Change yourself,Keep yourself.   作:バーテックスケベ

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ガチャを回したらゼロノスライドウォッチが出たので初投稿です。


ちょっとぶつ切り感が否めない……。



第10話 変わるもの、変わったもの

最近は朝起きてから寝ていた布団をチェックする。

 

「……うん、オッケーだね」

 

ここのところ夢見が悪く、変な夢を見る。

 

その夢で僕は周りが真っ暗な中、スポットライトに当てられたような場所にいて、次第に足元から花が咲き始める。

 

あまり花には詳しくないけど、たしか……バラや菊、桜、朝顔などといった様々な花だった。

 

それらの花が足元を埋めるなか、僕はそっとしゃがんで花に触れようとする。

 

触れようとする花は見るたびに変わる。

 

手が近づくほどに花は咲き誇り、やがて()()になる。

 

そして、指先が触れる瞬間ハラリと散りだす。

 

それは連鎖的に全ての花に起こり、終いには散って色あせた花びら以外何も残らない。

 

その花びらも最後は風に攫われて全て無くなってしまう。

 

そんな夢を見たせいなのか、目を覚ますと涙を流している時もあった。

 

涙を流す以外にも布団が吹き飛んで部屋の隅にあったり、着ているものなどが焦げていたりした。

 

何が僕の心をここまで掻き乱すのか分からない。

 

失った記憶に関するものなのかも分からない。

 

分からないから仕方がないと鎌首を持ち上げる不安を押し殺し、僕は日常を謳歌する。

 

 

 

 

みんなに心配はかけられない。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜 学校 〜〜〜〜〜

 

 

 

 

今は体育の授業中で、校庭にて2クラスの男子合同でサッカーをしていた。

僕のいる班はお休みで、グラウンドの端により友兎と一緒に他の班の試合を眺めていた。

ときどき校舎の方からピアノの音が聞こえる。

ふと隣で試合を見ていた友兎が口を開いた。

 

「突然なんだけどさ……」

「ん?どうしたの?」

「俺……転校することになった」

「 へー……へ? 転校!? 」

 

本当に突然の予告に自分が思っていたよりも大きな声が出る。

 

「ばっ、声がデカイって」

「あ、ごめん……でも、なんでこんな時期に?」

 

中3のこんな時期に転校なんておかしい気がする。

 

「一応言っておくが、実際に転校するのは夏休み明けだぞ」

「急だね……なんでか分かるの?」

「正直、俺もよく分からない。俺の家は転勤が多いし……だが、青もって話だからもしかしたら本家が絡んでるのかもな」

 

本家……?あ、思い出した。

去年の冬休み前に正月の話題でそんな話をした。

本家の集まりが〜とか、青がぼやいていた。

 

「そういえば2人とも名家の生まれってやつだっけ。忘れてたよ」

「……まぁ、だいたい合ってるぞ。何かあると集まらなきゃいけないから面倒ではあるがな」

「そっか……じゃあ、送別会しないとね! 」

「ふっ、楽しみにしてる」

 

1年と短かいけど転入してきてから仲良くしてくれた2人だから、プレゼントを贈りたいな。

 

またイネスでも行ってみようか。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

その日の放課後、部室に向かいながら風に友兎たちの転校を伝えようとしたら、風も青に聞いたらしくすでに知っていて、僕と同じ事を考えていた。

 

何をしようかと話していると友奈たちがやってきたので、一旦区切り部活を始める。

 

……といっても今は特に依頼も無いから部室にいるんだけどね。

 

 

 

「うーん……この写真はここで! うん!バッチリだ!」

 

友奈は勇者部の活動を記した新聞のようなものに貼る写真の位置を決め、納得の声を上げる。

 

「…………」

 

東郷は無言ながらもとてつもない速さのタイピングで勇者部のホームページを更新していた。

 

「ん〜……あー、もう、ストーリーが思いつかん!」

 

正面で原稿用紙に向かって文化祭での演劇のストーリーを考えていた風がうなる。

原稿用紙を覗き込んで書かれている文字を読んでみる。

 

「どれどれ、『四国湯けむり英雄事件〜瀬戸内海に消えた美人勇者の裏に隠された愛憎とカリスマの物語』……ナニコレ?」

 

