Change yourself,Keep yourself.   作:バーテックスケベ

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ちょっと気分が乗ってしまったので長めです。

だいたい7000字ぐらい。



Count 1 覚悟

夢だった。

 

絵本のヒーローのようになることが。

手を取り合い、共に困難を乗り越えられる友人に出会うことが。

大切なものを守れる強さを持てることが。

 

夢だった。

 

でもそれは叶わない。赦されない。

 

 

なぜなら

 

 

なぜなら俺は失敗(しかばね)犠牲(いけにえ)の上に存在するのだから。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

病院で目覚めた僕を待っていたのは、今にも泣きそうな樹ちゃんと口元をきつく結び泣くまいと堪えている風だった。

今度は倒れた記憶もあって、あぁやらかしたなと思った。

1日に2回も倒れるなんて胃にダイレクトアタックどころの騒ぎじゃない。

もはやギガドリルブレイクをかましたようなものだ。

結局その日は検査入院ということになった。

 

後日、医師の先生によると身体が極度の疲労状態つまり過労だったという。

流石に幻覚まで見るのはおかしいと思うが、専門的な知識のない中学生がとやかく言ったところで原因は判らないので無理矢理納得した。

 

 

 

救急搬送騒ぎから約2週間。

現在は3限目の体育の授業でバスケをしていた。

いままでの体調不良が嘘のように無くなり、むしろ調子が良くなっていたが、先生と友人らのストップにより体育などの激しい運動にはあんまり参加できないでいる。

まぁ、善意であるが故に断れないし、罪悪感で踏み切れないのも事実。

だから、大人しくしているがする事がないから、気になっている事を考える。

 

「一体あの体調不良はなんだったんだろうか……、それにあの時の」

 

あの時、意識が遠のく一瞬、割れた鏡の破片に写ったアレは、一体何だったんだろうか。

写った鏡がバラバラであまりよくは見えなかったけど、黒い全体に金の角に赤い目、腰元に金のベルトの様なものもあった気がする。

少し引っかかる事があるが何に引っかかっているのか分からない。

 

「よぉ、何考え込んでんだ?」

 

気付くと1試合終わったのか額に汗を浮かべた友兎が話しかけてきた。

 

「ん?あぁ、この前倒れた時のことを、ちょっとね」

「あぁ、救急車に乗ったやつか」

 

隣に腰掛けた友兎にタオルを渡し、話す。

 

「そうそう、はじめての経験だったよ。ちょっとシャレにならなかったけど……」

「全くだ。お前、翌朝のHRがどんな空気だったと思うよ」

「いやぁ……、お通夜状態かなぁ……なんて」

「その通りだよ!バカ野郎。心配ばかりかけさせやがって……青だって心配してたぞ」

 

うりゃあ!っと絡んできて、髪をぐちゃぐちゃにされる。前が見えなくなったが声のトーンから真面目に心配してくれていたのだろう。僕は優しい友人を持った。

 

「ほんっとに申し訳ないと思ってるよ。でも、医者は倒れた原因が過労だって言うんだよ。流石におかしくない?」

「そうだな、その前に4時間も寝てる訳だし、過労は無いよな」

「それに……」

「それに?」

 

あの影のことをそのまま伝えるか迷い、あるがままに見たことを話した。

 

「全体的に黒くて、金の角が生えてて、赤い目で、腰に金のベルトかぁ……」

「いやね、それをどっかで見た様な気がして、ずっと引っかかってるんだよね」

「う〜ん……悪りぃ、俺にはちょっと思いつかねぇな」

「いや、いいんだ。相談できただけでも少しは軽くなったよ。それにもしかしたら自分で気付かなくちゃいけないのかもしれない」

「……そっか」

 

それきり会話が途切れるが十秒と経たずに授業の終了を告げるチャイムが鳴る。

 

 

〜〜〜〜〜 翌日 〜〜〜〜〜

 

 

現在は2限目で数学の授業中。

今日は、昨日勇者部のみんなで話し合った文化祭での出し物について頭を悩ませていた。

 

(う〜ん、なかなかに悩む問題だ。出店をするにしても人数が少ないから無理か。

……そういえば、この前やった人形劇のシナリオをいじって演劇なんかはどうだろうか?

