dark legend   作:mathto

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「ありがとう。君たちのおかげで本当に助かったよ。」

男性はマルクの手をとって礼を言った。

「あ、そうだ。お礼といってはなんだけどこれを

あげよう。」

そう言ってさしだされたのは赤い石だった。

「これは『火炎石』といってね、火を出せる魔法石だよ。

込められている魔力がそんなに強くないから

戦闘には不向きだけど、焚き火をしたりするときに

簡単に火をつけられるから結構便利だと思うよ。」

「ありがとうございます。」

マルクは男性から火炎石を受け取った。

男性は2人に頭を下げて礼をするとサンアルテリア王国の方へ

と向かって歩いていった。

「さて、俺らも一度戻るか。なぁ、マルク...。ん?」

ジルはマルクの異変に気づく。

マルクは疲れきった表情をしていた。

「どうしたんだ、マルク!」

次の瞬間、マルクの体中から血が噴き出してマルクはその場に

倒れてしまった。

「おい、しっかりしろ!」

ジルは倒れたマルクに駆け寄り声をかける。

「は、はは...、どうもさっき使ったアグニの腕輪の副作用が

後からきたみたいです。すいま.せ..ん...。」

マルクはそれだけ言うと意識を失ってしまった。

ジルは慌ててマルクを背負ってサンアルテリア王国へ急いだ。

到着するとまた急いで病院を探しだし医者にマルクを診せた。

「ふむ、命に別状はありません。出血ももう止まっていますし、

簡単な処置だけしてあとはベッドで休ませましょう。

しばらく休めば治るでしょう。これは外部からの傷ではなく

内部からのもののようです。どうやら体に大きな負担が

かかるようなことをしたみたいですね。あまり無理を

しないように言ってあげてください。」

「先生、ありがとうございます。」

ジルは病室のベッドに運ばれるマルクについていった。

マルクはしばらくすると目を覚ました。

「私はたしかアグニの腕輪の副作用で倒れてしまったのですね。

またジルに迷惑をかけてしまいました。」

マルクはジルに申し訳なさそうに言った。

「何言ってんだよ。全然気にすることなんてないぜ。」

「そう言ってもらえるとありがたいです。」

マルクは穏やかな笑顔になった。

「それにしてもマルクの先生もきついよな。こんなアイテム

渡すなんてよ。」

ジルは不満そうに言った。

「いえいえ、メンデル先生も考えて渡して下さったはずです。

ただ単に私が未熟で使いこなせないというだけだと思いますよ。

現にこうやってテラに戻ることが出来たのですから役に立つこと

は間違いないです。」

「まぁ、それはそうだけど...。俺がやらせといてなんだけど

マルクもあんまり無理すんなよ。とにかく今日はゆっくり休んでくれ。」

ジルはマルクに気をつかうように言った。

「ジル、ありがとう。」

マルクはジルの気持ちに心から喜び感謝した。

 

 

 

次の朝、マルクはすっかり元気になっていた。

しかしジルはまだ心配してなかなか出発を言えずにいた。

「さぁ、行きましょうよ。じっとしててもしょうがありませんから。」

マルクがジルに出発を促す。

「本当に大丈夫か?もうちょっと休んでてもいいんだぜ。」

「大丈夫です。早くメアリーを助けにいきましょうよ。」

「そう言ってくれるとうれしいけどなぁ。絶対に無理はするなよ。

約束な。」

「はい。」

マルクは笑顔で返事をした。

2人は街中へと出た。

「まずは準備だな。道具屋に行くか。」

道具屋に着くとジルは回復アイテムを大量に買いこんだ。

「そんなに必要なんですか?」

マルクがその量に驚く。

ジルは両手で抱え込んでやっと持てるほどたくさんだった。

「そりゃ、そうだろ。また魔界にいくためにはマルクに頼らなきゃ

いけないんだから、これくらい用意しとかないとまた病院送りに

なっちまうぞ。」

「私のために...。すいません、私がまだ未熟なもので。」

「気にすんなよ。こいつは俺のためでもあるんだからさ。」

謝るマルクに気を使わせないように言った。

ジルは袋にアイテムを詰め込むと片手でそれを担いだ。

「よし、これで準備もいいだろ。」

「それでは、いざ魔界へ。」

「ちょっと待てよ。こんな人が多いところで魔法使ったら

みんなびっくりするだろ。とりあえず人がいないとこへ行こうぜ。」

「それもそうですね。」

2人はひと気のない路地裏へ移動した。

「ここなら問題ないな。」

「では行きますね。『ゲート・オブ・ウインド』」

マルクはアグニの腕輪を使って風の穴を作り出す。

2人はそれをくぐり再び魔界へとやってきた。

「さっ。早く回復、回復。」

ジルは手早くマルクに回復アイテムを使っていく。

「ふ~。これで大丈夫です。ジル、ありがとう。」

マルクは回復アイテムのおかげでアグニの腕輪の副作用

を回避できた。

「これからが本番だぞ。気合入れろよ。」

「はい。」

ジルとマルクは魔界の地を歩き出した。

 


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