dark legend   作:mathto

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ピピンが壇上に立つ。

「私はナンシー氏が現在住まわれている土地、家屋を早急に

引き渡してもらいたい。事前に提出したナンシー氏の亡き夫に

書いて頂いた誓約書にもあるように私がお貸しした金銭の返済が

困難なため担保としていた家を譲るという理由からです。」

ピピンは堂々と喋っていた。

「うそよ!そいつからお金を借りたなんてうそに決まってるわ。

私たちはお金を借りなければいけないほど生活に困ってはいなかったわ。

(こ、これでいいのかしら?)」

ナンシーは頭の中でジルたちとの打ち合わせを思い出しながら

声を荒げて叫んだ。ジルはうんうんとうなずいていた。

「しかし、誓約書に書かれた亡き夫の字は筆跡鑑定もしてもらって

本物だと断定されているのですがね。」

ピピンはナンシーの叫びに全く動じることなく言葉を続ける。

「そしてもう既に土地及び家屋の権利書は預かっています。

つまり、ナンシー氏は私の家を不法に占拠しているという事実です。

私は何度も足を運び、退去するようお願いしてまいりましたが

残念ながら聞き入れてもらえず今日に至っているわけです。」

そこまで言うとピピンは勝ち誇ったように原告席へと戻っていった。

「(ふふん、これに反論などできるわけがあるまい。)」

ジルが壇上へと向かう。

「えー、初めに言っておきます。ここにいる原告のピピンは地上げ屋です。

ナンシーさんが住んでいる地域が再開発されるということで無理やりに

ナンシーさんの家を奪おうとしているに過ぎません。」

ジルはゆっくりと自分の気持ちを落ち着かせるように喋った。

「なんて失礼なことを言うんだ!名誉毀損で訴えるぞ!」

ピピンはさっきまでの落ち着き勝ち誇った顔から一変、逆上して叫んだ。

「(ふむ、意外と簡単かもしれないな。)」

ジルはピピンの感情むき出しの様子を見て、さらに冷静になる。

「こちらにピピン氏が関わったナンシーさんの家付近で買収をおこなった

別の家々のリストがあります。これを証拠として提出します。」

「提出を許可します。」

ジルは裁判官に数枚の書類を渡した。

「裁判長!」

ピピンは手を上げると声を荒げて呼んだ。

「はい、原告ピピン君。」

「私の仕事は主に不動産の売買です。金銭を貸すというのはあくまで副業の

ようなものです。確かにナンシー氏付近の家々を再開発のされるということで

先方よりの依頼により買収をおこないました。しかし、それらは正当な手続きに

よるものでありまた本件のこととは偶然重なったに過ぎません。」

ピピンはなんとか気持ちをおさえるようにして言った。

 

 

 

「裁判長、よろしいでしょうか?」

ジルが手を上げて再び喋ろうとした。

「よろしい、弁護人ジル君。」

「はい。では続けさせてもらいます。ピピン氏はナンシーさんの

家を譲るように何度も伺いに来ておりますが、その行動はあまりに

酷いものでした。暴力、いやがらせ、脅しあらゆる手段を使って

奪おうとしたのです。ナンシーさんはそのことで精神的に大きな

ダメージを追ってしまいました。こちらに証人としてその様子を

見たことがある近所の方をお呼びすることを許可していただきたい。」

「許可します。」

裁判長の声とともに1人の中年女性が壇上に現れた。

「私は再開発の地域からわずかに離れたので何もされませんでしたが

ナンシーさんの家は酷いものでした。ガラス窓は割られ、そこにいる

ピピン氏と共に恐い男の人がやってきては怒声を上げて暴れている

のがよく分かりました。」

女性は恐がりながらもしっかりと聞こえるように伝えた。

「ありがとうございました。もういいですよ。」

ジルが感謝の言葉を女性にかけると女性は早足で法廷から退出した。

「さ、裁判長!」

ピピンはまた慌てて手を上げる。

「はい、ピピン君。」

「さっきの女性も含め被告人側はうそをついています!私が暴力を

振るったのなら治安隊が止めにきてその暴行の記録が残るはずです。

しかし、そのような記録は一切残っていないはずです。それがないのは

被告人がうそをついているからに他ならないのです。」

ピピンが声を再び荒げると、ジルがまた手を上げる。

「弁護人ジル君。」

「はい。私にもなぜ治安隊が動かなかったのかは分かりません。

しかし、治安隊が動かなかったから全てがうそだというのは考えが偏り

すぎているように思われます。治安隊にも何か事情があったのかもしれませんし。」

ジルはピピンの全否定を打ち崩す。

「裁判長!弁護人のいうところは全く確証のないものです。

ただ被告人を有利にするために考えを誘導しているに過ぎません。」

「原告、弁護人ともに事実を確認できないことは言わないように。」

裁判長が注意した。

「(く、暴行によってナンシーさんが被害者であることを証明することは

難しいか...。だが、まだ流れは崩れてはいない。)」

ジルは少し険しい顔をした。

 

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