dark legend   作:mathto

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「くそっ、ダグラスのやろう。」

「ジル、それより今は...。」

怒るジルにマルクは氷の女王を指差して見せる。

「こっちを先に片付けなきゃいけないんだな。」

ジルは氷付いた炎の剣を握って黒いオーラを放つ。

「こんなもの。」

ジルは剣にオーラを込めると剣は氷を一気に溶かした。

「よし、これで戦える。」

氷の女王はすぐさま青白い光を手から放ち攻撃してきた

「ええい。」

ジルは剣を振って光を切り裂く。

「すごい。ジル、いつの間にそんなことを。」

「さぁ、わかんねぇ。でも俺、強くなった気がする。いくぞ。」

ジルは氷の女王に突っ込む。

氷の女王が今度は両手から強烈な冷気を発した。

ジルはそれを飛び上がってかわし氷の女王の目の前にきた。

「悪いな...。」

ジルは優しく言い放つと氷の女王の腹に剣を突き刺した。

「ぐああぁぁl。」

氷の女王の全身を炎が包み込む。

その攻撃でダグラスに埋め込まれた紫の石が飛び出した。

それと同時に氷の女王は正気を取り戻した。

氷の女王は残った魔力による冷気で自らを焼く炎をかき消す。

「私はイデア教の奴に理性を失わされ...。そうかお前が私を救ってくれたのか。

ありがとう。」

氷の女王は疲れきっているが穏やかな笑顔でジルの顔に冷たい手をあて、

頬に軽くキスをした。

それで力尽きた氷の女王はジルの顔から手がだらんと下がり、

体が崩れ落ちるように倒れた。

「うわぁぁぁぁぁ!」

ジルはこのとき悲しみとやるせない怒りの中にいた。

「ジル、絶対にイデア教を倒しましょうね。」

マルク自身もジルと同じ気持ちを胸に秘めていた。

「ああ。」

ジルは力強く返事した。

ゴオオオオォォ。

大きな物音と共に城が崩れ始めた。

「大変です、氷の女王が死んだからその魔力で出来たこの城もなくなろうと

しています。」

「早く、脱出するぞ。」

ジルとマルクは走って城の外へと急ぐ。

ジルは女王の間を出る前に一瞬振り返り倒れている氷の女王を悲しげな表情で見つめる。

そして2人が外へと出たとき、城は大きく崩れて後には氷の残骸しか残っていなかった。

「(氷の女王、お前の敵は必ずとってやるからな。)」

ジルは決意を新たに歩き出した。

 

 

 

「ダグラス、あいつに会ってきたのか。」

グラビルがダグラスに静かに話しかける。

「ああ、偶然だったがな。」

ダグラスも同じように答える。

「うそ、2人ともずるい。こうなったら私も会いに行くわ。」

シェラハが不満そうに言って出て行った。

 

一方、テラでは。

「きゃぁぁあ!」

町外れの野道を移動する母と子の前に人食い鬼のオーガが現れた。

「グウウゥゥ。」

母は恐怖で震える子を抱きかかえてうずくまる。

「フ、相変わらずモンスターが蔓延っているようだな。」

そこへカフィールが姿を現す。

「カ、カフィール様...。」

母親はカフィールを確認すると恐怖から希望へと気持ちが変わった。

「グガァァァ。」

オーガはカフィールの方を向く。

「ガァァァァ!」

オーガは手にした棍棒をカフィール目掛けて振り落とす。

ブンッ。

そこには既にカフィールの姿はなく棍棒は空を切っただけだった。

「!?」

少し驚くオーガから僅かに離れた位置にカフィールはいた。

「『イルパ』。」

カフィールは魔法を唱え、小さな黒い穴を開いた。

そして、そこからカフィールの背丈ほどの巨大な剣エクシードを取り出した。

エクシードが出現した瞬間、大気が震えだした。

「その巨体、試し切りにはちょうどいいか。」

オーガはカフィールとその剣エクシードが併せ持つ威圧感に気圧されながらも

棍棒を振り上げて攻撃をしかける。

「グオォォォ!」

ズバッ。

カフィールの一振りでオーガの体は真っ二つに切り裂かれた。

「(攻撃速度がまだ甘いな。やはりこの大剣の重さに俺の体が慣れていないせいか。

俺自身をもっと鍛えなければいけないようだ。しかし、剣の威力は申し分ないな。

これならばどんな悪とでも渡り合える気がする。)」

カフィールが思案の中、母親がカフィールに歩み寄ってくる。

「カフィール様、本当にありがとうございました。おかげで助かりました。」

母親は丁寧に礼を言う。

「礼には及ばない。これは俺の使命だからな。これからの道中も気をつけろ。」

カフィールはそっけない言い方をしてその場を去っていった。

そんなカフィールを笑顔で見送ると、また母親は子を連れて歩き出した。


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