ミステリーなのか、はたまたラブストーリーなのか……とにかく要素が多いせいで全く内容が分からない。

というかどちらにしても配役が大変になりそう。

 

「とりあえず、どんなジャンルにするか決めたら?いつもやる勇者と魔王のやつとかどう?」

「あー、その手もあるわね……てか、夏凜は何食べてんの?」

「? にぼし」

「学校でにぼしを貪り食う女子中学生は夏凜くらいね」

「健康に良いのよ」

「じゃあ、これから夏凜のこと"にぼっしー"って呼ぶ!」

「ゆるキャラにいそうな名前つけるな!」

 

煮干しでとった出汁をブシャァってやりそう。

 

「そういえばにぼっしーちゃん」

「待って!その名前定着させる気⁉︎」

「それより、飼い主探しのポスターは?」

「ん?そんなのもう作ってあるわ」

 

そう言ってポスターを取り出す夏凜ちゃん。

 

「わー、ありがとう!」

「ふふーん!」

 

自慢げな顔をしてるけど…これは……

 

「えっと……妖怪?」

「猫よ!」

「……まぁ、人間誰しも苦手なことくらいあるよ。にぼっしー」

「にぼっしーって言うな!」

 

正直、風と同じくらいの画伯っぷりだった。

 

「はぁ……」

「樹?」

「え、な、なに?」

「どうしたの?ため息なんかついて」

「うん……あのね、もうすぐ音楽の歌のテストで上手く歌えるか占ってたんだけど……」

 

テーブルには何枚かのタロットカードが三角形に広がっていて、その頂点の位置に馬に乗った骸骨の絵柄のカードがあった。

 

「死神の正位置。意味は破滅、終局……」

 

これはまたえらく不穏な結果だ。

 

「当たるも八卦当たらぬも八卦、って言うし気にすることないでしょ」

「そうだよ、こういうのってもう1度やってみたら全く別の結果が出るもんだよ!」

 

風と友奈がそう励ますが嫌な予感がする。

2人の助言を聞き、樹ちゃんがカードを集めて再び占いだした。

 

2回目、死神の正位置

 

3回目……死神の正位置

 

4回目…………死神の正位置

 

 

やり直しを言い出した2人は気まずそうにしている。

ここまでくると何を言ったら良いのか分からず全員が沈黙する。

 

「「「 ………… 」」」

「だ、大丈夫!フォーカードだからこれは良い役だよ!」

「死神のフォーカード……」

 

意を決した友奈がフォローを入れるが逆に落ち込んでしまう樹ちゃん。

 

 

 

「アタシたち勇者部は困ってる人を助ける。もちろんそれは部員だって同じよ」

 

てな訳で作戦会議になりました。

議題は『樹ちゃんを歌のテストで合格させる』こと。

 

「歌が上手くなる方法かぁ……」

「歌声でアルファ波を出せるようになれば勝ったも同然ね」

「アルファ波……?」

「良い音楽や歌というものは大抵アルファ波というもので説明がつくの」

「そうなんですか⁉︎」

「んな訳ないでしょ!」

 

夏凜ちゃんが東郷にツッコむ。

さっきからツッコミしかしてないんじゃ?

 

「あながち間違いではないんだけど、アルファ波を歌声で出すとなると難しいかな」

「そうですか……」

「樹、1人で歌うと上手いんだけどね……人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」

 

それを聞き友奈が納得したようにポンっと手を打つ。

 

「それなら『習うより慣れろ』だね!」

 

 

 

〜〜〜〜〜 カラオケ MANEKI 〜〜〜〜〜

 

 

 

「♪〜〜♪〜〜……いぇーい!聴いてくれてありがとう!」

「お姉ちゃん、上手!」

「ふふ、ありがとう」

 

ノリノリで風が歌い終わり席に戻る。さて、次は誰かな?

