dark legend   作:mathto

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「誰じゃ、ノックもせんと勝手に入ってくるのは?」

ローソクの灯された薄暗い部屋の奥から年老いた声が聞こえた。

3魔剣士とジルとマルクが家の中に足を踏み入れると、

椅子に座る長老の姿が確認できた。

「あぁ、いつもの3バカか。ん?それとまだ誰かいるのか?」

長老はジルとマルクの姿を観察するように見た。

「これは人間か。お前らが連れてくるとは珍しいな...ん?」

長老はジルの方をじっと見る。

「お前の名前は?」

「俺の名前はジルだ。」

長老の問いにジルはすぐに答えた。

「フルネームは?」

「え、そんなの聞かれたの初めてだな。フルネームは

ジルヴェルト=レイヤードだけど。」

「なんと!やはりレイヤードの息子か。」

「どういうことだ!?じいさん、俺の親父を知っているのか?」

「ああ、もちろんじゃ。お前の父親は魔族でありこの村で最高の剣士だった、

オルグ=レイヤード。300年前に魔王と共に人間界であるテラへと向かったまま

行方が分からずにいたが、まさか人間の子供を作っていたとはな。」

「う、ウソだろ。俺の親父が魔族だなんて...。」

「お前は完全に人間のようだが、その顔、姿は父親によく似ている。

間違いないだろう。」

「ちょっと待ってくれよ。オルグ=レイヤードって言ったら俺たちの親父たち

『オルグ親衛隊』が仕えてたっていう奴じゃないのか。」

「そうじゃよ。」

リゴットの問いに長老はあっさりと答える。

「俺は認めないぞ。こいつが俺たちの親父の上に立っていた奴の子供だなんて。」

ブランは動揺していた。

「お前らが信じる信じないは自由じゃが、事実は変わらんよ。

この話はもう終わろうか。ところでお前らは何しに来たんじゃ?」

長老は急に話を打ち切って5人に聞いた。

「俺たちイデア教のやつらを倒しに行こうと思ってるんだ。」

キッシュは真剣な表情で答えた。

「はっはっは、お前らがか。返り討ちに遭うのがオチじゃろうて。

悪いことは言わんからやめておけ。」

長老は冗談を聞いたかのように笑って反対した。

「長老、俺たちは本気なんだぜ。あんな奴らがこの魔界に

のさばってたんじゃ、早いうちにこの村はダメになっちまうんだぜ。」

ブランはむきになって長老に訴える。熱くなっている3魔剣士に対して

ジルは落ち着いた様子で口を開く。

 

 

 

「じいさん、俺たちの力じゃイデア教には絶対に勝てないのか?

確かにあいつらは強い。それは出会ったときに十分分かった。

しかし俺も今まで戦闘を経験していて多少なりとも自分の力に自信を

持っているつもりだ。少しは可能性はあると思っているんだが。」

ジルは低いテンションで問いかける。

「そうじゃな。今のままなら勝てる可能性は30パーセントといったところかな。

今のままならな。もしもこれから修行をして強くなるということならばもっと

可能性は高まるだろう。イデア教のやつらもまだそう活発な動きを見せている

わけではないから修行をする時間はあるはずじゃ。」

「そうか、修行か。」

「やろうぜ、修行。」

3魔剣士は単純に長老の言葉でやる気を出していた。

「そうだな。それしかないか。」

ジルも長老の意見に賛成した。

「そっちも問題はないか?」

長老はマルクにも聞いた。

「ええ、私はそれで全然構いませんよ。」

マルクも快く頷いた。

「ならば修行場を紹介してやろうか。」

「修行場?」

全員が聞き返す。

「そうじゃ、まさに修行にうってつけの場所。『生と死の狭間』と言われる

ところじゃよ。」

「『生と死の狭間』だって!そんなとこ聞いたことないぜ。」

全員が驚く中、リゴットが言った。

「確かにこの村ではわし以外知るものはほとんどいないじゃろう。

かなり危険な場所でもあるし、知る必要もないからな。」

「で、その『生と死の狭間』にはどうやって行くんだ?」

ジルが尋ねる。

「そこへ行く道はわしが作ろう。心の準備は出来ているか?」

「はい!」

5人は声を揃えて返事をする。

「分かった。ではちょっと下がっておれ。これより異空間へと続く

扉を開く。『スペルゲート』。」

長老が魔法を唱えると部屋の床に魔方陣が現れてそこから光を放った。

「この中に入れって事か。」

ジルはそう呟くと一人ためらうことなく魔方陣へと足を踏み入れた。

ブンッ。

ジルは光に包まれその姿を消した。

「あ、俺も。」

リゴット、キッシュ、ブランもジルの後に続いて魔方陣の中へと入っていく。

最後にマルクが落ち着いた様子で入る。

「さて、どれだけ強くなるかの。」

長老は5人を見送ると椅子に座ってくつろぎだした。


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