dark legend   作:mathto

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「社長!大変です。わが社の不動産仕入れが邪魔されています!」

勢いよく社長室に飛び込んできた別の社員が慌てた口調でビルドーに

報告する。

「誰にだ!」

ビルドーは怒りが頂点に達しそうになりながら問いただす。

「やり手の傭兵たちが我々の目をつけたところを守っていて手が

出せないんです。同じような状況がいくつも重なっていて

とても家主の依頼で動いているとは思えません。誰かが裏で...。」

「誰かじゃない!ニクロムに決まっている。奴め、こんな手の

こんだことまでしおって!

許せん!ニクロム不動産をつぶしてやる。その後でニクロムを

血祭りにあげてやる。」

ビルドーの怒りは頂点に達していた。

「社長、あまり暴力事を表立ってしてしまうとわが社のイメージが...。」

「分かっている。裁判だ。裁判で奴等をぼろぼろにしてやる。

いますぐに奴等の弱みを調べ上げろ!無理やりでもいい。

ちょっとでもダメージを与えられそうなことは全て取り上げるんだ。

いいな!」

「はい!」

ビルドーは社員にすごい形相で睨みつけると社員はすぐに

裁判の準備に取り掛かった。

 

「はぁ~、なんか張り合いがないよな。大したやつこねぇんだもんな。」

用心棒をして帰ってきたジルがため息混じりにもらした。

「私もよ。すごい裏方って感じがするわ。あんな頼まれ方したから

もっと大変な役かと思ってたのに。」

「まぁまぁ、2人とも気を落とさないで。こういうことも大事な仕事

だと思いますよ。だからニクロムさんもああいう風に頼んできたん

ですよ、きっと。」

マルクはジルとメアリーをなだめるようにして言った。

「そうかなぁ、マルクはいいように考えすぎなところがあるからなぁ。」

「いや、違うわ。こんな仕事、私たちには向いてないわ。

こうなったらビルドーを私たちで殺しにいけばいいのよ。」

「殺しにって...。いくらビルドーが悪い人でもそれはダメですよ。

ビルドーの悪い行いはいずれこの国に裁かれる。そうでしょ、メアリー。」

「う~ん。それが本当は一番いいんだけど。まどろっこしいっていうのかな、

もっと悪い奴はバッサリとすぐにやっつけられるようにしたいのよね。」

「それは俺にもなんとなく分かるよ。悪い奴っていうのを分かってて

証拠とか法律の知識とかないと手を出せない。それで悪いやつが

悪いことを続けて普通に生活している。そういうの悔しいよな。」

「私も同感です。考えるとどうしようも出来ない自分の無力を感じますよ。」

「う~ん。...って最近俺らの話いい結論出ねぇよな。」

「それだけ難しい話をしているんですよ。」

「もう今日はやめにしてゆっくり休みましょ。ね。」

メアリーが笑顔で言うと、ジルとマルクも笑顔で頷いた。

そうして3人は休息をとることとした。

 

 

 

しばらくして、裁判の準備を整えたビルドー不動産は

ニクロム不動産に対して次々に訴訟を起こしていった。

しかしニクロムは起こされそうな訴訟に対して全て

対応策をあらかじめ考えていたことと有能な弁護士を

ニクロム不動産側が押さえていたことにより裁判は

ことごとくニクロム不動産の勝利に終わっていった。

ビルドー不動産側からの裁判が一旦落ち着いてきた頃、

ニクロム不動産側からビルドー不動産へ名誉毀損などの

訴訟を起こし始める。その裁判の中でビルドー不動産のこれまでの

悪事が次々と世間に明らかになりビルドー不動産のイメージは

ガクッと落ちた。ニクロムの作戦によりいい物件を失い

安いだけが取り得となったビルドー不動産は裁判でのイメージダウン

とつながり世間では3流以下の不動産会社と見られるようになる。

当然ビルドー不動産の業績は悪化し営業所はどんどん閉店していく。

「社長、また一店舗閉店せざるを得なくなりました。」

社員が苦しい顔でビルドーに報告する。

「分かっている。くそー、このまま終われるか。」

ビルドーは悔しい顔をしながら頭を両手で抱えていた。

 

そして裁判は遂にビルドーの逮捕へと結びついた。

ビルドーの出頭は町中の注目を集めていた。

このころにはビルドー不動産はビルドー自身がいた本社を

残すのみとなり数名の社員がいるだけだった。

残された社員はビルドーが戻ってくることを信じて必死に

会社を盛り上げようとした。

完全に裁判に負けたビルドーは刑が確定し刑務所に入る。

そこでビルドーは入所2日目にして看守5人を殺害し逃亡。

国から指名手配にされる。

 

ジルたちはニクロムに呼び出された。

「君たちも知っていることだろうが、ビルドーが刑務所から逃げ出した。

それを捕まえてくれないか。」

「まさかここまでなることを最初から予想していたんですか?」

マルクが驚きの表情でニクロムに尋ねた。

「いや、最初は確かに不動産業界である程度のシェアをビルドー不動産

から奪えればいいと思っていただけだ。だが、流れの中で奴等の方から

ぼろぼろと崩れていってくれたんでな。うれしい誤算というものだ。

奴等とつながりのあった政治家も縁を切ったという話だ。

おかげでこの通りビルドー不動産に成り代わるほどになれた。もちろん

君たちの協力が大きな助けとなったわけだが。」

ニクロムは少しうれしそうに言った。

「いやぁ、俺たちは大した活躍はしてませんよ。」

ジルは頭をぽりぽりとかきながら照れて言った。

「ジル、そんなにほめてませんよ。」

マルクがジルに小声で言う。

「で、ビルドー追跡はどうする?」

ニクロムはジルたちに返事を求める。

「もちろん。絶対私たちの手で捕まえてやるわ!」

メアリーが力を込めてニクロムに答える。


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