 

「ねぇねぇ夏凜ちゃん、この歌知ってる?」

「一応、知ってるけど……」

「じゃあ、一緒に歌おう!」

「な、なんで私が」

「そうだよねぇ、アタシの後じゃあ、 ご・め・ん・ね〜」

 

そう言って風は頬に手を当てながら画面を指差す。

そこには採点機能による点数で92点という高得点が映し出されていた。

 

「友奈、マイクをよこしなさい」

「え?」

「早くっ!」

「は、はい!」

 

 

『 ♪〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜 』

 

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

曲が終わり、全力で歌った2人が息を切らしながら座り込む。

採点結果は風に並ぶ92点だった。

 

「夏凜ちゃん、上手じゃん!」

「ふんっ、これくらい当然よ」

「次は樹ちゃんだね」

「は、はいっ」

 

既に緊張気味な表情の樹ちゃん。大丈夫かな?

 

音楽が始まり画面に歌詞が表示され、樹ちゃんが歌い出す。

 

結果は……まぁ……予想通りに緊張してたとしか。

 

「…やっぱり固いかな」

「うぅ、誰かに見られてると思ったらそれだけで……」

「重症ね」

「はぁ……」

「まぁ、今はただのカラオケなんだし、上手かろうと下手だろうと、好きな歌を好きに歌えば良いのよ」

「そうだね、楽しむことが1番だよ」

「そうそう、気にしない気にしない!さ、お菓子でも食べて……って、あれ⁉︎」

 

中身のないお菓子の包みと、満足げにテーブルの上に横たわる牛鬼の姿があった。

 

「牛鬼は本当によく食べますね」

「食べ過ぎだよ〜」

 

牛鬼にお菓子を全部食べられたことを友奈が嘆いていると、行進曲のような音楽が鳴り始める。

 

「「「「 ハッ! 」」」」

「えっ⁉︎ちょっ、なに⁉︎」

 

夏凜ちゃん以外の全員が立ち上がり敬礼の姿勢をとる。

 

 

 

 

「♪〜〜♪〜〜〜……ふぅ」

 

東郷が歌い終わると敬礼を解いて各々の席に座る。

 

「さっきのって、一体……?」

「東郷さんが歌うときは私たちいつもあんな感じだよ」

「そ、そうなの」

 

まぁ、初めてこれを見たら困惑するよね。

 

「あ、次は僕だね」

「お、待ってました!」

「ははっ、待たせたね。東郷、マイク貸してもらえる?」

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

 

ようやく僕の番が回ってきたので歌います。

テンポはゆっくりめだが歌詞が韻を踏んでいて歌い手の滑舌が試される。

 

「♪〜〜〜♪〜〜」

「わぁ、翔一先輩上手です!」

「へぇ、やるじゃない」

 

風と友兎と青とは何回かカラオケにいったことあったけど、ちょっぴり心配だった友奈たちの反応は良いものだった。

 

「♪〜〜♪〜〜……ふぅ、いやー、久しぶりに歌ったよ」

「そういえば翔一が人前で歌うのって久しぶりじゃない?」

「そうかも。最近はカラオケとかきてなかったね」

「人前で上手く歌えるコツとかあるんですか?」

「んー……さっきも言ったけど、やっぱり楽しむのが1番だよ」

「楽しむ……」

「そ、難しく考える必要なんてないんだよ」

「が、頑張ります」

 

ちなみに僕の採点の結果は89点でした。

 

 

 

 

カラオケ屋から出ると既にあたりは夕日のオレンジに染まっていた。

ここから歩いてそれぞれの家へと帰る。

意外なことに途中まで全員帰り道が一緒だという。

 

「あ〜、楽しかったー!」

「歩いて帰るの久しぶりね」

「うん!でも、カラオケはあんまり樹ちゃんの練習にはならなかったかな……」

「でも、楽しかったですよ。みんなが歌うのを聞けて」

 

そう話しながら前を行く3人の後ろを歩きながら、隣の風を見る。

カラオケの途中、退室して戻ってきてから風の様子がどことなく変だった。

今もそうだ。ときおり考え込むような表情をしている。

 

「風?」

「お姉ちゃん?」

「……え?なに?」

「樹の歌の話よ」

「風先輩、何かあったんですか?」

「う、ううん、なんにも」

 

そう言って風はなんでも無いように笑った。

 

