dark legend   作:mathto

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「す、すげえ、本当にすげえよ!」

ジークフリードの戦いぶりを見たジルは興奮し

テンションが最大まで上がっていた。

敵を倒したジークフリードがジルに近づく。

「俺はあいつに操られていたんだろう。しかしかすかに

記憶が残っている。ジル、君の想いを込めた言葉の

おかげで俺は正気に戻れたんだ。礼を言う、ありがとう。」

ジークフリードはジルに言った。

「いえ、そんな俺は何もしてないっすよ。」

ジルは照れた。

「君は俺に憧れて剣士に?」

「はい、そうです。俺、いつかあなたのような世界一の剣士に

なるのが夢なんです。」

「はっはっは。君はいい瞳をしている。きっといい剣士に

なれるよ。おっと、あいつの魔法がそろそろ切れるころらしい。

ここらでお別れしよう。最後に君のような人に出会えて

嬉しかったよ。」

ジークフリードの体が足元から煙になって消えだした。

「そ、そんなせっかく出会えたのにこんなにすぐにお別れ

なんて俺、嫌だよ。」

ジルは泣きながら言った。

「泣くな、男だろ。俺は死んだ時点でもう過去の人間。

今の時代に存在してはいけないのさ。」

ジークフリードは体が消え行く中、ジルに言葉をかける。

「お前の剣の受け方、なかなかよかったぜ......。」

そういい残すとジークフリードの姿は完全に消え去った。

「うわあああああぁぁぁぁぁん!」

ジルは天を仰ぎ大声を出してしばらく泣き続けた。

マルクとメアリーは何も言わずにそんなジルを見守っていた。

そして、ようやく泣き止んだころ、

「行こうか、ジル。」

メアリーがそっと声をかけるとジルは黙って頷きホテルへと帰った。

 

ホテルで一泊した後、3人はジークフリード資料館の館長に

会いに行った。

「実は...。」

ジルは館長に昨日のことを説明した。

「ほう、そうなことが...。よし、そこにジークフリードの墓を

立てよう。そしたらお主らもまた墓参りに来ることが出来るじゃろう。」

「サンキュー、館長。じゃ、俺たち行くな。」

ジルたちは館長に別れを告げ、港へと向かった。

「ほら、ジル。船に乗るよ。」

もうすぐ船が出発するのでメアリーがジルを急がす。

「ああ、分かってるよ。ちょっと待ってくれよ。すぐに行くからさ。」

船を目前にしたジルはふと町の方を振り返った。

「(ジークフリード、俺絶対世界一の剣士になってみせるよ。

そしたらさちゃんと墓参りに来て報告するよ。ありがとう。)」

ジルたちの乗せた船はサンアルテリア王国近くの港

サンマリーノへと戻っていった。

 

 

 

カキーン、カキーン、キーン。

剣がぶつかり合う時の金属音が野原に響きわたる。

「うおりゃぁぁぁああ!」

ダニエルが勢いよくカフィールに斬りかかった。

カフィールも真剣にダニエルの剣を受けた。

そしてすぐにダニエルの剣を逸らしてダニエルの腹部に

剣を突きつける。

「よし、休憩するか。」

2人は剣を収め、地面に腰を下ろした。

「ここで会った最初のころに比べたら見違えるほど

いい顔になったな。お前の剣は勢い任せで技術的には

まだまだ未熟だ。しかし精神的には随分成長した。

もう盗みなどせず、逆にしようとしてる奴がいたら止められる

くらいになっているだろう。俺はお前がエクスカリバーを持つに

ふさわしいと確信した。これから自分の成すべきことを考えて

行動するんだな。じゃあな。」

カフィールは立ち上がり、ダニエルから去るように歩き始めた。

「え、カフィールはどこへ?」

ダニエルは突然のことに驚いていた。

「俺はエクスカリバーとは別の力を手に入れに行く。少しあてが

あるんでな。また縁があれば会うこともあるだろう。」

「カフィール、ありがとう!」

ダニエルは大声で言った。

カフィールは森の中へと入り、ダニエルと別れた。

「まずいな。俺がダニエルを鍛えている間に闇が大きく動き出している。

しかし今の俺ではディリウスのような奴を簡単には倒すことが出来ない

のが事実。急いだほうがよさそうだな。」

カフィールは口笛を鳴らし馬を呼び、それに乗って駆けていった。

 

それからしばらくして。

ジルたちはサンアルテリア王国の玄関港であるサンマリーノへと

戻ってきた。

「ふぅ~、長い船旅だったな。」

船を下りたジルは肩を撫で下ろした。

「かなり疲れたね。それでこれから精霊探しにロドニエル大陸に向かう?」

メアリーはマルクとジルに尋ねた。

「そうですね。でも私たちも疲れてますしとりあえず今日はここで

一泊してからでいいんじゃないですか。」

マルクはジルに確認するように言った。

「...うーん。ロドニエル大陸には2人で行ってくれないかな。」

「え!何言い出すんですか、ジル。」

ジルの発言にマルクが驚く。

「俺さ、もう一回ニムダのじいさんとこ行ってみようと思うんだ。

やっぱりちゃんと修行した方がいいと思ってさ。」

「でもそれじゃ離れ離れになるってことでしょ。せっかく仲間なんだから

一緒にいたほうがいいんじゃないの?」

メアリーが不満そうにジルに聞いた。

「俺が修行してる間、お前らはすることなくて退屈になるだろ。

それにもう2度と会わないとかいうわけじゃないんだし

いいと思うんだけどな。」

「そうですね。ジルのためには今はそれが一番いいの

かもしれませんね。分かりました、そうしましょう。」

マルクはなんとか納得した。

「うー、分かったよ。修行終わったらすぐに来てね。私たちも

何かあったらジルのところに会いに行くからさ。」

メアリーも納得することにした。

「悪いな、2人とも。いつもわがまま言っちまってよ。

俺がんばって修行するよ。」

ジルが2人に謝るようにして言うと、それぞれ別れた。


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