「よく来たな、侵入者よ。」
氷の女王は先ほどの恐怖を押し殺して冷静を装った。
「先ほどまでの戦い、見せてもらった。わが兵たちを全滅させる力、
見事であった。私に戦う意思はない。お前たちの望みを聞かせてもらおう。」
氷の女王はあっさりと降参をした。
「実は聞きたいことがあるのですが...。」
マルクが氷の女王に言いかけたとき、
「きれいだ...。」
ジルがぽつりと呟く。
「え。」
マルクと氷の女王は驚いた。
「あの、お姉さんすごいきれいです。俺ジルって言います。俺と付き合ってください。」
「な、何を言っているんだ。」
氷の女王は顔を赤くして困っていた。
「そうですよ、一体何を言ってるんですか。ジルにはメアリーがいるでしょ。」
マルクは少し怒り気味に言った。
「だってメアリーとは別に付き合ってるってわけじゃないしな。
それにこんなきれいな人を前にして口説かないのは失礼じゃないか。」
「そんなことを聞いたらメアリーが悲しみますよ。」
「お、お前ら私をからかっているのか。」
氷の女王は怒っていいのかどうか戸惑っていた。
「そんなことはないですよ。」
ジルは氷の女王の両手を包み込むように握った。
「な、何をする。やめろ。そんな熱い手で私に触るな。」
氷の女王は顔を真っ赤にしてジルの手を放そうとする。
「俺のこと、嫌いですか?」
「好きとか嫌いとかの問題じゃない。お前らは私の敵だ。
一体、ここへ何しに来たんだ?」
「それはあなたに会うためじゃないですか。」
「もうそれ以上喋るな。虫唾が走る。」
「ジルはもう黙っててください。私が説明します。実は私たちイデア教の
ことを知りたいのです。それでここを訪れたというわけです。話すことが
出来なかったので戦うことになりましたが、別にあなたと争う気はありません。
もしもあなたが今までの戦いで争いを止められないというのであれば
仕方がありませんが。」
マルクはジルの口を塞いで説明をした。
「そういうことか。なるほどな。しかし、私もイデア教について知ることは少ない。
悪いが力にはなれないだろう。」
氷の女王はなんとか落ち着きを取り戻して答えた。
「しかし、お前らは一体何者だ?特にそっちの頭のおかしい奴。
さっきのお前の戦いは人間とはかけ離れたものだった。
イデア教四魔人とも互角以上に戦えそうな感じだったぞ。」
氷の女王がジルに疑問をぶつける。
「ふぅ~、そんなこと聞かれたら熱も冷めちまったな。いいよ、
教えるよ。俺の中には悪魔が住んでるんだよ。そいつがさっきは
表に出てきたってわけだ。」
ジルも冷静になって氷の女王に答えた。
「悪魔...。(まさかイデア教の目的は...)」
「さぁ、マルク。もう行こうか。このお姉さんは何も知らなさそうだしこれ以上
ここにいててもしょうがないだろう。」
「ええ、まぁ。」
「ちょって待て。」
女王の間を出ようとしたジルとマルクを引き止める。
「まだ何かあるの?」
ジルが尋ねる。
「イデア教の目的はおそらくお前、ジルとやらにある。それは...。」
ビッ。
氷の女王の腹を後ろから一筋の黒い光が貫く。
「ぐふっ...。」
氷の女王は口から青い血を吐き出す。
「困るな、魔界の者が人間に協力するようなことは。」
そこに現れたのは黒ローブの男だった。
「お、お前はメアリーをさらった奴。」
ジルとマルクは警戒心を一気に高める。
「覚えていたか。私はイデア教四魔人の一人、ダグラス。
大魔道カーラ様に従って行動する。」
ダグラスがそう言うと懐から紫色をした石を取り出した。
「氷の女王、お前を魔界の住人としての本来の姿に変えてやろう。」
ダグラスが紫色の石を氷の女王の腹の傷口から入れ込む。
「ぐ、ぐあああぁぁぁ!」
氷の女王が苦痛の悲鳴を上げると同時に蒸気が氷の女王から吹き出る。
蒸気はすぐに霧状となり、氷の女王の姿を一時的に消した。
霧が晴れてきたところに現れた氷の女王は正気を失っていた。
「グォォォ...。」
氷の女王は手から青白い光を放った。
「うわっ。」
ジルとマルクは慌てて後ろに下がってよけた。
「ふははは、これでいい。それでは私は戻るとするか。」
「おい、ちょっと待てよ。」
ジルの止める声も聞かずダグラスは黒い光に包まれ消えていった。