dark legend   作:mathto

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次の朝、ジルたち3人は道行く人にグレンの居場所を聞いた。

「すいません、俺たちグレンって人に会いたいんすけど。」

「グレンに会いに?ああそれならあそこを左に曲がって

真っ直ぐ行った突き当りを右に行って、しばらく歩いていると右手に

赤いレンガの建物があるからそこへ入るといいわよ。」

女性は少し早口で手を使ったりして3人に教えた。

「え、ええとすいません。もう一回言ってもらえますか?」

3人はうまく覚えられなかった。

「うん?だからあそこを左に曲がって真っ直ぐ行った突き当りを

右に行って、しばらく歩いていると右手に赤いレンガの建物が

あるからそこに入ればいいって言っているのよ。」

女性はまだ理解できていなそうなジルたちを見て言い直した。

「えーと、とにかくあっちの方の赤い建物を探してみなさい。」

ジルたちは言われた通りの方向に進んで赤い建物を探した。

「あった。」

ジルが見つめる先に赤いビルがそびえ立っていた。

「何か建物の前に立っているだけなのに圧迫感を感じるのは

気のせいでしょうか。」

マルクは建物の中から何かを感じていた。

「なに言ってんだよ。ここまで来たら入るしかないだろ。」

バン!

ジルは勇み足で建物の中へと足を踏み入れた。

中は正面に大きな階段がある広々としたホールだった。

暗いながらもほこりなどはなくきれいで外観とは違い落ち着いた

雰囲気になっていた。

「......客か?」

階段の上から一人の男が姿を現した。男は全身を真っ赤な服、ズボンで

身を包みその髪も赤く逆立っていた。

「お前ら、何の用だ?」

男はジルたちに問いかける。

「グレン、あなたに頼みがあってここに来たの。」

メアリーはグレンに話しかけた。

「頼みごとか。俺を知っているのなら分かっているんだろうな?」

「ええ。頼みを聞いてもらうにはあなたとの勝負に勝たなければいけない。」

「分かっているじゃないか。なら部屋に案内しよう。」

ジルたちは階段を上って右手の部屋へ案内された。

「何だこの部屋?」

ジルたちは中に入って戸惑った。部屋の中には天板が緑の布地の

白い線で枠や数字などが書かれている机がいくつか置かれていた。

「これは俺の趣味の部屋、『カジノルーム』だ。」

「カ、カジノルーム!」

「そう、ここは遊びの場所であり、真剣勝負の場でもある。

まずはそこの席に座りたまえ。」

グレンはジルたちを一つの机の前に並んで座らせた。

 

 

 

「勝負の方法についてだが、このルーレットにする。」

グレンはそう言って目の前の円状の盤を指差した。

「お前らは素人のようだからルールは簡単にしよう。

この盤には赤と黒のマス目がある。今から投げ入れる玉が

どちらのマス目に入るかを当ててもらう。いいな?」

「ああ、分かった。」

ジルは緊張から重い返事をした。

「では、どっちに賭ける?」

グレンはじっとジルを見つめ問いかける。

「赤だ!」

ジルは思い切って答えた。

「回すぞ。」

そう言ってグレンはルーレットを回しだした。

そしてすぐに玉を投げ入れた。

ルーレットはビュンッと勢いよく回っている。

その様子をジルたち、そしてグレンは真剣に見守る。

ルーレットは徐々にスピードを落としていき、玉がコロコロと

回っているのが見れた。

いよいよ玉がマスに入ろうとしたとき緊張が走った。

カラッ。

玉がマスに入ってその動きを止めた。

「赤だな。」

グレンはそっと呟いた。

「え、赤?やった!勝ったぞー!」

ジルは赤いマス目に入っている玉を確認すると一気にテンションが上がり

大喜びをした。

「やりましたね。」

マルクもいっしょになって喜ぶ。

しかし、メアリーはなぜか浮かない顔をしている。

「どうした、メアリー?」

ジルが不思議そうに尋ねる。

「ううん、なんでもないわ。よかったね、ジル。」

メアリーは作り笑いをして答えた。

「さて、頼みごととやらを聞こうか。」

グレンは落ち着いて言った。

 

ジルはグレンに事情を説明した。

 

「なるほど、そういうことか。いいだろう、ロドニエル大陸に行ってやろう。」

「ちょっと待って。どうして?あなたならさっきのルーレット、勝つことが

できたんじゃないの?それを簡単に私たちに勝たせていいわけ?あなたの不敗神話

に傷がついちゃうのよ。」

メアリーは腑に落ちないといった表情でグレンに問い詰める。

「ハッハッハ。おもしろいな、サンアルテリアの王女は。」

グレンは顔を上げて笑い出した。

「え!私のこと知ってたの!?」

メアリーは驚く。

「当然だ。ドレスを着ていなくてもその顔を見ればすぐにわかる。

パーティーで一度見かけただけだが、記憶力はいいほうだからな。

まあ退屈してたしな、初心者のお前らを相手に遊んでやったってとこだな。

勝負だから負けるときは負ける。但し、俺は絶対に勝つと決めた真剣勝負では

まだ不敗神話は続いている。これで納得したか?」

「ええ、まあ。」

メアリーは頭の中では納得していたが気持ちが少しついていけていないという

感じだった。


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