dark legend   作:mathto

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「な、なんだこれ。」

「ただの見掛け倒しだろ。」

3人の魔剣士は動揺を隠そうとしながらも警戒して後ろに

下がって動きを止めた。

「お前ら程度に必殺技はいらないだろ。」

黒いオーラを纏ったジルは余裕の表情で3人を見ている。

「今度はこっちから行くぞ。」

ジルはさっきまでよりも明らかに素早い動きでかたまっている

3人に近づく。

「やばいぞ、散れ。」

リゴットが焦りながら声を張り上げ、キッシュとブランはそれに反応して

リゴットからお互い違う方向に離れた。

残ったリゴットは汗をたらりと流しながらジルを待ち構える。

 

ガンッ!

ズバッ!

 

リゴットはジルの剣を受け止めるも重い一撃のため次の行動へ

移すのが遅れた。そこへジルがリゴットの横腹を切り裂いた。

リゴットの横腹からは緑色の血が流れ出す。

「リゴットー!」

キッシュとブランは思わず叫んだ。

残された2人の心配するすきも与えないようにジルは次の標的

ブランに既に向かっていた。

「ヒッ。」

ブランは恐怖に駆られて思わず剣を握ったまま目をつぶってしまう。

「ブラン、危ない。」

そこへ急いでキッシュが助けに向かうもジルがブランの腹を突き刺していた。

「グフゥ...。」

ブランは口から血を吐く。

「このヤロウ。」

キッシュは怒りに我を忘れてジルに真正面から剣を振るう。

ジルはその攻撃をあっさりと剣ではじき返した。

キッシュの剣は宙を舞い、キッシュの戦意は一気に落ちていく。

ジルは呆然と立ち尽くすキッシュの喉元に剣を突きつける。

「2人の傷は致命傷じゃないはずだ。今すぐ治療すれば何の問題もない。

さっさと降参しろ。」

「誰が降参なんか...。」

キッシュはそう言いながら、ブランとリゴットの痛がる声を聞く。

「ちっ、...分かった。」

2人を気にして渋々承知した。

それを聞いてジルは剣を引いて、ふぅとため息をついた。

「俺たちもともとお前らと争う気なんてなかったのにな。」

「ジル、後から言っても遅いですけどね。」

「まぁな。マルク、回復させてやってくれよ。」

「はい。」

マルクは笑顔でブランとリゴットの傷を魔法で癒す。

 

 

 

敵対していたはずの自分たちを回復したことに戸惑う3魔剣士。

「あ、俺たちイデア教を倒しに行く途中なんだよ。

方向間違ってないよな。」

ジルはようやく落ち着いた状況の中で本題を切り出した。

「お、お前らあのイデア教を倒すだって!」

3魔剣士は驚きを隠せない。

「(もしかしてここでは禁句だったかな。)」

ジルがこっそりマルクに聞いた。

「(どうでしょうか。イデア教がここでどう思われているか

分かりませんからね。)」

マルクも小声で答えた。

「俺たちも連れてってくれ。」

「え。」

3魔剣士のいきなりの頼みにジルとマルクは困った。

「いや、ダメだ。」

しかし、ジルはすぐに断った。

「何でだよ。」

すかさずにリゴットは聞いた。

「だってお前ら弱いもん。」

「なんだと~!」

3魔剣士はジルの言葉に怒りを感じた。

「ところであなたたちがイデア教を倒しに行く理由があるのですか?」

今度はマルクが尋ねた。

「ああ、俺たちの村はイデア教の奴等に何度も脅されているからな。

布教活動に協力しなければ全員殺すってな。」

「奴等は腕が伸ばして攻撃してくる人形を使ってついこの間攻めてきたんだ。

実際に殺された仲間もいるんだ。許せるわけがねぇよ。」

「腕を伸ばして攻撃してくる人形!あのゴブリンの国を出たときに出会った

奴だな。そうか...、お前らにもイデア教を倒す理由があるんだな。

分かったよ、一緒に行こうぜ。その代わり死んでも知らないからな。」

「へん、俺らが簡単に死ぬかよ。」

ジルの言葉に3魔剣士は少し嬉しそうにしていた。

「自己紹介しとこうか。俺はジルでこっちがマルクだ。」

「俺はリゴット。」

「俺はキッシュ。」

「俺はブラン。当然俺たちの村で休んでいくんだろ?」

「そうさせてもらえるとありがたいですね。」

マルクとジルは3魔剣士に村の中へと案内される。

「そうだ。この村の長老に会わしてやるよ。人間を見たら驚くかもしれない

けどな。お前らをここにいさせる許可ももらっとかなきゃいけないしな。」

キッシュがそう言うと3魔剣士は一軒の家の中へと入っていく。

ジルとマルクも後について入る。

 


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