dark legend   作:mathto

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魔道連盟本部へとやってきたマルクたち3人。

「メンデル先生はいらっしゃいますか?」

マルクが受付で聞く。

「ああ、マルクさんですね。メンデル司祭から

来たら案内するように言われています。どうぞ。」

受付の女性に案内されてついていく。

魔道連盟本部は巨大な塔で中は広く階段が

入り組んでいて、慣れたものでも迷うことがしばしば

あるような構造になっていた。

「すごいよな。これ絶対一人で歩いてたら迷子になるぜ。」

ジルたちは目を回しそうな塔の内部に驚いていた。

「この塔には魔力がかけられていまして普通のシンプルな塔の

内部を複雑で分かりにくいものへと変えているんですよ。

理由はもちろん不法侵入者を自由に行動させないためです。」

「へ~。」

3人は説明を聞いて感心した。

「はい、着きました。こちらの部屋になります。」

受付嬢がトントンとドアをノックする。

「メンデル司祭、マルクさんがおいでになっています。」

「はい、どうぞ。」

部屋の中から優しそうな男性の声が聞こえた。

受付嬢はドアを開けるとジルたちに礼をして受付のところへ

戻っていった。

「失礼します。」

マルクを先頭に3人は部屋の中へと足を入れた。

中ではメガネをかけた物腰柔らかそうな男性が椅子に座って出迎えていた。

「よくきたね、マルク。随分久しぶりだ。おや、後ろの2人は友達かい?」

「あ、はい。」

「まあ、立ちっぱなしも疲れるだろうからそこのソファに座りなさい。」

「あ、はい。」

マルクたちは緊張しながらソファへ腰を下ろした。

「(マルクの先生って優しそうな人だな。)」

「(ええ、本当に優しい人ですよ。)」

「私の元を離れてから成長したようだね。君の顔つきを見ればよく分かる。

私を追い抜くのもそれほど遠くはなさそうですね、ははははは。」

メンデルは嬉しそうに言った。

「先生、実はどうしても聞きたいことがあるんです。」

マルクは思い切って言った。

「ワーグバーグのことでしょう?」

メンデルはマルクの心を見透かしたように言った。

「は、はい。でも、どうして...。」

「分かりきったことですよ。しばらく会っていなかったとはいえ

短い付き合いじゃありませんから。よろしい、いい機会だから

少し話しておきましょうか。」

 

 

 

マルクたちは座ってメンデルの話を聞く。

「まず、マルク。あなたの思いを聞いておきましょうか。」

「え、私ですか。...ええと、ワーグバーグさんは魔力が

強くて頭もいいとても優秀な魔法使いです。

だから、メンデル先生の後継者はワーグバーグさんしか

いないと思っています。」

マルクは素直に答えた。

「ふむ、そうですね。確かにワーグバーグは強力な魔力を

持っていて、魔法を含めた様々な知識をすぐに身につけ

られるほど頭もいい。しかし、今マルクにあってワーグバーグ

にはないものがあります。」

「え!そんなものありませんよ。」

「いえ、あります。それは人を思いやる心、もっと広く言えば

精神的な強さです。」

「(なるほど。)」

黙って横で聞いていたジルはメンデルの言葉に納得した。

「魔法使いにとって精神的な強さというのはとても重要なもの

なのです。それは魔力と精神力が大きな関わりを持っている

からです。だから強い魔力を持っている者ほど強い精神力が

魔法使いとしてのバランスを保つため必要となります。」

「え、え、すいません。どういうことかちょっと分かりません。」

マルクはメンデルの説明で頭が混乱していた。

「あ、私の方こそすいませんね。分かりにくかったですね。

では、詳しく話していきます。まず魔法使いとしては

修行してより強力な魔力をもつこと、強力な魔法を覚えること

というのが大事というのは分かりますね?」

「はい。」

「しかし魔法は時に武器ともなる危険なものです。

精神力の弱いものはつまらない感情で魔法を制御

できなくなり大切な人や物を傷つけたり壊したりしてしまう

こともあります。だからこそ何のために、誰のために魔法を

使うかをよく考えられる強い精神力というものが必要なのです。

強い魔法を使うものほどより強い精神力が必要というのが

分かるでしょう?」

「はい。」

「その点でワーグバーグはまだ未熟なのです。つまらぬ地位

にこだわっているようでは真の魔法使いとは言えませんよ。」

「だからといってワーグバーグさんを見捨てるというのは

厳しすぎませんか?」

「ワーグバーグがそう言ったのですか?まあ今の彼ならそう

受け取ってもしかたありませんね。確かに私はワーグバーグに

『自分だけの道を探しなさい』と言いましたが、それは見捨てる

ようなつもりで言ったわけではありませんよ。」


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