配役はそのままにすれば台詞も覚えやすい!)

 

頭の中で一気にアイデアがまとまりテンションが上がる。

 

「よしっ!これだ!」

 

「ほう、最上君はもう解けたのか。それでは、前に出てきて式と答えを書いてくれないかね?」

 

「へ?あっ、はいっ!」

 

や ら か し た。

テンションが上がりすぎて先生の目にとまってしまった。

周りを見ると、風と友兎が呆れて額に手をやり、青がニヤニヤしながらこちらを見ていた。

いや、まだだ!この土壇場で解いてやる!

黒板に向かいながらそう意気込む。

チョークを掴み、式を書こうとした瞬間。

 

 

突如として日常を壊す(アラーム)音が響いた。

 

 

教室に聞いたことのないアラームが鳴り響く。僕のスマホが震えている。

 

「む、誰ですか、授業中は携帯の電源を切っておきなs……」

 

教師の言葉が突然止まる。

あまりの出来事に呆然とし周りと同じく動きが止まる。

その間に焦った様子の風が勢いよく教室を飛び出した。

激しく開かれた扉の音にハッと我に帰る。

 

「なんだ、これ?おーい、起きてる?」

 

そう言って近くの級友の目の前で手を振ってみるが、マネキンのようにまばたきもせず反応がない。

それだけでなく窓から見える鳥も雲も時間さえも全てが止まっていた。

 

「うへぇ……、何k」

 

すべてを言い切る前に空に真っ直ぐな亀裂が入り、そこから光が溢れ出す。

溢れ出した光によって世界は白く染められる。

 

「……へ? どこ、ここ」

 

光が収まると辺り一面が植物の根のようなもので覆われた場所にいた。

そのどれもが普通じゃありえない色をしてたのに不思議と気味悪くは感じなかった。

辺りを見回しながら途方にくれていると、飛び出して行ったはずの風から電話がかかってきた。

 

「もしもs」

『翔一!あんた今どこにいんの!』

 

突然の大音量にキーンと耳鳴りがする。

 

「ォゥ……風さんや、聞こえてるからもうちょっと声量を抑えて。耳がキーンってする」

『あ、あぁ、ごめん。で、どこにいんのよ』

「どこって言われても……これだと樹海?かな」

『っ⁉︎あんた、知って……いや何でもない。とにかくアプリを開いてそこにマップがあるから、私たちの名前があるところまで来て!』

「お、おぅ分かった」

 

風が電話で言っていたアプリとは、部活に入るときに入れたSNSアプリのことだろう。

 

「あ、いた……て、東郷たちもいるの?」

 

マップを開くと勇者部の部員である、結城 友奈(ゆうき ゆうな)東郷 美森(とうごう みもり)、風と樹ちゃんの名前が青色の点の上に表記されていて、少し離れたところに自分の名前と点があった。

 

 

〜〜〜〜〜 少年移動中 〜〜〜〜〜

 

 

「おっ、いたいた。おーい風、みんなー」

「あっ、翔一先輩!先輩もいたんですね!」

「……よく来たわね翔一。じゃあ、今から状況を説明するわ」

 

みんなと合流してすぐに風から現在の状況についての解説が入る。

 

それによると、ここは樹海と呼ばれる神樹様が創り出した特殊な結界の中。

ここに入れるのは神樹様に選ばれた勇者のみ。

そして、勇者はここに攻めてくる敵を神樹様に近づけないように倒す事が役目なのだそうだ。

 

「ふ〜ん……あれ?でも風、武器みたいなのも無しにどうやって戦うの?もしかして素手で?」

「いいえ、これを使ってよ」

 

そう言って風はスマホの画面を見せてきた。そこには芽吹いた種が描かれた大きめなアイコンが表示されていた。

自分のを確認してみると風たちとは違い、灰色でタップしても反応が無かった。

 

「これは……」

「戦う意思を示せば、このアプリの機能がアンロックされて、神樹様の……勇者となるの」

「勇者……」

 

あまりに突飛(とっぴ)な出来事に皆一様に言葉を失っていた。

そのとき、東郷が何かに気付いた。

 

「みんな、あれ」

 

そう言って指差した方向で何かがオレンジ色にきらめく。

 

