dark legend   作:mathto

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シュッ。

ジルの剣がヒドラの体を切り裂く。

「ちっ、浅い。」

手ごたえのなさを感じてジルはヒドラが2つの頭から牙による反撃を

しようとするより前に一旦後ろへ下がった。ヒドラの攻撃は空を舞う。

「ダメだな、これじゃ。」

「やっぱり無理でしたか。すいません、とりあえずここは逃げて

作戦を考えましょうか。」

今度はマルクが諦めモードに入ろうとしていた。

「いや、ちょっと待ってくれよ。俺も試してみたいことがあるんだ。」

「試したいこと?」

マルクが聞き返す。

「うん。俺の必殺技を考えてるところでさ、ここらで一回

やってみたいんだよ。」

「必殺技ってあの...。」

「前のとは違うよ。ただ雰囲気的には近いかもしれないけどな。

ま、とにかくやってみるよ。マルクの魔法がかかっている間は

ヒドラからの攻撃は避けられそうな感じだし。」

「が、がんばってください。」

「さて、いくか。」

ジルの目は先ほどよりも真剣になり魔法の風を纏った体から

さらに黒いオーラを発した。その様子をマルクは少し心配そうに見守る。

「一発で決める。」

ジルは一気にヒドラに接近し、剣を両手で持って大きく構える。

「『オーラブレイク』」

ジルは黒いオーラを剣に集中させてヒドラに斬りかかった。

ズバッ!

ジルの剣は電撃を発してヒドラの頭の一つから胴体までを真っ二つに切り裂いた。

残りの8っつの頭がもがきながらジルに攻撃をしかける。

しかし、ここでマルクの魔法が功を奏して素早くなったジルは

攻撃の隙間を縫って余裕で交わし続けた。

そのうちにヒドラは力尽き倒れた。

「や、やりましたね。」

マルクは驚きと嬉しさにあふれていた。

「まあな、必殺技もまあまあってと.こ.ろ.だろ...。」

ジルは必殺技で力を使いすぎてその場に倒れてしまった。

「ジル!」

マルクは慌ててジルに駆け寄るが、ただ疲れているだけと

いうことが分かってほっとした。

「少し休んでからゴブリンの国に戻りましょうか。」

マルクはジルが気が付くまでそばに座っていた。

 

 

 

「う~ん。俺は一体...。」

ジルは寝ぼけた感じで起き上がった。

「ジル、すごいですよ。あのヒドラを倒したんですよ。」

おとなしく横で座っていたマルクはさっきの興奮が甦ったように言った。

「そうか。そうだったな。やったな、俺たち。あんなでかいヒドラを

倒したんだぜ。」

「はい。ではゴブリンキングのところに戻りましょうか。」

2人は喜びを分かち合いながら、ゴブリンの王国へと戻ることにした。

 

「...というわけでヒドラを倒しました。」

ジルはゴブリンキングに報告する。

「ふむ、監視させていた者にも確認は取れている。

よくやってくれた。」

「(おい、俺たち監視されてたのかよ。信用ねぇな。)」

「(仕方ありませんよ。ここは魔界なんですから人間を信用できる

方が変わっていますよ。)」

「(それもそうか。)」

「それではイデア教について教えよう。」

「(お、来た来た。)」

「イデア教は我が国にも布教をしにきたことが何度かあってな。

その時に聞いた話だが、イデア教は邪神を崇拝しているという

ことだ。邪神なんてものはただの昔話だと思っているが、

敵に回したくないので一応協力する形をとっている。

イデア教の奴等はその教えを真っ向から反対するものや布教活動を

拒むものを徹底的に攻撃する。そうやって

イデア教はここ十数年の間に勢力を急拡大してきた。

組織としては大魔道カーラを頂点にイデア教四魔人を従えている。

さらにその下に入信したモンスターたちがたくさんいるらしい。

あとイデア教本部の神殿がある場所が分かる簡易な地図を渡してやろう。

いまいちはっきりしないと思っているかも知れんがわしが知るところは

そんなところだ。」

ジルとマルクはゴブリンキングの話を熱心に聴いていた。

「これでいいか?」

「はい、ありがとうございます。」

ジルとマルクはゴブリンキングに礼をして王の間を出て行こうとする。

「待て。」

ゴブリンキングの声に2人が振り返る。

「もしお前らがイデア教を倒すというのなら協力をしたいところだ。

しかし、イデア教から命令があればお前らと敵対することも考えられる。

わしもこの国を守りたいからな。そこのところを分かっていてくれ。」

ジルとマルクは笑顔で頷いて王の間を出た。

 


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