Change yourself,Keep yourself.   作:バーテックスケベ

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なんか月一投稿みたいになってる……




第12話 見舞いと妹とプレゼント

バスを降りて感じる日光の暑さ。6月も終わり、正午過ぎの日差しはすっかり夏だ。

 

少し足早に病院の入り口へ向かう。

 

タイミングよく自動ドアが開くと、涼しい風が吹き抜ける。

いつものように受付を済ませて、診察室へと向かうと、その前の廊下で見知った顔を見つけた。

 

「あれ?千夏(ちなつ)ちゃん、久しぶりだね」

 

「ぇ?あ、翔一さん、こんにちは!」

 

その見知った顔とは友兎の妹の千夏ちゃんだった。

友奈に近い赤みがかった茶髪をボブカットにし、前髪を兎を模したヘアピンで留めている女の子だ。

 

彼女の着ている襟が若草色の白いセーラー服は見たことないデザインだが、友兎曰く、全寮制の女子校に行っているらしいからそこの制服だろう。

声をかけるとこちらを見て、読んでいた本を閉じる千夏ちゃん。

 

「こんなところで会うなんて珍しいね。どうしたの?」

 

「えーっとですね……私じゃなくて、友達が足首を捻っちゃったみたいで、私はその付き添いです。翔一さんはどうしたんですか?誰かのお見舞いですか?」

 

そう返した彼女の目線は僕の持つ紙袋に向いていた。

その中には、園子ちゃんへのプレゼントが入っていた。

この前、商店街で見かけてなんとなく園子ちゃんが好きそうだなぁと思い買ったのだ。

 

「それもあるけど僕は定期健診。といってもほとんどカウンセリングみたいなものだけどね」

 

「え、翔一さん、どこか悪かったんですか?」

 

「んー……ちょっとね。それより、どう?準備は進んでるの?」

 

「……準備、ですか?」

 

間が空き、小首を傾げる千夏ちゃん。

 

「あれ?たしか引っ越すんだよね?友兎がそう言ってたけど、もしかしてまだだった?」

 

「ぁ、あー、引っ越しの準備ですか。ちょっとずつやってるみたいですよ。まぁ、私はまだ学校が休みじゃないので、全然手伝えてないんですけどね……」

 

そう言って、千夏ちゃんはあははと軽く笑った。

その後もお互いの近況など世間話に興じていると、診察室のドアが開いて千夏ちゃんと同じ制服の少女が壁に左手をつきながら出てきた。

 

赤味がかった黒髪をポニーテールにし、日焼けなのか肌は千夏ちゃんより褐色めで、少しツリ目がちな可愛いというよりかっこいいという言葉がしっくりくるタイプの女の子だった。

 

「あ、ヒナおかえり。どうだった?」

 

それに気づいた千夏ちゃんが彼女に近づき、その身体を支えて椅子に座らせる。

2人が並ぶと千夏ちゃんより彼女の方が身長が高いようで、腕を自分の肩に回させて支えた。

 

「ただいま。筋や筋肉は痛めて無いけど腫れてるから、しばらくは激しい運動は控えるようにって」

 

「そっかぁ、良かったね」

 

「うん……ところでさ、ナツさんや」

 

「ん?なに?」

 

結果を千夏ちゃんに呼びかけると耳元に口を寄せた。

 

「……私の居ない間にナンパなんて……やるね」

 

「なっ!?」

 

「くふっ、ンフフフ……」

 

千夏ちゃんは驚きの声を上げ、顔がほんのりと紅くなる。

僕もつい聞こえてしまい、笑い声が漏れる。

見た目によらず、お茶目なようだ。

 

「もう、何言ってんのさヒナ!翔一さんもなんで笑うんですか!」

 

「いやー、面白い友達だね。初めまして、最上翔一です。友兎……千夏ちゃんのお兄さんの友達なんだ」

 

「……初めまして、赤嶺 緋那乃(あかみね ひなの)です。ナツ、千夏にはヒナって呼ばれてますから、そう呼んでください」

 

「分かった、よろしくねヒナちゃん」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

そう交わした挨拶は丁寧なもので、先ほどの悪戯っ子な雰囲気とは真逆のお淑やかさを感じた。

風や僕も場面によっては言葉遣いとか切り替えるけど、彼女はそれがかなり上手い。

 

