dark legend   作:mathto

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お互いの修行のために戦うことにしたマルクとジル。

「(マルクが魔界に来てものすごく成長しているのは分かる。

しかし、それは単純に魔法使いとしてであって戦闘に関しては

素人も同然のはず。マルクの強い気持ちは十分伝わってきたが、

ここは一撃で終わらせる。それが剣士としての俺のプライドであり、

マルクの気持ちに応えるための礼儀でもあるだろう。)」

ジルは神経を尖らせて炎の剣を構える。

「行くぞ、マルク。」

ジルはマルクに勢いをつけて攻撃を仕掛ける。

「『エアロスピード』。」

マルクはアグニの右の腕輪についている赤い玉を光らせて魔法を唱える。

魔法で素早くなったマルクはジルの攻撃をさっとかわす。

さらにそのままジルの背後に回ると、真空の刃を放ちジルを傷つける。

「何!」

「これがジルの全力ですか?」

マルクはジルに対して平然とした表情で問いかける。

「マルク、あんまり調子に乗るなよ。」

ジルは黒いオーラを静かに発した。

「私を舐めないで下さい。」

マルクは再び風を操り始めた。

「(マルクのスピードはかなりやっかいだが、攻撃力自体はそれほど

高くないはず。そこでカウンターを狙えば勝ち目は十分なはず。)」

ジルはマルクの動きを読んで構える。

マルクもそのことに気づきながらジルに近づく。

「(来る。)」

ジルがマルクの攻撃をカウンター狙いで受けようとしたとき、

「ぐふっ。」

ジルは予想以上のダメージで反撃することが出来なかった。

マルクが放った真空の刃は力強さを増し、さらにジルの体に深く突き刺さる

ように狙われていたからだった。

「もう一度言いますよ。私を舐めないで下さい。」

「分かってる!」

ジルは全身から血を流しながらも気合で立ち続けていた。

「(まさかマルクがここまで強かったなんてな。気づかなかったぜ。

だが、俺だって今まで戦闘を重ねて来たんだ。負けるようなことは

絶対に許されないんだ。)」

ジルはより険しい表情になって剣を構えた。

マルクからの攻撃をジルは避けようとするが、避けきれずに傷を増やしていく。

その中で反撃を試みるも魔法で素早くなったマルクには届かなかった。

「ジルの実力はこんなものですか。それならもう終わりにしましょうか?」

マルクはジルを挑発するかのように言う。

 

 

 

ジルはマルクの挑発に何も反応はしなかった。

「行くぞ、マルク。」

ジルはマルクに攻撃をしかける。

しかし、その攻撃もマルクにはあっさりとかわされる。

ジルはそれでもマルクに向かって剣を振り続ける。

「いつまで当たらない剣を振り続けている気ですか?」

マルクの挑発の言葉にジルは急に笑みを浮かべ出した。

「マルク、勝たせてもらうぞ。」

その言葉にマルクは驚く。

「今の状況で本当に...。」

そこでマルクは言葉を止める。

「(その顔は本気で私に勝てる方法が見つかったと

いうことでしょう。ならば試してもらいましょうか。)」

マルクはジルに真空の刃を仕掛ける。

「(風には流れというものがある。それを感じて読むことが出来れば...。)」

ジルは真空の刃をかすり傷すら負わずに全てかわした。

「(攻撃は受けない。)」

マルクはそのことは気にせずに素早く移動した。

「(それは、風の魔法で素早くなっているマルクについても同じこと。)」

ジルはマルクの移動する場所を読み取り一気に近づいた。

そしてジルが剣をマルクに向かって振り下ろそうとしたとき、

「『ウインドガード』。」

マルクは風の壁を作り身を守ろうとした。

「お前の風はもう読めているんだよ!」

ジルは咄嗟に剣の構えを変えて風の壁のある位置を突き刺す。

そこは風の流れにより一番防御の弱い位置で簡単に風の壁を貫き、

マルクの体へと攻撃が届いた。

傷は浅かったが、炎の剣の効果によってマルクの体から火が上がる。

さらに風の魔法を使っていたことが災いして、火の回りが早くマルクの

全身を一気に炎が包み込む。

「うわぁぁぁl!」

マルクは叫びながら転がって炎を必死で消そうとする。

「マルクっ!」

バサッバサッ。

ジルも急いで服を脱いでマルクの炎を消そうとした。

なんとかすぐに火は消すことが出来て、マルクは全身大火傷を負ったものの

命は失わずに済んだ。

ジルはすぐに持っていた回復薬をマルクに使う。

完全にというわけにはいかないが、少しマルクは回復した。

「ジル、すいませんでした。とても出すぎた真似をしてしまって...。」

横になったままのマルクがジルに弱った声で謝る。

「だったら最初っからするなよ。本当にマルクを殺してしまうのかと

一瞬思ったんだぜ。」

ジルはマルクを元気付けるように笑顔で言った。

 


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