dark legend   作:mathto

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「(く、やはりこいつらできるみたいだな。ここはあいつを

呼ぶしかないな。)君たち、なかなかやるじゃないか。」

ピピンは少し汗をかきながら言った。

「次はお前の番だぜ。」

ジルはピピンを指差す。

「そう言っていられるのも今のうちかもしれませんよ。

先生、どうぞー!」

ピピンが大声で呼ぶとゆっくりと家の中にまた1人の男が入ってきた。

片目に黒い眼帯をしたその男は体つきから一目でよく鍛えられていることが分かった。

「こいつらが俺の相手か。ほぉ...。」

男はジルたちをじっと見た。

「先生、こいつらを甘くみないほうがいいですよ。」

ピピンは男の後ろに隠れるように下がった。

「分かってる。こいつはなかなかの上物じゃねぇか。腕がなるぜ。」

男は指の関節をポキポキとならした。

「あっ!私、こいつ知ってる。確か有名な傭兵ダインよ。金のためなら

どんな悪い仕事でも引き受けるって噂の。」

メアリーが思い出して言った。

「俺のことを知ってるやつがいるとは光栄だねぇ。どうだ、こんな狭い

室内じゃなくて外でやらねぇか。」

「ああ、かまわないぜ。」

ジルはダインの誘いに乗りみんな外に出た。

「真剣勝負でいこうか。」

ダインは腰につけていた剣を抜いた。

ジルも剣を抜こうとしたとき、

「ちょっと待って。ここは私にやらせて!」

メアリーが前に出てきた。

「おい、メアリー。何言ってんだよ。」

「お願い。私、こいつらが許せないの。だからこの手でやっつけてやりたいのよ。」

メアリーは熱を込めてジルに頼み込んだ。

「分かったよ、もう。絶対に無理すんなよ。」

ジルは仕方なく下がることにした。

「ありがとう、ジル。」

メアリーはジルに礼を言って、剣を構えた。

「お譲ちゃんが相手か。女だからって手加減はしねぇぜ。」

「当然よ。さあ、かかってきなさいよ。」

「それじゃあ、遠慮なく...。」

ビュンッ!

ダインは一気にメアリーとの間合いを詰める。

「速い!」

ジルたちはダインの動きに驚く。

「スピードなら私だって負けないわ。」

メアリーはダインの動きを目で捕らえて攻撃に移る。

カンッ。

メアリーとダイン。お互いの剣がぶつかり合う。

「スピードはなかなかだな。だが俺にはかなわない。」

ダインは右から左からと次々に攻撃をくりだす。

メアリーはなんとか剣で受けて防御するのが精一杯だった。

「おらおら、どんどんいくぞ。」

ダインの攻撃は激しさを増していく。

「きゃっ。」

メアリーの剣がはじき飛ばされ思わずひるむ。

「ふんっ。」

ズバッ!

ダインの剣がメアリーの横腹を切り裂く。

 

 

 

「きゃぁぁぁ!」

メアリーの腹から血が一気に噴き出して倒れた。

「メアリー!!」

ジルとマルクは思わず叫んでメアリーのもとへかけよる。

「傭兵はスピードが命だ。俺に勝つには力不足だったみたいだな。」

ダインは突っ立ったままそう言い捨てた。

「大丈夫か、メアリー。」

ジルがメアリーの体を抱えて呼びかける。

「ご、ごめんね、ジル。せっかく心配してくれてたのに。私、

やっぱり冷静じゃなかったわね。自分の力量を計れないでいたみたい...。」

「いいから、今はしゃべるな。マルク、早く回復魔法を。」

「分かってます。『ホワイトウィンド』」

マルクが魔法を唱えるとメアリーの傷はゆっくりと癒えていく。

「傷は治りましたが、体にダメージが残っているはずです。安静に

してください。」

「ありがとう、マルク。」

メアリーは座った状態でやさしい笑顔をして礼を言った。

「ダイン、お前は許さねぇぞ。」

ジルは怒りに燃えていた。

「真剣勝負と言っただろ。生きるか、死ぬかの勝負が当たり前だ。

それをわざと急所を外して生かしてやったんだ。その魔法使いが回復魔法を

使えることも考えてな。礼を言ってほしいくらいだぜ。」

ダインは顔色一つ変えることなく答えた。

「勝負はメアリーが剣を手放したところでついていたはずだ。それを、お前は。」

「へ、これはとんだ甘ちゃんだな。お前をただものじゃないと感じたのは

勘違いかな?」

「勘違いかどうかはこれから分かる。」

ジルは怒りに燃えながら剣を構えるとすぐにダインへ斬りかかった。

ブンッ!

ダインはさっと交わす。

「やっぱりお前もその程度か。がっかりだな。」

ダインは交わしてすぐにジルに反撃をしかけた。

「もらった。」

ガキッ!

「何っ!」

ジルはダインの剣を体勢を崩しながらも受け止めた。

「お前は許さないと言っただろぉぉ!」

ジルは受け止めた状態からダインを力で押し離した。

「ハハハ。いいぞ。これで俺も全力を出せそうだ。」

ダインはさっきのメアリーとの戦い以上に素早く激しい攻撃を繰り出してきた。

ジルは全て押されることなく防いでいく。

「どうした?防御だけで精一杯か?」

ダインは戦いに胸踊りながらジルをさらに挑発する。

「ううぅぅぅ...、ガァア!」

ジルはダインの攻撃をはじいて攻勢に移った。

「うおぉぉ。」

互いの剣がぶつかり合う。

 


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