dark legend   作:mathto

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「まずは座ってください。」

ポーは手を前に出しメアリーらにソファに座らせた。

「それで話というのは?」

ポーはメアリーたちが座った反対側のソファに腰掛けて

両手を体の前で組み、落ち着いた感じで尋ねた。

「知り合いのナンシーという人のところに変なものが

送られてきてね。これなんだけど...。」

ナンシーより預かってきた訴状、そして権利書をポーに見せた。

「ふむ。」

ポーは訴状の方をじっくりと読み出した。

次に権利書の方を見だした。

メアリーたちは緊張してその様子を眺めていた。

「ふ~。これは裁判を起こされたということですね。

そしてこの権利書、偽物です。ここに押されている役所の判が

本物と違っています。」

そう言ってポーは権利書の判を押してあるところを指差す。

「おそらくはこの原告のピピンという人に権利書を本物と

偽物を摩り替えられたと考えるのが適当かと思われます。」

「あっ、きっとあの夜だ!」

ジルが思わず大声を出した。

しかしポーはあまり気にせずに話を進めた。

「あちらが本物をもっている以上、裁判に勝つことは難しいでしょうな。

摩り替えられたということをきっちりとした証拠をあげて

証明出来れば話は別ですが...。」

ポーは言葉につまる。

「そう言われてもどんなやつが摩り替えにきたのかもさっぱり

分からなかったわ。」

メアリーは困った顔で言った。

「でしょうね。誰が摩り替えたか分かればそこからピピンという人に

辿りつけた可能性もあったでしょうがね。」

ポーは少しため息をついた。

「それじゃあどうなるの?もしかして裁判に負けてナンシーさんは

家をとられちゃうっていうわけ?」

メアリーは不安な顔をしながらも声を大にして尋ねた。

「その聞き方からすればおそらく残酷な答えになってしまうでしょうが

かなり高い確率で裁判で負けますね。」

ポーはあくまで落ち着いた口調で答えた。

「そんな...。」

メアリーはショックを隠せない。

「助けになれるかは分かりませんが、もしよろしければ事情を

詳しくお話していただけませんか?」

メアリー、ジル、マルクはポーに今までのことを順を追って

説明していった。

「なるほど、そういうことでしたか。それは何としてでも

守りたいですよね。しかし証拠物件に関してはあちらに相当有利な

ようですから、論理的な論戦になれば勝ち目は薄いでしょう。

こちらを有利に持っていくには裁判官の精神面に訴えることでしょうね。

いかにこちらの方が被害者であるかを強く訴えること、

それだけでしょうね。そのために証人がいればまだましですが。

それでもこちらが不利なことには変わりありません。

私が法廷に立つことを望まれるならば、そこまでのことしか出来ません。」

ポーは感情を少し込めながらも穏やかに説明していったが次の一言では

全く穏やかさはなかった。

「だが、どんなことをしてでも裁判に勝ちたいと言われるならば

私は法廷に立つことは出来ませんが一つ方法があります。

それは...。」

ポーは手招きをしてメアリーら3人の顔を近づけさせて小声で話す。

 

 

 

ジルたちが裁判までの手続きを済ませ、数日が経つ。

 

そして裁判当日。

裁判所を前にするジルたち一行。

「ねぇ、ジル。本当に大丈夫?」

メアリーが不安そうに尋ねる。

「まあ、俺にまかせてみてよ。しっかりと準備もしてきたことだしな。」

というジルは緊張で体が少しかたくなっていた。

「私とメアリーはただ見物してるだけでいいんでしょうか?」

マルクも不安そうにジルに聞いた。

「弁護人は1人が普通だろ。俺だってナンシーさんのために

がんばってみるよ。」

緊張は高まるばかりだが、力強く言った。

「あなたたち、本当にありがとう。でも無理しないでね。

私だってある程度はもう覚悟してるから。」

ナンシーは気弱に言った。

「ナンシーさん、悪いのはあいつらなんですから。

とにかくあいつらに酷いことをされたという悲しい顔で

いてください。ポーさんの話ではそういうところも判決に

影響するらしいですから。」

ジルはナンシーの気持ちを固めさせるように言った。

「わかっています。言われたとおりにします。」

ナンシーは真剣な顔でうなずいた。

 

「これより裁判を始める。原告前へ。」

ピピンが法廷の中央にあるテーブルまでゆっくり歩く。

そして裁判長に体を向け、

「私はこの法廷で嘘偽りなく、真実のみを述べることを誓います。」

被告人であるナンシーも同様に呼ばれて宣誓をした。

ジル、ナンシーとピピンが向かい合う。

「(ほう、あいつが弁護人とはな。あまりに不利な状況で引き受ける

弁護人もいなかったってところだろうな。弁護士に入れ知恵されてる

かもしれんが、所詮は素人だ。腕力だけではどうにもならないということ

をここで知らしめてやる。)」

ピピンは余裕の笑みを口元に浮かべていた。

「(あっちはピピン1人か。おそらくはこういうことを今までに経験

しているのだろうな。ピピンは俺が素人だと思って甘くみているだろう。

それならそれでやりやすい部分はあるかもしれない。)」

ジルは緊張とやる気の入り混じった気持ちの昂りを感じていた。

 

こうして裁判は幕を上げた。

 

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