dark legend   作:mathto

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ニムダの修行を受けるジル。

「次の修行はかなり時間がかかると覚悟しとけよ。」

「はい。」

ジルは元気よく返事した。

「優れた剣士というものは自ら強力なオーラを身に

まとっているのじゃ。ジル、オーラとは何か分かるか?」

「う~ん、なんとなくは分かるような気がするけど。

はっきりとは説明出来ないな。」

「まあ、そうじゃろうな。オーラというのは別に特別な人間

だけが持っているいるというものではなく生きているものなら

子供でも獣でも草や花にでもあるものじゃよ。普通は体の

内側に隠されていてなかなか気づくことはないが。

少し言い換えればオーラとは生命エネルギーとでも

言うかな。元気なときは多くなり、疲れたときは少なくなる。

そしてオーラがなくなったとき人は死ぬ。」

「へ~。」

ジルは感心して話を聞いていた。

「これからお前にはこのオーラを感じてもらってから

それを出来る限り増やす訓練をしてもらう。」

「で、どうやったらいいの?」

「それは自分で考えるのじゃ。」

「え、えぇー!」

ジルはニムダの言葉に驚いた。

「(何をどうしたらいいのか全然わからねえよ。このじじい、

ホントに教える気あるのかよ。)」

ジルの不満そうな顔を見て、ニムダは

「なんじゃ、やる気がないならもうやめてもいいぞ。だが

これを乗り越えなければ一流の剣士になることなど夢のまた

夢になってしまうがの。」

と皮肉って言った。

「(くそ、このじじい。)分かったよ、やってやるよ。

絶対オーラを自分のものにしてみせる。」

ジルはむきになって言った。

「(ほっほっほ。なかなかおもしろいことになるかもしれんな。)」

言ってはみたものの何をすればいいのか分からないジル。

「う~ん。」

ジルは悩んだ結果、座禅の格好に戻った。

「ほお、それでいいのか?」

ニムダは試すように尋ねる。

それに対してジルはすでに集中していて耳に入っていなかった。

「(こうしていると落ち着く。でもこのままじゃダメだ。何かを、

俺の中にある何かを感じ取らなければ。)」

ジルは何も感じ取れないまま時間だけが過ぎていった。

 

 

 

「(もっともっと自分の奥深くにあるものを感じなきゃ。)」

ジルは座禅を組み自らを掘り下げるように考えていた。

 

「(・・・殺せ。殺せ。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

殺せ殺せ殺せ・・・・・・・・・・・・・・・。)」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

ジルは急に立ち上がって大声で叫びだした。

「ど、どうしたんじゃ?!」

ニムダはジルの様子に驚く。

ジルからは黒いオーラが吹き出していた。

「グオォォォォ。」

ジルは小さく獣のような声を出した。

「い、いかん。なんとかせねば。」

ニムダは自分の剣を手にし鞘から抜こうとした。

「だ、だめだ。お、俺はもう、意味もなく人を殺すのはもう

いやだー!」

ジルは頭をかかえてしゃがみこんだ。

「やめろ、やめてくれ。誰だ、誰なんだ?俺に殺させようと

するのは?」

ジルは横に大きく頭をふって混乱していた。

「落ち着け!誰もいやせん。よく周りを見てみろ。」

ニムダは剣を置いてジルのそばに来た。

「誰も..いない...。はぁはぁはぁ...。」

ジルはニムダの言葉で少し落ち着きだした。

ジルの体から出ていた黒いオーラも消えていった。

「はぁ、はぁ...。じいさん、俺の中になんかいるんだよ。

そいつが俺に殺すように言ってくるんだ。俺、頭がおかしく

なりそうだよ。」

ジルはニムダの肩を両手でつかみ、必死で訴えた。

「うん、うん。わかっておる。お前には悪魔がとりついて

いるんじゃよ。」

「悪魔。どうしたら追っ払えるんだよ。教えてくれ。」

「(今はまだ本当のことは言えんな。)うーん、そうじゃな。

普通は悪魔祓いをしてもらうのじゃが、お前の場合は

難しいかの。なんと言うかお前にとりついているものは

相当根深くて強力なんじゃよ。だから今は追い払うことは

考えん方がいいじゃろう。それより自分で悪魔を表に出さ

ないように制御することが大事じゃ。今出来たみたいにな。

それとお前は魔法が使えるか?」

「いや、俺剣士だから魔法はさっぱりだけど。」

「そうか。それならこの際、ついでだから教えておこう。魔法を

使えないお前が魔法使いと戦うときに気をつけなければ

いけないことは何か分かるか?」

「う~ん、そうだな。やっぱ飛び道具系の攻撃魔法を離れたとこ

から使われたら一番きついかな。」

「ふむ、確かにそれもある。しかしもっと危険なことがあるのじゃ。

それは精神操作じゃよ。」

「精神操作?」

ジルはピンとこなかった。


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