dark legend   作:mathto

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「もう終わりか?」

カフィールがダニエルを見下して言った。

「く、くっそー!」

ダニエルは悔しがり剣を拾いにいくとすぐまたカフィールに

向かっていった。しかし何度やっても変わりなく弾かれ続けた。

「はぁ、はぁ、はぁ...。」

もう日が沈みかけてきたころ、

ダニエルは膝に手をついて息を切らせ、もう動ける状態ではなかった。

「今日はこれで終わりだ。明日も明後日も食事と睡眠以外は

今日みたいに俺と剣術の訓練だ。俺がもう十分と判断するまでは

ずっと続ける。いいな。」

カフィールの言葉にダニエルは反論する力も残っておらず、

ただ早く休みたいと思うだけだった。

カフィールが用意した夕食を口にすると、ダニエルはすぐに

眠りについた。カフィールはダニエルに毛布をかけてやると、

少し考え事をしながら横になった。

 

次の日もその次の日もカフィールによるダニエルの訓練は

続いていた。ダニエルは疲労が溜まっていき、もはや剣を

振るだけで精一杯という感じだった。それでもカフィールは

ダニエルを動かし続けた。

 

さらに数日が過ぎるころには、ダニエルの頬がこけてきた。

「今日は休んでいいぞ。」

カフィールがそう言うと、ダニエルはほっとしたような表情を浮かべ

ゆっくりと休もうとした。しかし、すぐに苦しそうな顔になった。

するとダニエルは立ち上がり剣を握った。それを振ろうとしたとき

ダニエルは力尽き倒れた。

「いい傾向だな。休むことに落ち着きを感じなくなってきた。」

カフィールはその日はダニエルをそのまま休ませてやることにした。

 

ダニエルは体をボロボロにしながらもカフィールに向かって剣を

振るい出す。そんな日々が毎日続いていった。

 

 

「お前なぁ、何で一番高い奴を選ぶんだよ。」

「仕方ないでしょ、これが一番あったかそうだったんだから。」

ジルとメアリーが分厚い防寒コートを着て船上で喧嘩をしていた。

 

 

 

「まあまあ、2人とも落ち着いてください。防寒具は極寒のノーザンランド

に行くのには必要だったんですし多少の安い高いは気にしなくて

いいと思いますよ。」

マルクがなんとか仲をとりもとうと気をつかっていた。

「多少?こいつの着てるやつは俺の着てるやつの2倍の値段だったんだぞ。

見た目は大して変わらないくせに、無駄なんだよ。」

ジルの怒りはなかなか冷めなかった。

「もう男のくせに細かいことにうるさいわね。そんなんだからもてないのよ。」

「何だと!それとこれとは関係ないだろ。もうそんなに俺のことが気に

いらないんだったら俺たちから離れてとっとと国に帰れよ!」

「...。」

このジルの言葉を聞いて、メアリーは言葉を失い下を向いた。

ジルもメアリーの様子を見てしまったと思った。

「(ジル、今のは言いすぎですよ。)」

マルクがジルに小声で注意した。

「(分かってるよ、もう。)なあ、メアリー。その、ちょっと言いすぎたよ。

悪かったな。」

「私なんてどうせ邪魔者なんでしょ。早くいなくなって欲しいって思ってる

のよね。」

メアリーが暗い表情で言った。

「そんなことない!俺はメアリーを大事な仲間だと思ってる。

それに俺はメアリーのことを...。」

ジルは必死でメアリーに訴えかけたが途中ではっとして言葉を止めた。

「『俺はメアリーのことを』、何?」

メアリーが尋ねる。

「いや、それはその...。」

ジルは言葉に詰まっていた。

「もしかして『愛してる』とか言おうと思ってた。」

メアリーはさっきまでの暗い顔から一変、ジルに好奇心一杯の

明るい表情になっていた。

「ばか、そんなんじゃねえよ。もう何をいいたかったか忘れちまったよ。

もういいだろ。ほらまだ到着まで時間はあるんだからゆっくり休んどけよ。」

ジルは恥ずかしがりながら適当に誤魔化した。

「いいわ、今回はそういうことにしといてあげる。またいつか続きを

聞かせてね。」

メアリーは笑顔で寒い海を眺めていた。


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