「樹はもう少し練習と対策が必要かな……」

「アルファ波出せるように」

「アルファ波から離れなさいよ……」

「あはは、東郷はブレないね」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

翌日、日直で少し遅れて勇者部にいくと、テーブルの上には様々なサプリメントが並べられており、腕を組んでドヤ顔気味の夏凜ちゃんと困惑顔の友奈たちというちょっとよく分からない光景になっていた。

 

「な、なんか沢山ある……」

「布教活動?」

「違うわよ!……喉に良い食べ物とサプリよ」

 

そう言って夏凜ちゃんは並べられたものを順番に指差して説明していく。

 

「マグネシウムやリンゴ酢は肺に良いから声が出やすくなる。ビタミンは血行を良くして喉の荒れを防ぐ。コエンザイムは喉の筋肉の働きを助け、オリーブオイルとハチミツも喉に良い」

「……詳しい」

「流石です……」

「夏凜ちゃんは健康食品の女王だね!」

「夏凜は健康のためなら死んでも良いって言いそうなタイプね」

「言わないわよ、そんなこと。さぁ樹、これを全種類飲んでみて、ぐいっと」

「えぇ、全種類!?」

「全種類って多すぎじゃ?夏凜でも無理でしょ⁉︎」

 

これを全部は樹ちゃんでなくても酷なのでは?

樹ちゃんにそんな事はさせまいと風が夏凜ちゃんを煽るような大げさな反応をする。

 

「流石の夏凜さんだって……ねぇ?」

「なっ……いいわよ、お手本を見せてあげるわ! うっ」

 

案の定、風に煽られやけ気味に全種類を飲む夏凜ちゃん。

飲みきって数秒もしないうちに顔色が変わって、部室を飛びだしていった。

 

「あー……やっぱりそうなるわよね……」

「諸行無常〜」

「ぷふっ、ちょっと翔一、アンタ結構似てるわね」

「でしょ?実は練習してた」

 

僕の密かな特技として一言モノマネがある。

そうこうしているうちに先ほどよりはマシな顔色になった夏凜ちゃんが帰ってきた。

 

「サプリは1つか2つで十分よ……」

「だ、大丈夫……?」

「えっと、お茶いる?」

 

夏凜ちゃんの顔色もだいぶ落ち着き、試しにサプリを飲んでみた樹ちゃんがみんなの前で歌ってみるも、やはりまだ固い。

 

「喉よりもリラックスの問題じゃない?」

「そうね、次は緊張を和らげるサプリを持ってくるわ」

「やっぱりサプリなんですか⁉︎」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

今日は以前から飼い主を募集していた子猫に貰い手が現れて、保護してくれている人のもとへ子猫たちを引き取りに行く予定だった。

 

しかし、僕だけ緊急の依頼でサッカー部の練習試合の助っ人に来ていた。

どうやら引退した3年生と残りの1・2年生で対決することになっていたが、3年生組の1人が足を怪我したらしくメンバーが足りないそうだ。

内容を聞いたら攻撃と防御の両方をやるミッドフィールダーをやってほしいとのこと。

 

頼られたからには全力でやりますとも!

 

 

結果はなかなかの接戦の末、3対4で勝利した。

 

 

 

 

試合の後、部室に戻ってはみたけど誰もいなかった。

 

流石に汗をかいてそのままなのは気分が良くないし、まだ戻ってきそうにないのでさっさと着替えようと思う。

更衣室を使ってもよかったけど、今は試合の終わったサッカー部の部員たちでごった返していたし、なによりもあまりこの痣を見られたくなかった。

 

ズボンを履き替えて上を脱いだ時、ふと部室の姿見に映った自分の姿が目にはいる。

 

「なんかムキってなったな……」

 

全体的に筋肉質になり、うっすらと腹筋も分かる。

いわゆる細マッチョみたいになってた。

 

「前まではこれほどじゃなかったような……部活のおかげ?」

 

試しに右腕に力を込めてみる。

 

「うわっ、固っ……」

 

その後も以前との違いを確かめていると、部室に近づく足音と話し声が聞こえてきた。

まずい!と思い鍵に手を伸ばす……が、

 

「でね、東郷さんの作るぼた餅がおいし…くて……」

「ふふっ、そんなに褒めてくれるなんて嬉し……あら?」

「ちょっと友奈?どうしっ……って、うぇ⁈」

 