「最上さん、最上翔一さん、診察室へどうぞ」

 

「あぁ、ごめん、呼ばれたから行くね。友兎によろしく。あとヒナちゃん、お大事に」

 

「はい、伝えておきます!」

 

千夏ちゃんはそう元気よく返してくれて、ヒナちゃんはどこか嬉しそうに微笑んで御礼を言ってくれた。

 

「ありがとうございます ()()()

 

診察室のドアが閉まる一瞬、彼女が何か呟いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと……まぁ、だいたい分かってると思うけど今わかる結果は問題なし、いたって健康だね。強いて言うなら、前より筋肉がついたって事だね」

 

「うーん、あんまりトレーニングとかはやってないんですけどね……なんででしょうか?」

 

あんまり実感がないと言うのが、正直な感想だ。

 

「今、翔一君は成長期だからね。普段の生活だけじゃなく、えっと……部活に入ってたよね?」

 

「勇者部のことですか?」

 

「そうそれ、多分だけどその勇者部の活動も要因の1つになってるんだと思う」

 

「あぁ、力仕事担当な部分がありますから、そうかもしれないです」

 

「まぁ、筋肉がついて悪いことはないと思うよ?僕なんて……珠美(たまみ)にも腕相撲で勝てないから、ハハハ……」

 

遠い目をして薄く笑う明さん。ちなみに珠美さんとは明さんの奥さんの名前だ。

 

「た、たしか奥さんの趣味はアウトドアでしたよね?それなら、仕方ないんじゃないですか?」

 

「……決めたよ。僕も筋トレを始める!」

 

「ぁー、まずは程々でお願いします」

 

正直、張り切りすぎて2日目くらいから筋肉痛で動けなくなりそうな気がする。

 

「そういえば、今日は荷物を持ってるんだね。いつもは手ぶらなのに」

 

話題を変え、明さんの目線は僕の足元の紙袋に向く。

紙袋の口からは中身のクッションの薄緑の布地がのぞいている。

 

「あぁ、これですか?これは知り合いへのプレゼントですよ。といってもこっちに来た時にしか会えないんですけど」

 

「とすると……この病院にいるのかな?」

 

「おぉ、正解です。乃木園子ちゃんっていうんですけど、もしかして明さんの担当だったりしますか?」

 

「…………いや、僕の担当の子じゃないなぁ。でも、驚いたよ翔一君がいつのまにか女の子と知り合っているなんて……はっ!まさk」

 

「違います」

 

「いや、でm」

 

「違います」

 

「そ、そんな食い気味に否定しなくても……」

 

明さんは時折口が軽くなるから、こうでも言っておかなければ下手したら病院内で噂になりかねない。

 

「僕はもう帰りますね。あんまり園子ちゃんを待たせるのは悪いですし」

 

「そうかい?それじゃあお疲れ様。気を付けて帰るんだよ」

 

「はい。ありがとうございした」

 

 

 

 

 

 

 

 

翔一の出て行った診察室、先ほどとは打って変わって険しい表情で何処かへと電話する明。

 

 

「……伊予島だ。そう、ここのところ園子様の機嫌が良かった理由が分かったよ」

 

 

 

「君の見立て通り、戦部様が接触してたよ。さっき向かったようだけど、ここから彼女の病室までは一体どれだけ離れてるのか……あぁ、今は向かわない方がいい」

 

 

 

「どうやって来ていた事を証明するか、か……そういえば今日は彼女への贈り物だとか行って何か持ってたな……良くは見えなかったけど、薄緑色のクッションのようなものだと思う」

 

 

 

「いや、警備はそのままで良いよ。むしろその方が彼女も精神的に安定するだろうし、今更下手に規制すれば怒りを買うかもしれない。触らぬ神に祟りなし、だよ」

 

 

 

明はそう言って一言二言交わした後、電話を切って力を抜くように軽く息を吐く。

 

「ふぅ……昭都(あきと)君、早く思い出してくれないかなぁ……そうすれば…………いや、いまは待つしかない、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜 園子の病室 〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

ここにくるのは今日が3回目になる。

重厚な扉の前に立ち、ノックで合図する。

短く1回、連続で3回、また短く1回。

前回決めた2人だけの合図。

 

『入っていいよ〜』

 

