dark legend   作:mathto

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「ふぁ~あ。」

ジルが口を大きく開けてあくびをした。

「なんか眠たくなってきたな。」

「そういえば、魔界ってずっと薄暗い感じですよね。

朝とか夜とかってあるのでしょうか?」

「さあなぁ、どうだろう。そういうことは考えても分からない

からな。とにかく寝るとこを探そうぜ。」

しばらく探して歩いていると一つの大きな洞穴を見つけた。

「ここならゆっくり休めそうだな。」

「待ってください。もしかしたら奥にモンスターが潜んで

いるかもしれませんよ。」

マルクが警戒してジルを止める。

「ならそいつを倒してやるまでだぜ。」

ジルは剣の柄に手をやって洞穴の中へと進む。

マルクも恐る恐るジルの後についていく。

ジルとマルクが洞窟の奥へと進んでいくと、

何やら小さな物音がし明かりが見えてきた。

「やっぱりなんかいるみたいだぜ。」

ジルは剣を手にして警戒する。

「えっ、人!」

明かりの元は焚き火ですぐそばに男性が1人うずくまっていた。

「おや、君たちもここに迷い込んだのかい?」

男性がジルたちに問いかける。

「いや、俺たちはちょっと目的があって来たんすけど。」

「え!それじゃ、もしかして帰り方を知っているのか!?」

男性は驚き立ち上がりジルに聞いた。

「帰り方?あっ!考えてなかったな。」

ジルは大事なことに気づいて慌てた。

「そうか...。君たちも分からないんだね。」

男性はがっかりしてまた座ってしまった。

「なぁ、マルク。俺たちメアリー助け出したらどうやってテラに

戻ったらいいんだろ?」

ジルはマルクに尋ねた。

「そうですね。私たちがこちらに来たときと同じように誰かに

ゲートを開かせるか、偶然近くでゲートが開くのを待つか、

あと常に開いているゲートがあるか探してみるかのどれか

でしょうね。」

マルクは考えて答えた。

「方法は3つか...。その中の偶然を待つってのは完全に

運任せになるよな。あと2つも運が必要だけど、まだ可能性は

高いかな。人を探すか、物を探すかってことだな。どっちも

難しそうだな。マルクがそういう魔法を使えたらなぁ。」

と言いながらマルクの方をちらっと見る。

「え、私がですか?そんな無理ですよ。」

マルクは困った顔をして答える。

「そんなこと言わずにさぁ、一回やってみようぜ。

ダメならダメでいいじゃん。ダメでもともと出来たら

もうけもんみたいな感じでいいからさ。」

ジルは説得してみる。

 

 

 

「そこまで言われるとやってみるしかないですね。

分かりました。期待しないで見ててください。」

マルクは目を閉じて集中しだした。

「(ゲートを潜ってテラから魔界へやってきたときのことを

思い出す。あの感じを風で再現する。)」

マルクは風を感じると目を開け風を魔法で操りだす。

ビュウウゥゥゥゥ!

風は一点へと集まりだし空間を作り始めた。

しかしそれはすぐに消えてしまった。

「...はぁ。やっぱりダメでした。」

マルクは少し疲れたようになって言った。

「そうか。悪かったな、無理言って。」

ジルはがっかりしながらもマルクをねぎらうように言った。

「いや、ちょっと待ってください。もしかしたら...。」

マルクは腕にしている腕輪を見直す。

「メンデル先生にもらったこのアグニの腕輪を使えば

いけるかもしれません。」

マルクは左腕につけている方の青い玉のついた腕輪に魔力を

通わせる。すると青い玉は光り出しマルクの魔力が増幅されていった。

そして先ほどと同じように風を操る。

ギュウゥゥゥゥン!

風はさっきよりも勢いよく流れ出す。

それは再び一点へと集まり完全な空間を作り出した。

メアリーをさらった男が作ったと思われる黒いものではなく

大きな緑色をした穴だった。

「す、すげぇ...。ホントにできた。」

ジルは心から驚いた。

「き、きみたち。これで本当にもとの世界へ帰れるのかい?」

「おっさん!マルクの魔法を信じられねぇのか!」

ジルは男性の疑いの言葉に怒りだした。

「いや、そういうわけじゃないんだが初めて出来た魔法の

ようだし。どうも怖い気持ちがあって。」

「よし、分かったよ。そんなに言うなら俺が先に試してやるよ。」

「いいんですか?私もあまり自信はありませんよ。」

「大丈夫だって。いいか、見てろよ。」

ジルはためらうことなくマルクの作り出した穴へと飛び込んだ。

「私も信じるよ。」

ジルの姿を見て男性も続いて穴へ飛び込む。

「それでは私も。」

マルクも最後に飛び込んだ。

 

穴に飛び込んだ3人の行き着いたところは穏やかな平原だった。

「う~ん、この新鮮な空気。間違いない、元の世界に戻ってきたんだ。」

男性は深呼吸をして喜びの声をあげる。

「あ、あっちに見えるのはサンアルテリア王国じゃないですか。」

マルクが指差して言った。

「そうだよ。やったな、マルク。大成功じゃん。」

「よかったです。」

マルクはうまくいけてほっとした。

 


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