dark legend   作:mathto

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ニクロムに協力することにしたジルたちは

ニクロムに呼ばれて、ニクロム商会へと足を運んだ。

「意外と小さいんだな。」

そこは一般の家と変わらない大きさの建物だった。

「たぶん支店とかそういうのじゃない。きっと本店は

大きいはずよ。有名どころなんだし。」

メアリーがフォローするように言った。

そして、さっそく3人は中へと入る。

中ではニクロムが座って待っていた。

「ようこそニクロム商会へ。ここはもともと最初に出した店だ。

今はこうして話し合いの場としてたまに使っているわけだが。」

ニクロムは机に肘をついて手を合わせながら簡単に挨拶した。

ジルたちは用意された椅子にそれぞれ座った。

「それではビルドー不動産からシェアを奪うための

これからの流れを簡単に説明しよう。」

ニクロムが説明を始める。

「まず我々はビルドー不動産の割安な目玉物件を買い占める。

そしてそれを適正な価格で売り出す。そうすればビルドー不動産には

大きな利益が生まれるが、我々には労力に見合う収益は得られない。

一見無意味なことに見える。しかし、そうすることによって

ビルドー不動産は大事な売り物件を失い、我々は得ることができる。

いくら有名な会社だろうがいい物件を抱えていない不動産屋など

ただの箱会社にすぎない。逆にいい物件を抱えていれば名前は一気に

上がるものだ。ここで出てくる赤字は宣伝費用と考えればいい。

その間にニクロム商会の子会社としてのニクロム不動産を大きく

店舗展開をしていく。後は市場価格にのっとって不動産の売買を

続けてシェアを確保するという手法だ。そして...。」

「ちょっと待って。話がよく分からないんだけど。」

ニクロムの説明の途中にジルが割ってはいる。

「それでうまくいくのか知らないけど、仮にうまくいったとして

ビルドー不動産は何もしてこないはずはないだろう?」

ジルはニクロムに疑問をぶつける。

「その通りだ。だがやつらがしかけてこそうなことは多少は予想が

できる。我々自身、そして我々の購入した物件やその他関係のあるところ

に対して、腕力のあるチンピラや傭兵を使っての嫌がらせが一番に

考えられる。君らがすでに経験しているようなことだ。そこで君たちに

またそれを防いでもらおうというわけだ。分かりやすいだろう。」

「ええ、まぁそうよね。」

メアリーは理解に必死で頭がパンクしそうになりながら答えた。

ジル、マルクも頭から煙が出てきそうになっていた。

 

 

 

ニクロムは説明を続ける。

「さらに裁判といったことも予想できるがそれに関しては

奴等の様子を見ない限り、対策は立てられないので

おいておく。但し、一応の考えられる可能性のあることは

出来る限り想定して対応を決めておく必要がある。その辺は

こちらでまた考えよう。」

「つまり俺らはまた用心棒をやればいいってことだな。

意外と簡単そうじゃん。」

ジルは余裕の笑みを浮かべる。

「まぁ、奴等の出方しだいではもっと他のことを頼むかもしれないがな。

あ、それとそっちの2人にはビルドー不動産の物件の購入に

参加して欲しい。ジルは奴等の末端と裁判をしているからそこに

関わればまずいかもしれないが君らなら問題ないだろう。今は

1人でも人がいるときだからな。」

「了解。」

「了解しました。」

メアリーとマルクは頷いて返事した。

「これで説明は終わりだ。具体的に動いてもらうときにはまた

連絡をする。」

 

ジルたちはニクロム商会を出て、宿へと戻った。

「なぁ、どう思う?」

ジルが漠然と2人に尋ねる。

「う~ん、ビルドー不動産が大きなシェアを持ってますから最初から

普通に不動産の売買をしても難しいというのは分かるんですけどこの作戦

はホントに効果があるのでしょうか?どうもかかる費用に見合う宣伝効果

とかが得られないような気がするのですが...。」

マルクが少し悩みながら答えた。

「それにその費用の出どころも少し謎よね。ニクロム商会が大きいと

言っても、こんなにお金のかかることを単独で出来るとは思えないわ。

不動産を買い占めていくようなことちょっとやそっとのお金じゃ全然

足りないもの。とは言っても政府の人間は一部だろうけどビルドー不動産に

ついているのよね。反対派でもいて、その人たちがニクロム商会に協力

か依頼をしているって考えられないかしら?」

「うわぁ、なんか頭がこんがらがってきそうだな。もう考えるのは

よそうぜ。とにかく今は悪いビルドー不動産を痛い目にあわすために

ニクロム商会の言うとおりに協力する。それでいいだろ。」

「まぁ、あまり考えすぎてもしょうがありませんしね。」

「気にはなるけど、情報がないものね。仕方ないわ。」

ジルたちは議論を終えることとした。


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