dark legend   作:mathto

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「(こいつ、思っていた以上に強い。)」

ジルとダインは共に同じ思いを胸に抱いていた。

「すごい。私と戦ったときよりも動きがずっといいわ。」

メアリーはダインと互角に渡り合うジルに感心していた。

2人は一旦離れて間合いを取る。

「俺とここまで対等に渡り合えるとはな。誉めてやるぜ。

だがここらでケリをつけさせてもらうぜ。

いくぞ!必殺『ライトニングアタック』」

ダインの体がぼんやりとした光に包まれると、すごい速さで

ジルに近づいた。ジルは今までとくらべものにならないスピードに

ついていけず全く反応できなかった。ダインはそんなジルを攻撃した。

次々に繰り出される攻撃にジルの体は切り刻まれていった。

「ぐあああぁぁぁ。」

ジルの全身から血が流れ出ていた。

「あいつわざと急所を外して攻撃してるわね。」

メアリーがジルがやられている様子を冷静に見ていた。

「えっ、それは相手が手加減をしているということですか?」

マルクは思わず尋ねる。

「違うわね。次の攻撃に移りやすいように浅く斬って

ダメージを蓄積させようっていう狙いよ、きっと。」

メアリーは冷静に戦いを見ていたが、急に両手を口の前に

もってきて、

「こらっ!ジル。何やってんのよ。そんなやつ一発で

のしちゃってよ!」

「(そんなこと言われても。こっちだってなんとかしたいのに...。)」

ジルが苦しんでいる中、マルクもメアリーと同じように大声を出した。

「ジル!そいつに勝ったらメアリーがキスしてくれますよ!」

「な、なんだって!」

今まで喋ることも出来ないダメージを受けていたジルが驚きの声を

出すと同時に体の内から力が戻ってきて手放しかけていた右手の剣を

しっかりと握り締めた。

「ふふ、ふふふふふ。いくぞっ、ダイン。」

ガキッ!

ダインの剣にジルの剣が重なりダインの攻撃を止める。

「何っ!ばかな。」

ダインは驚きを隠せない。

「反撃開始。」

ジルはさっきまでとは打って変わってダインを攻撃する。

勢いにまかせてだがダインは防戦一方となる。

「ぐ、こんな。さっきまでとはまるで別人だ。どこにこんな力が。」

「さて、そろそろきめようか。必殺『デストロイバスター』」

ジルが力一杯に振った剣は受けようとしたダインの剣を打ち砕いた。

その瞬間、勝負は決まった。

「好きにしな。」

ダインは無防備になりジルに委ねた。

「へん。俺は弱いやつには興味ねえよ。さっさといきな。」

「なんだと!...そういうことか。これは借りにしといてやるよ。じゃあな。」

ダインは怒ろうとしたがジルの笑顔を見ておさまった。ダインは去り際、

口元に笑みを浮かべていた。

 

 

 

「ばかな、ダインほどの男がやられるとは。そんな...。」

後ろでずっと見ていたピピンは計算外ということが顔に隠せなかった。

「お前はどうする?ここでやりあうか?」

ジルはピピンに対して戦闘体制をとった。

「く、覚えてろよー!」

ピピンは苦し紛れに捨て台詞を言い放つと全力で走って逃げていった。

「ひとまず終わったな。」

ジルは肩を撫で下ろして言った。

「あの地上げ屋さんはどうするんですかね?もうこのまま諦めて

くれるといいですけど。」

マルクがジルの傷を魔法で癒しながら言った。

「もう来ないに決まってるだろう。あれだけ向こうのやつをやっつけて

やったんだ。力押しでは無理なことが分からないくらい馬鹿でもないだろ。」

「そうよね。これでナンシーさんにも平穏な日々が戻ってくるのわね。」

メアリーはうれしそうに言った。

「それにしてもさっきの『デストロイバスター』って何?必殺技?

だっさいわね。もっとましな名前は思いつかなかったわけ?」

「なんだと。抜群のネームセンスじゃないか。」

「私もあまりかっこいいとは思えませんでしたが。」

「な、マルクまで...。ショックだな。」

「それと私とキスできるって言われたとたんのあの力の入りよう。

もしかしてジル、私のこと好きなの?」

メアリーはニヤッとしてジルに聞いた。

「そ、そんなことあるわけないだろ。こ、この性格ブス。」

ジルはあわてて必死で否定した。

「ジル、なんだかうれしそうですよ。」

マルクは笑いを抑えながらジルの顔を見て言った。

「もうマルクまでからかうなよ。」

「ねえ、ジル。」

マルクの方を向いていたジルがメアリーの声で振り向くと、

 

チュ。

 

メアリーはジルの頬にキスをした。

「いや、あの。これは。」

ジルは顔を真っ赤にしてすごく動揺した。

「ごほうび。」

メアリーはそれだけ言うと顔を赤くして下を向いた。

マルクはそれを微笑ましく眺めていた。

「さ、2人とも家の中で不安がっているナンシーさんを安心させて

あげましょうよ。」

マルクの呼びかけにジルとマルクは笑顔でうなずきナンシーの家の中へと戻った。

 


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