そんなわけで2話目。そんなわけで恋人?になってからすぐ後の話。
今回も短めです
うう、寝不足だ。テスト期間は寝不足になりがちになるものだけど、今回のは訳が違う。
「美咲!あたしの恋人になってちょうだい!」
何の前触れもなく告げられたあの日以来、あの言葉が頭の中から離れない。……いかん、勉強中に言われたフレーズが脳内されてしまう。そもそもなんで勉強中に告白しますかね……。しかも定期テスト前の大事な時に。
もしかしたら眠すぎて幻覚でも見ていたのかもしれない。
おかげで今回の定期テスト中は集中できず、無事爆死。
「はあー終わったあ〜……」
「おつかれ美咲ちゃん。ここ最近すごく眠そうだよね。そんなに勉強してたの?」
「んー?いや、ちょっとね」
ちょっとどころでもないですけど。でもあの件を○○さんに話でもしてみろ、○○さんに引かれ、拡散され、今後あたしはこのクラスどころか学校中にどんな称号の烙印を押されてしまうだろうか。考えるだけでも恐ろしい。
既に「花女の変わり者」の弦巻こころの仲間と認識されてる。俗に言うやべー奴の仲間……ああ、あたしの平々凡々な生活はどこへいってしまったんだ。
「あたし自身の今後どうしようかなって悩んでたの」
あれ、睡眠不足で考えてることと言ってることがしっちゃかめっちゃか。変なこと言わないようにと気をつけた瞬間にこれだ。今後ってなによ今後って。ボロがですぎで今の関係が知られてしまえば、あたしの平穏な学校生活は完全に消えてしまう。
「今後……?あーテスト終わったからこの後何しようか悩んでたってこと?」
「……あーうんそうそう!いやーテスト終わりって何しようか考えるの楽しくない?!」
「わかる〜!」
変に解釈してくれて助かった。でもこれ以上喋るとまた変なこと言い始めてしまいそう。さっさと帰って寝よう。極度の睡眠欲は無意識すら超えてくれると信じてる。
「んー、でもやっぱ寝るかも。あたしはもう眠くて眠くて……」
あ、今すぐにでも眠れそうな予感がする。この徐々に意識の糸が切れる感覚……嫌い……じゃ
「美咲ー!みーさーきー!」
ああ……眠気の元凶が元気よく迫り来る。極度の睡眠欲と言えど、本能の危険察知には勝てなかったよ。ああ、やっぱり今回もダメだったよ。
「……ん、なにこころ」
眠い目を擦りながらあくびをかみころす。あくびで生まれた微かな涙は視界がぼやけさせる。
瞳が涙を通して見せる世界。そのおぼろげながらにも見える世界でこころを捉えた。立ち上がりこちらを見るこころ。そして見上げるあたし。ハッキリと見えていない光景を脳が処理を施し、先日の状況に照らし合わせる。
ああ、あれはなにかのおとぎばなしでも、夢でもなく、本当のことだった。そう改めて理解させられた。
「一緒に帰りましょう!」
「……うん、いいよ」
「…………美咲ちゃんってさ、弦巻さんと仲良いよね。前見た時驚いちゃったもん。いつから友達なの?」
「あら違うわよ?」
「え、友達じゃないの?ならなに?」
「あたしと美咲はこいb」
「わー!わーー!!こころさんちょっと日本語間違ってるよ〜?!濃い人じゃなくて親友の方が確かなんじゃないかなー??じゃあごめん○○さん!先帰るね!!」
「あ、うん……?じゃーねー……?」
何しれっと言いふらそうとしてるの?!
勢いで全てを誤魔化し、こころをひっぱりながら勢いよくに教室を抜け出して踊り場まで駆け抜ける。
「びっくりしたわ美咲。だって急に走り始めるんだもの」
「ほら……今日はこんなにまだ時間あるんだから、早く家に帰ってやりたいことたくさんあるでしょ?」
早く帰って眠りにつきたい。
「……それもそうね!なら一緒に帰りましょう!」
「うん。でもあたし一直線に帰っちゃうよ?」
「別に構わないわよ!美咲と一緒だったら、どこでも楽しめるもの!」
「……」
思わずドキッとさせられた。
こころにとって地球上のどこにいてもそれはこころの庭のようなもので、世界の裏側でも楽しめるはず。それがあたしと帰るほんの数分の通学路でさえ変わらないことなのかもしれない。
「じゃあ、帰ろう」
そうこころに伝えて歩き始める。そうすると、自身の手のひらに何かしらの感覚があった。細くて小さい、柔らかな手の感触。教室から飛び出す際にこころの手を握って廊下に出たんだった。それを今の今まで気づかずにいた。
「ああ、ごめん。手、握ったままで」
そういいながら握っていた右手の力を緩め手をはなす。……こころの手、暖かかったな。
そうすると、今度は右手の甲に感覚がある。さっきまであたしが握っていたこころの手が今度はあたしの手を握っている。
「なんで美咲は手を放してしまったの?」
「なんでって、さっきまでは無意識で握ってたし」
「無意識だから握っていたの?意識して握っててくれてもいいのよ?」
「意識って……恥ずかしいし……」
学校内で手を握りながら下校。あたしにはそれをできる度胸はない。無意識だったさっきまでは別の話。
「なぜ恥ずかしくなるのかしら?あたしはちっとも恥ずかしくないわよ!」
こころに羞恥心というものがあるのかを疑う。それともあたしが単純に意識しすぎているだけなのだろうか。
ただ手を繋ぐことなんて友達との間でもなくはない。男女の間で手を繋ぐことはそれなりの意味だとは思うけど。
そう、ただ繋ぐだけ。それ以上でもなんでもない。あたしが異常に反応してしまっていただけだ、きっとそう。
心を落ち着かせながら口を開く。
「わかった。でもあんまり周りに見られたくないし、あたしから離れないで」
「ええ、わかったわ!」
繋いだ手で、肩が触れ合うまで数センチのところまでこころを引き寄せて歩き始める。こころの手をしっかりと繋ぎ、離さない。
歩き始め、一歩二歩と歩きながらこころの歩幅に合わせる。ゆっくりと、たまに早々と。歩き方でさえ弦巻こころはせわしない。
ただ身を寄せて手を繋ぐ。それだけで何か不思議な気分だった。不思議と言っても決して嫌な気分ではない。何処か懐かしく、落ち着くような気分に浸れる。
温もりと特別な気分を感じながら、あたしたちは学校を後にした。
手を握る。手を繋ぐ。この言葉にそれほど意味はないですけど、自分的には意味を少し含めて言い換えてます。
このシリーズは「小さな出来事を話しにする」と言うのが個人的なサブミッションに近いようなものを掲げており、今回は帰るまでのほんの数分の出来事を話しにしてみました。文化祭、夏祭り、クリスマス。ビックイベントは後々の話。
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