扉越しだからか声はくぐもっていたが入室の許可がおりたので扉を開けて中に入る。

 

「久しぶり〜、待ってたよ〜」

 

「久しぶりだね、園子ちゃん」

 

もう何度目かになるけど、相変わらずな部屋の広さに反する息が詰まりそうな閉塞感を飲み込み、彼女のもとまで歩く。

 

「今日は園子ちゃんにプレゼントがあるんだ」

 

そう言って、手に持った紙袋を見せる。

 

「わぁ〜、ありがとう。実は私からもがみん先輩に渡したい物があるんよ〜」

 

「僕に?奇遇だね。それじゃあプレゼント交換だ」

 

「おぉ、プレゼント交換だ〜」

 

 

 

「まず僕からは……はい、これ」

 

紙袋から中の物を取り出して彼女の膝元に置く。

それは薄緑の猫を模したクッション枕だ。

他にも水色や薄紫色のものもありバリエーションが豊富で、それぞれに名前が付いているらしくこの子はベニータという名前だった。

ちなみにセットで買えば安くなるとのことで、僕もオレンジ色のアニータを買った。

 

「この前の部活の帰りに偶然通りがかったお店で見かけて、園子ちゃんが好きそうだなぁって……買っちゃった」

 

「わぁ、私の持ってないサンチョさんだ〜」

 

「サンチョ?確か……薄紫色のだったかな?その子はベニータっていうだ」

 

「うん、知ってるの?他にもね〜、アミーゴとアモーレがいるんよ〜。これからよろしくね、ベニータ」

 

本当はただの直感だけじゃなくて、僕がいつも来れる訳じゃないからこの子がいれば、少しは園子ちゃんが寂しくないかなって思ったからだ。

 

「ありがとう、もがみん先輩。大事にするんよ」

 

 

 

「じゃあ次は私なんだけど、えっとね……枕の下にあるんだけど、 取ってもらえるかな。私、動けなくて」

 

「いいけど……えっと、失礼します」

 

恐る恐る彼女の枕の下に手を入れる。

今も彼女が寄りかかっているから、少し重くて温かい感触がする。

さらに、手を進めると必然的に近づくことになり、近づくほどに彼女からは薬の匂いに混じって花のような甘い香りもする。

 

ふと視線を感じ、そちらに目を向けると彼女と目が合う。

なんとなく目を逸せなくて、目を合わせたまま近づくと突然目を閉じて少し顎を突き出した。

 

何故か分からないけど、その行為に心臓が跳ねた。

と同時に現在の状況を理解する。

薄暗い部屋で、男女が見つめ合って顔を近づける。

 

(これじゃあ、まるで僕は今から園子ちゃんに…………ん?)

 

思考が少しアブナイ方向に逸れ始めた時、指先に硬い感触が触れてハッとする。

それを指先でそっと掴み、入れる時より気持ち早めに手を枕の下から抜いた。

 

「こ、これ、かな……?」

 

「ぁ……うん、それだよ〜。開けてみて」

 

取り出した物があっているか彼女に聞くと、どこか不満そうな顔をしながらも合っていると返事をしてくれた。

それはいたって普通の木箱だった。

蓋を開けると中には銀色のブレスレットが入っていた。

赤、紫、青の順で角の丸い長方形の綺麗な石がはめ込まれていて、それらを繋ぐように金色のラインが装飾されていた。

 

「お、おぉ、かっこいいね」

 

いや、なんかすごく高そうなんだけど!?

 

「でしょ〜。試しにつけてみてほしいな〜」

 

「……分かったよ」

 

恐る恐るブレスレットに触れると、突然微かな頭痛と共に頭の中に映像が浮かんできた。

視界は一人称のようで、今持っている木箱とは違い、しっかりと黄色い包装紙に銀色のリボンでラッピングされた箱を両手で持ち、その中に収まっているブレスレットを見下ろしていた。

 

本当に良いのか?流石に、これは高かっただろ

 

不意に視界が上がるとそこには銀ちゃんとあの写真の黒髪と金髪の2人の少女が正面にいた。

周りの景色を見るとどこかの高台のようで、そこから青くきらめく海とその上に堂々と佇む大きな橋、おそらく2年前の事故で壊れたはずの瀬戸大橋が壊れる前の姿が遠目で確認できた。

 

