dark legend   作:mathto

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「私は一体、どうしたのかしら?」

「俺はどうしてここに?」

人々は困惑していた。そしてジルの姿を見ると怯えだした。

「きゃあぁあ!!」

「この殺人鬼め!俺に何をしたんだ?」

人々は大声でわめきだした。

「ちょっと落ち着いてください、皆さん。」

マルクは必死に人々に訴えた。さらに続ける。

「今の自分の体を見てください。どこか痛むところはありますか?」

「あ、そう言われれば...、どこも痛くない。」

「あれ、どうして?」

人々は自分の体がどこも悪くないことを確認すると、少し落ち着いてきた。

そこでジルは少し前に出た。

「皆さん、申し訳ありません。俺は確かにあなた方を何の理由もなく殺しました。」

人々はジルを恐怖と怒りの混ざった複雑な心境で見ていた。

「しかし、俺はそのことにすごく後悔をしました。そして反省の意味を込めて

生き返らせる方法を探し、見つけ、こうして皆さんを生き返らせたんです。」

ジルはゆっくりと気持ちを込めて人々に説明した。目にはうっすらと涙を浮かべていた。

「え、ええぇと...。」

人々はジルの謝罪に戸惑いを感じていた。

「まあ、みなさん。これでも飲んで冷静に話しましょう。」

ヒヨルド博士はそう言って人々に水の入ったコップを渡していく。

人々は皆、のどの渇きを思い出したようにすぐに水を飲み干した。

「...あれ。俺は何をしてたんだ?」

人々はジルの謝罪に対する戸惑いから、目覚めたときと同じ自分の状況

が分からないことに対する戸惑いへと変わっていた。

「?!」

ジルたちはその様子の変化に理解できないでいた。

「みなさん、ここはあなた方の家ではありませんよ。さあさ、出口は

こちらです。出ていってください。」

ヒヨルド博士は戸惑っている人々を半ば無理やりに外へと追い出した。

追い出された人々は訳が分からないといった表情で自分の家へと帰っていった。

「ヒヨルド博士、これはどういうことですか?」

マルクは思わず尋ねた。

「簡単なことです。あの水に最近の記憶を無くす薬をいれていたんですよ。

死んでからずっと眠っていたあの人たちにとってジルさんに殺されたことも

最近のことに入っているはずですからね。」

「それっていいのかな、なんか俺のした悪いことを隠しただけって感じで

かなり後味が悪いと思うんだけど...。」

ジルは複雑だった。

「たまにはいいんじゃないですか。要は被害者の気持ちを苦しみから

救うことが大事なんですから。そういう意味では問題ないでしょう。

ジルさんの後味の悪さは、これからの人生を償うような気持ちで生きて

いけばいいと思いますよ。」

ヒヨルド博士のこの言葉にジルは泣き出した。

「おいおい、それってお前のキャラに合ってねえよ。なんて優しい言葉

なんだ。泣けてくるじゃねえか。」

ジルは目から流れる涙を腕で拭う。

「ヒヨルド博士ってけっこういい人なんだね。」

メアリーが横にいたマルクに呟いた。

「それにしてもさっきの薬、初めて人に使ってみたんですが副作用がないか

調べられないのが残念ですねぇ。前の失敗作では試験用のネズミがご飯を

食べることを忘れて餓死してしまいましたが、さっきの状況では仕方ないですね。」

ヒヨルド博士は残念そうにしながらも笑って言った。

「ちょっと待て。それ試作品だろ。何使ってんだよ。お前、もしあの人たちに何か

あったらどうすんだよ。」

「なぁに、私がやったことはばれませんよ。はっはっは。」

「このやろう。絶対いつか罰が当たるぞ。さっきの涙を返せ。」

さっきまで泣いていたジルはヒヨルド博士に泣かされたことを悔やんだ。

「何だか、私ついていけないわ。」

「いや、ここはむしろ関わらないほうがいいと思いますよ。」

マルクとメアリーはジルとヒヨルド博士を遠目に見た。

「もういいよ。いつものことだ。俺はあの人たちに何もないことを祈っとくよ。

じゃあな。」

ジルはすぐに冷めて、この場を去りたくなった。

「そうですか...。これから私の新しい発明を見てもらおうかと思っていたの

ですが...。またいつでも来てくださいね。当分はここにいてるつもりですから。」

「はいはい。」

ジルは適当な返事をしてヒヨルド博士の研究所を出た。

 

 

 

「これでジルのやるべきことは終わったってことよね。」

メアリーがジルに話しかける。

「そうだな。なんか終わったって思ったら急に気が抜けてきたな。

しばらくのんびりしてようかな。なあ、マルク?」

ジルが穏やかな笑顔で言った。

「いいですね。私も賛成です。」

ジルたちはしばらくゆっくりと休息をとることにした。

 

ここは国立図書館。

「カフィールさまですね。特別閲覧室の入室許可手続きでよろしいですか?」

「ああ。」

カフィールが受付で手続きをしていた。

「それではこちらの用紙に必要事項を明記の上、提出して下さい。

審査が終わりましたら許可がおりたかどうかお知らせします。

審査には約一ヶ月程かかりますのでそれまでお待ちくださいませ。」

受付の女性が説明する。

「一ヶ月か...。もっと早くできないか?」

「そう、言われましてもねぇ。そういう決まりになっていますから。」

受付の女性は困った顔をして言った。

「いいんじゃないですか。許可を出しても。」

横から現れたのは国立図書館館長リットンだった。

「館長、何勝手なことを言ってるんですか!公共の施設で一人だけを

特別扱いするようなことは許されませんよ。」

受付の女性は少し怒って言った。

「まあまあ、いいじゃないですか。審査というのはその人が怪しくないか

調べるためのものですから。聖騎士カフィールなら何も問題はありませんよ。

それに審査の最終的な判断を下すのは私です。私がいいと言っているのだから

構わないでしょう。」

「しかし...。分かりました、何かあったら館長が責任を取ってくださいね。」

受付の女性はまだ不満は残るものの渋々承知した。

「すいませんね、無理を言って。ではカフィールさん、どうぞ行ってください。」

リットンは受付の女性に謝って、カフィールに入室を許可した。

カフィールは特別閲覧室の扉をギィィと開けた。

部屋の中は人の気配がなく、外とは少し違う空気を漂わせていた。

「さて、あの本はどこだったか...。」

カフィールはある本を探し始めた。

「これはこれはカフィールじゃないか。珍しいな、こんなところで。」

カフィールの前に黒いローブに紺色の髪をした若い男が現れた。

「エウドラか。世界最強の魔道士がまだ何か勉強することでもあるのか?」

カフィールはわずかに笑みを浮かべて言った。

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