも、よかったぁ、寝込んでたりしたんじゃないんだね〜」
「え、えぇ……」
「んじゃ、上がらしてもらうわよー」
「「「 おじゃましまーす 」」」
「うぇっ⁉︎ちょっ、ちょっと何勝手に上がってんのよ!」
夏凜ちゃんの返事も聞かずに入っていく4人。
同性の彼女たちと違って、女の子の部屋に勝手に上がるわけにはいかないので、部屋の主に伺ってみる。
「えーっと……入ってもいい?」
「…………いいわよ」
大丈夫だった。
「はぁ……殺風景な部屋」
「引っ越したばかりはこんなもんだと思うよ」
「どうだって良いでしょ」
「ま、いいわ、ほら座って座って」
「な、何言ってんのよ!」
「これ凄い、プロのスポーツ選手みたい!」
「勝手に触らないで!」
「わぁー!……水しかない」
「勝手に開けないで!」
みんなが好き放題している間に、買ってきてたお菓子や飲み物をテーブルの近くに下ろし、東郷が車椅子からソファへと移るのを手伝う。
「風の言う通り、買ってきて正解だったね」
「でしょ?これぞ女子力ってもんよ!」
「ちょっとさっきから何なのよ!」
我慢ならないといった様子で夏凜ちゃんが声を上げる。
「はいっ!夏凜ちゃん、ハッピーバースデー!」
「…………は?」
「「夏凜ちゃん、お誕生日おめでとう!」」
友奈のお祝いの言葉と同時に東郷が持っていたケーキの箱を開け、僕が手に持っていたクラッカーを鳴らす。
「 え? 」
「アンタ、今日誕生日でしょ? ほらここ、入部届に書いてあるじゃない」
「あ、うん」
「それ、友奈ちゃんが気付いたんですよ」
「えへへ、あっ!て思っちゃった。だったらお誕生日会しないと!って」
「歓迎会も一緒にできるねーって」
そう続けた樹ちゃんに頷く友奈。
「本当は子供たちと一緒に児童館でやろうと思ってたの」
「当日に驚かそうと思って」
「でも、当のアンタが来ないんだもの、焦るじゃない?」
「迎えに行こうかって話もしたんだけど、子ども達が激しく盛り上がっちゃってさ……」
「最上先輩もですよね……?」
「あははは……ごめんなさい」
「だから、こんな時間まで解放されなかったのよ、ごめんね」
夏凜ちゃんは俯きながら黙って話を聞いていた。
その様子に気付いた風が呼びかける。
「お?どうした?」
「夏凜ちゃん……?」
「ひょっとして、自分の誕生日も忘れてたー?」
「……バカ……ボケ……おたんこなす」
意外なことに返ってきたのは罵倒の言葉だった。
流石にいきなりは迷惑だったか……。
「な、何よそれ⁉︎」
「誕生日会なんてやった事ないから!……何て言ったら良いのか…分かんないのよ」
と思ったら、反応に困った末の言葉らしい。
全員が顔を見合わせ頷き合う。
「お誕生日おめでとう、夏凜ちゃん」
『『 かんぱ〜い! 』』
カツッというプラコップのぶつかる軽い音が部屋に響く。
「ハッハッハ、飲め飲め!」
「ちょっ、コーラで酔っ払うんじゃないわよ!」
「こういうのは気分なのよ、気分。楽しんじゃえるのが女子力じゃない?」
「その女子力ってなんなのよ……」
まるで典型的な飲み会の席の上司のような絡み方をする風。
「……ここと、ここは勇者部の予定と、あとここは私たちの遊びの予定、っと」
「勝手に書き込まないで!」
大人しいと思ったら、友奈は壁に掛けてあるカレンダーにこの先の予定を書き込んでいた。
「勇者部は土日に色々活動があるんだよ」
「忙しくなるわよー」
「勝手に忙しくするな!」
「そうだよ忙しいよ。文化祭でやる演劇の練習とかもあるし!」
「え?」
「え?」
「演劇?」
友奈以外の全員が疑問符を浮かべる。