「っ‼︎危ない‼︎」

 

そう叫ぶ風。次の瞬間、襲いくる衝撃と土煙に身をすくませた。

 

「けほっ、けほっ」

 

思わず咳き込む。

 

「攻撃された?」

「私たちのこと狙ってる……?」

 

再びバーテックスなる怪物の腹部が光りだす。

 

「……こっちに気が付いてる」

「そんな……っ⁉︎東郷さん⁉︎」

 

友奈が東郷の異変に気付く。東郷は青白い顔で自分の肩を抱き震えていた。

 

「だめっ、こんな、戦うなんて、できるわけない」

「東郷さん……」

 

そんな友奈と東郷のやりとりを見て、風の表情が申し訳なさそうものから決意したものへと変わる。

 

「友奈、東郷を連れて逃げて」

「で、でも風先ぱっ」

「早く!」

「はっ、はい」

 

風の気迫に押されて頷いた友奈は東郷の後ろに回り、車椅子のハンドルを握る。

 

「お姉ちゃん?」

「樹も一緒に行って!」

「ダメだよ!お姉ちゃんを残して行けないよ!」

「樹……」

「ついていくよ。何があっても」

「っ……よしっ、樹、続いて!」

「うんっ」

 

そして2人がスマホのアイコンをタップすると、画面から黄色と薄緑の花びらが溢れ出した。

花びらが収まると、制服姿であったはずの2人がそれぞれ黄色と緑の不思議な服装になっていた。

うまく思い出せないが、どこか神聖さを感じるそれを僕はかつてどこかで見た気がした。

 

「友奈!翔一!東郷を任せた!」

「はい!」

「わかった、ちゃんと樹ちゃんと一緒に帰ってきてね。行こう友奈、東郷」

 

そう言って友奈と東郷を連れて2人とは反対方向に進む。

爆発音が響くたびに肩を跳ねさせる2人。

年上の僕がしっかりしなくては。

しばらく進むと、そこそこ広く平坦な場所に出た。ここから風たちが戦っているのも確認できた。

 

不意に友奈のスマホが鳴る。

 

「風先輩?……風先輩!大丈夫なんですか⁉︎今戦ってるんですか⁉︎」

 

どうやら戦闘中の風からだった。

 

『こっちの心配より、そっちこそ大丈夫⁉︎』

「はいっ」

『……友奈、東郷、翔一、黙っててごめんね』

「風先輩は、みんなの為を思って黙ってたんですよね?たった1人で打ち明けることも出来ずに。それって……それって勇者部の活動目的通りじゃないですか!風先輩は、悪くない」

 

そう言い切った友奈の顔は実に晴れ晴れとしたものだった。

 

『友奈…………っ⁉︎やっちゃった‼︎』

 

突然通話が途切れ、見えていた2人が煙に覆われる。

 

「風先輩‼︎樹ちゃん‼︎」

 

先ほどとは一転した悲痛な面持ちで、目尻に涙を浮かべ2人の名前を呼ぶ友奈。

 

「……⁉︎」

 

薄れてきた煙の中からバーテックスがこちらを向いていた。

 

「こ…こっちにくる…?」

 

意を決したように東郷がこちらを向く。

 

「友奈ちゃん、最上先輩、私といたら2人が危ない……ですから、私を置いて逃げてください!」

「東郷⁉︎何言ってるのさ!」

「なっ、何を言ってるの東郷さん!」

 

その時、再びバーテックスが光りはじめた。

 

「お願い逃げて!2人とも死んじゃう!」

 

東郷の叫びが響く中、友奈がバーテックスへ向かって走り出した。

 

「友奈ちゃん!」

「友奈っ!」

 

僕は友奈の手を掴もうと伸ばすが、伸ばした手は空を切る。あと1歩届かなかった。

飛び出して行った友奈をバーテックスの飛ばした爆弾が襲う。

爆風と衝撃がこちらまで届いた。

土煙が上がり、友奈の様子が分からない。

 

「友奈ちゃん!」

「友奈ぁっ!」

 

かすむ視界に桜色の光がうつる。

その光は煙を晴らし、桜色の花びらを舞い上げる。

友奈は無傷で、突き出した左手のみが風たちと同じように制服でなかった。

 

