dark legend   作:mathto

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「ふぅ、まったく...。この森を救ってくれたらその礼を

込めてと考えて探しておったというのに...。」

ノームは気分を害しながら言った。

「ありがとうございます!」

マルクは元気よくノームにお礼を言った。

「ふむ、まぁいいじゃろう。おーい、ルービンや。」

「はーい。」

ノームが声を大きくして呼ぶと返事と共にノームと同じ

大きさの少年が現れた。

「君が風の精霊なの?」

マルクが風の精霊ルービンに尋ねた。

「うん、そうだよ。ねえ、お兄ちゃん、いっしょに遊ぼう。」

ルービンは無邪気な笑顔でマルクに言った。

「え、遊ぼうって...。」

マルクは戸惑う。

「遊ぼう、遊ぼう、遊ぼう遊ぼう……。」

ルービンは駄々っ子のように同じ言葉を繰り返した。

「いいんじゃない。マルク、遊んであげたら。」

メアリーが笑顔で言った。

「うん、俺たちは別にいいからそいつにちょっとつきあってやれよ。」

ジルもメアリーと同じ意見だった。

「ありがとう。そしたら少し遊んできますね。」

マルクはジルとメアリーに感謝して精霊ルービンに向き合った。

「ルービンくん、何して遊ぼうか?」

マルクがやさしく聞いた。

「こっちこっち。」

ルービンはそう言うとピューっと森の奥へと飛んでいった。

「えっ。」

マルクは突然で少し戸惑ったがすぐにルービンの後を追って走り出した。

「ちょ、ちょっと待って。」

マルクは全力に近い速さでルービンを追いかけたが一向にその差は縮まら

なかった。

「はぁ、はぁ、はぁ...。ほんとに待って...。」

マルクはすぐに息切れを起こし走るスピードも少し落ちた。

「ん?あれ?」

そのときある異変に気づく。

「景色がすごい速さで流れている...。これは...。

まるで風の中にいるみたいだ。」

程なくして景色が流れる速さはゆっくりになっていき周りが確認できる

ようになってきた。

「え、ここはランターナ!間違いない。でもどうして?」

「これ、『エアループ』っていう魔法。風に乗ってここまで来たんだ。

風の魔法使いなら使える魔法だよ。そうお兄ちゃんはもう使えるはずだよ。」

「え、私が風の魔法使いって言ったかな?」

「匂いで分かるんだよ。」

ルービンは当然といった表情でマルクに言った。

 

 

 

「もしかして遊ぶためじゃなくて、私に『エアループ』を教えるために

ここへ連れてきてくれたの?」

「う~ん、半分半分かな。僕自身も楽しみたいし、お兄ちゃんが

そのために僕を探してたみたいだったしね。そしたらもう一つ

お兄ちゃんのために魔法を教えるよ。」

「もう一つ?」

「うん、お兄ちゃんにとって最強の魔法になると思うよ。今はまだ

魔力が足りなくて使えないかもしれないけど、いつかきっと役に立つよ。

あんまり時間をかけたくないからお兄ちゃんの中に直接伝えるよ。」

「中に直接伝える?」

マルクはルービンの言葉を理解しきれなかった。

「うん。」

ルービンはそう言うとマルクにすっと近づいてきた。

「いくよ、えいっ!」

ルービンは両手をマルクに向けると両手から光を放ちマルクにぶつけた。

「わっ。」

マルクは突然のことで驚く。

「あれ、なんともない。」

マルクは自分の体を見直したが全く変化はなかった。

「これで伝わったはずだよ。後はその時が来れば自然に使えるはずだよ。

じゃあ、みんなのとこに帰ろう。さあ、『エアループ』を使ってみて。」

ルービンはマルクに魔法を促す。

「使ってみてって言われても。どうやればいいのか?」

マルクは少し戸惑った。

「行きたい場所を念じながらさっきの風を再現するんだよ。」

「さっきの風...。そうか魔法であの風の流れを作り出せばいいんだ。

よし、やってみよう。『エアループ』。」

マルクは目に力をいれて、いつも使っている魔法と同じ要領で風を操ろうとした。

するとマルクとルービンの周囲の景色が少しずつ流れ始めた。

流れは速くなっていき、すぐに周りがどこか分からないほどになった。

しばらくその状態が続くとまた流れの速度は落ちていった。

景色が認識できるほどになるとジルやメアリーの顔が見えた。

「ふぅ...、できた。」

マルクは一息ついた。

「おかえりー。」

メアリーとジルは笑顔でマルクを迎えた。

「ただいま帰りました。すいませんね、2人とも待たせてしまって。」

「気にすんなって。じゃ、マルクも戻ってきたし行くか。」

「行くってどこに?」

マルクはジルに問いかける。

「決まってんじゃん。世界樹の葉を取りにコナル山ってとこに

行くんだよ。俺が殺してしまった人を生き返らせなきゃいけないだろ。」

「ああ、そうでしたね。」

マルクは納得した。

「もう、忘れてたのかよ。」

ジルはやれやれといった表情をした。


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