dark legend   作:mathto

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「もういいじゃん。来てくれるっていってるんだしさ。細かいこと

気にすんなよ、メアリー。」

ジルは軽い感じでそう言うとメアリーの頭をポンポンと叩いた。

「『いいじゃん』って...。ジルは楽観視しすぎなのよ。」

メアリーは怒って言い返した。

「まあまあ、ここはとにかく来てもらいましょうよ。あくまでも

気を許さないように気をつけながらで、ね。」

マルクがジルとメアリーを取り持つように話に入ってきた。

「うん、分かったわ。今はそうするしかないものね。」

メアリーはマルクの言葉でようやく自分を納得させることが出来た。

「話し合いは済んだか?こっちはすぐにでも出られるがいいか?」

横で3人の様子を見ていたグレンが言った。

「もちろん。」

ジルたちは元気のいい返事をした。

「よし、俺の高速船を使おう。普通の旅客船の倍のスピードが

出せるからな。俺の船を使えば面倒な出国検査とかもなくなるしな。」

ジルたちはグレンに従い、港まで行くとグレンの所有する高速船へと

乗り込んだ。

 

グレンの高速船はさすがに早く、来たときよりもずっと短い日数で

ロドニエル大陸へとジルたちは戻ってくることが出来た。

そして、ジルたちはグレンを精霊の森へと案内した。

「ふぅ、たまには自然の中に身を置くのもいいものだな。」

グレンがふと呟いた。

「本当にこいつにまかせて大丈夫かな?なんかちょっと不安になってきた。」

ジルがマルクとメアリーにこそっと話す。

「まぁ、この人が本気で私たちに協力してくれるっていうんだったら

全然問題ないと思うわ。魔道士としての腕は世界でも指折りという話は

有名だからね。」

「ここまで来てくれているのに私たちを騙すというのはないと思いますけど。」

メアリーとマルクが意見を出し合う。

「何だ?また話し合いか?」

グレンは少しうんざり気味で言った。

「いや、大丈夫。問題の木はもうすぐよ。」

グレンの言葉にビクッとなったメアリーがあわてて答えた。

そこから歩き出してまもなく精霊の森に寄生したサクションツリーの

前までやってきた。

 

 

 

「これか?」

グレンがサクションツリーを指差してメアリーに尋ねた。

「そうよ。」

メアリーは真剣な表情で答えた。

「何だ、こんなものも処理できないなんてな。魔道連盟もたいした

ことはないな。それともこんなものにはかまっていられないほど

忙しい事情でもあるのかな?」

グレンは皮肉っぽく言った。

「魔道連盟がたいしたことない!?」

「こんなもの!!?」

マルクとメアリーはグレンの言葉に驚いた。

「さて、約束だからな。さっさと焼いてしまうか。」

グレンはそう言うと右手を広げて体の前に出した。掌はちょうど

サクションツリーの立つ方向に向いていた。

「『ファイアボール』。」

グレンの掌から火の玉がサクションツリー目掛けてボンッと放たれた。

火の玉がサクションツリーに当たると一気に全体をゴオォォォという

大きな音と共に燃え上がらせた。そしてすぐに真っ黒な炭となって

崩れ落ちていった。

「す、すげえ...。」

「すごい...。」

ジルとマルクはただただグレンの魔法の力に驚いていた。

「うそ...。私の『ファイアボール』じゃ焦げることもなかったのに。

魔力の次元が違いすぎるわ。」

メアリーはグレンとの圧倒的な力の差を感じていた。

「まあ、ひまつぶしにはなったか。それじゃ、俺は一足先に帰らせてもらおう。

お前らはまだここに用事があるみたいだしな。」

グレンはそう言い残すとさっと帰っていった。

 

「行っちゃいましたね。」

「ああ、意外とあっさりしてたな。」

「うん、一時はどうなるかと思ったけどよかったわね。」

3人はそれぞれ感想を言い合った。

「いやー、よくやってくれた。これでこの森も元の姿に戻っていくことじゃろう。」

「わっ!」

突然の精霊ノームの言葉に3人はびっくりした。

「いるならいるって言ってくださいよ、もう。心臓に悪いですよ。」

「そうよ、そうよ。」

「いやー、すまんかったな。最初からじっと様子を見ていたがなかなか

出るきっかけがつかめんでな。」

「へぇ~、こいつが精霊かぁ。本当に小さいんだな。えいっ。」

ジルはノームの耳を引っ張ってみた。

「いたっ!これ何するんじゃ。この罰当りめがっ!」

ノームは急に怒り出した。

「おもしろいな、これ。」

そういってジルはさらにノームをいじった。

「こらぁー!やめんか。せっかく風の精霊を探してきたというのに

もう会わせんぞ。」

「えっ、風の精霊。」

ジルはすぐにノームから手を放した。


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