dark legend   作:mathto

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「これが地図だ。」

ジルとマルクは兵隊長からイデア教本部の神殿がある

場所を示した地図を受け取った。

「お前らの仲間、救えるといいな。」

「絶対助けてみせるさ。」

兵隊長の言葉にジルは決意を新たに言い切った。

ジルは兵隊長に手を振って別れ、ゴブリン王国を出た。

 

「なぁ、マルク。俺さ、モンスターっていっても悪い奴ばかりじゃない

って今回思っちまったよ。これって変かな?」

「いえ、私もです。モンスターも人間と変わらないところが

あるのかもしれませんね。」

「!!」

目の前にモンスターが一体現れた。

細い褐色の体をした人型のモンスターはまるで生きているということが

感じられなかった。そうただの人形という言い方が相応しかった。

「このモンスターも悪い奴じゃない...って思うか?」

ジルがマルクに聞いてみる。

「いえ、分かりません。」

モンスターが右腕をジルの方を向けて上げる。

そしてニュッと腕が伸びだしジルに向かっていく。

「わっ。」

ジルは慌ててそれを避けた。

伸びた腕はジルの後ろにあった岩をガコーンと打ち砕いた。

そして伸びた腕は元の長さにシュルシュルと触手のように戻っていく。

「げっ、あぶねぇあぶねぇ。こりゃ完全に戦わなきゃいけない状況だな。」

ジルは剣を抜いて構える。

「とても話し合いが通じそうな相手ではなさそうですしね。」

マルクもジルの後方に下がって2人は戦闘態勢を取った。

モンスターは両手を上げる。

「来るぞ。」

ジルはさらにマルクを後ろへ下がらせてモンスターの攻撃を待ち構える。

モンスターの両腕が同時に伸びてジルを襲う。

「お前の好き勝手にやられてたまるかよ。」

ジルは伸びた腕を切り払おうとした。しかし、腕はそれを避けるように

グニャリと曲がってジルの体を貫く。

「ぐはっ。」

ジルの貫かれた胴と口から血が吹き出た。

「ジル!『ホワイトウインド』。」

マルクは離れたところからジルを回復させる。

「サンキュー、マルク。」

モンスターはさらに攻撃をしかけようとする。

「そう何度も食らってたまるかよ。」

ジルはモンスターに接近し、剣を振るう。

不意を突かれたモンスターはボトッと両腕を斬り落とされた。

 

 

 

モンスターの腕は土に還り消えた。

「やった。」

ジルは勝利を確信しガッツポーズをする。

しかし、次の瞬間。

ニュルニュルニュル。

モンスターの腕を切られた部分から新たに腕が生えてきた。

「マジかよ。」

「再生能力があるんですね。」

モンスターは再び攻撃をしかけようと腕を上げた。

「ええい、こうなりゃ再生できないくらいに切り刻んでやるぜ。」

ビュンッ。

ジルは剣を両手で持って頭を横に切る。

さらに攻撃を続け腕、足、胴とモンスターの全身をバラバラにした。

「はぁ、はぁ、はぁ、これでどうだ。」

息を荒げてジルがモンスターの様子を伺うとモンスターは

再生も身動きもせず完全に沈黙した。

「これは倒したんじゃないですか。」

マルクが注意しながらもモンスターの傍にいるジルに近づく。

ジルもじっとモンスターの様子を見続けるが一向に動く気配

を見せないのでふぅと一息ついた。

「何だったんだよ、こいつは。土人形ってとこか?」

「これは野生のモンスターというより魔法使いか誰かに造られた

という感じがしますね。まぁ魔界ですからこういうのがいても

不思議がないと言えばないのですが。」

2人はこの土人形のことを少し謎に思いつつも先に進むことにした。

 

「いかがでしたか、カーラ様。マッドパペットの出来栄えは。

材料はただの土、それに多少の魔力を込めるだけであれだけの

動きを見せます。ずば抜けた攻撃力などがないことは否めませんが

それでもとても効率のいい兵と思えます。」

暗がりの中、背の低い腰の曲がった男がもう一人の男に言った。

もう一人は黒いローブに大きな黒頭巾を深くかぶり堂々とした格好で

水晶玉の中の様子を見ていた。さらにその傍にはメアリーをさらった

魔道士の姿もあった。

「むぅ、ゴブリンやリザードマンなどよりは役に立ちそうだな。

Dr.サッカー、これよりこのダグラスと共にマッドパペットの大量生産を

開始しろ。」

「は。」

Dr.サッカーはカーラに敬意を示してダグラスと研究室へと向かった。


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