「えーと、パーラムでもらった地図によると依頼人の家は
この辺りなんですが。」
マルクは地図を見ながら辺りを見回した。
「おい、ちょっと待てよ。ここって町のど真ん中だぞ。
こんなとこに凶悪なモンスターに悩まされてる人なんか
いるのかよ。」
ジルはこの依頼に疑問を抱いた。
「そうよね、どうなってるのかしら?」
「あ、ありました。ここで間違いないですね。どういうことかは
依頼者に聞けばすぐに分かりますよ。」
マルクはドアとトントンと叩き家の中へ入った。
中には気難しそうな初老の男が一人椅子に座っていた。
「遅い!いつまで待たせたと思っておるのじゃ!わしがどれだけ
苦しい思いをしているか分からんのか!」
老人はいきなり怒り出した。
「(きっと依頼を出してから俺らがくるまで誰も受けずに長い時間が
経ってたんだぜ、きっと。)」
「(そうですね。)」
ジルたちは老人の状況を想像した。
「モンスターは向かいの家の中じゃ!さっさと倒して来い。」
老人は怒りながら言って3人を家から追い出した。
「せっかちなじじいだな。自分の名前も言わずに。」
「結局、詳しい話はわからなかったね。」
「向かいの家へ行くしかありませんね。」
マルクがまたドアをノックした。
「はい、どうぞ。」
中から男の声が聞こえた。
3人は中に入ると、中年の男が立っていた。
「えーと、誰かな?」
男が聞いてきた。
「俺たち、向かいのじいさんの依頼でここにいるというモンスターを
退治しにきたんですけど。」
「はっはっは。あのじいさん、そんな依頼出してたのか。
悪いねえ、ここにはモンスターはいないんだよ。いるのは...。」
そういって男はパンパンと手を軽く叩くと奥からすごく大きな犬が出てきた。
「このペットのジョンだけだよ。ジョンがじいさんの家の前におしっこを
してからじいさんずっと怒っててね。ちょっと困ってるんだよ。」
「おっきいけどかわいいね、ジョン。」
メアリーはジョンの頭を撫でてやる。
「こいつはおとなしくてな、なかなか吠えたりしないんだよ。」
「そう言われてもな、俺たちどうしたらいいか分からなくなったな。」
ジルは目的を失って困った。
「じゃあさ、ジョンとじいさんを仲直りさせるっていうのはどう?」
「いいですね、それ。」
メアリーの提案にマルクは賛成した。
「ちょっと待てよ。そんなの絶対無理だって。ただの骨折り損になる
だけだぞ。あのじいさんをどうやって変えるっていうんだよ。」
ジルは強く反対した。
「無理無理って言ってたら何にもできないでしょ!」
「ジル、やる気なさすぎますよ。」
反対するジルにメアリーとマルクは反発した。
「な、マルクまで。分かったよ、やりゃいいんだろ。
でもどうやるかは決めてるんだろうな?」
渋々納得したジルが念を押すように聞いた。
「それは、決まってるわよ。ジョンをじいさんのとこに連れて
仲良くするように説得するのよ。」
「バカか、そんなことして素直に仲良くすると思ってるのかよ。」
「じゃ、どうするのさ?」
「それはだな。じいさんをまず瀕死に追いやってから、ジョンに
助けにいかせるんだよ。」
「人の不幸につけこむようなやりかた、よくないね。」
「分かってないな。これが一番効果的なんだぞ。人が穴に落ちたとき
差し出された手があったら絶対つかむだろ。そして助けてもらったら
普通恩に感じて助けてくれた人を好きになるんだよ。」
「だからってわざわざ穴に落とすのはヒドイわよ。」
「もう勝手にしろよ。俺は何もしないで見てるだけだからな。」
メアリーと意見が食い違いジルはふてくされた。
「まあまあ、ここで2人が言い争っててはジョンとおじいさんを仲良く
させることも出来ませんから。とりあえずジョンを連れておじいさんの
ところに行ってみましょうよ。意外ともうなんとも思ってないかもしれ
ませんしね。」
「それは、ないな。」
「ないね。」
ジルとメアリーは声を揃えて否定した。
「なんでそんなとこだけ意見が合うんですか。もう、行きますよ。」
3人はジョンを連れ、依頼人の家へ戻った。
「やっと終わったのか。随分遅かったな。」
老人が振り返ると、怒りが爆発した。
「貴様ら、モンスターを連れてきて裏切ったな!わしを殺しに来たのか!」
「じいさん、ちょっと待ってよ。話を聞いてよ。」
メアリーは怒る老人に訴える。
「お前らの話なぞ聞くまでもないわ。さっさと出ていけ。」
「ま、予想通りの展開だな。もう打つ手なしか。」
ジルはメアリーの後ろから冷めた態度で言った。
「ジルは黙ってて。」
メアリーは苛立ち始めた。
「ええい、出ていかんのなら...。」
老人は台所から包丁を持ち出し構えた。
「こいつで切り刻んでやるぞ!」