dark legend   作:mathto

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「おい、マルク。見ろよ、あんなところに町、いや国があるぞ。」

ジルとマルクは崖から下を見下ろしていた。

そこから見えたものは城から下手へと町が広がっている光景だった。

「魔界にも国があるんですね。しかしあそこにいるのはモンスター

だけでしょうね。」

マルクはその国にいるのが人間だったらと願いたかった。

「まぁ、そうだろうな。でも国を作るくらいだからそれなりに知能の

高いモンスターだろう。もしかしたら何か情報を聞けるかも

しれないぜ。」

「あそこにいるのが知能の高いモンスターであることは

間違いないでしょうし、役に立つ情報を持っている可能性も

充分あります。ただモンスターが私たちに素直に情報を

くれるでしょうか?」

「そこは力ずくでいってみるか。」

「モンスターの国を相手に2人でですか!?それは無謀

というものでしょう。」

マルクはジルの意見に驚いて反論する。

「それは冗談だよ。でもさ近くに行って様子を見てみるのは

悪くないと思うぜ。モンスターにあんまり気づかれないように

してさ。」

「そうですね。少し危険ですが、情報を得る機会を全く

諦めるというのももったいないですよね。」

これにはマルクも賛成した。

2人は目立たないようにその国の方に近づいていった。

 

ジルとマルクはこっそりとモンスターの国と思われる中へと入った。

「うっわー、ゴブリンばっかりだぜ。」

「ここはゴブリンの国ということですね。」

人目のない路地裏からこそこそと話す2人の目に映ったのは

町中を行きかうゴブリンたちの姿だった。

ゴブリンたちは服を着てそれぞれが人間とそう変わらない生活を

送っていることが見て取れた。

「これからどうしますか?」

マルクは何の考えもなくジルに問いかける。

「どうするって言ってもなぁ。そこら辺を歩いてる奴をこそっと

捕まえて情報を聞いたって何もなさそうだからなぁ。城の中に

いる偉いやつを捕まえて聞くってのが一番いいんだけどなぁ。

それすると、このゴブリンの国全てを敵に回すことになりそうだし。

う~ん、悩むなぁ。」

そうやって2人が考え込んでいると、一匹のゴブリンに偶然発見された。

「あっ、人間がいる。大変だ!」

そのゴブリンは急いで人を呼びに行った。

「やべぇ、見つかっちまった。マルク、逃げるぞ。」

「はい。」

ジルとマルクはすぐにその場から離れようとした。

だが、すぐにやってきたゴブリンの兵たちに取り囲まれてしまった。

 

 

 

ゴブリンの兵たちに囲まれたジルとマルク。

「マルク、こうなりゃ正面突破で行くぞ。」

「はい。」

ジルは剣を抜いて、ゴブリンの国の外の方へ向いた。

「マルク、すぐ後についてこいよ。」

マルクは真剣な表情で黙って頷く。

「ものども、いけぇー!」

兵隊長のゴブリンが掛け声を上げるとゴブリンたちはジルたちに

向かって一気に襲い掛かってきた。

ジルは進行方向からくるゴブリンたちを次々に斬っていった。

すぐにゴブリンたちの包囲は破られようとしていた。

「絶対に侵入してきた人間を取り逃がすなぁ!道をふさげ!」

兵隊長の指示で周りを取り囲んでいたゴブリンたちはジルたちの

逃げようとする方向へ集まりだす。

その動きにジルはなかなか前へ進めずにいた。

「く。」

「よし。奴等を足止めしている隙に弓兵隊射てー。」

10数匹のゴブリンが弓を構えジルたちを狙う。

バシュッ。

矢は一斉に放たれる。

「危ない!」

そのときマルクの右腕についたアグニの腕輪の赤い玉が光る。

「『ウインドガード』。」

マルクの前に大きな風の壁が現れ、向かってくる矢をはじき飛ばした。

それを見た兵隊長は慌て驚いた。

「皆のもの、やめぇー!皆のもの、やめぇー!」

兵隊長の繰り返される攻撃中止の合図に激しく戦っていたゴブリンたちは

静かに攻撃を止めた。

ジルたちは逃げる好機だったが突然のことに戸惑いその場にじっとしていた。

兵隊長がゆっくりとジルたちの元へ歩み寄る。

ジルとマルクは警戒しながらも兵隊長に向き合う。

「お前らは侵入者だ。だから攻撃をした。しかし、このまま目的も

分からないままただ徒に兵を失ったまま取り逃がしたとあっては

この国の危機に関わってくるかもしれん。

一つ尋ねる。お前たちは何の目的で我らの国へ侵入した?」

「俺たちは情報が欲しいんだ。偶然この国を見つけてもしかしたらと思って

近づいてきた。」

「ほう、それはどんな情報だ?」

「俺たちの大事な仲間をさらったイデア教の奴等に関してだ。」

「何!?イデア教だと...。イデア教といえばかつての魔王に次ぐ

勢力を誇る奴等だぞ。そんな奴等から仲間を取り戻すなど無理に

決まっている。」

「無理だろうがなんだろうが俺たちは諦めないぜ。」

ジルは固い意志をその目に宿して言った。


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