dark legend   作:mathto

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「...ありがとうな。俺の為に戦ってくれて。マルク、本当に強かったぜ。

今まで戦ってきた中でもトップクラスだ。」

ジルは少ししんみりとなって言葉を続けた。

「ははは、これは私の為でもあったんですよ。私には『誰も傷つけたくない』

という信念がありました。しかし、私にはそれを超えるものがあると理解できました。

『大切な人のためにしなければいけないこと』。それをこれから大事に考えて

いこうと思います。

それから、ジル。今のジルならイデア教四魔人に必ず勝てますよ。

ふぁ~ぁ。魔法力も尽きてかなり疲れました。少し休ませてください。」

マルクはそう言うとそのまま眠りについた。

「マルク、ゆっくり休んでてくれよ。本当に感謝するぜ...。」

ジルはマルクの寝顔を見ると、座ったまま寝てしまった。

 

ジルとマルクの戦いを見ていた3魔剣士は。

「す、すげえな。」

「ああ。」

「俺たちも負けてらんねえな。」

より一層修行に力が込められていった。

 

それから丸一日が経とうとした頃、ようやくジルは目を覚ました。

「う、う~ん。なんか体がだるいな。でも気分は悪くない。」

ジルが目を擦りながら独り言を呟く。横にはまだマルクが寝ていた。

「(よっぽど疲れたんだろうな。自分のためでもあるって言ってたけど、

かなり精神的に無理してた部分があっただろうな。もうマルクは修行

しなくてもいいだろう。)」

「さて。」

ジルはマルクをそっとして、3魔剣士の方に歩いていく。

「俺も一緒に入れてくれないか?」

「俺たちは全然構わないぜ、な。」

ブランはジルを歓迎した。

キッシュとリゴットも笑顔で頷いた。

「お前たちも強くなってるだろうから1対1でいいよな。」

「当然だろ。」

リゴットは前に出て、剣を構えた。

「行くぜ。」

ジルはリゴットに向かって剣を振った。

ジルとリゴットではジルの方が力は明らかに上だったが、

ジルは一撃で決めようとはせずにリゴットを鍛えるように導くように

剣を合わせていった。

ジルの表情は穏やかにそして真面目な感じだった。

リゴットはジルに導かれるように自分の剣の腕を磨こうと一生懸命に

剣を振るった。

 

 

 

ジルとリゴットが剣を合わせている間、キッシュとブランは

2人で修行をしていた。

そして、リゴットに疲れが見え始めるとジルは今度はキッシュと

交代させた。そんな感じで3人と修行しているうちにジルはずっと前のことを

思い出しながら考える。

「(あのときのスケルトンナイトたちも俺と同じような気持ちだったのかな。

そう考えるとあのとき俺が鍛えてもらったように俺もこいつらを鍛えてやりたい。)」

 

「腹が減ったな。」

「あぁ。」

ジル達は皆腹ペコになっていた。

「長老にもらった保存食を食べるか。」

丸い団子のようなものを取り出し口に入れる。

「う~ん、味はいまいちだな。」

「こんなところで味にこだわっている場合じゃないでしょう。」

「確かに。ここは空腹さえ抑えられればよしとしなくちゃな。」

そうこう言った後、4人は修業を再開する。マルクはそれを見守っていた。

 

4人での修行が3日ほど続いた後、ようやく魔界へと戻された。

 

少し懐かしくも思える長老の家で長老が出迎えていた。

「よく戻ってきたな。その顔を見れば修業で強くなったことは分かる。

ここでお前らを労いたい気持ちもあるが、本番はこれからじゃ。

今のお前たちならイデア教と互角以上に戦えるかもしれん。

ありきたりな言葉で申し訳ないが、がんばれよ。」

「ありがとう、長老。」

5人は礼を言って、長老の家を後にしようとした。

「あ、ちょっと待てジル。」

「はい?」

長老に呼び止められてジルは振りかえった。

「その剣を貸してみろ。」

ジルは炎の剣を長老に渡す。

長老は金槌を取り出し、いきなり炎の剣をガンッと叩いた。

すると炎の剣はボロボロと刀身が崩れ落ちてしまった。

「え、うそ。」

ジルは普通に驚いた。

「これまでかなり酷使されていたようじゃな。剣にひびが入っていた。」

「そうかぁ。ま、しょうがないか。」

「代わりにこの剣を持っていけ。」

そう言って長老はジルに一本の剣を渡す。

「これは?」

「『名剣オートクレール』だ。これならそう簡単に折れるようなことは

ないじゃろう。大事に使え。」

「サンキュー、じいさん。ありがたくもらっとくよ。」

「ジル、長老にその言い方はちょっと...。」

「気にするな。全然構わんよ。お主らの活躍期待しとるよ。」

長老は手を振って見送ってくれた。

「とりあえず、今日はここで泊まってくだろう?」

ブランがジルとマルクに言った。

「ああ、そうだな。ちょっと修行の疲れをとりたいしな。」

「はい、お願いします。」

その日、5人はゆっくりと休息を取って、次の日出発することとなった。


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