文化祭の出し物で演劇かぁ……保育施設のお手伝いで子どもたち相手にやり慣れてるから悪い案ではないと思う。
「もしかして、私の中の勝手なアイデアを口走っちゃっただけ…かも……」
「それ良いじゃない!よし、勇者部の文化祭での出し物は演劇でいきましょう!」
「確かに。劇なら何度かやっているし、そう難しくはないんじゃないかな」
「というわけで、期待してるわよ夏凜」
「私を巻き込まないでー!」
夏凜ちゃんはそう風に言い返すがどことなく嬉しそうだった。
その後も、誰かがボケては夏凜ちゃんがツッコんだり、持ってきたパーティーゲームに白熱したりと、他愛なく楽しい時間は過ぎていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あいつらゴミを大量に増やしていって……まったく、どれだけ食べるのよ」
片付けながらつい独り言がこぼれる。
誕生日を家族以外に祝われるなんて初めてだった。
いや、家族に祝われたのだって随分と前の事のように思う。
ひたすらに自分を鍛える日々しか過ごさなかったから。
だからだろうか、アイツらの騒がしさにどこか心地よさを感じていた。
1人になり、静かになった部屋に物足りなさを感じた。
「……ハッ!別に寂しくは……ないし」
ふと気付くとスマホに先程入れさせられたメッセージアプリのグループへの招待が来ていた。
「なにこれ?」
アプリを起動するとメッセージが1件入っていた。
(風)[あんたも登録しておいてね。今日みたいに連絡の行き違いが無いように]
発信者は犬吠埼風からだった。
読んでいる間にメッセージが2件追加された。
(樹)[これから仲良くしてくださいね。よろしくお願いします。]
(東郷)[次こそはぼた餅食べてくださいね。有無は言わせない。]
今度は犬吠埼樹と東郷美森からだ。
「ぼた餅って……」
先日に断ったことを言ってるのだろうか?
また2件の追加があった。
おそらくまだメッセージの無い結城友奈と最上翔一だろう。
(友奈)[ハッピーバースデー夏凜ちゃん!学校のことや部活のことでわからないことがあったらなんでも聞いてね。]
(翔一)[Happy Birthday!ここから君の青春が始まるのだ!]
(東郷)[最上先輩、ここは友奈ちゃんに合わせてカタカナにするべきです。横文字を使うとはまだまだ愛国心が足りません!]
(翔一)[申し訳ありません、大佐!( ̄^ ̄)ゞ]
(東郷)[よろしい]
なんだか文字でも騒がしい連中だった。
「はぁ……了解、っと」
短く一言で返信する。
(友奈)[わ、返事が返ってきた]
(風)[ふふふ、レスポンスいいじゃない]
(友奈)[わーーーい]
(樹)[わーーーい]
(東郷)[ぼた餅]
返信をしたらいきなり送られてくるメッセージに慌ててしまう。
(夏凜)[うっさい!!]
(風)[ぶはははははは]
(東郷)[ぼた餅]
(翔一)[ぼた餅]
とっさに返してしまった乱暴なメッセージでも楽しげな反応が返ってくる。
「なんなのよ、もう」
つかみどころのなさに今日何度目かの疲れを感じる。
(友奈)[これから全部が楽しくなるよ!]
そんなメッセージとともに1枚の画像が送られてきた。
それは先程撮った私も含めた全員が写っている写真だった。
「『全部が楽しくなる』か……世界を救う勇者だって言ってるのに……バカね」
言葉とは裏腹に胸に感じる温かさは心地良かった。
もし、御役目が無事に終わったのなら…………
まぁ、実際に筆が進まなかった理由として考えられるのが、お絵描きしたり別の事してたので集中力がなかったせいですかね……。
アギトウォッチ欲しい。俺を仮面ライダーにしろ。