国立図書館の特別閲覧室で向かいあうカフィールとエウドラ。
「はっはっは。カフィールにそう言ってもらえるとは光栄だな。
だが今俺が知りたいのは魔法じゃなくて兵法だ。どこかの国の軍師でも
やろうかと思ってな。その手の本を探しに来てたというわけだ。まあ、
完璧ではないが結構参考にはなったよ。」
「恵まれた才能があるのにそれ以上望んだら、失敗するぞ。」
「そういうお前こそ何を望んでここへ来たんだ?俺と同じじゃないのか?」
「俺は力が欲しい。俺の正義を貫くことができるだけの。」
カフィールは力を込めて言った。
「なるほど。よほどの敵が現れたってところだな。それで狙いは
『太古の神剣』か。」
「さすがに勘がいいな。それとも俺の未来でも見えたか?」
「ははは、お前の未来までは見えないさ。だが近い将来、戦争が
起こる予感はする。そうなったら俺やお前なんかは確実になんらか
の形で関わることになるだろう。そのときにどう関わりたいかって
ことだ。俺は大局的に戦争を見てみたいっていうのがあるから軍師
をと考えているってとこだな。」
「なるほどな。お前の予感は下手な占い師よりも当たるからな。
ただ道楽で軍を動かしたいってわけでもないんだな。それじゃあな。」
「あ、ちょっと待て。お前に一つ魔法を教えておくよ。時間がもったいない
からお前の体に覚えさせるぞ。お前ならそれで使えるようになるだろう。」
別れようとしたカフィールを引きとめたエウドラは、カフィールの手を掴み
そこからボワッと緑色の光を放った。
「手をかざしたところから異空間につながる穴を作って物を出し入れする
魔法『イルパ』だ。長旅が楽になって便利だぞ。」
「どうして俺に?」
カフィールは顔つきを変えずにエウドラに尋ねた。
「お前の父上には昔、世話になったことがあってな。その恩返しかな。
それと俺がお前に追い込まれるようになったとき見逃してくれるかも
しれないからな。」
エウドラは少し笑いながら答えた。
「フ...。素直にこの恩、受け取っておこう。じゃあな。」
「ああ、また会おう。」
カフィールとエウドラは別れた。
「...これか?」
カフィールは本棚から一冊の本を抜き取った。本のタイトルは
『古代の神々』だった。
「ええと...。」
カフィールは本をパラパラとめくり始めた。
「あった。『古の神々の一人、エクスデスは自らの力を
一本の剣へと閉じ込めた。その剣は天を震わせ、大地を
割り、海を裂く。持つべきものに大いなる力を与え、
世界を思いのままに変えることが出来るという。
しかしあまりの強大さ故に人々に恐れられ、他の神々により
ある場所へと封印された。』か。」
カフィールは本をパタンと閉じてまた本棚の元の場所へと戻した。
そしてまた本を探し出した。
「これか。」
カフィールが再び手にした本のタイトルは『世界の秘跡』だった。
本をバッと開く。
「『コナル山・・・断崖絶壁のその山は通常人間が登るのは到底
困難とされる。頂上にはこの世に一つだけの世界樹の木が大きく
そびえ立つ。』...違うな。」
パラパラとページをめくっていく。
「『試しの洞窟・・・神々が人間の力を試すために作ったとされる
洞窟。それは地面の下深く底なしに続いており、神々の遺産が神の
用意した試練と共に眠っている。その最下層には神の力そのものとも
言える一本の剣が封印されているという。』...これだな。」
カフィールはさらに続きを読む。
「『その場所を探すことが一つ目の試練である。見つけにくいようで
見つけやすい。そんな場所に存在する。』...場所に関する情報は
これだけか。やはり本だけではこれが限界か...。あとは勘に頼り
ながら地道に探していくしかないな。」
カフィールは本を戻して、特別閲覧室から出た。
「おや、カフィールさん。お探しの本は見つかりましたか?」
リットンが話しかけてきた。
「まぁな。」
「それはよかった。たくさんの本がありますから
それなりにきっちりと分類して探しやすくはしているつもり
ではいてますが、ここを訪れても目当ての本を見つけられずに
がっかりして帰っていく人もたくさんありますからね。」
「そうか。」
カフィールはさらっと答える。
「あ、そうそう。実は最近気になる本を見つけましてね。よかったら
読んでみませんか?」
そう言ってリットンは一冊の本をカフィールに差し出した。
「『正しき思想』?」
「はい、L=クラプターという方が書かれた本なんですがなかなか
興味深いとは思いますよ。差し上げますからもし気が向いたら読んで
見てください。」
「分かった。ありがたくもらっておこう。」
カフィールは本を受け取ると国立図書館を後にした。