dark legend   作:mathto

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「『ホワイトウィンド』。」

マルクは魔法でダインの傷を癒していく。

そして苦しんでいたダインの表情が少し和らぐ。

ビルドーは腕に刺さった剣を引き抜き床に捨てる。

「く、化け物め。俺の最高の攻撃を肉で止めるなんて

信じられん。ジル、いくらお前が強くてもそいつには

勝てない。一旦、引くぞ。」

「そうよ。こんなやつ普通じゃないわよ。ここは一回

戻って何か考えましょ。」

メアリーも弱気になり、ジルの戦いを止めようとした。

「おい、悪いやつを目の前にして逃げるのかよ。

メアリーがあんなに憎んでいた相手だろ。それに

さっき言っただろ。『ぶっ倒してやる』ってな。

まだ負けてないんだ。いくぜっ!」

ジルは思い切り踏み込んでビルドーに剣をぶつけた。

ガキン。

やはり、先ほどと同じで金属音と共にはじかれる。

バシュッ、バシュッ。

そこにビルドーの反撃で両手の爪の攻撃がジルを襲った。

ジルは一瞬にして血だらけになり大きなダメージを受けた。

「はぁ、はぁはぁ...。」

ジルは剣を床に刺して体を支える。

「もう無理なの分かってるでしょ、やめてぇ!」

メアリーはジルのぼろぼろの姿を見て、泣きそうになる。

「まだ終わっちゃいねぇよ。こうなったら奥の手いってみるか。

本当は使いたくなかったけどよ。出来るかどうかもわかんねえし。」

ジルの体は立っているだけでやっとの状態だったが、

目に浮かぶ闘志は全く失われていなかった。

「何をぶつぶつ言ってるのかはしらんが、そろそろ終わりにしてやろう。」

ビルドーは腕を振り上げ、爪でジルの心臓を突き刺そうとした。

「きゃあ、マルク。早くジルに回復魔法を。」

「駄目です。間に合いません。」

そんな中、ジルは体を奮い立たせて目を閉じた。

「(俺の中に眠る悪魔よ。目覚めろ!)」

ジルは目を見開くと体から黒いオーラが一気に放出された。

「な、なにぃ。」

ビルドーは驚き、攻撃の手が止まる。

「グゥゥゥゥ。」

ジルは獣のような声をあげ、完全に正気を失っていた。

「こ、これはあのときの...。」

マルクは驚きながら前のことを思い出す。

「な、何よ。これって。」

「おいおい、やばいんじゃねぇのか。」

皆が驚いている中、ジルの心の中では。

 

【自制をするのじゃ】

 

ニムダの声が浮かび上がる。

「(そうだ、俺はもう2度と自分を失って関係のない人を

傷つけたりはしない!)」

ぱっとジルの意識が体に戻る。

 

 

 

ジルは正気に戻ったが体からはまだ黒いオーラが変わらずに

出ていた。

それを見て、ビルドーは身構える。

「力がみなぎるようだ。さっきまでの痛みを感じなくなっている。

さぁ、ここからが本番だ。いくぞ、ビルドー。」

ジルは一直線にビルドーに向かって剣を振るう。

ガキン。

ジルの剣とビルドーの爪がぶつかるとビルドーの爪は

割れとび床に落ちる。

そしてジルはすかさず次の攻撃に移った。

バシュッ。

ジルの剣はビルドーの腹を鮮やかに斬り、ビルドーから

緑色の血が吹き出る。

「さっきと比べて遥かにパワーが上がっている。」

ダインは驚きの目をジルに向ける。

メアリーもダインと同じように見ていたが、マルクは1人

心配そうに見つめる。

「そんな馬鹿な。この俺が完全に力負けしている。

ジル、まさか貴様も魔界との契約を?」

ビルドーは驚きながらジルに問いただす。

「契約?そんなもんした覚えはねぇよ、俺は。

だが、お前を倒すためなら魔人でも悪魔でもなってやるよ。」

「ぐ、化け物め。」

「それはお前もだろ。緑色の血を流しやがって。決着をつけるぞ!」

ジルとビルドーがお互いに全力でぶつかる。

もはや力で圧倒的に上回っているジルはビルドーの腕を切り落とした。

ビルドーも意地になり残された腕でジルの顔を殴る。いつもの状態なら

吹っ飛んで気を失うようなダメージを受けるが、今のジルはダメージを

感じてもその場でこらえることが出来た。そこから反撃でビルドーの

残された方の腕も斬った。

「ぐぎゃあぁぁ!」

ビルドーは獣のような悲鳴を上げた。

「まだだ、まだおわらんぞ。」

ビルドーは最後のあがきで牙による攻撃をジルにしかける。

だがその攻撃はかわされ、ビルドーはジルの剣で胸の中心を貫かれた。

「ぐばっ。」

ビルドーは口から大量の血を吐いた。

ジルはすっと剣を引き抜く。

「終わりだ。」

ジルはビルドーに冷たく言い捨てた。

ビルドーはバタッと倒れてそのまま動かなくなった。

「ふぅ。」

ジルは一息つくと黒いオーラがすうっと消えた。

「さて、帰るか。」

ジルは振り返って笑顔で言った。

みんなはどういう反応をしていいのか分からないでいた。

 


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