dark legend   作:mathto

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「ナンシーさん、喜んで。あいつらやっつけたから。

これでもう安心して生活できるのよ。」

メアリーがナンシーに嬉しそうに言った。

「え、あいつらを倒してくれたの?ありがとう。そうよね、

これからは平和に暮らせるのね。でも、でもまだなにか不安が

心の中に残ってるの。まだ何か悪いことが起こりそうな

嫌な予感が。」

ナンシーはメアリーの朗報を聞いてもまだ安心できずにいた。

「それだったらさ、しばらくの間は俺たちここにいてるよ。

そしてそのうちナンシーさんがもう安心できるようになったら

出ていくようにする。どう?」

ジルがみんなに聞いた。

「いいんじゃないですか。」

マルクは同意した。

メアリーも笑顔でうなずいた。

「あなたたち、本当にいい子たちね。ありがとう。」

不安がっているナンシーもジルたちに感謝して笑顔で礼を言った。

ジルたちはナンシーの家にしばらく居続けることとなった。

 

それから数日が経ったある夜。

ガサゴソ、ガサゴソ。

誰かがナンシーの家の中をあさっている音がした。

「ん?」

ジルがその音に気づいて布団から眠い目をさせながらゆっくりと

起きだし、音のする方へ向かう。

暗闇の中で何者かは確認できなかったが確かに人影があった。

「誰だ!」

ジルは人影を見ると急に目が覚め大声を出した。

「え、なに、なに...?」

ジルの大声でメアリーやマルクも目を覚ます。

人影もそれに反応するように窓をガシャーンと割って急いで

逃げていった。

「もう一体何なの?」

ナンシーが部屋の明かりをつけて迷惑そうにジルに尋ねた。

「今、ここに誰かが忍び込んでたんだ。きっと泥棒だ。

すぐに追いかけなきゃ。」

ジルはあわてて外に出ようとする。

「待って。もう遅いわよ。泥棒つかまえるならどうしてあんな

大声出すのよ。あれじゃ逃げてくださいって言ってるようなものよ。」

メアリーが不満そうに呟く。

「そんなこと言ったってさぁ。あれ見たら思わず叫んじまうって。」

ジルは仕方なかったという風な表情をする。

「今はまず何を盗られたか確かめるほうが先だと思いますが。」

マルクの意見に従い、ナンシーは金銭等の貴重品をまず確かめた。

「こっちは大丈夫みたいね。」

「あと大事な物は?」

「あとはここの土地、建物の権利書くらいだけどまさか...?!」

ナンシーはあわてて探し出す。

「...あった。」

権利書があることを確認してほっと胸を撫で下ろす。

「一瞬、あいつらの仕業かと思ったけど違ったみたいね。」

ナンシーもほっとする。

 

 

 

さらに1週間が過ぎ。

「あなたたち、ありがとう。もう大丈夫よ。やっと気持ちも

少し落ち着いてきたわ。」

ナンシーが穏やかな顔で言った。

「そうですか。それはよかったです。」

マルクはうれしそうに返事し、ジルとメアリーも笑顔で聞いていた。

「郵便でーす。」

和やかな雰囲気の中で、外から声が聞こえた。

「はーい。」

元気を取り戻したナンシーは自分から進んで外へ出た。

外では物騒な男ではなく明るい郵便局員が立っていた。

「ナンシーさんで間違いはありませんか?」

「はい。」

「ではこちらにサインをお願いします。」

ナンシーは言われるままにサインをして手紙を受け取った。

それを持って家の中に戻るとさっそく封を開けた。

「な、何これ!

『         訴状             

原告 ピピン 

被告 ナンシー

 

請求の趣旨

現在、被告が不法住居している建物より速やかに退去すること。

 

その建物及び土地を原告に引き渡すことを求める。

 

請求の原因

土地、建物の所有者であった被告の亡き夫は原告にその所有権を示す

権利書を譲った。

 

再三にわたる退去要請を拒み続けている。

 

証拠方法

被告の亡き夫と原告が交わした誓約書及び土地、建物の権利書。』」

 

ナンシーは驚き慌てふためいた。

ジルたちは何のことかさっぱりわからないといった風でどうしたらいいのか

分からないでいた。そんな中でメアリーが口を開く。

「私の知り合いの弁護士ポーに相談してみましょう。話はそれからよ。」

ナンシーは家で待つこととして、メアリーの案内でジルたちは

ポー弁護士事務所へと足を運んだ。

トントン。

「どうぞ。」

メアリーがドアをノックすると中から物腰やわらかそうな男の声が聞こえた。

ギィィ。

ドアを開けると机の向こうに椅子に座って分厚い本を読んでいる人が見えた。

「ようこそいらっしゃいました。どうぞそちらの椅子にお掛けください。」

男はいつもの調子で来客に声をかけると立てて読んでいた本を机の上に置き

客の姿をよく見た。

「こ、これは姫ではありませぬか。ご機嫌麗しゅう、いかがですか?」

男はメアリーの姿を確認すると驚いて椅子から立ち上がり床に片ひざをついて

挨拶をした。

「ポー、そんなめんどくさいあいさつはいいからこっちの話を聞いてよ。」

メアリーは聞き飽きた挨拶にうんざりして言った。

 


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