「君たちは期待通りの返事をしてくれる。俺はうれしいよ。
では、少し説明させてもらおう。まずビルドーを捕まえる
際のことだが。別に無傷で押さえる必要はない。ビルドーは
刑務所では殺人も犯している。当然捕まえようとすれば抵抗
してくるだろう。だから、傷つけることはもちろん殺しても
構わない。それはビルドーがこちらを攻撃してきたための
正当防衛ということで成り立つ。とにかく捕まえることが大事
なんだ。犯罪者をのさばらせておくのは一般の人に危害が
及ぶ可能性があるからな。とにかく早くしなければいけない。」
ジルたちは『殺しても構わない』という部分で息をのんだ。
「そしてもう一つ。もう1人ビルドー追跡を頼んだやつがいる。
そいつと協力しても独立して動いてもらっても自由だが一応
紹介しておこう。」
そして奥から1人の男が現れる。
「よぉ、久しぶりだな。」
「お前はダイン!」
ジルたちは驚きを隠せない。
「どうして?あんたはビルドー側じゃなかったの?」
メアリーは聞かずにはいられなかった。
「別に俺はビルドー不動産の社員じゃねぇからな。たまたまあの仕事
を引き受けただけだ。仕事が終われば関係もなくなる。傭兵ってのは
そういうもんだ。」
「『そういうもんだ』って言われましてもどういう反応をしていいのか
分かりませんよね。」
マルクが率直に思いを言った。そこにまたニクロムが喋りだした。
「俺からの説明は以上だ。逃亡中のビルドーをニクロム不動産が押さえた
となればいよいよニクロム不動産の業界トップの座を確実なものとする
ことが出来るんだ。頼んだぞ。」
ジルたちとダインはそろってニクロムの事務所を出た。
「協力するったって分かれて探した方がいいよな。」
ジルがダインに言った。
「お前らはビルドーをどうやって探すつもりだ?」
ダインが尋ねる。
「それはもう街中手当たりしだいじゃないの?」
ジルが答える。
「バカか。そんなことをしていたら一生見つからないぞ。
まずはビルドー不動産本社へ行くんだ。ビルドーはいないだろうが
その手がかりになるものが見つかるかもしれん。」
「なるほど。あんた意外と頭いいね。」
メアリーがダインを褒めた。
「はぁ~。俺はこんなやつらと組むのか。」
ダインはため息をついた。
ビルドー不動産本社に来たジルたちとダイン。
「大きい建物だけに社員が少ないと淋しいわね。」
メアリーが呟く。
「とにかく中へ入ろうぜ。」
ジルたちは建物の中へ足を踏み入れる。
「ようこそ、ビルドー不動産へ。どのようなご用件でしょうか?」
受付の女性社員はこんな状況にもかかわらず元気で明るい顔を
してジルたちを迎えた。
「ビルドーはどこにいてんの?」
ジルは率直に尋ねた。
「申し訳ありません。社長の所在は不明でして私どもの方でも
捜索中でございます。」
受付の女性は動じることなく丁寧に答えた。
「ウソはいってないでしょうね。治安隊もやってきて中を調べつくして
いるはずだし。」
メアリーは言った。
「それでは収穫はゼロということですかね。」
マルクが残念そうに言う。
「いや待て。ビルドーがいない今、誰か代わりのやつが社長の代理として
指揮をとっているはずだ。そいつに会わせろ。」
ダインが口を挟んで受付に言った。
「いえ、しかしパートンさんは多忙の身。アポイントなしで会わせる
わけにはいきません。」
これには受付の女性も少し動揺し言葉がこもる。
「俺たちは急いでるんだ!いいから言うとおりにしろ。」
ダインは語気を強める。
「は、はい。分かりました。」
受付の女性はすぐに階段を駆け上がりまた戻ってきた。
「はぁはぁ。パートンさんに了承を得ました。どうぞ、最上階の4階まで
お上がりください。」
ジルたちは言われたとおり4階へと上がった。そして扉を開くと
そこにはごく普通の社員といった30代くらいの男が立っていた。
「どうぞお座りください。私が現在社長代理を務めているパートンです。」
パートンは簡単に自己紹介を済ますと自分も席に着いた。
「社長をお探しなのですね。しかしそれは私どもも同じです。
世間に悪いことをしたのならそれを償って帰ってきて欲しいと
今残っている社員は思っています。役に立つかどうかはわかりませんが
我々の知っている情報を教えましょう。」
その言葉でジルたちはやったという気持ちで笑顔になる。
「社長は1人の暗殺者を飼っておられた。敵対する不動産会社の社長なり
重役を暗殺するためです。その暗殺者の住居は社長が用意されていたみたいで
もしかしたらそこに社長もいてるかもしれません。その場所がどこか分かれば
私どもも探して回るのですがそれは社長しか知らないことだったようです。」
それだけ聞くとジルたちはビルドー不動産本社を後にした。