dark legend   作:mathto

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マルクとメンデル司祭との話が続く。

「え、ワーグバーグさんを見捨てていないということは

やはり深い考えあってのことなんですね。」

マルクは希望する答えを嬉しそうに待った。

「もちろんですよ。マルクには悪いですが、ワーグバーグの

方がより大きな素質を秘めていると私は考えています。

一見、完成されているように見えるワーグバーグの力ですが

精神的成長をすれば今よりずっと強い力を得るでしょう。

それこそいずれは世界の五本の指に入るほどの魔法使い

にもなれると。ただ私の教えのもとで私の後継者に育てるような

ことをしても今以上の成長をすることは非常に難しい。

だからワーグバーグ自身が進むべき道を考え、選び、

突き進むことが必要なのです。彼はああ見えてとても努力家

なんです。きっとたどり着くべき場所にいけるでしょう。」

「そうだったんですか。よかった。先生がワーグバーグさんの

ことをそんな風に大事に考えていて。私が信じていた通りでした。」

「それよりもマルク。あなたは人の心配をしている場合では

ありませんよ。あなたは確かに成長しました。しかし一人前の

魔法使いとしては魔法力がまだ不足しています。

そこで、これを渡します。」

そう言ってメンデルはマルクに2個の腕輪を手渡した。

「先生、これは?」

「これはアグニの腕輪です。」

「アグニの腕輪?」

「はい、赤い玉のついている方が右腕に、青い玉のついている方を

左腕につけるのです。魔法の力は精神状態によって左右されることは

言いましたね。アグニの右腕はその精神状態の振れ幅を大きくするのです。

感情の昂ぶったときに使えば魔法力は通常以上になるということです。

そしてアグニの左腕は使用者にダメージを与えることと引き換えに

強い魔法が使えるというものです。どちらも一長一短のある諸刃の刃です。

常に冷静で安定した力を求められる魔法使いにとってこれは邪道と

いえるかもしれません。しかしうまく使えば大きな力になるでしょう。

マルク、あなたならきっと使いこなせると信じています。」

「ありがとうございます。大事に使いたいと思います。

ところでワーグバーグさんが先生の後継者にしないわけは

分かりましたが、どうして私が?」

マルクは残った疑問をメンデルにぶつけた。

 

 

 

魔道連盟本部にてメンデルと話すマルク。

「私があなたを溺愛しているというような理由で

後継者に選んだとでも思っているのですか。」

「い、いえ。」

少し怒り気味で答えるメンデルにマルクは身を

縮めて言った。

「今はまだ未熟ですが、いずれは私の後継者として

ふさわしい立派な魔道士となることは間違いないと

考えているのです。あなたはワーグバーグのような

天才ではないです。しかしまだこれからもっともっと

成長していくでしょう。その成長に私は期待したいの

です。」

メンデルは熱心にマルクに言い聞かせた。

「ありがとうございます、本当に。こんなに嬉しいことは

ありません。私、がんばります。」

マルクは感激の涙をツーと流しながらメンデルの両手を

握り礼を言った。

「ははは、あまり重く考えないでいいですからね。あと

もしこれからやるべきことがないのなら風の精霊を探して

みるといいかもしれませんね。精霊と仲良くすれば魔法の

こともよく分かりますから。話はそれくらいですかね。

それではまた何かあったらいつでも来てください。と言っても

私が用事などで不在のときが多いかもしれませんが。」

「はい。」

マルクたちは元気よく返事をしてメンデルの部屋を後にした。

「マルクの先生っていい人だよね。」

メアリーが感心して言った。

「そうだよな。ああいう人なら尊敬できるよな。」

ジルもメアリー同様感心していた。

「はい、今の私があるのもほとんど先生のおかげですよ。」

「いいよなー、俺もあんないい師匠がいればなぁ。」

ジルは物欲しそうに言った。

「じゃあ、私がなってあげようか?」

メアリーがおもしろそうに言った。

「お前が俺の師匠に?いらねえよ。でも弟子入りするのは

悪くないかもな。」

「ということはニムダさんを探すんですか?」

「ま、そういうことだな。」

「ねえ、ニムダって剣士のニムダ?」

メアリーが2人の会話に入る。

「そうだけど。」

「私、知ってるよ。」

「え。」

「小さいとき、たまに遊んでもらったことがあるのよ。たぶん

今も住んでるとこは変わってないはずだからいけるよ。」

「よかったですね、ジル。探す手間が省けて。」

「まあな。メアリーって意外と役に立つな。」

「意外とは余計よ。ニムダの住んでるところはこの国から少し

離れた山小屋にあるから着くまでちょっと時間がかかるわよ。」

「大丈夫。」

「大丈夫です。」

「分かったわ、それじゃ行きましょうか。」

メアリーの案内でニムダのいるという山小屋へと向かった。


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