大丈夫です。そのっちの知り合いにそういう細工が得意な人がいたんです

それで〜、教えてもらって3人で作ったんよ〜

 

視界の主が何かを話したのか正面の黒髪の少女の口が動き、金髪の少女に目を向ける。

見られた少女はどこか自慢気に視界の主に向けて話す。

 

まぁ、アタシは2人と違って全然役に立てなかったッスけど……

そんなことはないよ、ミノさんはこの石を選んでくれたでしょ

そうよ銀。私やそのっちじゃ決められなかったわ

須美、園子……そう言ってくれて嬉しいぜ

 

銀ちゃんが少し申し訳なさそうに後ろ頭をかくと、2人は首を振りそれは違うと否定するような反応を見せる。

 

俺の為にそこまで……ありがとうな3人とも。大切にする

 

もう一度、ブレスレットへと視線が落ちて気付いた。

鏡のように反射するブレスレットに映り込む黒髪と見覚えのある目元。

そんなはずはないのにその目はしっかりと僕を見ているようだった。

 

「…………っ、今のは?

「どうしたの?もがみん先輩」

 

僕を呼ぶ声で顔を上げると、心配そうな目をこちらに向ける園子ちゃんに先ほど見た映像の金髪の少女が重なる。

包帯の隙間から覗く髪の色は少し違うけど、目元が似ている。あの子が成長すればこうなると思うほどに。

もし……もし、あの子が園子ちゃんの幼い頃なら、今の彼女の状態はどうしてなんだ?

 

いや、それ以上に

 

 

 

君は何を知っているの?

 

 

 

彼女に口を開きかけたところで、来客を報せる鈴が鳴る。

 

「大丈夫、なんでもないよ……それじゃあ、僕はそろそろ行くね」

 

「…………ねぇ

 

立ち上がり、部屋を出ようとすると呼びとめられる。

初めて聞く弱々しい声の園子ちゃんに振り向く。

 

「どうしたの?」

 

「また……来てくれる?」

 

そう僕に訪ねる園子ちゃんは寂しげな目をしていた。なんだか頭と胸の奥が微かに痛む。君にそんな顔はして欲しくない。

 

「……うん、また来るよ。必ず、君に会いに来る、()()()

 

「そっか、やくそくか……うん、引きとめてごめんね〜」

 

だから唯一感覚が残っているという右手を握り、目を合わせて約束した。

その行動が功を奏したのか、彼女は笑ってくれた。

 

「構わないよ。それじゃあ、またね」

 

「うん、またね〜」

 

園子ちゃんに別れ際に手を振ると、笑い返してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を出て、気がつくと1階のエントランス前の廊下にいた。

お昼過ぎぐらいだったはずが、だいぶ時間が経っていたのか廊下は電灯の白にオレンジが混じっていた。

 

靄がかかったようにどうやって彼女の部屋からここまで来たのか思い出せないけど、

キラリと光を反射する右手首のブレスレットが、先程までのやり取りが現実だったことを証明している。

それによくよく考えたら、樹海化という不思議体験を既にしているのだ今更驚くことではなかった。

 

ふと気付くと微かに聞こえていた人の声が全くしない。

さらに廊下の先の人影が不自然なポーズで停まっている。

 

 

 

けたたましく鳴り出す警報がヤツらの襲来を報せる。

 

 

 

「ついに来たのか……よしっ!」

 

パチリと両手で頬を軽く叩き、気合いを入れる。

勝って約束を果たす。それが負けられない理由になる。

 

 

 

正面の廊下の端から光が迫り、世界が極彩色の樹海に塗り替わる。




うん、まぁ、こんなもんでしょ(適当

2人も新キャラ出しやがって、どうするつもりなんだコイツは……?

千夏ちゃんはどっちかというと千景よりの顔立ち、
緋那乃ちゃんは棗っぽいイメージ。

珠美さんは容姿とか特に考えてないです(自白

一応、園子に貰ったブレスレットについている石は
青:アイオライト
紫:アメトリン
赤:ガーネット
です。


次回はアニメ本編だと総力戦。

どうなるかは……お楽しみに。

なるべく早く投稿するので許してください!(早く投稿するとは言っていない)



あ、そうだ。(唐突

実は私、若葉ちゃんと誕生日が一緒なんですよね。
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