dark legend   作:mathto

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「これがお城かぁ。ちッさいとき絵本では見たこと

あったけど実際に見たの初めてだなぁ。

こんなでっかかったんだ。」

ジルは生まれて初めて見る城を興味深く眺めていた。

「私は昔、魔法の先生に何度か連れられて入ったことが

ありますよ。」

マルクは少し昔のことを思い出していた。

「へぇ~、そうなんだ。ま、とにかくささっそく

中に入って見物してみようぜ。楽しみだなぁ。」

そしてジルは興奮した気持ちを抑えきれず早足で

門の前までやってきた。そこには槍を持った門番が

2人立っていた。

「俺達、城の中をちょっと見学したいんだけど

入っていいよね?」

ジルは元気よく答えた。しかし、

「今は厳戒態勢だから一般の者は入れないぞ。」

と門番はそっけなく答えた。

「そうなの?厳戒態勢って何かあるの?」

ジルは納得がいかない様子で門番に尋ねた。

「ええい、面倒くさい。そんなことは自分で調べろ。」

門番はそう言った後、2人を追い返した。

「ちぇ、もうちょっと親切にしてくれてもよさそうなのにな。」

ジルは不満がたまっていた。

「しかたないんじゃないですか?何だかピリピリした

様子でしたし。」

マルクはジルをなだめるように言った。

「それにしてもさぁ、、、ん?何だあれ?」

ふと目をやると近くに大きめの木の立て札が立てられていた。

「何でしょうね?見に行きましょうよ。」

すぐに見に行った札にはこう書かれていた。

『警備兵募集中。クラレッツ城主、ラゴズ。』

これを見たジルは目を輝かせた。

「これだ!」

 

 

 

再び門の前まで来たジルとマルク。

「あの立て札見たんだけど、今も募集してんの?」

「警備兵をやりたいのか?それなら中に入りなさい。

すぐに係りの者が案内するから。」

そうして2人は門を通された。

「意外なほどあっけなく中に入れたな。」

「そうですね。」

2人が立ち止まっていると一人の兵士が近づいてきた。

「警備兵の志願者だな。私の後についてきなさい。」

案内役の兵士に着いていくと広間に到着した。

「指示がでるまでここで待機してなさい。」

そう言うと兵士はどこかへ行ってしまった。

広間にはすでに数十名の志願者が集まっていた。

鎧兜を身に付けいかにも戦士らしいといった感じ

の者がほとんどだった。

「いっぱいいるなぁ。」

ジルは周りを見回して言った。

「ええ、ランターナの時よりも明らかに多いですよね。」

「ん?ランターナって?」

「私とジルが出会った町ですよ。」

「そういえば町の名前聞いてなかったな。」

ジルはしみじみとランターナでのことを思い出した。

「おい、知ってるか?ここの城主はかなりのケチらしいぜ。」

近くにいた別の戦士達が話をしている。

「なんでもこの城の兵士達の給料を下げたり、

支払いが滞ったりでどんどん辞めていったって話だ。

それで兵士が足りなくなって俺達みたいな見ず知らずの

者を雇おうとしてるらしいぜ。」

「おいそれじゃ俺達の報酬も危ういんじゃないのか?」

また別の所で、

「ここの住民はかなり苦しんでるらしいぜ。城主が

かなり重い税金をかけて、自分はその集めた金で珍しい宝石を

世界中から買い漁ってるんだとよ。」

「そりゃ、住民もたまんねぇな。出て行こうとか思わねぇのか?」

「他の土地へ行くっていうのもかなり大変なことだからな。

でもここの城主に不満が溜まってることは確かだな。」

周りの話を聞いたジルとマルク。

「ここの城主、かなり評判悪いみたいだな。」

「実際に見てみないことには。

噂話だけではなんとも言えませんよ。」

「そんな気にすることないって。俺達の

目的はあくまで城の見学にしとけばいいんだよ。」

「気持ちの持ちようってことですね。本当に悪い城主だったら、

その人のために働くなんて嫌ですもんね。」

2人が話していると、奥の扉から一人の男が現れた。

その男は全身を煌びやかな宝石が散りばめられた豪華な服

で身を包んでいた。


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