間に合わず、上半身裸の状態で扉の向こう側にいた友奈と東郷、夏凜ちゃん達に鉢合わせる。

友奈は話している途中でフリーズし、東郷は笑顔だがなぜか圧を感じるし、夏凜ちゃんは状況を理解して徐々に顔が赤くなる、という三者三様の反応だった。

 

「し、失礼しましたっ!」

 

耳まで真っ赤にした夏凜ちゃんに勢いよく扉を閉められた。

てか、初めて敬語を使われたことの方が地味にショックだった。

 

「まぁ、僕が悪いんだけど……参ったな」

 

すぐに上も着替えて、3人に謝り倒し、お詫びとしてアイスを奢ることになったがこちらに全面的に非がある。

だから友奈たちがハー◯ンダッツを手に取っていても文句は、言えない……。

 

結局、友奈たちだけでは不公平だからと風と樹ちゃんの分も買い、家庭科室の冷凍庫に入れておいた。

 

 

ちなみに、その後しばらくは友奈や夏凜ちゃんと話すと、なぜか顔を赤くすることが続いた。

 

 

 

今度からは鍵はちゃんと確認しないとダメだね。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ちょっと色々あったけど肝心の樹ちゃんの歌のテスト当日。

みんな気になるのか少しソワソワしている。

 

「樹ちゃん、テスト上手くいったかな……」

「大丈夫よ、だってあの子はアタシの妹なんだから」

「それにアレだってちゃんと仕込んだんでしょ?」

 

アレとは友奈が提案したみんながそれぞれメッセージを書く寄せ書きのことだ。

それを風が樹ちゃんの音楽の教科書に挟み込んで、樹ちゃんが教科書を開いたときに届くというサプライズなのだ。

 

「もちろんよ。抜かりないワ」

「なら大丈夫でしょ。樹ちゃんを信じよう」

 

しばらくすると樹ちゃんが静かに部室に入ってきた。

 

「あ、樹ちゃん!」

「歌のテストは?」

「……バッチリでした!」

 

そう言って樹ちゃんは嬉しそうにピースサインをする。

 

「「「 やったー! 」」」

 

友奈や東郷だけでなく夏凜ちゃんまでもが自分のことのように喜んでいた。

樹ちゃんが友奈、東郷とハイタッチをしていき夏凜ちゃんの番になったときに、なんだか複雑そうな表情の夏凜ちゃんだった。

 

まったく……素直じゃないんだから。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

樹ちゃんが歌のテストに合格したその日の帰り、僕は食材の買い出しの為、風たちとは途中で別れてスーパーに寄っていた。

 

ふと目に入った豆腐のコーナーで絹豆腐に1つだけ混ざっている木綿豆腐。

それを手に取ったとき、思い浮かぶのは僕以外が女子の勇者部。

 

元は同じものでも手が加えられているかいないかで違いがある。

 

勇者である風たちは神樹様の力を受け取るために衣装は変わるけど、見た目に大きな変化はない。

つまり、人の身で神の力を宿し戦う。

 

しかしアギトは変身する。

変身して変化して、戦うために最適化されている。

より強く……特に鍛えているわけでもないのに身体に筋肉がついていた。

より巧く……経験したことのないはずの格闘術を扱えるようになっていた。

より多く……戦う選択肢としてか超能力が使えるようになっていた。

つまり、人の身を辞めることで抗う。

 

 

手に取った木綿豆腐をちゃんとした位置に戻して歩きだす。

 

思考は止まらない。

 

風は自分がみんなを巻き込んだと思っていそうだけど、

 

 

 

 

 

もしかしたら…………

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら、僕がみんなを戦いに巻き込んだのかもしれない。

 

 




実はこの3日間北海道に行ってました。寒かった。
正直、雪花が帰りたくない派でもおかしくないなぁと感じる程度には試される大地でした。
早朝の気温がー12℃でしたし。

まぁ、道東部を巡ったのでカムイコタンには行けなかったのですが、アイヌの伝統舞踊だったり、網走監獄に行ったりなかなか楽しい旅行でした。
この時期のお狐様かわいい。






次回は連投する予定なのでまたまた間が空いてしまいます。
申し訳ナス。
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