「ここで友達を、誰かを見捨てるような奴は勇者じゃない!」

 

「……友奈ちゃん」

 

「嫌なんだ」

 

飛んでくる2弾目を右の大上段で蹴り抜く。右足が変わる。

 

「誰かが傷つく事、辛い思いをする事」

 

続く3弾目を勢いそのままに体を回転させ、右足を軸にした回し蹴りで蹴り抜く。

左足が変わる。

 

「みんながそんな思いをするくらいなら、私が頑張る!」

 

そしてバーテックスへと跳躍し全身が変わり、途中で4弾目を殴り落とす。

 

「お"ぉ"ぉ"ぉ"、勇者ぁ、パァァァァンチ!」

 

そう雄叫びを上げ、バーテックスの袋状の胴体部を3分の1程殴って消しとばす。

友奈の正しく勇者という行動を見て、東郷は震えていた。

今の東郷は勇気を出せない事への自己嫌悪、行かせてしまった親友への罪悪感、理解不能な敵への純粋な恐怖などが心の中で暴れまわっているのだろう。

気づかれている以上ここに留まれないし、東郷の事を考えるなら留まっちゃいけない。

 

「友奈ちゃん……」

「東郷……行こう。向こうには風たちがいる。今のは友奈のおかげで助かったけど勇者になれない僕と今の君じゃ、次は無い」

 

辛辣だけどここから動く理由を話し、東郷の車椅子のハンドルを握る。

 

(いつもは友奈の特等席だが今だけは許してくれよ)

 

そう心の中で謝って車椅子を動かそうとした時、ペタッと足音が聞こえた。

咄嗟に東郷を庇うように車椅子の前に出る。

 

「……最上先輩?」

「しっ、東郷、ゆっくりと後ろへ下がって」

 

そう東郷に告げて、警戒しながら辺りを見回すと、先ほど友奈が殴り落とした4弾目の落下地点のあたりで人影が動いた。

その人影はゆっくりとこちらへ向かってきていた。

こちらに向かってくるにつれて、明るくなり人影が照らされ始める。

 

「……くっ」

「……ひっ」

 

そして遂にその全貌が見えた時、僕の本能は全力で警鐘を鳴らしはじめ、東郷はその見た目に顔を蒼白にし音にならない悲鳴をあげた。

 

それは怪物というにはあまりに人間に近い形をしていた。

人間に近かったが人間には似ても似つかない。

顔のパーツは大きく裂けた口以外なく、表皮は新品の紙のように白かった。

猫背気味な姿勢にダラリと垂らした腕、微笑むようにうっすらと口角が上がっている口。

その姿、その動作すべてがこちらを狂気と錯乱へと誘うものだった。

 

耐え切れたのは背中で恐怖に震える後輩がいたからだ。

守るという意思がギリギリのところで恐怖を抑えていた。

 

怪物はまるで何かを探すように辺りを見回している。

まだ気づかれていないようだ。

怪物を視界から外さないようにし、東郷に小声で話しかける。

 

(東郷、東郷っ!)

(は、は、はいっ)

(アレはまだこっちに気付いて無いみたい。今のうちに下がって左の根の陰に隠れよう)

(わ、わかりました)

 

そうして2人でゆっくり後ずさる。音を立てないように慎重に。

 

目的の根の陰まであと少しとなった時、地面のくぼみに東郷の車椅子の車輪がはまり、カチャンと小さく鳴ってしまう。

思わず後ろを振り返ると青ざめた顔の東郷がいた。

ハッとし急いで視線を前に戻すと、怪物がこっちを向いていた。

目がないのに目があったような気がした。

怪物が見つけたと言わんばかりにニタリと笑みを深める。

直後、怪物は力を溜めるように姿勢を低くして、一気にこちらへと跳躍し僕らの10m程手前に着地した。

そこからは口に笑みを浮かべながら、ゆっくりと1歩ずつ近づいてきた。

 

「いや……いやぁっ⁉︎、きゃあ」

「東郷⁉︎くそっ‼︎」

 

恐慌に陥った東郷が急いで逃げようとして車椅子を動かすが、窪みのせいで倒れてしまう。

僕は急いで東郷を助け起こし、横抱きで逃げる。やったことのない事をしてすぐに体が悲鳴を上げはじめるが根性で動かす。

 

