dark legend   作:mathto

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ジルたちがニムダが住む山小屋へ向かっていたとき、

カフィールは再び勇者エトワール=シールダーの元へ

やってきていた。

「おお、カフィールか。最近のお前はいつも

深刻そうな顔をしているな。」

「エトワール様、俺をここで修行させてもらえないでしょうか?」

「はっはっは。何を言い出すかと思ったらそんなことか。

お前は十分強い。わしが鍛える必要もなかろうて。」

「いえ、俺にはまだ力が足りない。意志の強さだけでは

どうしても越えられない壁が今あるのです。」

「ほう、お前に越えられないと言わせるとはよほどの

相手と見えるな。誰じゃ?」

「ディリウスです。」

「魔界のプリンスか。そいつは確かにやっかいな相手じゃな。

奴の魔力は父親の魔王に勝るとも劣らないというしの。」

「はい。俺はあいつを圧倒できるだけの力が欲しい。これ以上

あいつを放っておけばこのテラに混乱を招く。」

「そうか、お前の気持ちはよく分かった。しかし今のわしと

お前とではそう力の差はないだろう。お前がより強い力が

必要と言うのならわしの孫が持っているエクスカリバーを

奪うがいい。エクスカリバーは持つべきものが持てば絶大な

力を発揮するだろう。」

「それでは、お孫さんが...。」

カフィールは言いにくそうにしている。

「構わんよ。あいつが持っていてもただの飾りにしかすぎんよ。

今もどこをほっつき歩いていることやら。」

 

「ヘックション!」

ダニエルが野道でくしゃみをした。

「また誰かがうわさしてるな。もう人気者はつらいなぁ。」

そう言うとダニエルは指で鼻をかるくふき、また歩き出した。

 

「ダニエルは全くろくなことをせんからな。お前に使われる方が

聖剣も喜ぶじゃろうて。」

「わ、分かりました。あなたがそう言われるのならば。」

カフィールは了承しエトワールの家を出た。

「さて、どういうことになるかこれから楽しみじゃな。」

カフィールが去った後、エトワールはゆったりと椅子に座り、

笑顔で呟いた。

 

 

 

「着いたわ。ここよ。」

メアリーたちの前にごく普通の小屋があった。

「メアリーって結構土地勘あるんですね。」

「ここまで全然迷わずこれるなんてすごいよな。」

「まあね。小さいころから国中をうろうろしてたからね。

ここで迷うようなことはまずないわね。」

メアリーはさらっと言った。

「あともうちょっと性格がかわいければなぁ。」

ジルがぽつりと言った。

「ん?何か言った?」

メアリーが威圧するように言った。

「いや、何でもない何でもない。」

ジルはすぐにごまかした。

「そう?じゃ、入ろうか。」

メアリーがトントンとドアをノックした。

「誰じゃ?」

中から年老いた男の声が聞こえた。

「私、メアリー。遊びに来たの。」

「ほう、そうか。どうぞお入り。」

扉を開けるとふらふらと足元がおぼつかない老人が

杖をついてジルたちを出迎えた。

「わあ、ニムダだ。」

そういってメアリーはニムダに抱きついた。

「ほっほっほ。本当に久しぶりじゃな。前にあったのは

いつだったか...。すごく小さいときじゃったな。」

ニムダはしみじみと昔を思い出すように言った。

「きゃっ!」

メアリーが思わずニムダから離れた。

「どうした!?」

ジルがメアリーを心配して声をかけた。

「ニムダ、私のお尻触ったー。」

メアリーが怒りながら言う。

「このエロジジイ。なにしてんだ、よ。って、え。」

「ニムダ、よくもやってくれたわね。こんなことをしてただですむ

と思ってるのかしら。」

メアリーは剣をニムダの首元につきつけ冷たく言い放った。

「ほっほっほ。相変わらず激しいのぉ。前来たときもパンツを

見たら宮廷騎士団を呼ばれて囲まれたものじゃよ。」

「(ニムダさん、違う意味でも強いですね。)」

「(ああ、メアリーにセクハラとはやるよな。)」

「殺す。」

メアリーの目は殺意に満ちていた。

「わぁー。メアリー、ダメですよ。」

マルクとジルは慌ててメアリーを止める。

「何よっ!邪魔するならあんたたちも殺すわよ。」

「いい加減にしろっ!」

バチッ。

ジルはメアリーの頬を叩いた。


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