dark legend   作:mathto

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「ちょっと待って。そのお兄ちゃん、世界樹の葉を取りにいくの?」

突然、ルービンが話に入ってきた。

「そうだけど、何か?」

ジルが聞き返す。

「それだったら僕、いっぱい持ってるからあげるよ。ほら。」

そう言ってルービンはジルにたくさんの葉を渡した。

「え、えええぇぇぇ!こんなに簡単に手に入れてしまっていいのかな。

ま、とにかくルービン、ありがとう。」

ジルは驚きを隠せずにいたが素直にルービンに礼を言った。

ルービンは少し照れていた。

「となるともうサンアルテリア王国へ帰れるね。」

メアリーが嬉しそうに言った。

「そうだな。じゃ船に乗って帰るとするか。」

「ちょっと待ってください。」

「何だよ、マルク。まだここに用があるのか?」

「いえ、そうではなくて魔法を使って帰りましょう。」

「魔法って?」

「さっきルービンに教えてもらったんですよ。その魔法を使えば

行ったことのある場所へすぐに戻れるんです。」

「すごいじゃないか。なんて便利なんだ。じゃ、さっそく頼むよ。」

「はい。ルービン、ノーム、またね。『エアループ』。」

マルクはルービンとノームに別れを告げると魔法を唱え、

ジルとメアリーを連れてサンアルテリア王国へと戻ってきた。

「すごおーい。ほんと一瞬で戻ってこれるんだね。」

メアリーはマルクの魔法に驚いていた。

「ほんと、マルクは役に立つなぁ。それに比べてメアリーは...。」

「何よ、それ。一番役に立ってないのはあんたでしょ、ジル。」

メアリーは怒って言った。

「なんだとぉー。俺はこう見えないとこで頑張ってるんだぞ。」

「あら、どうかしらね。」

「くっそー、むかつくこの女。絶対仲間から外す。」

ジルは拳を握り締めて言った。

「ふーんだ。あなたにそんな権利はないのよ。」

メアリーもむきになって言った。

「もう2人とも落ち着いてください。」

マルクはジルとメアリーの間に入った。

「だってこいつが。」

ジルとメアリーはお互いを指差しながら声を揃えて言った。

「ああ、一人でどこか遠くに行きたい気分です...。」

マルクは頭を抱えた。

「あーーーっ!ジルさんじゃないですかぁ。」

遠くから子供が大声で呼ぶ声がした。

「な、なんだ。この俺を不愉快にするような声は?」

その声はメアリーとケンカをしていたジルの苛立ちをさらに掻き立てた。

 

 

 

ジルに近づいてきたのはヒヨルド博士だった。

「いやー、お久しぶりですね。会えて嬉しいですよ。」

ヒヨルド博士は怒っているジルとは対照的に満面の笑みを浮かべていた。

「このマッドサイエンティストが。会ったら絶対ボコボコにしてやろうと

思っていたんだ。おい、マルク。ミラージュナイフを出せ。」

「は、はい。」

マルクはジルの勢いに負けてあわてて荷物からミラージュナイフを

取り出し、そしてジルに渡した。

「ミラージュナイフがどうかしましたか?」

ヒヨルド博士は平然と聞いてきた。

「『どうかしましたか?』じゃねぇよ。とんでもねえもの渡しやがって。

この殺人ナイフでお前を刺してやる。」

ジルはミラージュナイフを鞘から抜いてヒヨルド博士に向けて構えた。

「わー、待ってください。ジル、少し落ち着いてくださいよ。」

マルクが割って入る。

「殺人ナイフ?どういうことですか?」

ヒヨルド博士は不思議そうに尋ねた。

「実は...。」

まだ落ち着けないジルに代わってマルクがヒヨルド博士に説明した。

「なるほど、そんなことが。しかしそれはミラージュナイフのせいと

いうよりはジルさんのせいでしょうね。

このミラージュナイフは確かに持つ人に反応して特別な力を出すこと

はありますが確かにナイフ自体には珍しい力を与えたり、持つ人の力

を増幅させるようなことはありませんからね。

特殊な効果が現れたとすれば、それは持つ人の力がよほど大きかった

ということでしょう。」

ヒヨルド博士は相変わらず冷静に分析した。その様子を見ていてさすがの

ジルも呆れて怒りも消えていった。

「もう、いいよ。そいつは返すからまた研究にでも使ってくれ。」

「え、いいんですか。本当に助かりますよ。」

ヒヨルド博士は大喜びをした。

「実はつい最近、非常に珍しい鉱物を発見しましてね。それで世界最高の

剣を作ろうと考えているんですよ。ただ、今はまだいろんな物が足りなくて

完成にはほど遠いわけなんですが、このミラージュナイフをその剣のコンセプト

の参考にでもさせてもらいますよ。」

「へぇ~、世界最高の剣か。興味深いな。一体何が足りないんだ?」

剣士であるジルにとって気にならないはずがなかった。


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