「ぐぁっ‼︎」

「きゃぁっ!ぐっ!」

 

あと少しで茂みに入るというところで不意に首を鷲掴みにされ持ち上げられる。急にかかったブレーキで東郷が手からすべり落ちてしまう。

いつのまにか怪物は僕らのすぐ後ろ、手が届く距離まできていたのだ。

 

「ぐっ……、がっ‼︎」

 

怪物は確認するかのように持ち上げた僕に顔を近づける。

しかし僕は探してたのとは違うのか無造作に投げ捨てられる。

かなりの勢いで樹の幹に叩きつけられ、意識が一瞬とぶ。

 

「いやぁ‼︎来ないでぇ‼︎」

 

東郷の悲鳴が聞こえる。

行かなくちゃいけないのに、助けなくちゃいけないのに体が言うことをきかない。

打ち付けられた痛みで四肢に力が入らない。

 

ぼやける視界に東郷を捉える。

頭を守るように丸まった腕の隙間から東郷の表情が見える。

ぎゅっと目を瞑り、その目尻には恐怖からか涙が流れていた。

東郷の震える唇が音を紡ぐ。

 

『 た す け て 』

 

その瞬間に僕の見ている世界が色を無くし、動きを止める。

目の前に誰かが立っていた。

足元しか分からないが子供のようだ。

 

 

 

きみはそれでいいの?

 

良いわけないだろ

 

みているだけのきみでいいの?

 

良いわけないだろ……!

 

なら、もうわかってるでしょ?

 

……あぁ、分かってる 使えって言うんだろ?◼️◼️を

 

うん じゃあがんばってね、◼️◼️

 

 

 

そう言った瞬間に子供は消え、世界は色を取り戻す。

先ほどまでの全身の痛みは引いていた。

四肢に力が入る。

少しフラつくが歯を食いしばって立ち上がる。

 

腰元が熱くなり、陽炎のように揺らめいている。

エンジンを蒸すような音が一定のリズムで聞こえる。

 

怪物がこちらを(いぶか)しむように顔を向けている。

奴の顔に笑みは無い。

やがてゆっくりと東郷から離れ、僕の方へやってきた。

 

5歩分ほどの距離になった時、怪物が両腕を振りかぶり、降ろす。

それを姿勢を低くし、左に抜ける事で避ける。

すかさず避けられた事で隙だらけの怪物の膝裏に左のローキックを加えて体勢を崩す。

蹴り抜いた勢いを返すように脚を入れ替え、今度は怪物の喉元を狙ってすくい上げるように右のハイキックを叩き込む。

 

怪物は突然のことに驚いたのか、されるがままに宙高く蹴り飛ばされ遠くに落ちる。

 

その間に東郷のもとに行き、しゃがみ込む。

未だに恐怖で震える東郷を抱え上げると、近くの樹の根元に寄りかからせる。

 

「も、最上せんぱい……」

 

立ち上がると制服の裾を東郷に掴まれる。

行かないでと言わんばかりに強く握られていた。

固く結ばれた指をそっとほどき、再びしゃがみこみ東郷と目を合わせる。

 

「東郷、大丈夫だ。俺は必ず帰ってくる。あいつを倒して、必ず戻ってくるから。な?」

 

それでも駄々をこねるように頭を横に振る東郷。

安心させるようにその綺麗な黒髪をそっと撫でる。

 

「……だから、またな」

 

そう言って素早く立ち上がり東郷から離れる。

 

蹴り飛ばされた怪物は立ち上がり、その場から動かずこちらを警戒するように唸っていた。

 

陽炎のような揺らめきを纏う腰元に両手をかざす。

 

するとそこには、あの日見た

 

 

光り輝く金のベルトが現れた。

 

 




原作第1話に相当する回です。難しかった。

出てきた白いのは量産型エヴァをイメージすれば分かりやすいです。

次でプロローグ、主人公の覚醒までの話は一段落です。
てな訳で、真面目な次回予告。



出会いを経て、変化して、覚悟はここに定まった

次回、『Count 0 魂の目覚め』

ここから伝説が始まる。
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